電車に乗れないのは病気?パニック障害や自律神経失調症との関係を解説

電車に乗れない病気と聞くとパニック障害を、思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

実は、電車に乗れない病気は、パニック障害の他にも存在します。

浅田先生
浅田先生

「電車が怖くて乗れない」という方は、まず、気軽に医師に相談してみましょう。

記事の最後では、電車を怖いと思ったとき使える対処法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

電車に乗れない・憂鬱だと感じる理由

電車に乗れない・憂鬱だと感じる理由

さまざまな理由が原因で「電車に乗るのが苦手」「憂鬱」だと感じる方は少なくありません

では、なぜ電車を苦手だと感じるのでしょうか?

「電車に乗れない」と感じる6つの理由を具体的に説明します。

密着するのが不快だから

電車内が混んでいると、時には密着してしまうほどの距離感になります。

家族や恋人など親しい人は、距離が近くても抵抗はありませんが、他人だと無意識のうちに距離を取りたくなりますよね。

人には、パーソナルスペースという自分の周りを取り囲む空間があり、他人が入り込むと不快に感じます。

パーソナルスペースが十分に取れない満員電車は、まさに不快そのものだといえるでしょう。

密閉空間で息苦しさを感じるから

電車内は換気がされているとはいえ、狭い空間にたくさんの人が乗り込んでくると、息苦しさや圧迫感を感じます

暑い日などは、外から車内に流れ込んでくる熱い空気に加え、体臭や汗、柔軟剤などの匂いが混ざり、気持ち悪さを感じるでしょう。

窓を開けたくても、「周りが気になって開けられない」という状況もストレスに感じる原因の1つです。

つり革を触りたくないから

「誰が触ったのかわからない物を触ること」に抵抗を感じる方も多いでしょう。

つり革を握ったときに「ぬるっとした」や「汚れていた」という経験をされた方もいるのではないでしょうか。

つり革をさわれない人=潔癖症だと思われがちですが、あながちそうともいえません。

新型コロナウイルスの流行で、つり革に抵抗を感じる方が増えたからです。

現在、つり革のほとんどは抗菌仕様になっているようですが、それでも触りたくない方が多いのも現状です。

立ちっぱなしがつらいから

「気分が悪くなっても座れない」というのも、電車を苦手に感じる原因の一つです。

電車が混んでいる時は、長時間の立ちっぱなしになることがあります。

長時間立っていると疲れを感じ、足腰も痛くなります。

体調が悪くなっても座れない環境は、精神的な不安を感じ、電車に乗るのが憂鬱だと感じてしまうでしょう。

乗客の目線が気になるから

「相手が自分のことを見ている」「何か思われている」と思い込み、電車が怖いと感じる方もいます。

電車に乗ると、周りに人がいるため視線を感じることがあります。

他の人と目が合うと「おかしいと思われているのではないか」「周りに迷惑をかけたのかもしれない」と考えてしまい、電車に乗れなくなってしまう方もいるのです。

予測できないトラブルへの不安があるから

「今すぐ降りたいのに降りられない環境」も恐怖を感じる原因の一つでしょう。

  • ダイヤの乱れ
  • 車内・外でのトラブルを見かけた
  • 急にお腹が痛くなった    

自分ではどうしようもできないことが電車内で起こると、電車に乗ることに不安を感じてしまいます。

電車に乗るのが怖いと感じる病気

電車に乗るのが怖いと感じる病気

「電車に乗れない」と感じる理由は、人それぞれです。

電車に乗れないことが引き金になり、日常生活に支障をきたすようになれば、病気として診断される場合もあります。

ご自身に当てはまる症状があれば、一度信頼できる医師に相談することをおすすめします。

パニック障害

電車に乗れない原因で一番知られている病気は、パニック障害ではないでしょうか。

「電車に乗ると、また、発作が起こってしまうのではないか」という不安から、電車を避けるようになり、ついには電車に乗れなくなってしまうのです。

パニック障害は、突然の動悸やめまい、息が苦しくなるなどのパニック発作にくわえ、激しい不安に襲われます。

その結果、次第に外出を控えるようになり、パニック障害から、うつ病を併発する方もいます

ときに、甲状腺機能亢進症やメニエール病、更年期障害は、パニック発作によく似た症状が現れる場合があるので、パニック障害との鑑別が必要です。

うつ病

うつ病が原因で、電車に乗れない方もいます。

電車に乗ると、緊張して異常に落ち着かなくなり、「何か悪いことが起こるかもしれない」と不安になってしまうのです。

うつ病の主な症状は「気分の落ち込みや罪悪感」「自分を否定する」などが挙げられますが、人によってうつ病の症状は異なります

うつ病にかかっている方が、パニック障害を併発するケースも報告されているので注意が必要です。

社交不安障害

社交不安障害は周りの視線が気になるため、電車に乗るのを怖いと感じる病気です。

「人がジロジロ見てくる」という恥ずかしさから、動悸や息切れなどの症状が現れます。

その結果「人の目が気になり、電車に乗るのが怖い」と感じるようになるのです。

社交不安障害は、放っておくとパニック障害や、うつ病を併発しやすいので注意しましょう。

広場恐怖症

広場恐怖症が原因で、駅やデパートなど、人が大勢集まる場所に行くと、不安を感じる病気です。

電車内は「すぐに逃げ出せない」「倒れても誰も助けてくれないかも」という場所のため、恐怖心が高ぶってしまうのです。

広場恐怖症はパニック障害の併発率が高い病気で、ときにパニック発作を起こすこともあるので注意が必要です。

自立神経失調症

自律神経失調症が原因で、長時間立ち続けると気分が悪くなり、電車に乗りたくないという方もいるでしょう。

自律神経失調症は、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、めまいや吐き気、動悸などの不快な症状がおきる病気です。

不規則な生活やストレスは、交感神経が優位になってしまい、情緒不安定やイライラ、不安といった症状も引き起こします

適応障害

仕事にストレスを感じている場合、通勤手段の電車に抵抗を感じる方がいます。

適応障害は、日常生活や環境の変化に対してうまく慣れることができず、不安、不眠、憂鬱などの不調がおきてしまう病気です。

適応障害はストレスの原因がはっきりしていることが多く、早い段階で原因を取り除くのが回復のカギになります。

起立性調節障害

起立性調節障害は中高生に多く、身体の成長に自律神経の発達が追いつかず、めまいや動悸などが起こる病気です。

電車で長時間座れずにいると、脳への血流が一時的に減るため、ふらつきや失神をおこし、倒れてしまうこともあります。

その結果「また倒れてしまったらどうしよう」と、不安になり電車に乗るのを避ける方もいるのです。

電車が怖いと思ったときの対処法

電車が怖いと思ったときの対処法

電車を克服する根本的な解決方法は、人によって大きく異なります。

電車に乗るストレスを軽くする、4つの対処法を紹介します。

こころちゃん
こころちゃん

今日から取り入れられるものもありますので、ぜひ参考にしてくださいね。

通勤手段や環境を変える

電車に乗るストレスを減らすために、思い切って通勤手段や、環境を変えてみるのも効果的です。

  • 移動手段を自転車や、タクシー、マイカーに変える
  • 職場からできるだけ近い場所に引っ越す
  • 1駅分歩いてみる

「少しでも電車から離れて過ごしたい」「つらくてどうしようもない」という方におすすめです。

時間差出勤

満員電車が怖いと感じる方は、1時間早い電車に乗るのもおすすめです。

また、フレックスタイム制を認めている会社であれば、活用してみるのもよいでしょう。

フレックスタイム制とは、「8時半から17時半まで」と会社が決めた労働時間ではなく、自分で出勤時間と退勤時間を決められる制度です。

朝の満員電車に乗らなくてもよいように、出勤時間の調整ができるので、気持ちにゆとりが生まれますよ。

特急は使わず各駅停車に乗る

密閉状態が苦手という方は、各駅停車の便を選びましょう

特急電車は各駅では停まらないため「本当に降りられなかったらどうしよう」と不安になる方もいます。

とくに特急の満員電車は、各駅停車に比べ密閉・密着状態が続くため、電車が苦手な方にとっては耐え難いものでしょう。

実際、特急は乗れないけど各駅停車になら乗れるという方もいるため、試してみるのもよいでしょう。

頓服薬をお守りとして持っておく

病院で「パニック障害」などと病名を診断されている場合は、頓服薬(抗不安薬)をお守り代わりに持っておきましょう。

持っていて気分が落ち着くものや、具合が悪くなったとき用のエチケット袋なども一緒に持っておくのもおすすめです。

お守りとして持ち歩くと、発作が出たときにすぐ使用できるため「何かあっても大丈夫」という安心感にもつながります。

頓服薬はお守りにはなりますが、副作用が現れる可能性もあるため、必ず医師の指示に従って、服用するようにしましょう。

まとめ

電車に乗れないと感じる病気とその理由

車を持たない方にとって、電車は移動手段として欠かせません。

しかし、電車に乗れない原因を放置していると、外出をためらうようになり、やがてはうつ病に進行する可能性があります。

「電車が怖い」「動悸がする」「息苦しい」などの症状を感じたら、一人で悩まず、早めに受診しましょう。

おおかみこころのクリニックでは、あなたの話をじっくり聞き、つらい悩みを解決する方法を一緒に考えます。どうぞお気軽にご相談ください。

この記事の執筆者
小久保有希
医療ライター。看護師経験15年。4年間精神科に勤務し、病棟・訪問看護に携わる。相手の気持ちに寄り添う記事が得意。

参考サイト

起立性調節障害 |一般社団法人 起立性調節障害改善協会

起立性調節障害でパニック障害を併発する可能性|治し方や主な症状を解説 – 一般社団法人 起立性調節障害改善協会 (odod.or.jp)

フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き |厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/000476042.pdf

適応障害 |eヘルスネット 厚生労働省

適応障害 | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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