育児ストレスによりうつ病が発症したものを「育児うつ」といいます。
育児うつは子どもが〇歳までとという定義はありません。
ただ、育児によるストレスは長く続きやすいため、自分で気づき改善する行動をとることが大切です。
今回は、育児うつの定義や育児期にうつ病を発症しやすい理由などについて解説します。
育児うつセルフチェックや男性の育児うつについても解説するので「自分や夫は大丈夫かな?」と確認しながら読み進めてくださいね。
記事の最後に紹介する育児うつの対策や適切な相談先を参考に、今感じている苦しさを軽減するお手伝いができれば幸いです。
この記事の内容
育児うつとは
育児うつとは、子育てのストレスにより発症したうつ病で、以下のような特徴がみられます。
- 子どもの将来を心配しすぎる
- 育児や家事をする気力がわかない
- 子ども中心の生活にいらだちを感じる
- 母親としての役割が果たせないと自分を責める
- 他人の子どもに比べて自分の子どもが劣っていると感じる
女性の4〜10人に1人は一生のうちに1回はうつ病にかかると言われ、比率は男性の約2倍です。[1]
とくに育児期は「家事育児の中心は母親」「子どもが風邪を引いたら仕事を休むのは母親」という風潮が残っており、負担を感じる女性も多いでしょう。
育児期は月経や加齢による女性ホルモンの影響、家事育児・休息バランスの難しさからうつ病を発症しやすい時期です。
育児期にうつ病を発症しやすい理由
育児期にうつ病を発症しやすい理由として、以下が挙げられます。
それぞれ解説します。
睡眠不足
育児期は子どもの夜泣きや蹴った布団の掛け直し、子どものお弁当準備などにより自分の睡眠よりも子どもが優先される時期です。
十分な睡眠がとれないと脳に老廃物がたまり、脳内にうつ病を引き起こす炎症が起こると考えられています。[1]
うつ病によりさらなる睡眠不足に陥り、病状がよくならないという悪循環を引き起こしてしまうのです。
熟睡できないのはツライですよね💦
プレッシャー
育児は働いていた頃とは違うプレッシャーがあります。
例として挙げられるのは、以下のようなものです。
- 子どもが騒いだら周りに迷惑をかける
- 目を離すと子どもが危険にさらされる
- 周囲と自分の子の違いを気にしすぎる
育児は思い通りにならないことが多いため「〜すべき」と思いすぎると、プレッシャーを感じてうつにつながる可能性が高くなります。
ワンオペ育児
ワンオペ育児とは、周囲の協力が得られずひとりで育児をすることです。
家族の協力が得られない状況では「自分の生活だけ激変した」「自分だけ制限がかかっているようで苦しい」と大きなストレスを感じやすくなります。
働きすぎてうつ病になってしまうのと同じように、1日24時間常にやることがあるワンオペ育児は想像以上に心と身体を疲れさせるのです。
「お母さんなんだから頑張らないと」とひとりで頑張りすぎず、周囲に助けを求めましょう。
具体的な相談先はこちらをご覧ください。
育児うつになりやすい人
育児うつになりやすい人の特徴として、以下が挙げられます。
- 経済的に困っている
- 離婚した、夫や家族と死別した
- アルコールや薬物の乱用歴がある
- 過去にメンタル不調の原因がある
- 妊娠や出産に強い不安を持っていた
- 10代で出産し若くして母親になった
- 家族や友人からのサポートが受けられない
- 家族の中で孤独感を感じている、孤立している
- 夫が育児に協力的ではなく、夫婦関係がよくない
初めての出産、子育てで育児うつになる方が多いですが、ふたり目以降に初めて発症する方もいます。
「自分がダメだから」「育児に向いていないんだ」と責任を負いすぎず、誰でもかかるものだと思いましょう。[2]
肩の力を抜いてみましょう。
育児うつセルフチェック
ここ1か月の気持ちを振り返って、育児うつの可能性があるかチェックしましょう。
以下2つの質問に「はい」「いいえ」で答えるだけでチェックできるので、気軽にやってみてくださいね。[2]
- 気分が沈んだり憂うつな気持ちになったりすることがよくあった
- ものごとに興味がわかない、心から楽しめない感じがよくあった
どちらか(または両方)が「はい」であれば、うつの可能性があります。
早めに医療機関を受診し、心と身体を休ませましょう。
おおかみこころのクリニックでは、いつでも相談をお待ちしております。自宅からの受診を希望の方は、オンライン診療のご利用がおすすめです。
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育児うつの対策
育児うつの対策として、以下が挙げられます。[2]
それぞれ解決します。
食事を見直す
育児うつの対策として、食事の見直しが挙げられます。
以下に当てはまるときは、鉄分不足により身体に元気を運べなくなっている可能性があります。
- 早く体型を戻したくてダイエットしている
- 子どもの食事を優先してまともに食べていない
手の込んだ食事を作れなくても、以下のような少しの工夫で栄養バランスを見直しましょう。
・食パンを全粒粉のパンに変える
・ヨーグルトにゴマやきなこをかける
・牛乳をフォローアップミルクに変える
フォローアップミルクには鉄分が含まれているため、大人が飲んでも気軽に鉄分を補うことができます。
落ち込んだ気分を改善する効果が期待できる食品(チョコレートやキムチ、バナナなど)をストックしておくのもおすすめです。
まずは身体にエネルギーチャージです!
軽い運動をする
運動はうつ状態の改善に効果的です。
身体を動かすと気持ちを安定させる「セロトニン」というホルモンが分泌されます。
ストレッチや散歩、深呼吸など日常生活の中でできるだけ動くように心がけましょう。
「頑張って運動しなきゃ!」と気負いすぎるとうつ状態が悪化するため、心と身体が「気持ちいいな」と感じる範囲で運動するよう心がけてください。
一時的に子どもを預ける
不安や睡眠不足による疲労が強いときは、一時的に子どもを預けましょう。
預け先の例として、以下のような場所が挙げられます。
- 保育園の一時保育
- 夫や両親などの家族
- 子育て支援センター
「子どもを預けて休むなんて…」と抵抗があるかもしれませんが、母親が早く元気になって子どもと接することが子どもの心を安心させます。
数時間だけでも周りを頼り、ゆっくりと休みましょう。
息抜きすると気分が変わって楽しめることが増えますよ♪
育児うつの相談先
育児うつの相談先は以下のとおりです。[2]
相談窓口についてはこちらの記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
平日の昼間:保健センター
保健センターは全国の市区町村にあり、保健師や助産師などに相談できる機関です。
地域の情報をよく知っているため、受けられる支援や受診できる病院について知ることができます。
継続した支援が必要な場合は担当の保健師がついてくれるため、スムーズに相談ができるでしょう。
相談受付時間は「○○市+保健センター」と検索し、ホームページを確認してください。
夜間や休日、緊急性が高いとき:精神科救急の窓口
夜間や命に関わるような事態のときには、精神科救急の窓口に連絡しましょう。
精神科救急は、保健師が24時間対応する機関もあれば自動音声で対応する機関もあるなど、地域によって対応が異なります。
緊急事態になる前に「○○市+精神科救急」で検索して、自分の住む地域の情報を確認しましょう。
その他の相談窓口
保健センターや精神科救急以外の相談窓口は、精神科や心療内科です。
通院歴があるならば、通っていた病院に相談しましょう。
初めて受診する病院が育児うつに対応しているか心配なときは、事前に問い合わせると安心です。
おおかみこころのクリニックでは、育児中のストレスや悩みの相談を受け付けています。
ぜひお気軽にご相談ください。子どもとの外出が難しい方はオンライン診療のご利用がおすすめです。
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Q:産後うつとの違いは?
育児うつは育児期に発症するうつ病ですが、産後うつは産後のホルモンバランスや環境の変化などによるストレスによって発症するうつ病です。
産後うつは、産後6~8週までに発症しやすいとされていますが「産後うつは◯か月まで」といった明確な定義は存在しません。
産後1年程度は産後うつに注意が必要しましょう。[4]
産後うつについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
Q:男性も育児うつになる?
男性も育児うつになる可能性があります。
とくに生後1歳未満の子どもを育てている男性は注意が必要です。
男性のうち約11%が子どもが誕生して1年未満にメンタルヘルス不調を抱えています。
これは女性の10.8%と同程度であり、産前産後は男性にとっても負担が大きい時期なのです。[3]
育児は父親・母親ともに負担が大きいため「母親の方が大変だから自分は休めない」「自分が頑張って母親を休ませないと」と気負いすぎる必要はありません。
父親に向けての支援はまだまだ少ないですが、適切な相談機関をたよりながら力を抜いて子育てをすることが大切です。
相談先について知りたい方は、こちらからご覧ください。
Q:育児うつが与える家族への影響は?
家族へ影響を与えないためには、自分自身のうつ状態を放置しないことが大切です。
育児うつをひとりで抱えていると以下のような影響があります。[5]
- 感情が表せなくなる
- 人付き合いが苦手になる
- 心の安心の土台(自分や他者を信頼する気持ち)が築けなくなる
心の安心の土台には、親の安定した関わりが大切です。
適切な治療と周囲の協力を得てムリなく育児をすれば、子どもへの影響を心配しすぎる必要はありません。ひとりで抱え込まずに周囲へ協力をお願いしましょう。
育児うつが家族に与える影響について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
まとめ|育児うつを放置せず早めに対策しよう
育児うつは子育て中に発症するうつ病であり、誰でもかかる可能性があります。
「育児うつになるなんて子育てに向いていないんだ」「親として不十分なんだ」と自分を責める必要はありません。
育児うつのつらさをひとりで抱えると子どもと安定した関わりが築けず、子どものこころに安心感を与えづらくなります。
子どものこころの安定のためには、まず親自身が穏やかな安定した状態になることが大切です。
周囲に育児のストレスや悩みを相談し、こころの余裕を作りながら子どもと関わりましょう。
おおかみこころのクリニックでは、育児で悩む親御さんのご相談をお待ちしております。
ぜひお気軽にご相談ください。
24時間予約受付中
【参考文献】
[1]女性のうつ病 主婦の友社 野田順子
[2]産後うつ?と思ったら読む本 主婦の友社 立花良之
[3]子ども家庭庁
https://boshikenshu.cfa.go.jp/assets/files/history/r3/tr6_lecture_4.pdf
[4]こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1566/
[5]日本産婦人科医会
https://jaog.or.jp/
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。