双極性障害では記憶が飛ぶことがある?原因と対策について解説

双極性障害では、記憶が飛んでしまう「認知機能障害」が見られることがあります。

うつ状態のとき、集中力がなくなったり、ものごとを覚えられなくなったりするのを経験します。躁状態のときにも認知機能は影響を受けていて、うつ状態と躁状態で考えが変わって、状況判断能力や注意力などが制限されてしまうのです。

この記事では、双極性障害で記憶が飛ぶ原因記憶を飛ばさないための対策について解説します。

記憶が飛んで困っている双極性障害の人は、対策を知って仕事や家庭での生活をうまく過ごせるようにしましょう。

双極性障害で記憶が飛ぶ原因

双極性障害で記憶が飛ぶ原因は、まだ明らかにされていません。しかし以下の2つが関係あると考えられています。[1]

  • 抗不安薬による副作用
  • 電気けいれん療法による副作用

「ベンゾジアゼピン」を含む抗不安薬は、高齢者が使用したり、他の薬と組み合わせて服用したりすると、注意力や新しい情報を学習する能力を低下させる傾向があります。これらの薬を突然中止すると、重篤な錯乱状態を引き起こす恐れがあるのです。[1]

電気けいれん療法は、認知機能への副作用があると考えられています。ただし、認知機能への副作用は一過性のもので、治療が終わった3ヶ月後にはなくなります。特に、IQが高い「認知的予備力」を持つ若い人は、長期的な認知機能の副作用のリスクが低いのに対し、高齢者や認知的予備力が低い人は、副作用のリスクが高くなります。[1]

双極性障害で記憶を飛ばさないための対策 

双極性障害の方が記憶を飛ばさないための対策は、以下の5つがあります。

それぞれ見ていきましょう。

十分な睡眠をとる

記憶を飛ばさないためには、十分な睡眠をとりましょう

睡眠時間が短かったり、睡眠の質が下がったりすることは、認知機能を低下させる要因となります躁状態やうつ状態に十分な睡眠がとれないと、認知機能に影響してしまうのです。[1]

認知機能を高めるには、規則正しいリズムで睡眠を取ることが大切です。睡眠時間が6時間未満ではさまざまな病気を発症するリスクがあるため、6時間以上は確保してください。寝室にはスマートフォンやタブレットを持ち込まず、なるべく暗くして寝ると、睡眠の質が良くなります。[2]

こころちゃん
こころちゃん

寝具を変えてみるのも良いですね!

運動を続ける

適度に運動を続けることは、記憶を飛ばさないための対策となります。

規則的に運動をすると、「記憶」「計画」「ワーキングメモリ」を改善するのに役立つのです。運動は脳の機能に有益な効果をもたらすと示唆する研究もありました。[2]

運動量の目安は、息がはずんで汗をかく程度の運動を1週間で合計60分続けることです。たとえば、1回20分程度×週3回、1回30分程度×週2回など数日間で分けるといいでしょう。平日は仕事や家事で忙しい人は、週末に1回60分の運動でも効果があります。強度が高めの運動をすると、ケガをしたり、ストレスになって続かなくなったりする可能性があるため、無理をしすぎないようにしてください。[3]

食事管理をする

食事管理をすることは、記憶を飛ばさないために有効です。

食事は認知機能において、重要な役割を果たすとされています。高齢者において、肉や乳製品に「飽和脂肪酸」が多い食事をとると、認知機能の低下につながると分かっています。また、ファーストフードや市販の焼き菓子に含まれる「トランス脂肪酸」は、血流中の有害なコレステロールを増加させる可能性があり、認知機能障害につながるのです。飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を含む食品を摂取しすぎないように、気をつけましょう。[1]

食事は主食・主菜・副菜・汁物を考えると、栄養バランスが良くなります。[4]いきなり毎日始めるのはハードルが高いという人は、まずは1日だけでもいいので実践してみましょう。

こころちゃん
こころちゃん

少しずつやてみましょう。

適正体重にする

記憶を飛ばさないためには、肥満を解消して適正体重にしましょう

適正体重=身長(m)×身長(m)×22

肥満の人は認知症を発症しなくても、「思考の柔軟性」「構成能力」「記憶」「情報処理速度」などの認知機能が低下するとされています。年齢を問わず前頭前野での萎縮が強く見られ、中年~高齢になると、頭頂葉や側頭葉の萎縮とも関係してくるのです。[5]

肥満を解消するには、摂取エネルギーを減らして消費エネルギーを増やすことが大切です。食事と運動のどちらも見直して、日常生活に取り入れてみてください。[6]

ストレスをためすぎない

ストレスをためすぎないことは、記憶をなくさないことにつながるでしょう。

ストレスは認知機能に悪影響を及ぼす要因となります。精神機能は「短期的ストレス」「長期的ストレス」の両方に影響されるのです。

たとえば短期ストレスでは、会議中に怒られてストレスを受けると、不安になることがあります。感情が支配的になってしまい、合理的に考えることが難しくなるでしょう。職場で長期的なストレスを感じると、集中力が低下して、ものごとに注意を向けたり、仕事をこなしたりすることが困難になるおそれがあります。[1]

ストレスはこまめに解消するようにしましょう。趣味を楽しんだり、運動をしたりして気晴らしをしてくださいね。

双極性障害で記憶が飛んだときの対処法

双極性障害で記憶が飛んだときの対処法は、以下の3つです。

それぞれ見ていきましょう。

周囲に助けを求める

記憶が飛んでしまったら、周囲に助けを求めてください

前もって家族や友人に話をしておくと、記憶が飛んだときに、まわりがサポートしやすくなります。もし自分とまわりだけでは対応できないときは、同伴してもらって医療機関に相談しに行きましょう。[1]

本人だけでなく、まわりも認知機能の障害を受け入れて、理解しようとすることが大切です。記憶が飛ぶことで招いてしまう喧嘩やストレスを防ぐのにも役立つので、遠慮せずに助けを求めてください。

メモや日記を見返す

記憶が飛んでしまったときのために、普段からメモや日記を書いておき、困ったら見返すようにしましょう

認知機能の低下が見られる双極性障害の人は、記憶を思い出すために手がかりを多くすることが有効です。生活の中で必要な情報をメモにまとめたり、日記を書いて「この日はこんな出来事があった」と記したりしておくと、忘れたときに見返せば思い出せるきっかけとなります。[7]

自分だけでなく、家族や友人も後で見たときに分かるように書いておけば、情報を共有できるでしょう。

アプリを使って今の自分の状況を知ることもできます。詳しくは下記の記事をご覧ください。

焦らずに落ち着く

もし記憶が飛んでしまっても、焦らずに落ち着いてください。「時間が足りない」「早く終わらせなきゃ」などの理由で焦ってしまうと、ワーキングメモリの容量が下がると報告されています。[8]

落ち着く方法には、筋肉を緊張させたり緩めたりするのを繰り返しおこなう「漸進的筋弛緩法」があります。それぞれの部位の筋肉に対して、10秒間力を入れて緊張させ、15~20秒間脱力するのを繰り返します。身体をリラックスできるため、焦る気持ちを落ち着かせられるでしょう。

まとめ

双極性障害では記憶が飛ぶ原因として、抗不安薬や電気けいれん療法の副作用が考えられています。

記憶を飛ばさないためには、生活習慣を改善したり、ストレスをためないようにしてくださいもし記憶が飛んでしまったときのために、周囲にサポートをお願いしたり、メモや日記に残したりしておくと、心にゆとりが生まれるでしょう。

おおかみこころのクリニックでは、カウンセリングをおこなっています。記憶が飛ぶことがあって悩んでいたら、いつでも相談にお越しください。

24時間予約受付中

【参考文献】
[1]双極性障害における認知機能|国際双極性障害学会
https://www.isbd.org/Files/Admin/Cognitionfiles/ISBD_Cognition_Booklet_Japanese.pdf

[2]健康づくりのための睡眠ガイド 2023|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf

[3]習慣的に運動しよう|身体活動・運動|とうきょう健康ステーションhttps://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/undou/undou.html

[4]適切な量と質の食事|とうきょう健康ステーションhttps://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kensui/ei_syo/

[5]高齢者の肥満とやせ | 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/tokushu/koreiki-seikatsushukambyo-kanri/koureisya-himanyase.html

[6]肥満と健康 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

[7]脳損傷後の記憶障害の理解と支援のために|東京都https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shinsho/tosho/hakkou/pamphlet/kioku.files/leaflet-nosonsyogo.pdf

[8]焦り状況下での認知的制御とワーキングメモリ容量の関係
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pacjpa/83/0/83_1C-046/_pdf

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

関連記事一覧

予約方法