双極性障害で悩んでいる方にとって「完治できるだろうか?」という不安はとても大きいものです。
双極性障害はテンションが飛びぬけて高い躁状態と、気分が落ち込み何もする気にならないうつ状態をくり返します。約100人に1人の割合で発症するため、決してめずらしい病気ではありません。
双極性障害だけでなく精神疾患の治療は、完治ではなく寛解(症状が安定すること)を目指します。
主治医としっかり話をしていくことが大切なため、信頼関係が治療効果にも関係するのです。
この記事では、双極性障害が完治した人はいるのか、完治を目指す治療法について解説します。後半には、いつまで薬を飲み続けるのか、再発のサインなどのよくある質問にもお答えします。
穏やかに過ごすためのヒントとして参考にしてくださいね。
双極性障害が完治した人
双極性障害は、比較的治療法や対処法が確立されているため、適切な服薬ができていると以前と変わらない生活を送ることは可能です。[1]
双極性障害の治療は「完治」ではなく、症状が安定する「寛解」という状態を目指します。
寛解とは、障害の特性を考えたうえでの回復度合いのことです。
症状や兆候が完全になくなった場合は完全寛解と呼ばれ、症状が少し残っていても安定した生活がある程度送れている場合は不完全寛解と呼ばれます。[2]
寛解した方は、適切な治療とセルフケアを大切にしています。
寛解したからと自己判断で通院や服薬をやめると、また症状が悪化する可能性が高いです。
記事の後半では、いつまで薬を飲むのか、再発のリスクはどのくらいあるのかなどの疑問にお答えしています。すぐに知りたい方はこちらからご覧ください。
まずは、双極性障害の躁状態とうつ状態の気分の周期を長くすることが大切です。
下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
双極性障害の寛解までの期間
双極性障害が寛解するまでの期間は、一人ひとり症状や生活環境が異なるため「5か月で寛解します」や「3回気分の周期をくり返すと寛解です」のような明確な基準はありません。
ただし、症状が悪化する要因を見つけることが大切です。
たとえば、仕事で大きなプロジェクトを任されたり、子どもの行事が立て続けにあったりするなど、どのような出来事で症状が悪化するのかは人によって違います。
あなた自身の症状が悪化する引き金となる出来事を知ることで、事前に対策できたり早く治療を始めたりできるのです。
自分自身の体調の変化を正しく理解するためには、周囲の協力や日々の体調を日記につけるなどの対策が有効です。
まずは、自分自身と向き合うことから始めてみてくださいね!
双極性障害が完治した人の治療法
双極性障害は、比較的治療法が確立した精神疾患です。
病院で行う治療とともに、自宅でできるセルフケアも大切になります。
双極性障害は、ストレスをきっかけに悪化する可能性が高くなるため、ストレス発散やストレスを溜めない日常生活を心がけましょう。
病院での治療法
双極性障害の病院でできる治療法は、おもに薬物療法と心理療法です。[3]
- 薬物療法:気分安定薬(炭酸リチウム・バルプロ酸ナトリウムなど)や抗精神病薬(クエチアピン・アリピプラゾールなど)そのときの症状に合わせて処方される
- 心理療法:心理教育や認知行動療法など
- 電気けいれん療法:脳を電気刺激することで症状の改善をはかる
双極性障害の薬は、躁状態とうつ状態のとき、症状が安定しているときなどで処方が変わります。主治医とよく相談しながら、今の症状にあった服薬が大切です。
また、薬物療法と心理療法はともに行われます。心理療法は、自分の病気を知り受け入れることで病気のコントロールを手助けする役割があります。[4]
心理療法を行うことで、再発にも気づきやすくなり早期治療を始められるのです。
自宅でできるセルフケア
双極性障害はストレスが溜まると悪化する傾向があります。
ストレスを溜めないためにも日頃のセルフケアが大切です。
例として以下のようなことが挙げられます。[5]
- 今の気持ちを書き出す
- 失敗したら笑ってみる
- 1日20分程度の運動をする
- 音楽を聴いたり歌を歌ったりする
習慣的に心と身体をケアすることで、ストレスを溜め込まないクセをつけましょう。
あなたができそうと思うものから実践してください。大切なのはムリをしないこと。今のつらさを吐き出すこともセルフケアのひとつです。
その日の体調に合わせて、まずはやってみてくださいね。
【Q&A】双極性障害が寛解したあとの疑問
双極性障害に限らず、精神疾患は完治ではなく寛解を目指します。
寛解したあとは、どのような生活を送ることになるのかについての疑問を解決しましょう。
Q1:薬は飲み続けるのか?
自己判断で服薬をやめるのはキケンです。
「最近調子がよいから飲まなくても変わらないだろう」「2か月に1回だった通院が半年に1回になってきたし、もう回復したのかな」などと自己判断で服薬をやめると、せっかくよくなっていた症状が悪化する原因になりかねません。
薬を飲みたくない場合は、まず主治医に「そろそろ良くなってきた気がするんですが、薬はいつまで飲み続けないといけませんか」と相談してみましょう。
今の症状やあなたの生活環境の状態などを考慮して、薬の量を調整してくれるかもしれません。
双極性障害で薬を飲むのをやめるとどうなるのかについては、下記の記事をご覧ください。
Q2:再発のリスクはどのくらいある?
双極性障害は再発のリスクが高いため、寛解しても定期的な医師の診察が必要なことが多いです。
再発率には個人差がありますが、ストレスや生活習慣の乱れが再発の引き金になることが多いため、自分でできるセルフケアを意識しましょう。
ストレスを溜めないためにも、夜更かしをしない、三食きちんと食べる、軽い運動をするなどセルフケアを習慣化することが大切です。
Q3:再発のサインは?
再発のサインとして、感情の浮き沈みが激しくなったり、睡眠パターンが乱れたりすることが挙げられます。
再発のサインに早期に気づくためには、自分自身を気づかうことが大切です。
体調やその日の気分を手帳に書いたり、携帯のスケジュールにメモしたりすることで、自分自身を客観的に見ることができます。
自分自身の体調や気分の変化に気づいたら、早めに病院に相談しましょう。
双極性障害完治した人|まとめ
双極性障害は、適切な治療とセルフケアを続けることで、以前と変わらない生活を送ることができます。[1]
症状が落ち着いたからといって、自己判断で服薬や通院をやめると、大きなストレスがかかったときに一気に悪化することもあります。
完治は難しいと感じることもありますが、前向きな気持ちを大切にしながら日々のセルフケアを続けることで、安定した日々を過ごしましょう。
おおかみこころのクリニックは、あなたの悩みに寄り添った治療を行います。通院が難しい場合はオンライン診療も可能です。お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]回復へのマイ・ステップ|厚生労働省 こころもメンテしよう
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/movie/c/index3.html
[2]寛解と治癒|厚生労働省 こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1532/
[3]双極性障害(そううつ病)|国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease02.html
[4]双極性障害(躁うつ病)|厚生労働省こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=RM3UirqngPV6bFW0
[5]こころもメンテしよう 若者のためのメンタルヘルスブック|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/docs/book.pdf
- この記事の執筆者
- 柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。