「エレベーターが怖くて乗れない」
「MRI検査が苦手で受けられない」
閉所恐怖症とは、特定の状況に対して不安や恐怖感が続く「限局性恐怖症」のひとつです。突然のパニック発作やめまいなどの症状が引き起こされ、日常生活に支障をきたします。[1]
適切な治療法と対処法を知ることで、症状を改善し少しずつ克服できるのです。
この記事では、閉所恐怖症の治し方、閉所恐怖症で不安になったときに落ち着く方法を解説します。あなたに合う対処法を見つけて、閉所恐怖症の症状を改善していきましょう。
閉所恐怖症の原因
閉所恐怖症は、複数の要因が絡み合って発症する不安障害です。おもに3つの原因が考えられています。
- 遺伝的要因
- 心理学的要因
- 生物学的要因
遺伝的要因では、家族に不安障害や恐怖症の既往歴があると閉所恐怖症を発症しやすいとされています。
心理的要因では、幼少期に経験したトラウマが影響します。たとえば、狭い空間での恐怖体験や閉じ込められた経験などが、閉所恐怖症の発症につながってしまうのです。
また、私たちの脳はさまざまな化学物質を使って情報を伝達しています。閉所恐怖症の人は、伝達された物質のバランスが崩れていたり、危険を感知する「扁桃体」が過剰に働いたりします。その結果、狭い場所に対して必要以上に強い恐怖を感じてしまうのです。
さまざまな原因が合わさっていることもあります
閉所恐怖症の症状
閉所恐怖症の代表的な症状としては、以下のものがあります。
・不安
・震え
・めまい
・吐き気
・息切れ
・呼吸困難
たとえば、満員電車に乗らなければいけないときに、まず不安感がこみ上げてきます。そして、突然の恐怖と圧迫感に襲われパニック状態に陥ると、息切れや呼吸困難を感じるのです。
めまいや震えも特徴的な症状で、身体がガタガタと震えバランスを失うような感覚に襲われます。同時に、吐き気を伴うこともあり、身体に強いストレス反応があらわれるのです。
狭い場所に行くと怖いし不安になりますよね💦
閉所恐怖症のチェックリスト
閉所恐怖症のチェックリストをおこない、あてはまる症状はないか確かめてみましょう。次の項目に「はい」か「いいえ」で答えてください。
▢ 狭い部屋や空間にいると落ち着かない
▢ 洋服店の狭い試着室に入るのに戸惑う
▢ 混雑した電車やバスに乗るのを避けたくなる
▢ トンネルや地下道を通るときに不安を感じる
▢ MRIやCTスキャンなどの検査を受けるのが怖い
▢ エレベーターに乗ると息苦しさや不安を感じる
▢ 閉じたドアの向こう側に人がいないと怖くなる
▢ 込み合ったエレベーターに乗らないようにする
▢ 閉め切った部屋にいると窒息しそうな感覚がある
▢ 飛行機に乗ると閉じ込められる感覚で不安になる
あてはまる項目が多いほど、閉所恐怖症の可能性があります。症状が日常生活に支障をきたすときは、精神科や心療内科への相談を検討してみてください。早期に治療をすることは、症状の改善につながります。
飛行機に乗るのが怖い場合は、飛行機恐怖症かもしれません。下記の記事もご覧ください。
閉所恐怖症の治し方
閉所恐怖症の治療には、次の3つがあります。
医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけることが、回復への第一歩となります。それぞれの治療法の特徴について見ていきましょう。
薬物療法
閉所恐怖症の治療には、抗不安薬を使う薬物療法があります。
抗不安薬は不安を一時的に緩和するもので、恐怖心の原因そのものを取り除くことはできません。そのため、薬物療法は他の治療と組み合わせる補助的な役割を果たすのです。完治するためには薬物療法だけに頼るのではなく、曝露療法やカウンセリングなどの心理療法と組み合わせることが必要です。
閉所恐怖症の克服には、補助的に薬物療法を行いながら心理療法を中心とした総合的なアプローチをしていきましょう。
曝露療法
曝露療法は、閉所恐怖症の治療において最も効果的な方法のひとつです。
不安の原因となる刺激に段階的に触れることで、恐怖心を徐々に軽くします。たとえば、最初は狭い空間の写真を見ることから始め、次第に実際の閉所空間に滞在する時間を少しずつ延ばしていくのです。
曝露療法を忠実に行った人のうち、90%に効果が出るとされています。[1]落ち着いて呼吸を整えたり、状況を客観的に判断したりする対処法を身につけられるようになるのです。
効果的な治療法ですね!
認知行動療法
閉所恐怖症の治療において、認知行動療法は有効な治療法です。考え方に働きかけて、不安な気持ちを楽にします。[2]
「狭い空間は危険だ」といった根拠のない思い込みを、客観的な考え方に変えていきます。たとえば「エレベーターで事故に遭う確率は低い」といった事実を認識し、徐々に「狭い空間は必ずしも危険ではない」という考え方を身につけるのです。
認知行動療法では、カウンセラーとの対話を通じて自分の考え方を理解し、段階的に克服するための具体的な対処法を学びます。認知行動療法は、閉所恐怖症の克服に効果的な治療法なのです。
閉所恐怖症で不安になったときに落ち着く方法
閉所恐怖症によるパニック発作や強い不安を感じたとき、その場で実践できる方法が3つあります。
心身の落ち着きを取り戻し、恐怖心をコントロールするのに役立ちます。
深呼吸する
ゆっくりと深呼吸することは、閉所恐怖症による不安を効果的に和らげる方法です。
深呼吸は体内に十分な酸素を取り込み副交感神経を刺激することで、身体の生理的なストレス反応を落ち着かせます。パニック状態で呼吸が浅く早くなっているときに、意識的に深呼吸をしてみましょう。
呼吸法のうち、4-7-8呼吸法と呼ばれる技法があります。4秒かけて鼻から息を吸い、7秒間息を止め、8秒かけてゆっくりと口から吐き出します。数回繰り返すことで、心拍数が落ち着きリラックスしてくるでしょう。[3]
正しい呼吸法を身につけると、閉所恐怖症による不安をコントロールし落ち着きを取り戻せるようになります。
筋肉を緊張させて脱力する
閉所恐怖症で不安になったときは、筋肉を緊張させて脱力しましょう。この方法は「漸進的筋弛緩法」と呼ばれ、閉所恐怖症による緊張や不安を和らげる効果的な方法です。
意図的に筋肉に力を入れて緩ませ、身体の感覚に意識を集中させます。足や腕、肩などに10秒間力を入れ、その後15~20秒間完全に脱力しましょう。[4]
漸進的筋弛緩法を定期的に実践することで、身体的・心理的な緊張を和らげ、閉所恐怖症による不安に対処できます。
自分に励ましの言葉をかける
閉所恐怖症で不安を感じるときは、心の中で自分を励ましてあげましょう。
恐怖心を増すネガティブな考えをやめると、落ち着きを取り戻します。たとえば、意識的に「大丈夫、落ち着いて」「不安はすぐにおさまる」といった前向きな勇気づける言葉を心の中で繰り返せば、不安をコントロールできるようになるのです。
深呼吸と組み合わせると、より効果的に不安を和らげることができます。とくに、自分の名前を使って語りかけると、より気持ちが落ち着いて安心感を得られるようになります。
自分で自分を励ましましょう!
まとめ
閉所恐怖症は、適切な治療と対処法によって克服できる病気です。
治療法には、曝露療法や認知行動療法などがあります。深呼吸や漸進的筋弛緩法などは、不安を感じたときにすぐに実践できる効果的な方法です。
閉所恐怖症と向き合うためには、自分に優しく接することが大切になります。日常生活に支障が出ているときは、精神科や心療内科のサポートを受けましょう。
おおかみこころのクリニックでは、オンライン診療も実施しています。忙しくて来院する時間がなくても自宅で受けられますので、お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]限局性恐怖症|MSDマニュアル家庭版
[2]認知行動療法|e-ヘルスネット(厚生労働省)
[3]ストレスをやわらげる呼吸法|北海道
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/7/6/5/9/6/5/8/_/kokyuhou_template.pdf
[4]第2章 心のケア 各論|文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/004.htm