産後うつが1年以上続くあなたへ|長引く原因と対処法を解説










「産後うつと診断されて、もう1年以上経つのに…」
「いつになったら、このつらさは終わるんだろう」

治療を続けていても症状がよくなったと感じられず「このままずっと治らないのかな」と不安になっていませんか。

周りから「そんなに続くものなの?」「もう産後じゃないよ」とこころない言葉をかけられ、理解されない孤独感に押しつぶされそうになることもあるでしょう。

産後うつは、数か月で回復する人もいれば1年以上続く人もいます。

あなたのつらさは、決して「長すぎる」わけでも「甘え」でもありません。

この記事では、産後うつが長引くことについて長引いたときに見られる症状周りにサポートをお願いする具体的な方法について解説します。

今のあなたの気持ちが少しでも前を向くきっかけになりますと幸いです。

産後うつが1年以上続くことはある

産後うつの症状は、一般的に半年~1年、長い人では2年以上症状が続くこともあります。[1]

京都大学の研究では、産後のうつ症状は4〜5年続くケースもあるとされており、長引くこと自体は決してめずらしくありません。[2]

産後うつと聞くと「産後数週間~数か月の話」と考えられがちですが、イギリス・オーストラリア・カナダ・フランスで行われた研究では、10~30%の母親が長期的な産後うつを経験していると報告されています。[3]

身近に産後うつが1年以上続いている人がいなければ不安になることもあるでしょう。

実は「産後1年のうつ症状の有病率は産後1か月と同じ」と東北大学病院の研究でわかっています。[4] 

つまり、産後うつが長く続いている方は世界的に見ると少なくないのです。ひとりで悩まずに、同じような経験をしている方がいることを知っておくだけでも、少し安心できるでしょう。

こころちゃん
こころちゃん

身近に同じ悩みの人がいないと不安になりますよね💦

産後うつが長引く原因は周りの環境も関係している

産後うつの原因は、はっきりと分かっていませんが、さまざまな要因が重なり発症すると考えられています。

出産による女性ホルモンの急激な減少も原因のひとつです。

ほかにも、以下のような原因も関係しています。[1]

  • 睡眠不足
  • 夫婦関係
  • 経済的不安
  • 子育てに慣れない不安
  • 社会とのつながりの薄さ

このように「育児そのもの」だけでなく、周りの環境も産後うつに関係しています。

「もう1年も経ったのに、なぜよくならないの?」と自分を責めてしまうこともあるでしょう。

産後うつに限らず、こころの病気の回復のスピードには個人差があります。

焦らずに今あなたに必要なサポートを一緒に探しましょう。ひとりで悩まずに、おおかみこころのクリニックにお気軽にご相談ください。

おおかみこころのクリニック

下記の記事では、実際に産後うつが続いた方の声や回復までの期間についてご紹介しています。あわせてご覧ください。

産後うつが1年以上続くときに見られる症状

産後うつが1年以上続くと、日常生活に支障をきたすような症状が慢性的にあらわれることがあります。

たとえば、以下のような症状が見られるでしょう。[5]

  • 疲れやすく身体が重い
  • 眠れないまたは寝すぎてしまう
  • 朝から気分が沈みやる気が出ない
  • 食欲が落ちたり過食になったりする
  • 子どもや夫に対してイライラしやすい
  • 周りに相談できず孤独感を抱えている
  • 楽しかったことに興味がもてなくなる
  • 少しのことで涙が出たり悲しくなったりする
  • 「母親失格かもしれない」と自分を責めてしまう

こうした症状はこころの不調からくるもので、あなたの努力不足や甘えによるものではありません。

つらいときは「ひとりで抱え込みすぎない」ことが大切です。

あなたの状態に合ったサポートを、医療機関や周りの人と一緒に探していきましょう。

家族や周りの人にサポートをお願いする具体的な方法

家族や周りの人にサポートをお願いするときに大切なのは以下の3点です。

  • 内容は具体的に
  • 感情的に責めずに
  • 伝えるタイミングを選ぶ

たとえば、このような伝え方をしてみましょう。

  • 「最近、寝不足で身体が限界かも。明日の朝の子どものことお願いできるかな」
  • 「〇〇してくれると助かるんだけど、お願いしてもいい?」
  • 「産後うつのせいでイライラしやすくなってて、いつもごめんね。少し話を聞いてくれるだけでも助かる」

手伝ってほしいとことをただ漠然と伝えるよりも「何を、どのくらい、どうしてほしいか」を具体的に伝えることで、相手は理解しやすかったり行動に移しやすかったりします。

また「◯◯してよ!」ではなく「◯◯してくれたら助かるな」というポジティブなお願いにするのもポイントです。

とくに家事や育児は「母親だから」という理由ですべてを背負おうとしなくて大丈夫です。

以下のように夫ができそうなことから少しずつ任せていきましょう。

  • ゴミ捨てをお願いする
  • 食べた食器はシンクまで運んでもらう
  • 子どもと10分だけ遊んでもらう時間をつくる

「これならお願いできるかも」「やってもらいやすそう」と思えることから始めて、少しずつ夫の家事育児スキルを高めていきましょう。

こころちゃん
こころちゃん

簡単なことからお願いして、少しずつ頼っていきましょう

1年以上続く産後うつを乗り越えるための治療法

産後うつの治療は、薬や生活環境の調整で回復を目指すのが一般的です。

ただ、すべての人に同じ治療が合うとは限りません。

症状が長引いているときには、いま受けている治療があなたに合っているかを見直すことも大切です。

たとえば、別の医師の意見を聞く「セカンドオピニオン」は、治療の選択肢を広げるきっかけになります。また、薬だけでなく心理療法を取り入れてみるのもひとつの方法です。

心理療法では、あなたの思いや考えを丁寧に整理することで、症状がやわらぐこともあります。

また、最近ではrTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)という新しい治療法も注目されています。

rTMSは、磁気の力で脳に働きかける方法で、薬のような副作用が少なく身体に負担をかけずにうつ症状をやわらげることをめざす治療法です。[6]

あなたに合う治療法を見つけて、今より少しでもこころが軽くなる治療法を探していきましょう。

rTMSについては、下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。   

まとめ|産後うつが1年以上続くときは新しい治療法も考えよう

産後うつが1年以上続くことは、決してめずらしいことではありません。  

それでも「いつまで続くの?」「このまま一生治らなかったらどうしよう」と、不安になってしまうのはムリもないことです。

でも、あなたは今こうして情報を探し、少しでもよくなりたいと思いこの記事を読んでくれています。  それはもう、前を向く力があるということです。

産後うつには薬や環境調整だけでなく、心理療法や近年注目されているrTMSといった新しい治療法もあります。  

おおかみこころのクリニックでは、産後うつについてのご相談も受けております。

一緒にあなたに合った治療法を探していきましょう。

おおかみこころのクリニック

【参考文献】
[1]見落とされがちな「産後うつ」。悪化を防ぐために周囲や本人ができること|働く女性のウェルネス向上委員会 東京都産業労働局
https://women-wellness.metro.tokyo.lg.jp/columns/06

[2]産後女性のうつ症状は短鎖脂肪酸の産生に関わる腸内細菌叢と食習慣に関連―食生活習慣から身体とこころの健康をまもる支援を目指して―|京都大学
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2025-06/web_2506_Matsunaga-febd3211be0d5b1a4e2094340074006d.pdf?utm_source=chatgpt.com

[3]産後うつ傾向は母子の望ましくない生活行動に関連 ~産後メンタルヘルスの継続的支援の必要性を提唱~|名古屋大学
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/upload_images/20250916_med.pdf?utm_source=chatgpt.com

 [4]産後うつは産後 1 年経過しても出現する~長期的なスクリーニングやケアの体制構築の必要性~|東北大学病院
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20210910_02web_postpartum.pdf

[5]産後うつ病(分娩後の抑うつ)|MSDマニュアル 家庭版

[6]日本精神神経学会 反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針 令和6年4月(改訂)ver2|公益社団法人 日本精神神経学会 ECT・rTMS 等検討委員会rTMS 適正使用指針作成ワーキンググループhttps://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/Guidelines_for_appropriate_use_of_rTMS_202404ver2.pdf

この記事の執筆者
柚木ハル
作業療法士として精神科で17年の臨床経験を積み、現在は訪問リハビリに従事。経験を生かしメンタルヘルスを中心に、やさしく寄り添う文章を心がけて執筆しています。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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