飛行機恐怖症とは、飛行機への強い不安や恐怖を感じ、搭乗を避けてしまう病気です。広場恐怖症のひとつで男性の約1%、女性の約2%が発症するとされています。[1]
空港に近づくだけで動悸がする、搭乗前から事故の心配が頭から離れないなど、飛行機恐怖症はさまざまな症状に悩まされます。仕事や旅行など、大切な機会に影響を与えてしまう可能性があるのです。
この記事では、飛行機恐怖症の診断テスト、飛行機恐怖症による不安への対処法について解説します。飛行機での移動に不安を感じないように、少しずつ不安を減らしていきましょう。
この記事の内容
飛行機恐怖症とは
飛行機恐怖症の特徴を次の3つに分けて紹介します。
それぞれについて見ていきましょう。
飛行機恐怖症の症状
飛行機恐怖症の症状は、心理的症状と身体的症状の2つに分けられます。
- 精神的な症状
- ・不安
・恐怖
・過度な心配
- 身体的な症状
- ・発汗
・動悸
・めまい
・吐き気
・呼吸困難
・胃の不快感
・手足の震え
心理的な症状では、飛行機に乗る予定が決まっただけで強い不安を感じたり、搭乗前から事故の心配が頭から離れなくなったりします。また、飛行中は常に機内の様子や天気に注意を払い、些細な音や揺れにも敏感に反応してしまうのです。
身体的な症状としては、動悸や手足の震えなどがあらわれます。とくに離陸時は飛行機が揺れるため、症状が強くなりやすい人もいるのです。
飛行機に乗らないといけないのに、症状が出たらつらすぎますね💦
飛行機恐怖症の原因
飛行機恐怖症の原因には、おもに3つのパターンがあります。
- 過去の航空事故
- 飛行機の怖い経験
- 閉所恐怖症や高所恐怖症
日本航空123便墜落事故やアメリカ同時多発テロ事件など、過去の航空事故はトラウマを与える可能性があります。メディアで繰り返し報道されるため、印象が強く残ってしまうのです。
過去に飛行機に乗った際に、大きな揺れや急な着陸を経験して、怖くて乗れなくなることもあります。
また、飛行機の中は狭く飛行中は空を高く飛びます。そのため、閉所恐怖症や高所恐怖症などによって、不安を引き起こしてしまうのです。
飛行機恐怖症が生活に与える影響
飛行機恐怖症は、日常生活にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
仕事面では、海外出張や遠方への転勤を断らざるを得なくなり、キャリアの選択肢が限られてしまいます。出張が多い会社で働く人にとっては、大きな壁となってしまうでしょう。
また、プライベートでも旅行先が制限され、家族や友人との思い出作りの機会を逃してしまいます。とくにグローバル化が進む現代では、飛行機での移動制限は生活の質に大きく関わってきます。たとえば、国際結婚をしていたり海外に住む家族がいたりすると、飛行機に乗って移動ができません。そのため、パートナーや家族との関係が悪くなる可能性があるのです。
飛行機恐怖症の診断テスト
あなたが飛行機恐怖症か確認するために、診断テストを実施してみましょう。
▢ 飛行機に乗る予定を立てただけで不安や緊張を感じる
▢ 空港に到着すると、心拍数が上がったり手に汗をかいたりする
▢ 飛行機の機内では窓際の席に座らない
▢ 離陸時に強い不安や恐怖を感じる
▢ 飛行中の揺れや乱気流に過剰に反応してしまう
▢ 飛行機事故のニュースを見ると、自分も同じ目に遭うのではないかと心配になる
▢ 飛行機での移動を避けるために、新幹線や船を選ぶことがある
▢ 飛行中、パイロットのアナウンスに過度に注意を払う
▢ 飛行機に乗る前日や当日に、頭痛や吐き気などの症状があらわれる
▢ 飛行機での旅行を計画する友人や家族に同行できず、人間関係に支障をきたすことがある
あてはまる項目が多いほど、飛行機恐怖症の可能性があります。このテストは自己診断の目安であり、正確な診断には医師の診察が必要です。飛行機恐怖症で日常生活に支障が出ていたら、心療内科や精神科に相談してみましょう。
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飛行機恐怖症へ自分でできる対処法
飛行機恐怖症に対して、自分でできる対処法は3つあります。
それぞれの対処法について詳しく解説します。
カフェインを控える
カフェインは不安の症状を悪化させる可能性があるため、フライト前は控えめにすることが重要です。[2]
コーヒーや緑茶、エナジードリンクなどのカフェインを含む飲み物を避けましょう。代わりにカモミールティーやルイボスティーなどのリラックス効果のあるノンカフェイン飲料を選んでみてください。
カカオ入りのチョコレートといった食べ物にも注意が必要です。空港で過ごす時間も考慮して、事前に代わりとなる飲み物や食べ物を準備しておくと安心できます。
ゆっくり深呼吸をする
呼吸法は、不安を和らげる効果的な方法のひとつです。[2]
呼吸に集中すると、不安から意識をそらせます。
「1・2・3」と頭の中で数えながら、ゆっくりと口から息を吐き出しましょう。
息を吐き出したら、同じように3秒数えながら鼻から息を吸い込みます。
5~10分ほど繰り返すと、自律神経が整ってリラックス効果が得られるのです。[3]
離陸時や揺れが大きいときなど、不安を強く感じる場面で実践すると効果的です。
機内で呼吸法を実践するときは、周囲を気にせずリラックスして取り組むように意識しましょう。事前に音楽を聞いたり、「Awarefy」や「メディトピア」などガイド付きの瞑想アプリを準備したりするのも有効です。
「飛行機は安全な乗り物」と考える
飛行機は統計的に見て、安全な交通手段のひとつです。
2021年に日本で発生した航空事故は11件で、そのうち飛行機の事故は3件のみです。[4]現代の飛行機には複数の安全システムが搭載されており、パイロットや整備士も徹底した訓練を受けています。2024年1月に羽田空港で起きた衝突事故では、飛行機の搭乗者は全員無事でした。このような具体的な事実を思い出せば、不安な気持ちを和らげることができます。
機内の様子を観察すると、客室乗務員が落ち着いて業務を行っている様子や、他の乗客がリラックスしている姿が見られるでしょう。周囲の様子を見れば「安全な飛行」だと実感できます。また、フライト前に航空会社の安全への取り組みについて調べておくのも効果的です。
飛行機恐怖症の治療法
飛行機恐怖症の治療には、おもに薬物療法と心理療法の2つの治療法があります。
薬物療法では、抗不安薬や抗うつ薬を使用して不安をおさえます。服用する際は、途中でやめたり薬の量を変えたりしないようにしましょう。薬を急にやめたり薬の量を変えたりすると、良好だったはずの症状がかえって悪化するためです。
心理療法では、認知行動療法や曝露療法が用いられます。認知行動療法は、思考や行動のパターンを変えて、感情や行動を改善する心理療法です。曝露療法は、恐怖や不安を引き起こす状況に徐々に直面して、不安を軽くする治療法です。曝露療法を行った90%以上の人に、症状が改善したとされています。[1]
症状の程度や患者さんの希望に応じて、薬物療法と心理療法を組み合わせて治療が行われるケースもあります。
まとめ
飛行機恐怖症は、治療によって改善が可能な症状です。
また、自分でできる対処法を日常的に実践すれば、症状を緩和できます。飛行機での移動に不安を感じていたら、ひとりで抱え込まず周囲のサポートを受けながら徐々に克服していきましょう。治療や対策に取り組めば、飛行機での移動を楽しめるようになります。
この記事で解説した症状や自己診断を参考にしながら、心配な症状があれば早めに医療機関に相談しましょう。おおかみこころのクリニックでは、オンライン診療も行っています。忙しくて来院が難しい人も、お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]広場恐怖症|MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-心の健康問題/不安症とストレス関連障害/広場恐怖症
[2]不安症|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=BLA9JV0KhiWPIMzX
[3]腹式呼吸をくりかえす|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_03.html
[4]第1章 航空交通事故の動向|内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r04kou_haku/zenbun/genkyo/h3/h3s1.html