PMSとうつ病の違いはなに?原因・症状・治療法ごとに詳しく解説




PMSとうつ病には似たような症状があり、見分けるのが難しいときがあります。
生理前にあらわれる気分の落ち込みや不調は、PMSかうつ病のどちらか分からずに悩んでしまいますよね。

PMSとうつ病の違いには、原因や症状、期間などがあります。これらに着目すると、あなたがどちらの状態なのか区別できるようになります。

この記事では、PMSとうつ病の違い治療法の違いについて解説します。セルフチェックも紹介するので、あなたの状態を把握するヒントにして、適切な治療をしていきましょう。

PMSとうつ病の違い

PMSとうつ病は、一見似たような症状がありますが、実際には異なる特徴を持ちます。PMSとうつ病のおもな違いについて、以下の3つを説明します。

両者の違いを理解することは、適切な対処法を見つける上で大切です。それぞれについて見ていきましょう。

原因

PMSとうつ病の原因には、明確な違いがあります。

PMSの原因は、生理周期に伴う女性ホルモンの変動によるものです。排卵から生理までの期間になると、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少します。そのため、脳内のホルモンや神経伝達物質に異常が起こり、さまざまな身体的・精神的症状を引き起こすのです。[1]

一方、うつ病の原因は複雑で、必ずしもひとつの要因に特定できるというわけではありません。遺伝的要因、環境的ストレス、脳内にある神経伝達物質の異常など、さまざまな要素が関係していると考えられています。[2]

症状

PMSとうつ病には、どちらも身体的症状と精神的症状があります。PMSでは以下のような身体症状があらわれます。[1]

  • 頭痛
  • むくみ
  • 乳房の張り

生理前にむくみや乳房の張りなどがあらわれたら、PMSの可能性が高いでしょう

精神的症状においては、どちらも似ています。ただし、PMSではうつ病ほど気分が落ち込みません。うつ病では意欲が低下して何もしたくなくなったり「消えたい」という自殺念慮が浮かんだりします。そのため、このような状態になったら、うつ病の可能性があります。[3]

こころちゃん
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期間

PMSとうつ病の明確な違いのひとつが、症状の持続期間です。

PMSの症状は、生理が始まる前からあらわれ、生理が始まって数日以内に自然と消失します。症状の持続期間は3~10日間ほどで、生理周期に合わせて繰り返されるのです。[1]

一方、うつ病の症状はより長期的に続きます。うつ病の診断基準によれば、2週間以上にわたって症状が継続するとされています。[4]適切な治療を受けないと、数ヶ月から数年にわたって症状が続くケースもあるのです。うつ病の症状は、生理周期とは無関係に持続するのが特徴的です。

PMSとうつ病は併発するのか

PMSとうつ病は、併発する可能性があります。2つの関係性を理解することは、適切な対処法を見つけるために大切です。

PMSの症状が重度のときには、うつ病のリスクが高まることがあります。たとえば、PMSによる気分の落ち込みが長期化したり生理周期に関係なく続いたりすると、うつ病の可能性があるのです

一方で、うつ病の人がPMSを経験すると、うつ症状が悪化すると報告されています。生理前のホルモンの変化が、うつ症状を強くさせることが原因と考えられているのです。[5]他にも、不安障害やパニック障害などの精神疾患は、生理前に症状が悪化しやすいです。[6]

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抑うつ症状が強ければPMDDの可能性も

PMSの症状が重く、とくに抑うつ症状が強ければPMDDの可能性を考える必要があります

PMDDとは、PMSよりも強い精神症状が出ることです。強い抑うつ気分や不安、イライラなどが顕著にあらわれます。[5]これらの症状は、日常生活や仕事、対人関係に大きな支障をきたすほど深刻なものとなります。

PMDDが疑われるときは、病院での診断と治療が重要です。PMDDについては、下記の記事でなりやすい人や治療法について解説しているのでご覧ください。

セルフチェック診断【PMS・PMDD・うつ病】

PMS、PMDD、うつ病の可能性を自己確認するためのセルフチェックを紹介します。

1.生理前の1~2週間に、イライラや気分の落ち込みを感じる
2.乳房の張りや痛みがある
3.食欲が増し、甘いものが欲しくなる
4.眠気や疲労感が強くなる
5.腹部の膨満感や体重の増加を感じる
6.生理前の1~2週間に、著しい抑うつ気分や絶望感を感じる
7.強い不安感や緊張感、または極端な気分の変動がある
8.顕著な怒りっぽさや対人関係の対立が増える
9.日常的な活動(仕事や友人関係など)への興味が著しく低下する
10.症状は生理開始とともに改善し、次の生理までの間にほとんど症状がない期間がある
11.ほとんど1日中、抑うつ気分がある
12.ほとんどの活動における興味や喜びの著しい減退がある
13.食欲の著しい変化や体重の変化がある
14.ほとんど毎日、不眠または過眠がある
15.ほとんど毎日、疲労感または気力の減退がある

  • 1~5が多い人→PMSの可能性あり
  • 6~10が多い人→PMDDの可能性あり
  • 11~15が多い人→うつ病の可能性あり

これはあくまで参考程度のものであり、正確な診断には専門医の診察が必要です。早期の発見と治療が、症状の改善につながります。

PMSとうつ病の治療法の違い

PMSとうつ病は異なる状態であるため、治療法にも違いがあります。それぞれの状態に適した治療法を選択することが、症状の改善につながります。PMSとうつ病のおもな治療法について見ていきましょう。

PMS

PMSの治療法には、おもに次の3つがあります。[1]

  • 薬物療法
  • 漢方療法
  • 排卵抑制療法

薬物療法では、PMSの症状に応じてさまざまな薬が使用されます。気分の落ち込みが強ければ、抗うつ薬の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を使用します。むくみの症状があれば利尿剤を使って、体内の水分を排出させます。症状や重症度に合わせて、適切な薬を選ぶことが大切です。

漢方薬を用いた治療も行われています。加味逍遙散や桂枝茯苓丸などが用いられ、PMSに伴う精神的症状を改善する効果があります。

排卵抑制療法とは、低用量ピルを服用して排卵を止める方法です。ホルモンの変動を安定させることで、PMSの症状を和らげます。

PMSに効く漢方薬については下記の記事をご覧ください。

うつ病

うつ病の治療法には、おもに次の2つがあります。

  • 薬物療法
  • 心理療法

薬物療法では、抗うつ薬を用いるのが主流です。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの薬が使用され、脳内の神経伝達物質のバランスを調整します。これにより、抑うつ気分や不安感などの症状が改善されます。服用の際には、自分の判断で薬の量を減らしたり中断したりせず、医師の指示にしたがいましょう。

カウンセリングや認知行動療法などの心理療法も重要です。

思考パターンや行動を変えることで、うつ症状の改善を図ります。とくに、薬物療法と組み合わせると、より高い効果が期待できるのです。

認知行動療法については、下記の記事もご覧ください。

まとめ

PMSとうつ病は似たような症状を示しますが、特徴や治療法には明確な違いがあります。

PMSは生理周期に関連した一時的な状態であり、ホルモンの変動が原因です。一方、うつ病はより長期的に続き、複数の要因が関係しています。

大切なのは、あなた自身の状態を正確に把握し病院に相談することです。PMSもうつ病も、適切な診断と治療によって改善できます。
生活の質を向上させるためにも、心身の変化を気にかけ、早めの対処を心がけましょう。おおかみこころのクリニックでは、オンライン診療も行っていますので、お気軽にお問い合わせください。

【参考文献】
[1]月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)|公益社団法人 日本産科婦人科学会
https://www.jsog.or.jp/citizen/5716/

[2]2 うつ病の主な症状と原因|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad002/

[3]うつ病|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL

[4]うつ病|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease01.html

[5]女性ホルモンとメンタルヘルス|ひろしま市民と市政
https://www.city.hiroshima.lg.jp/www/koho/shimintoshiseir050301/shimintoshisei/ward/saeki/topics/topics01.html

[6]PMS,PMDDの診断と治療ー他科疾患との鑑別ー,白土なほ子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/77/4/77_360/_pdf/-char/ja

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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