強迫性障害は、日常生活に深刻な支障をきたす精神疾患です。
強い不安から何度も確認したり、汚れへの恐怖から手洗いを繰り返したりと、さまざまな症状があらわれます。
日常生活の中で確認や手洗いなどに時間や労力を奪われてしまうと、心身ともに疲れてしまいますよね。
症状を気にしないためには「丁寧に確認作業をする」「不安な気持ちを受け入れる」などが大切です。
この記事では、強迫性障害による症状を気にしない方法、何度も確認してしまう理由について解説します。症状に左右されない生活を送るために役立てれば幸いです。
強迫性障害の原因
強迫性障害は、脳の働きやストレスなどさまざまな要因が重なり発症すると考えられています。一人ひとり背景が異なるため、原因を特定することは簡単ではありません。
神経伝達物質のひとつであるセロトニンには、強迫性障害による衝動や感情を抑える働きがあります。セロトニンが増えると症状が和らぐため、セロトニンに働きかける薬が有効となります。
ストレスや環境の影響も原因のひとつです。とくに、子どもの頃に虐待やいじめなどを受けた人は、強迫性障害になりやすいです。女性は妊娠や出産など女性ホルモンが変わる時期に発症するケースもあります。[1]
このように、強迫性障害の原因は、さまざまな要素が複雑に関係しているのです。
どんな人が強迫性障害になりやすいのかについては、下記の記事をご覧ください。
強迫性障害による症状の種類
強迫性障害には、おもに5つの症状があらわれます。
人によって症状は異なり、ひとつでなく複数の症状があてはまるケースもあります。それぞれについて見ていきましょう。
加害恐怖
加害恐怖とは、自分や他人に危害を加えてしまうのではないかという強い不安感に襲われる症状です。[2]
たとえば、道を歩いていて「誰かとぶつかって大ケガをさせていないか」と考えてしまいます。この考えは、自身の行動をコントロールできないかもという恐れから生じるのです。
加害恐怖は、強迫性障害の中でも一般的な症状のひとつです。実際に起きていないことを心配するため、周囲に誤解されないように考えを伝えることが難しいと思っています。そのため、誰にも話せず自分だけで症状を抱え込んでしまいやすいのです。

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確認行為
確認行為とは、ドアの施錠やガスの元栓の確認を繰り返して、何度も同じ動作を行う症状です。[2]
確認行為をするのは、自分がミスをしているのではないかという不安を減らすためです。
ドアやガスの元栓が確実に閉まっていることを自分の目で確かめないと落ち着けません。1回の確認で十分であるにもかかわらず、不安が消えないために何度も同じ動作を繰り返してしまうのです。
結果的に確認行為に時間と労力を取られ、日常生活に支障をきたすことになります。また、家族や友人にも確認を頼んで迷惑をかけてしまうケースもあるのです。
なぜ何度も確認してしまうのか、自分の記憶に自信が持てない理由は下記の記事でご覧ください。
儀式行為
儀式行為とは、同じ手順で仕事や家事をしなくてはならないと考える症状です。[2]
強迫性障害の中でもこだわりの強い症状です。
たとえば「洗濯は絶対に5回する」「部屋の模様替えは必ず時計回りでないと気が済まない」など自分のルールを作ります。物事を決まった形でしか行うことができず、それ以外の方法では不安感が高まるのです。
儀式行為は時間と労力を無駄にしてしまうだけでなく、柔軟な思考ができなくなるという懸念もあります。
汚染と洗浄
汚染と洗浄とは、汚れや細菌への極端な恐怖心から、頻繁に手洗いや入浴を繰り返す症状です。[2]
強迫性障害の人は、自分の手が汚れているかもしれないという強い不安に襲われます。そのため、何度も手洗いを繰り返したり、入浴の回数を増やしたりするのです。
1回の手洗いや入浴では不安が解消されず、洗浄行為に執着します。強迫性障害の人は、きれい・汚いの区別が過剰になりがちです。たとえば、洗濯したタオルに自分以外の人が触ると、見えない汚れがついたと思い再び洗濯してしまうのです。
物や数字へのこだわり
物や数字へのこだわりとは、特定の数字や物の配置などに強いこだわりを持つ症状です。[2]
強迫性障害の人は、特定の物や数字に強い意味を見出す傾向があります。たとえば「青色の洋服しか着られない」「4は不吉な数字だから使えない」というこだわりがあらわれます。
この症状の背景にあるのは、自分なりの論理や秩序を見出そうとする考えです。物事を一定の規則に従ってコントロールしないと、不安感が募ってしまうのです。こだわりが強くなってしまうと、日常の行動が制限されるようになってしまいます。

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強迫性障害で何度も確認してしまう理由
強迫性障害で確認行為を繰り返してしまう理由は、不安や恐怖を和らげようとするためです。本人の意思とは関係なく起こってしまう症状です。
確認行為には、次のような行動があります。
- ガスの元栓を何度も確認す
- ドアの施錠を繰り返し確かめる
- 電源が切れているか何度も見直す
確認すれば一時的に不安を和らげることはできますが、すぐに新たな不安が生まれて確認行為を繰り返すという悪循環に陥ってしまいます。[3]
とくに強迫性障害の人は「もしかしたら」という考えが頭から離れず、確認をしても安心感を得られません。確認をやめるためには、不安を受け入れて確認しないという固い意志を持つことが大切です。
強迫性障害による症状を気にしない方法
強迫性障害の症状に悩まされている人は、日常生活に支障をきたします。症状を気にしない方法は、次の3つです。
それぞれについて見ていきましょう。
強迫性障害が治るきっかけについては、下記の記事をご覧ください。
深呼吸をする
不安な気持ちが高まってきたら、ゆっくり深呼吸をして気分を落ち着かせましょう。深呼吸をしっかりと行うことで、一時的に強迫的な考えから解放され、落ち着いた状態を取り戻せるのです。
呼吸はしっかり吐くことが基本です。「1・2・3」と頭の中で数えながら、ゆっくりと口から息を吐き出しましょう。息を吐き出したら、同じようにゆっくり3秒数えながら、今度は鼻から息を吸い込んでください。5〜10分ほど繰り返すと、徐々に気持ちが落ち着いてきます。[4]
日頃から深呼吸のリズムを意識しておくと、不安な気持ちが高まったときに素早く対処できます。焦らずゆっくりとした呼吸を心がけてみてくださいね。

落ち着いた気持ちで不安に向き合いましょう!
丁寧に確認作業をする
確認作業をするときは、1回を丁寧に行いましょう。強迫性障害の人は、確認行為を繰り返してしまいがちです。1回目の確認を丁寧に行えば、次から確認する必要はありません。
確認作業を適切に行えば、不安感を和らげることができます。具体的には次のポイントをおさえて、確認してみてください。
- 声に出す
- 動作をゆっくり行う
- 流れ作業ではなく、ひとつずつ行う
手順を省略したり雑に確認したりすると、かえって不安が高まってしまうので注意が必要です。また、家族やパートナーなど周囲に確認してもらう行為は、症状を悪化させる原因となります。周囲を巻き込んだとしても、結局は自分の思い通りになりません。その結果、さらに不安を招いてしまい、確認行為を増やしてしまうのです。確認作業は周囲の力を借りず、自分だけで行うようにしてみてください。[1]
不安な気持ちを受け入れる
確認をしないと不安に襲われるかもしれませんが、一度不安をそのままにして受け入れてみてください。不安な気持ちを受け入れ、少しずつ向き合っていくことが大切です。
不安を感じたからといって、必ず取り除かなければならないと考えるのは良くありません。たとえば、手が汚れていると思い1回手を洗ったら「完全に汚れを落とせてないけど大丈夫」と考えるようにしてみてください。
不安になって確認したり洗ったりなどの行為をすると、再び不安になる悪循環に陥ります。焦らずにじっくりと不安を受け入れていきましょう。
まとめ
強迫性障害は不安な考えから行動が繰り返される症状で、決して怠けや性格の問題ではありません。
強迫性障害の症状には、確認行為や汚染恐怖などがあります。これらの症状を気にしないためには、深呼吸をしたり不安な気持ちを受け入れたりする対処法が有効です。
強迫性障害は、薬物療法や認知行動療法などの適切な治療と周囲のサポートによって改善につながります。症状があまりにもひどいときは、お近くの精神科や心療内科を受診してみてください。
おおかみこころのクリニックでは、LINEで24時間いつでも予約を受け付けています。あなたのペースで、できることから一緒に少しずつ取り組んでいきましょう。
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【参考文献】
[1]こころのクスリBOOKS よくわかる強迫症,有園 正俊,主婦の友社
https://amzn.asia/d/0qSSx2O
[2]強迫性障害|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=MiyHEH6ZUZDxDeYX
[3]強迫性障害(強迫症)の認知行動療法(患者さんための資料)
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2015/153091/201516018B_upload/201516018B0018.pdf
[4]腹式呼吸をくりかえす|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_03.html