動悸や息切れなどをはじめ、強い不安や恐怖に突然襲われるパニック障害。パニック障害の主な治療法は、薬物療法と精神療法です。
ただし、薬物療法では、期待通りの効果がなかったり、副作用があらわれたりなど、薬を飲むことに悩みや不安を感じる場合があります。ほかにも、薬を飲みたくないと考える方がいるかもしれません。
この記事では、パニック障害の主な治療薬や薬を飲みたくないときの対処法を解説します。パニック障害の治療を続けているものの「副作用がきつくて薬を止めたい」と強く不安を感じている方は、ぜひ読んでみてください。
パニック障害の薬に関するあなたの不安や悩みを解消するきっかけになれば幸いです。
この記事の内容
パニック障害の治療薬:抗不安薬と抗うつ薬(SSRI)
パニック障害で使われるのは、主に2つの薬です。[1]
- 抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)
パニック障害の薬物療法は、抗うつ薬と抗不安薬を組み合わせて治療します。[1]
というのも、抗うつ薬と抗不安薬は、それぞれ効果があらわれるタイミングが異なるためです。
実際に、抗うつ薬は効果があらわれるまで2~4週間ほどかかります。薬物療法では、抗うつ薬の効果があらわれてから、抗不安薬を少しずつ減らすのです。[1]
ただし、パニック障害の症状によって、効果があらわれる期間や薬の減量をはじめる時期は異なります。さらに、治療中に薬の副作用があらわれるかもしれません。
そのため、定期的に病院に通院し、主治医に相談しながら治療することが大切です。
「相談してもいいのかな?」と悩むことでも、気軽に相談して大丈夫ですよ
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抗うつ薬の種類と副作用
抗うつ薬は、不安や気分の落ち込みなどを軽くする効果が期待できます。[1]
ここでは、日本で販売されている4種類の抗うつ薬と副作用を解説します。「薬の副作用かもしれない」と感じた際は、すぐに主治医に相談しましょう。
ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン)
ジェイゾロフトは、SSRIに分類される抗うつ薬です
ジェイゾロフトの主な作用は、セロトニンの働きを高めることです。[2]セロトニンとは、脳内の神経伝達物質のひとつで、こころを安定させる働きがあります。[3]
主な副作用は、以下のとおりです。[2]
- 悪心・嘔吐
- 傾眠
- 口内の乾燥
- 頭痛
これらの症状があらわれたら、主治医に相談しましょう。ジェイゾロフトは、1日1回の服用で済むため、飲み忘れる心配や飲むわずらわしさを感じにくいといえます。
パキシル(一般名:パロキセチン)
パキシルは、SSRIに分類される抗うつ薬のひとつです。[4]
不安を和らげる効果があるため、パニック障害のほかに、強迫性障害や外傷後ストレス障害などの場合でも使われます。主な副作用は以下の3つです。[4]
- 傾眠
- めまい
- 嘔気
パキシルは「5㎎」「10㎎」「20㎎」と細かくわけられているのが特徴です。さらに、徐放錠といってゆっくり溶ける薬もあります。
薬を調整すると副作用の症状が落ち着く可能性があります。まずは、主治医に相談しましょう。
気になることがあったら先生に相談してみましょう
レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)
SSRIとして作用する抗うつ薬であるレクサプロ。[5]
レクサプロは半減期が長い薬です。つまり、薬の効果が続きやすいため、減量しやすいといわれています。以下の3つがあらわれやすい副作用です。[5]
- 傾眠
- 悪心
- 倦怠感
ほかにも、QT延長といって心臓に影響する可能性があるため、心疾患の方への投与は控えます。[5]副作用の症状があらわれた際には、主治医への相談が大切です。
ルボックス/デプロメール(一般名:フルボキサミン)
ルボックスは、SSRIに分類され、セロトニンの働きを高める効果が期待できる薬です。[6]主な副作用は以下の4つです。
- 眠気
- 悪心・嘔気
- 口渇
- 便秘
ほかのSSRIと同じように、消化器症状の副作用が多くみられます。さらに、1日2回にわけて服用しなければなりません。
抗うつ薬について詳しく知りたい方は、下記の記事も見てくださいね。
抗不安薬の種類と副作用
ここでは、パニック障害でよく使う4つの抗不安薬を紹介します。
定期的な服用を止めたあとも、抗不安薬はパニック発作に対する頓服薬として使われます。[1]
抗不安薬には、副作用がみられる場合があるため、症状に悩む際は主治医に相談しましょう。
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ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
ワイパックスは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。不安や緊張、気分の落ち込みなどの改善に効果が期待できます。[7]
ほかにも、精神的な症状からくる肩こりや頭痛などの身体的な症状にも使われます。ワイパックスの主な副作用は、以下の3つです。[7]
- 眠気
- ふらつき
- めまい
ワイパックスは、依存性がみられる場合があるため、用量や使用期間に注意しましょう。
ソラナックス(一般名:アルプラゾラム)
ソラナックスは、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬のひとつです。以下の2つが主な副作用です。[8]
- 眠気
- めまい
依存性のほかに、じん麻疹が出たり、顔が腫れたりなどのアナフィラキシー症状があらわれる恐れがあります。[8]症状が軽いうちに受診して、薬の中止や変更を相談してください。
デパス(一般名:エチゾラム)
デパスは、抗不安薬でベンゾジアゼピン系に分類されます。[9]
不安を和らげるだけではなく、催眠作用も期待できる薬です。パニック障害のほかに、神経症やうつ病、統合失調症などにも使われます。主な副作用は、以下のとおりです。[9]
- 眠気
- ふらつき
これらの副作用を認めた際には、主治医に相談しましょう。
副作用が不安なときは、ひとりで抱え込まないで相談しましょう
レキソタン(一般名:ブロマゼパム)
レキソタンは、抗不安薬のひとつでベンゾジアゼピン系にわけられます。[10]
手術前の不安な気持ちを軽くし、麻酔がスムーズに効くようにする目的でも使います。レキソタンの副作用は、以下の3つです。[10]
- 眠気
- ふらつき
- 疲労感
とくに、眠気はレキソタンを使った方の20.6%にみられます。[10]そのため、車の運転や危険な作業は避けたほうがいいでしょう。
パニック障害の薬を服用する際の3つの注意点
パニック障害の薬を服用する際の注意点には、以下の3つがあります。
3つの注意点を守らなければ、パニック障害の症状が悪化する恐れがあります。
1.副作用があらわれたときは主治医に相談する
抗うつ薬や抗不安薬の副作用はさまざまです。
眠気やふらつきをはじめ、悪心や嘔気などの消化器症状がよくあらわれます。実際に、副作用に悩んでいる方もいるでしょう。
副作用により抗うつ薬を使えない場合は、抗不安薬のみで治療をおこなう場合があります。[1]つまり、患者さんの状況に合わせて、薬を調整できるかもしれないのです。
そのため、副作用の症状に悩む際には、まず主治医に相談してみましょう。
2.薬の1回量や服用の回数を守る
薬の1回量や回数など主治医の指示を守り、薬の服用を継続することが大切です。
主治医の指示を守らないと、パニック障害の症状が悪化したり、副作用があらわれる恐れがあるためです。
たとえば、飲み忘れて2日分の薬をまとめて飲んだり、効果がないと感じて薬を増やしたりしないでください。
主治医の指示を守って治療を続けることが、パニック障害を改善するためには重要です。
3.自己判断で中止する危険性を把握する
「調子が良いからもう大丈夫」と薬の服用を自己判断で中止することは危険です。
というのも、離脱症状といって薬の量を減らしたり、服用を中止したりする際に、身体に不調をきたす恐れがあるためです。[8]
たとえば、ソラナックスを自己判断で中止すると、幻覚や妄想をはじめ、不眠や不安などがあらわれます。[8]このとき、病気が悪化したと勘違いしたり、薬に依存したと感じたりするケースが少なくありません。
そのため、薬を自己判断で中止しないでください。主治医に相談しながら、薬を調整しましょう。
心にも身体にも症状が現れることがあるので、自己断薬はやめましょう
Q1:パニック障害の薬はずっと飲む必要があるのか
パニック障害の薬を飲み始めた方の中には「ずっと薬を飲む必要があるのか」と不安に感じている方がいるかもしれません。
パニック障害の薬は、飲み続ける必要はない可能性があります。
その理由は、症状の改善にともない、少しずつ薬を減らし中止を目指していくためです。[1]
抗うつ薬は、効果がみられたら、その処方を 6 ヶ月〜1 年間は続けます。その後、症状の再発がなければ、6 ヶ月〜1 年間かけて少しずつ減らしやがて中止する方針です。
抗不安薬は、抗うつ薬の効果が見られたら徐々に減らします。抗うつ薬の効果があらわれた時期にあわせて、抗不安薬を中止します。
ただし、抗不安薬は定期的な服用を中止したあとも、パニック発作がみられたときの頓用薬として使われるのです。
抗うつ薬と抗不安薬は、パニック障害の方の症状に合わせて中止する可能性があるといえます。
パニック障害を治し方が気になる方は、下記の記事もご覧ください。
Q2:パニック障害の薬は市販薬で代用できないのか
病院で処方される抗うつ薬や抗不安薬など、パニック障害の薬は市販で購入できないでしょう。
とはいえ、不安な気持ちに効果があるとされる市販薬はあります。
ただし、市販薬がパニック障害の方に合っているのかわかりません。
パニック障害の症状が強くなっており薬を追加したい場合や、副作用があり別の薬に変更したいと考えている場合は、まずは主治医に相談しましょう。
自己判断せずに主治医の先生に相談してくださいね
パニック障害で薬を飲みたくないときは医師に相談しよう
パニック障害で使われるのは、主に抗うつ薬と抗不安薬の2種類です。主治医の指示に従い正しい用量と用法で薬を飲み続けることが、パニック障害の症状の改善には大切です。
とはいえ、パニック障害の薬が期待通りの効果でなかったり、副作用があらわれたりなどする場合があります。薬を飲むことに悩みや不安を感じるかもしれません。
病院を受診し相談すると、薬を変更したり減量したりなど調整できる可能性があります。
そのため、パニック障害の方で薬を飲みたくないと感じた際は、精神科や心療内科の医師に相談しましょう。
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参考サイト・文献
[1]パニック治療のガイドライン
http://hikumano.umin.ac.jp/PD_guideline.pdf
[2]医療用医薬品 : ジェイゾロフト
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00063132
[3]セロトニン|e-ヘルスネット厚生労働省
[4]医療用医薬品 : パキシル
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00058794
[5]医療用医薬品:レクサプロ
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067824
[6]医療用医薬品:デプロメール
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054590
[7]医療用医薬品:ワイパックス
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00004628
[8]医療用医薬品:ソラナックス
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00002845
[9]医療用医薬品:デパス
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060755
[10]医療用医薬品:レキソタン
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00053019#par-4
- この記事の編集者
- 西川正太
看護師、保健師、保育士。 2009年大学を卒業後、大学病院や総合病院で勤務経験あり。現在はフリーライターとして医療を中心に執筆中。