双極性障害の同僚に迷惑している|接し方やコミュニケーションのポイントを解説




双極性障害とは、普段とはかけ離れたハイテンションの躁状態と気分が落ち込むうつ状態をくり返す(気分の変動)精神疾患です。日本での有病率は1,000人に4~7人弱といわれています。[1]

職場に双極性障害の同僚がいると、気分の変動に振り回され迷惑だと感じることがあるでしょう。とくに、躁状態では職場で攻撃的になることもあり対応に困りますよね。

この記事では、双極性障害の同僚を迷惑だと感じる理由や、躁状態とうつ状態のときの接し方について具体的に解説しています。

双極性障害の同僚とのコミュニケーションにおけるポイント距離のとり方を知ることで、職場で対応しやすくなるでしょう。

双極性障害になっても働けるのかについては、以下の記事をご覧ください。

双極性障害の同僚を迷惑だと感じる理由

双極性障害の同僚は、職場の人間関係や業務を乱して周囲に迷惑をかけることがあります。

とくに躁状態では、攻撃的になったり自分の都合の良いようにウソをついたりして迷惑だと感じることがあるでしょう。

具体例は以下のとおりです。

  • 躁状態で行き過ぎた発言や行動:話が止まらず業務に割り込むことが多い
  • 業務の進行に支障がでる:計画を無視した突然の行動や、今の業務に無関係な提案をする
  • うつ状態での急な欠勤:急な欠勤や遅刻が増え、周囲の業務負担が増える
  • 仕事の質の不安定さ:気分によってパフォーマンスが大きく変わるため、仕事の進み具合の把握が難しい
  • 周囲の人とのコミュニケーションの困難さ:気分がコロコロ変わるため、コミュニケーションがスムーズにいかず、誤解されたり対立したりする
  • 職場の雰囲気に影響を与える:不安定な行動が、周囲のやる気や集中力をそいでしまう 

躁状態のときは、夜眠らなくても元気にすごせたり自分は絶対に正しいと思い込んだりする行動が目立ちます。そのためトラブルを起こすことも少なくありません。

一方、うつ状態では活気がなく仕事の遅れや欠勤が増え、同僚の負担が増えるでしょう。

このように、双極性障害の気分の変動により、周囲は仕事のペースや職場の雰囲気を乱され迷惑だと感じるようになります。

「双極性障害だから理解するべき」と頭では分かっていても、実際に仕事に影響していると難しいものです。職場での正しい接し方を知ることで、同僚の言動に対応しやすくなるでしょう。

こころちゃん
こころちゃん

職場にいる時間が長いから気になりますよね💦

次で紹介する、双極性障害の方との接し方を参考にしてみてくださいね。

双極性障害の気分の変動については、以下の記事をご覧ください。

双極性障害の同僚との接し方~具体例~

ここでは、双極性障害の躁状態とうつ状態それぞれの接し方について、具体例を用いて紹介してます。

あなたが同僚のどんなところに迷惑しているのかを考えながらご覧ください。 

躁状態の対応方法

躁状態の同僚には、冷静で落ち着いた対応が求められます。

具体的には以下のような対応です。[2]

プロジェクトについてチームで話し合っていたが、ズレた話をはじめたので話し合いが進まない
→「そうだね」と同僚の話に耳を傾け肯定しつつ「今は話し合い中だから、また今度聞かせてね」と今の状況を客観的に伝える

全く関係ない他の人(Aさん)の業務に意見してくる
→「そうだよね。ただ、あの仕事はAさんの仕事だからコッチの仕事のこと教えてもらってもいい?」
全否定するのではなく、軽く話しに応じるうちに気持ちが変わることもある

普通に話していたはずなのに突然攻撃的になる
→「そんなに怒らないでください。今は仕事中です」
気分が高揚しているときは、まわりくどい言い方だと同僚をさらに怒らせることがあるため、手短に今の状況を分かりやすく説明する

躁状態の同僚には、まず冷静に落ち着いた態度をとることが大切です。

強い口調で「ダメ」「なぜそんなことするの!?」などと伝えると、相手はテンションが高くなっているため攻撃的な反応をするでしょう。

ち着いた口調で相手の話に共感しつつ、分かりやすく手短に伝えるように心がけてください。

どうしても落ち着かない場合は、落ち着きやすい静かな環境にうながすことも大切です。

業務の進行に支障がでる場合は、上司や人事に相談し適切な対応をとるようにしてくださいね。

うつ状態の対応方法

うつ状態の同僚には、無理に励ましたりプレッシャーをかけたりする対応は避けましょう。

具体的には以下のようなことが挙げられます。[2]

親身に相談にのっているのに受け入れてもらえない
→少し距離をおく
もしかしたら、相手にとって負担になっているのかもしれません

すごくきつそうにしているのに休まない
→さりげなく仕事のサポートをしつつ上司に相談する

ボーッとしていることが多くて仕事のミスが目立つ
→「眠れてる?」「ご飯食べれてる?」と体調面を気にかける
原因を改善しないと仕事のミスは改善されません

同僚がうつ状態で、周囲から見ても業務に取り組むのが難しいと感じるときは、休めるようにサポートすることも大切です。

ただし、一方的に「ムリしてない?休んだら?」と伝えると「わたしが迷惑なんだ」「休んだらもっと迷惑かけてしまう」と、負い目を感じさせることもあります。

同僚に安心して休憩をとってもらうには、理解とサポートを示すことが大切です。

そのためには、上司と相談しながらさりげなく仕事の負担を軽くする、柔軟な勤務時間を提案するなどの対応が効果的です。

こころちゃん
こころちゃん

同僚もあなたも心地よく働ける環境がよいですね

双極性障害の同僚とのコミュニケーションで気をつけるポイント

双極性障害の同僚とのコミュニケーションでは、同僚の状況を理解し慎重な言葉選びが大切です。

気をつけるポイントは以下のとおりです。[2]

  • ムリに元気づけない
  • きびしい言葉をかけない
  • 感情のまま言葉をぶつけない

躁状態の同僚の言動にイライラすることもあるでしょう。ただし、相手の言動に「はぁ?」「うるさい!」などと感情のままにきびしい言葉をかけるのはやめましょう。

相手は今、普段では考えられないほどテンションが高いため、攻撃的な反応が返ってくることになります。

また、うつ状態で落ち込んでいるときに「元気出せよ!」「大丈夫だって!」などと声をかけるのはやめましょう。同僚は今うつ状態でどうしても元気がでません。

相手を思っての言葉でも「元気にならなくては」「心配かけて申し訳ない」と考えてしまい、負担に感じることがあります。

今必要なサポートは何なのかを考えながら、適度な距離をたもちつつ相手のペースに合わせる対応が求められるのです。

過剰な関わりを避けるための適切な距離感

過剰な関わりを避けるには、適度な距離感をたもつことが大切です。適切な距離のとり方は人によって違います。

あなたが以下のように感じたら、適切な距離が取れていないということです。

  • 気づいたら避けている
  • 同僚と話すと気が重い
  • 家に帰っても同僚のことを考えて気分が落ち込む

明確な基準はありませんが、あなた自身の心がつらくなったら対策をする必要があります。

具体的な適切な距離のとり方については次で解説しますので、参考にしてくださいね。

こころちゃん
こころちゃん

あなたが負担に感じたときが、うまく距離がとれていないということです

双極性障害の同僚と適切な距離のとり方

双極性障害の同僚の対応を、ひとりで抱え込むのは難しいです。職場全体で対応を分担し、ひとりに大きな負担をかけない工夫がポイントになります。[3]

同僚以外の人とのコミュニケーションをとりつつ、同僚のペースに合わせた対応を心がけることで、心地よい関わりができるようになります。

また、同僚が業務に取り組みやすい環境を整えることも大切です。環境を整える場合は上司に相談してみましょう。

まとめ|双極性障害の同僚と共に働くために

双極性障害の同僚を迷惑だと感じるのは、あなただけではありません。

双極性障害の同僚の対応に悩んだら、以下のような対応を心がけてみてくださいね。

  • 躁状態:冷静で落ち着いた対応
  • うつ状態:無理に励ましたりプレッシャーをかけない

あなたひとりで抱え込むとストレスになるため、職場全体でサポートし信頼できる人に相談することが大切です。

日常のストレスを誰かに話したいと思ったら、おおかみこころのクリニックに話しに来てください。わたしたち心の専門家はあなたの心が軽くなるお手伝いをしています。お気軽にご相談ください。

【参考文献】
[1]こころの情報サイト|厚生労働省
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=RM3UirqngPV6bFW0

[2]朝田 隆/中島 直/堀田英樹.精神疾患の理解と精神科作業療法.中央法規出版株式会社,2006年

[3]厚生労働省|改 休業した労働者の職場復帰支援の手引きhttps://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf

この記事の執筆者
柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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