「ガスの元栓を閉めたか記憶に自信がない」
「人にぶつかっていないか心配になる」
強迫性障害には、不安が大きくなってしまい何度も確認をしてしまうという傾向があります。
何度も確認をしているのに、記憶に自信がないと感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は強迫性障害の人が記憶に自信がない理由、対処法について解説していきます。
適切な対処法を知ることによって、確認するという強迫行為から解放されるでしょう。
強迫性障害で記憶に自信がない人は、ぜひ参考にしてみてください。
強迫性障害の人が記憶に自信がない理由
強迫性障害の人が記憶に自信がないのには、おもに2つの理由があります。
それぞれについてチェックしていきましょう。
確認する回数が多い
確認する回数が多くなるほど、記憶に自信がなくなってきます。
強迫性障害では、確認行為をすれば一時的に不安は下がりますが、また不安になって確認してしまうという悪循環を繰り返します。[1]
不安に支配されることで記憶が曖昧になり、確認できたか分からなくなってしまうのです。
たとえばガスの元栓を閉めたか何十回もしていると、「何回目の確認が合っていたか」と混乱してきてしまいます。
したがって確認する回数を減らしていくことが大切です。
記銘力が下がる
強迫性障害の人は、記銘力が下がるという傾向があります。
記銘力とは、新しい情報を覚え込む力です。
記憶の過程は「記銘・保持・再認」の3つの段階から成り立っています。
新しい情報を覚え込んで保ち、思い出すことで記憶を定着させます。[2]
強迫性障害の人は、幼少期の記憶や勉強した内容を思い出せるので、記憶力低下は起きていません。
「鍵を閉めたか」「人に危害を加えたか」など不安になりやすい状況で、記憶に自信がなくなるということが起こりやすいのです。
強迫性障害の人が記憶に自信がないときの対処法
自信に記憶がないときの対処法を5つ紹介します。
試しやすいものから実践してみてください。
それぞれ見ていきましょう。
確認する回数を減らす
何十回も確認行為をしていたら、確認する回数を減らしてみましょう。
確認行為が多くなると、不安になる頻度が上がって、記憶に自信がないことにつながります。
たとえば鍵を閉めたか10回確認していたら9回→8回と徐々に減らしてみてください。
最終的には、確認しなくても生活できるようになるといいでしょう。
曝露反応妨害法では、不安な状況にあえて自分をさらして、強迫行為をしないようにして治療をおこないます。
曝露反応妨害法について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
確認作業は丁寧にやる
確認するときは一つ一つの作業を丁寧にしてください。
具体的には以下のように工夫してみましょう。
- ○ 声に出す
○ ゆっくり行動する
確認作業を工夫することで、「確認できた」という自信をつけやすくなるでしょう。
ただし、確認作業でやってはいけないこともあります。
- ✖ じっと見る
✖ 記憶をたどる
✖ まわりに確認してもらう
凝視してしまうと、よく見えなくなって、余計に自信がなくなってしまいます。[3]
記憶をたどるのも、自分で記憶を書き換えてしまう場合もあるので避けましょう。
自分を信じる
不安になる気持ちを一旦置いといて、自分を信じてみてください。
鍵を閉めたかしっかり確認をしていれば、鍵を閉め忘れているケースは少ないでしょう。
また「誰かに危害を加えたかもしれない」という加害恐怖が起きたとしても、実際に誰かがケガをしていることはあまりありません。
もし危害を加えたとしたら、まわりにいた人たちが声をかけたり、助けたりなど何かしらの行動を起こすので気づけるはずです。
不安の強さは、時間が経つにつれて下がっていきます。[1]
一度不安はそのままにして、自分の行動を信じましょう。
過去を気にしない
過去のことを振り返らないようにしましょう。
本当は鍵を閉めているのに、「鍵を閉めていない」と過去の記憶を悪い方に書き換えてしまう場合もあります。
また、嫌な経験や思い出も気にしてしまうと、不安を大きくさせてしまいます。
過ぎたことは気にしないようにしてください。
周囲に協力してもらう
家族や友人など、身近な人に不安を伝えるようにしてください。
不安な気持ちを一人だけで抱えると、気持ちがしんどくなってしまいます。
「鍵を閉めたかどうか気になる」「誰かにぶつかっていないか不安だ」など、自分の中に起きている不安を吐き出してみましょう。
ただし、まわりの人に強迫行為を手助けさせる「巻き込み」はしないようにしてください。
たとえば、一緒に確認してもらうなどの行為も、巻き込みとなってしまいます。
余計に症状が悪化してしまうので、注意してください。[1]
強迫性障害で記憶に自信がない人が仕事をするポイント
強迫性障害の方は記憶に自信がない傾向があるので、仕事でも悩む場面があるかもしれません。
仕事をする際には、以下のポイントをおさえていきましょう。
✔ 書類のチェックは同僚にも見てもらう
✔ 取引先に行くときは同行してもらう
✔ 業務内容が決まった仕事をする
書類などを確認するとき「間違いがないか」「ミスをしていないか」という不安が大きく、繰り返し確認して時間がかかってしまうでしょう。
自分で一度チェックをしたら、上司や同僚に見てもらって時間をかけすぎないようにするといいです。
取引先との打ち合わせをする際には、新しく決定することもあります。
決定したことを共有できるように、誰かに同行してもらうのも検討してみてください。
また、毎日の業務内容が同じ仕事をすると、確認する項目が少ないので不安が起こりにくいでしょう。
強迫性障害でも症状が軽ければ、治療をしていくことで仕事を続けられます。
もし仕事に影響をしてしまう場合は、一度治療に専念することも検討してみてください。
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強迫性障害を克服したら記憶に自信がつくのか
強迫性障害を克服すると、「記憶に自信がつく」というよりも「記憶に自信がなくても気にしない」というふうに変わっていきます。
家の鍵を閉めたかを気にして、たとえ鍵が閉まってなかったとしても、命にかかわるケースは少ないはずです。
過去を気にしないようにすれば、記憶に自信がなくても普通に生活できるようになるでしょう。
考え出すと不安になる人もいるかもしれませんが、記憶をたどると「本当に大丈夫だろうか」と余計不安になってしまいます。
記憶に自信をつけなくても、記憶にこだわらないように気をつけるといいでしょう。
まとめ
今回は強迫性障害が記憶に自信がない理由、対処法について解説してきました。
記憶に自信がない理由には、何度も確認をする、記銘力が下がるという理由があります。
したがって確認回数を減らしたり、確認作業を丁寧におこないましょう。
仕事をするときには、自分だけでどうにかしようと思わず、上司や同僚にも協力してもらうようにしてください。
ただし私生活や仕事にも影響が出てしまう場合は、医療機関に相談してみましょう。
おおかみこころのクリニックでは24時間予約受付をしています。
一人だけで抱え込もうとせず、一緒に治療を進めて症状を改善していきましょう。
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参考文献
[1]強迫性障害(強迫症)の認知行動療法|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113840.pdf
[2]一流の記憶法:: あなたの頭が劇的に良くなり「天才への扉」がひらく
[3]こころのクスリBOOKS よくわかる強迫症