双極性障害では躁状態とうつ状態をくり返すため、今までできていたことが負担になり、仕事を続けることが難しくなります。[1]
躁状態のときは2~3時間しか寝ていなくてもエネルギッシュに働けるのですが、うつ状態では、以下のような理由で仕事を休みがちになるでしょう。
- 朝起きれない
- 職場までの移動がきつい
- 仕事に行っても集中できない
- 普段どおりのタスクも負担に感じる
病気とはいえ、仕事を休むと職場に迷惑がかかります。双極性障害で仕事を休みがちになっているなら、退職やクビを避けるためにさまざまな工夫が必要です。
この記事では、双極性障害で仕事を休みがちになるとどうなるのか、職場にかける迷惑を最小限にする方法やムリせず仕事を続けるための工夫について解説します。
双極性障害と向き合いながら、職場で良好な関係を築くヒントを見つけていきましょう。
この記事の内容
双極性障害で休みがちになると退職もありえる
精神疾患が理由だとしても、仕事を急に休まれたり、躁状態で職場の雰囲気をかき乱したりしていると、同僚や上司に迷惑がかかります。[2]
職場の人に煙たがられたり距離を置かれたりすることもあるでしょう。その雰囲気の中、出勤するのが億劫になり、休みがちになって最終的に退職に至ることも少なくありません。
そのためには、次に紹介する迷惑を最小限にする方法を実践してみてください。
双極性障害の同僚が職場で迷惑と感じる理由については、下記の記事で詳しく解説しています。
同僚がどのようなことに迷惑だと感じているのかを知ることで、さらに対策しやすくなるでしょう。
あわせてご覧ください。
双極性障害で仕事を休む迷惑を最小限にする方法
仕事を頻繁に休むと、同僚や上司に負担がかかることは避けられません。
仕事を休むときに周囲への負担を最小限にするための配慮は以下のとおりです。
それぞれ詳しく解説します。
休む理由を伝えるときの工夫
仕事を休むときは、正直に簡潔に理由を伝えることが大切です。
例として以下のようなことが挙げられます。
- 最近うつ気味なのでお休みをいただけませんでしょうか?
- 今お休みをいただけますと、長引かずに復帰できそうです
- ○○の仕事が終わったら、体調がすぐれないのでお休みをいただきたいです
「最近、夜も眠れていなくて」「職場にくるとめまいがしてムリして頑張っているのですが」などと細かく伝える必要はありません。
症状の悪化を防ぐために休むことを理解してもらえると、スムーズに休みへの対応をしてもらえるでしょう。
突然の休みへの事前準備
突発的な休みに備えた事前準備は大切です。
同僚や上司は自分の仕事に加えてあなたの仕事を負担することになります。もし、あなたの仕事の詳細がまったく分からない状況だと、職場は混乱するでしょう。
たとえば、業務内容をリスト化したりこまめに情報を共有したりすることで、突然の休みにも対応しやすくなります。
あなたの仕事を代わりに行う、同僚や上司に迷惑をかけない配慮や気遣いが大切です。
この事前準備があることで周囲の負担が軽くなり、あなた自身も次に出社するとき少し気持ちが軽くなるでしょう。
職場の人たちの負担を減らすためにも大切です
職場での信頼関係づくり
信頼関係は日常のコミュニケーションからできています。
たとえば、いつもムスッと怒っている人に「自分は病気なんだ!休ませてくれ!」と言われても、誰もよい気はしません。日頃からよい関係が築けるように心がけることが大切です。
普段から職場でのあなたの役割をこなし誠意を持って対応することで、職場での信頼を得やすくなります。
誠意を持って対応するとは、先ほど紹介した休む理由を伝えるときの工夫や事前準備も含まれます。参考にして、信頼関係を築いていきましょう。
双極性障害になってもムリせず仕事を続けるための工夫
双極性障害になってもムリせず仕事を続けるためには、以下の工夫が必要です。
それぞれ詳しく解説します。
職場に相談するときのポイント
職場の上司や同僚に、自分の症状や状況を適切に伝えることが大切です。
具体的には以下の流れで相談しましょう。
- 落ち着いて話せる場所で相談する
- 症状や双極性障害について伝える
- 業務上困っていることを伝える
- どのようなサポートが必要か明確に伝える
具体的なサポートをお願いするときには、どのような対応が必要か事前にまとめておきましょう。明確に伝えることで、スムーズに協力してもらいやすくなります。
仕事を休むタイミング
自身の体調を気にかけ、頭痛、めまい、吐き気など「そろそろうつ状態になるかも…」というサインに気づくことが重要です。休むべきタイミングを見極められると、事前準備を行いやすくなります。
たとえば、いつ体調の変化が起きるのかを客観的に考えるために、日記や携帯にその日の体調をメモするなど、あなたにあった対策をとってください。
症状が悪化する前に休むことで体調の回復も早くなり、長期的な休職を避けることにもつながります。
周囲に理解してもらうためのコミュニケーション法
双極性障害について正しく理解してもらうためには、職場の人との良好なコミュニケーションは不可欠です。
以下のようなことを参考にしてください。[3]
- 笑顔で過ごす
- 相手を尊重する
- 相手を気遣い思いやる
- 何気ない会話を大切にする
日ごろの信頼関係ができていると、体調が悪くて休むときにも「大丈夫?」「ゆっくり休んでね」と優しい言葉をかけてもらえるでしょう。
日ごろの信頼関係がポイントです
双極性障害で仕事を休みがちな自分を責めない心のケア
仕事を休むことに対して後ろめたさを感じることもありますが、自分を責めないことが大切です。
必要な休息を取ることは、健康的に働くためには欠かせません。自分の心のケアもそのひとつです。[4]
仕事を休みがちになるほどツライ状況だと思いますが、今の仕事を続けていく必要があるならば、自分自身で心をケアしつつ職場で工夫して生活していく必要があります。
たとえば、休みの日は1日のんびり過ごしたり、癒される香りのものを身近においたりなどリラックスできる時間を作ってみましょう。
心が折れそうになったら、おおかみこころのクリニックへ気軽に話しに来てくださいね。
あなたの心の疲れを癒すお手伝いをさせてください。
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まとめ
双極性障害になると仕事を休みがちになります。
自分の体調に左右され余裕がなくなりますが、ムリなく仕事を続けていくには職場への配慮がとても大切です。
- 休む理由を伝えるときには、正直に簡潔に伝える
- 職場の人への気遣いや思いやりを大切にし良好な関係を築く
- 突然の休みに備えて日々の業務内容をまとめておく、同僚とこまめに情報交換をしておくなど事前準備をする
このように配慮することで、双極性障害で仕事を休みがちになっても「退職」の可能性は低くなるでしょう。
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【参考文献】
[1]双極性障害(躁うつ病)とつきあうために|日本うつ病学会 双極性障害委員会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/gakkai/shiryo/data/bd_kaisetsu_20180727.pdf
[2]朝田 隆/中島 直/堀田英樹.精神疾患の理解と精神科作業療法.中央法規出版株式会社,2006年
[3]コミュニケーション・スキルの重要性|大坊 郁夫
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2006/01/pdf/013-022.pdf?wptouch_preview_theme=enabled
[4]こころもメンテしよう 若者のためのメンタルヘルスブック|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/docs/book.pdf
- この記事の執筆者
- 柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。