パニック障害とは、突然のめまいや動悸、息苦しさなどの症状とともに、強い不安や恐怖に襲われる病気です。
パニック障害の治し方は、主に薬物治療と精神療法の2つです。パニック障害が治るまでには時間がかかる場合が多いため、病院を頼り通院を続けることが大切です。
この記事では、パニック障害の主な治療法である薬物療法と精神療法のほかに、効果があるとされる3つの治し方も解説します。
パニック障害の治療を始めたものの「本当に効果的なの?」と不安な方や病気になる前の生活に戻りたいと考えている方は、ぜひ読んでみてください。
この記事がパニック障害への理解を深め、あなたの不安や心配を解消するきっかけになれば幸いです。
パニック障害と診断されて仕事を続けていけるか不安な方は、下記の記事も合わせてご覧ください。
パニック障害の治し方は主に「薬物療法」と「精神療法」
パニック障害の治し方は、主に薬物療法と精神療法の2つです。[1]
[2]パニック障害の症状があらわれる回数を減らすことや、症状を軽くすることが目的です。
ここでは、薬物療法と精神療法をはじめ、効果があるとされる「催眠療法」「音楽療法」「食事療法」の3つの治し方を解説します。
薬物療法
パニック障害の薬物療法で効果が期待できる薬は、主に以下の2種類です。
- 抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)
パニック障害の薬物療法は、抗うつ薬と抗不安薬の併用で治療を始めます。まず、抗うつ薬で使用するのは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)です。[2]
一般的に、抗うつ薬は効果があらわれるまで2~4週間ほどかかります。すぐに症状を軽くしたい方にとっては、この期間は長く感じるでしょう。
抗うつ薬の効果があらわれ始めると、抗不安薬を少しずつ減らします。。
抗不安薬を中止したあとも、パニック障害による不安が強いときに、頓服で使うこともあります。[2]
ただし、抗うつ薬や抗不安薬は副作用があらわれる恐れがあるため、医師に相談しながら治療を続けましょう。
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精神療法
パニック障害の精神療法では、主に認知行動療法をおこないます。認知行動療法は、以下の順での実施が望ましいとされています。
- パニック障害の心理教育
- 認知行動モデルの作成
- 安全行動と注意の検討
- 破局的な身体感覚イメージの再構成
- 注意トレーニング
- 行動実験
- 身体感覚イメージと結びつく記憶の書き直し
- 出来事の前後で繰り返しやることの検討
- 最悪な事態に対する他者の解釈の検討
- 残っている信念・想定の検討
- 再発予防
出典:パニック障害(パニック症)の 認知行動療法マニュアル(治療者用)|厚生労働省
認知行動療法は、まずはパニック障害を知ることから始めます。
というのも、パニック障害になった始めのころは、病気を受け入れられない、薬に頼りたくないなど考えることもあり、治療を進めにくい場合があるためです。
みんな最初は病気になったと受け入れたくない気持ちになりますよね💦
具体的には、以下のポイントの理解から始めます。[3]
- 一般人口の約1~3%がパニック障害になる
- 女性が男性のおよそ2倍多くパニック障害になる
- 青年期に突然、症状があらわれる
パニック障害の方は、出来事を重く、そして悪いほうに考える傾向にあるといわれています。認知行動療法を通して、この考え方を少しずつ改善していくのです。
ただし、認知行動療法が進む順番は、パニック障害の方の状況により変わります。医師や臨床心理士と相談しながら進めていきましょう。
催眠療法
催眠療法とは、心身医学の手法のひとつです。催眠を用いてストレスの改善を目的とする治療法です。
催眠療法のメカニズムは、科学的観点からはあまりわかっていません。[4]
ただし、ある研究によると、4ヶ月間にわたりほぼ毎日パニック発作を起こしていた方に催眠療法をおこなったところ、症状が改善したとの報告がされています。[5]
催眠療法を受けると、緊張や不安が和らぐ可能性があります。安心できるためパニック障害の症状が軽くなるでしょう。
音楽療法
音楽療法は、音楽の特性を活用するプログラムを通してリハビリテーションをおこなうことです。大きくわけて以下の2種類があります。
- 受動的音楽療法
- 能動的音楽療法
受動的音楽療法とは、音楽や演奏を聞くことが中心です。能動的音楽療法とは、自分の好きな歌を聞いたり、歌ったり、リズムに合わせて身体を動かすことです。
音楽療法は、いずれの療法も精神的な不安定さや不安を軽減したり、活動を促すなどの効果があるとされます。[6]
そのため、パニック障害の症状のひとつである不安を軽減することに期待できるでしょう。
始めやすいのでいいですね♪
食事療法
セロトニンを増やす働きがあるトリプトファンを摂取すると、パニック障害に効果的といった説があります。[7]
というのも、セロトニンの低下がパニック障害の要因のひとつと考えられているためです。[1]具体的には、赤身の魚やバナナ、牛乳などにトリプトファンが含まれます。
ほかにも、カルピスやココアがパニック障害に効果的とされることもありますが、明らかとなっていません。
下記の記事では、トリプトファンが豊富に含まれている食べ物ランキングも解説されています。気になる方はご覧ください。
パニック障害を一瞬で治す方法はないから病院の受診が必要
パニック障害の方の8~9割は、治るといわれています。残りの1~2割の方は、治らないものの、症状が軽くなる可能性があります。[8]
ただし、パニック障害の方の症状によっては、治るまでに数年間かかったり再発したりするかもしれません。さらに、パニック障害を自力で治すことは難しいでしょう。
パニック障害を一瞬で治す方法はないといえます。そのため、病院に通い、薬物治療や精神療法を続けることが大切です。
安心しできる環境で治療をしていくことが大切ですね!
パニック障害を治すために日常生活で心掛けること
パニック障害を治すためには、日常生活を見直すことも重要です。以下の3つに気をつけましょう。
- ストレスを溜めない生活を送る
- 規則正しい生活を送る
- カフェインやアルコールを避ける
ストレスがパニック障害の症状を悪化させる恐れがあります。適度な運動と十分な睡眠で規則正しい生活を送ることが大切です。
具体的には、運動は1日60分以上で息が弾み汗をかく程度、睡眠は6時間以上を目安としましょう。[9][10]
ただし、この目安は一般の方に向けたものであるため、あくまでも参考として取り入れてください。
パニック障害の治療は、長期間かかることがあります。ひとりで病気と向き合うには長すぎるため、可能であれば家族に協力してもらい、一緒に治療を進めましょう。
症状や生活背景など、さまざまなことがひとり一人違うので、参考として捉えましょう。
パニック障害は自力で治すのは難しいから心療内科や精神科を頼ろう|まとめ
パニック障害は自力で治すのは難しい病気です。
治療を受け始めたばかりの方は、今の状況に悩み、今後どのようになるのかわからず不安を感じているでしょう。
ただし、薬物療法や精神行動療法を受けることで8〜9割は治り、残りの1~2割の方も症状が軽くなる可能性があります。そのため、心療内科や精神科などの医療機関を頼り、根気強く通院を続けましょう。
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参考文献
[1]セルフメンタルヘルス|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000881325.pdf
[2]パニック障害の治療ガイドライン|厚生労働省
http://hikumano.umin.ac.jp/PD_guideline.pdf
[3]パニック障害(パニック症)の 認知行動療法マニュアル(治療者用)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113842.pdf
[4]催眠療法|MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/ホーム/26-その他の話題/統合、補完、代替医療/催眠療法
[5]パニック障害を催眠術で治療する|デビッド・B・リードhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28891770/
[6]音楽療法|公益財団法人 長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/music.html
[7]セロトニン|e-ヘルスネット
[8]京都府精神保健福祉総合センター 心の健康のためのサービスガイド|京都府
https://www.pref.kyoto.jp/health/health/health06_f.html
[9]健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023(案)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001171393.pdf
[10]健康づくりのための睡眠ガイド 2023(案)|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf
- この記事の編集者
- 西川正太
看護師、保健師、保育士。 2009年大学を卒業後、大学病院や総合病院で勤務経験あり。現在はフリーライターとして医療を中心に執筆中。