「双極性障害の寿命は短い?」
「双極性障害を発症したら長生きできない?」
双極性障害では、自殺をするリスクが高く、肥満やパーキンソン病になりやすいことから寿命が短いと考えられています。
双極性障害は再発を繰り返しやすい病気ですが、治療を続ければ自殺や他の病気を発症するリスクを減らせるでしょう。
この記事では、双極性障害の寿命が短いと言われる理由、双極性障害の治療方法を紹介します。
長く生きて人生を楽しみたいと考える双極性障害の人は、症状を治すための参考にしてみてください。
双極性障害の寿命が短いと言われる理由
双極性障害の寿命が短いと言われる理由には、以下の3つが考えられます。
それぞれ見ていきましょう。
自殺するリスクがある
双極性障害の寿命が短くなる要因に、自殺するリスクが高いことがあります。
双極性障害の自殺リスクは、発症していない人の20~30倍の自殺率があると示されています。うつ状態の際には、自殺を考えたり、行動しようとしたりする危険性が高まるため、気をつけなければなりません。[1]
自殺する人には、言葉や行動などに予兆が見られることがあります。具体的には、以下のようなものがあります。[2]
- 自殺についてはっきりと話す
- 態度が投げやりになる
- 激しい喧嘩をする
- 突然家出をする
- 遺書を用意して自殺の計画を立てる
もし思いあたるものがあれば、一人で悩まずに周囲に助けを求めてくださいね。
おおかみこころのクリニックは「ちょっと気になることがあるな…」と思うことを相談しても大丈夫な病院です。お気軽にご相談ください。
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パーキンソン病を発症しやすい
双極性障害を発症したことがある人は、発症してない人と比べて約3倍パーキンソン病になりやすいと示されています。[1]
パーキンソン病とは、じっとしているときに震えが起きたり、筋肉がこわばったり、バランスを崩しやすくなったりなどの症状が出る病気です。また、パーキンソン病患者の約3分の1は、認知症を発症することもあります。[3]
双極性障害とパーキンソン病をどちらも発症している人は、パーキンソン病の治療薬にも注意しなければなりません。パーキンソン病の治療薬である「ドーパミンアゴニスト」「L-ドーパ」は、双極性障害の症状に影響を与える可能性があるとされているのです。[1]
肥満になりやすい
双極性障害を発症する人は、肥満になりやすいです。
双極性障害の人の肥満の有病率は21~49%で、一般人口に比べると1~2倍なりやすく、メタボリックシンドロームの有病率は30~49%で、一般人口に比べると1.5~2倍なりやすいと示されています。[4]
双極性障害の治療で使われる抗精神病薬は、メタボリックシンドロームの合併率が27.8%あります。さらに、気分安定薬には体重を増加させる副作用があるため、治療中は太りすぎないように気をつけなければならないのです。[4]なるべくお酒や間食を控え、運動をして適正体重を目指してみてください。
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双極性障害を発症する原因
双極性障害を発症する特定の原因は、まだ解明されていません。「遺伝」「成育歴」「環境」「性格」などが絡み合って発症し、中でも最も関係しているのは遺伝と考えられています。両親のうち片方が双極性障害であると、子どもが双極性障害を発症する確率は10%台とされているのです。[5]
日本における双極性障害の有病率は、重症・軽症の双極性障害を合わせると0.4~0.7%です。[6]双極性障害の発症には、ストレスがきっかけになることもあります。ストレスは悪い出来事だけでなく「結婚」「就職」「出産」などの嬉しい出来事にも起こります。双極性障害は再発を繰り返すと、きっかけがなくても再発するようになるため、注意しましょう。[7]
双極性障害は一生治らないのか?
双極性障害は再発を繰り返しやすい病気のため、治療を続けることが大切です。
躁状態は突然始まって、治療を受けないと2~3ヶ月ほど続きます。軽躁状態やうつ状態は、治療をしないと半年以上続くこともあるのです。年に4回以上躁状態とうつ状態を繰り返す「急速交代型双極性障害」になることもあります。
躁状態が強く出やすい「双極Ⅰ型障害」の人は約3分の1、躁状態が軽い「双極Ⅱ型障害」の人は約半分の期間を、うつ状態で過ごすとされているのです。[7]
最初の躁状態・うつ状態から次に双極性障害を再発するまでは、5年ほど間があきます。しかし放置するとだんだんその間隔が短くなり、年に何回も再発するようになってしまいます。
うつ状態がひどくなると、自殺を考える恐れもあるため、気をつけなければなりません。医療機関で適切な治療を受けることが、双極性障害の回復には重要です。[7]
双極性障害の躁状態とうつ状態の周期については、下記の記事をご覧ください。
双極性障害の治療方法
双極性障害の症状を改善するには、治療を受けることが有効です。治療方法には、以下の2つがあります。
それぞれ見ていきましょう。
薬物療法
薬物療法では、おもに「気分安定薬」「非定型抗精神病薬」が処方されます。
気分安定薬には躁やうつの症状を改善するだけでなく、再発予防の効果も期待されています。「炭酸リチウム」「バルプロ酸」「カルバマゼピン」「ラモトリギン」などの種類があります。
最もスタンダードなのは炭酸リチウムで、脳の神経細胞の興奮を鎮める抗けいれん作用があります。炭酸リチウムは、服用開始から効果が出るまでに1週間~10日かかります。
躁状態とうつ状態を改善し、衝動性を減らして自殺を防ぐ効果もあるとされているのです。ただし副作用として、「手の震え」「下痢」「食欲不振」「口の渇き」「多尿」などが現れることもあるため、注意しましょう。[5]
非定型抗精神病薬には「オランザピン」「ルラシドン塩酸塩」「アリピプラゾール」などがあります。[5]双極性障害は症状が多く、薬の使い分けが難しいため、医療機関としっかり相談をして治療を受けましょう。処方された量と回数を守って服用してください。
双極性障害で薬を飲まないとどうなるのかについては、下記の記事をご覧ください。
精神療法
精神療法には、以下のような方法があります。
- 心理教育
- 認知行動療法
- 対人関係・社会リズム療法
心理教育では、双極性障害に関する知識を深め、再発のリスクがあることを理解します。薬を服用する重要性や副作用を学び、正しく服用する習慣が身につくように指導するのです。[5]
認知行動療法では、ものごとの考え方を直してストレスを減らす精神療法で、双極性障害に対しても有効性が認められています。ストレスは双極性障害の悪化・再発リスクを高める要因のひとつです。自分の認知・行動パターンを改善することで、自分の感情を制御できるようにするのです。[5]
対人関係・社会リズム療法とは、周囲と関係性を改善する「対人関係療法」と自分の社会リズムをつかむ「社会リズム療法」を組み合わせたものです。薬物療法と併用することで、躁状態やうつ状態の予防効果、うつ状態の治療効果があるとわかっています。[5][7]
まとめ
双極性障害が寿命が短いと言われる理由には、自殺するリスクがあること、肥満やパーキンソン病になりやすいことが考えられます。
双極性障害の治療は、薬物療法と精神療法が軸となります。症状が回復したと思っても、実際には躁状態で気分が良くなっているだけということもあるため、治療を途中でやめずに続けることが有効です。
おおかみこころのクリニックでは、24時間来院の予約受付をしています。カウンセラーもいますので、悩みや気になることがあればいつでも相談にお越しください。
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【参考文献】
[1]日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023|日本うつ病学会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_sokyoku2023.pdf
[2]No.3 自殺の予兆への介入:専門家向けお役立ちトピックス~メンタルヘルス不調関連~|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-pro-topics/mh-pro-topics003/
[3]パーキンソン病-MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/09-脳、脊髄、末梢神経の病気/運動障害/パーキンソン病
[4]メタボ脱出大作戦 双極性障害|大塚製薬
https://www.smilenavigator.jp/soukyoku/life/metabo/06.html
[5]うつ・適応障害・双極性障害 心の名医7人が教える最高の治し方大全 (健康実用) ,三村 將,奥平智之,野村総一郎,貝谷久宣,中村敬,文響社
https://amzn.asia/d/2WoxOEM
[6]双極性障害(躁うつ病)|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=RM3UirqngPV6bFW0
[7]双極性障害(躁うつ病)とつきあうために|日本うつ病学会 双極性障害委員会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/gakkai/shiryo/data/bd_kaisetsu_ver10-20210324.pdf