動悸に効く漢方薬5選|ストレスや自律神経との関連についても解説

「最近、突然心臓がバクバクすることが多くて不安に思っている」

「動悸や息切れに効果のある漢方薬にはどのようなものがあるの?」

このようなお悩みや疑問をかかえていないでしょうか?

動悸が起こると「心臓の病気なのでは」と心配になる方も多いでしょう。しかし、動悸は身体的な疾患だけでなく、精神的な要因によって生じることもあります。

この記事では、動悸の原因や、動悸に効く漢方薬の種類について解説します。ストレスや自律神経との関連性についてあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

動悸とは

動悸とは、心臓の拍動を不快感として自覚する状態のことです。具体的には、脈が急に速くなる、脈の間隔がバラバラになる、時々抜けるといった症状を感じる場合があります。

動悸の原因

動悸の原因には、不整脈心不全などの心臓病に加え、ストレスや過労などによる自律神経の乱れが関わっていることもあります。また、更年期による女性ホルモンの減少も、動悸があらわれる原因のひとつです。

心臓病をはじめとする疾患

動悸がある場合、不整脈や心不全などの心臓の病気になっている可能性が考えられるでしょう。また、心臓疾患以外にも、甲状腺機能亢進症や糖尿病(低血糖)、貧血などが関連している場合もあります。

精神的なストレスによる自律神経の乱れ

動悸は身体的な疾患だけでなく、精神的なストレスによっても引き起こされる場合があります。パニック障害やうつ病、不安障害などの精神疾患をかかえている方は、強いストレスによって自律神経のバランスが崩れやすい状態です。

ストレスによって自律神経が乱れると、交感神経が優位になります。交感神経が優位になると、血圧の上昇や心拍数の増加などを引き起こすため、動悸につながるのです。[1]

更年期障害

更年期になると、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌量が減少します。エストロゲンが減少すると自律神経が乱れやすくなり、心拍や血圧の調整がうまくいかないことで動悸が起きやすくなるのです。

また、エストロゲンには心血管に対する保護作用があります。[2]そのため、エストロゲンの量が減少する更年期には、心血管保護作用が失われることにより、動悸をはじめとする循環器疾患のリスクが増えると考えられているのです。

東洋医学の考えにおける動悸

東洋医学では、動悸を「心悸(しんき)」と呼び、五臓である「心(しん)」の異常が原因であると考えます。「心」は血液の循環と精神活動をつかさどるものです。

「心」の不調の原因は多くの場合、からだのエネルギーである「気(き)」と、からだの栄養である「血(けつ)」の不足です。そのため、漢方薬による動悸の治療では主に「気」や「血」を補うようなものを選びます。

動悸に効く漢方薬5選【ツムラの何番かを記載】

ここでは、動悸に対して処方されることのある漢方薬を紹介します。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)|12番

柴胡加竜骨牡蛎湯は、精神的な不調が関与する動悸の改善に適した漢方薬です。からだのエネルギーである「気」の巡りを整え、神経の高ぶりを鎮めることで精神不安やイライラなどの改善に役立ちます。

比較的体力があり、不眠や頭痛、胸や脇への圧迫感などにお悩みの方に向いているでしょう。

柴胡加竜骨牡蛎湯について詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)|39番

苓桂朮甘湯は、めまいや動悸、耳鳴りなどの治療によく用いられる漢方薬です。からだのエネルギーである「気」を補い、体内の水分である「水」を調整することで動悸や息切れを改善します。

体力があまりなく、のぼせや頭痛、神経過敏などがある方に適しているでしょう。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)|16番

半夏厚朴湯は、精神的な不調に伴う動悸の治療に適した漢方薬です。気分が塞ぎ込み、のどに物がつまった感じや、息苦しさがあるような場合によく処方されます。

からだのエネルギーである「気」の巡りをよくすることで、動悸や不安感、のどの異物感などを和らげます。

半夏厚朴湯の効果について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)|26番

桂枝加竜骨牡蛎湯は、不安や緊張などによる、精神的要因が強い動悸に対してよく用いられる漢方薬です。体力があまりなくて疲れやすく、神経質な方に向いています。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)|23番

当帰芍薬散は、女性ホルモンの乱れによる動悸に対して適した漢方薬です。更年期障害や月経時にはめまいや立ちくらみ、頭痛などを伴うことが多く、これらの随伴症状にも適応があります。体力があまりなく、貧血傾向で疲れやすい方に向いているでしょう。

当帰芍薬散は下記の記事でも紹介されています。詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

Q1. 漢方薬の副作用で動悸が起こることはありますか?

漢方薬の副作用で動悸が起こることはあります。たとえば、身近な漢方薬である葛根湯(かっこんとう)に含まれる「麻黄(まおう)」には、交感神経を興奮させる作用があるため、動悸や血圧上昇、不眠などの症状があらわれる場合があります。

麻黄が含まれる漢方薬の服用中に動悸の症状が出た場合は、服用を中止して医師に相談しましょう。

Q2. 動悸が止まらない場合はどうしたらいいですか?

動悸があらわれたら、まずは楽な姿勢をとって深呼吸し、治まるかどうか様子をみます。それでも動悸が止まらなかったり、胸の痛みや呼吸困難を感じる場合は、無理をせずにほかの人の助けや救急車を呼びましょう。

Q3. 動悸に効く漢方薬は市販されていますか?

動悸に対して効果が期待できる市販の漢方薬には「救心錠剤」「命の母A」などが挙げられます。

救心錠剤は、蟾酥(せんそ)や牛黄(ごおう)、人参(にんじん)などの9種類の生薬成分が配合された、錠剤タイプの市販薬です。心筋の収縮力を高めて血液循環を促したり、心臓のはたらきを助けたりする作用があります。[8]

命の母Aは、当帰(とうき)や芍薬(しゃくやく)などの13種類の生薬とビタミン類が配合された生薬製剤で、更年期の症状や動悸などに対して効果が期待できます。[9]

市販薬を1週間程度使用しても症状がよくならない場合は、動悸の原因となる疾患がかくれている可能性があるため、服用を中止して医療機関を受診しましょう。

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Q4. 自律神経失調症に効くツムラの漢方薬は?

自律神経失調症に効くツムラの漢方薬には、次のようなものが挙げられます。

  • 酸棗仁湯(さんそにんとう)
  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 加味帰脾湯(かみきひとう)
  • 抑肝散(よくかんさん)

東洋医学における自律神経失調症の主な原因は、からだのエネルギーである「気(き)」や、からだの栄養である「血(けつ)」の異常です。

上記の漢方薬は「気」や「血」の状態を改善することで、自律神経失調症によるさまざまな症状の緩和に役立ちます。

自律神経失調症に効く漢方薬について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

動悸や息切れには漢方薬も効果的|まとめ

動悸や息切れなどの症状が気になる方は、まずは内科や循環器科を受診してみましょう。

診察や検査の結果、異常がみられない場合は精神的なストレスが原因で動悸があらわれている可能性もあります。

漢方薬による治療は主に、精神的なストレスの関与が大きい、軽度な動悸に適しています。動悸に加えて、不安や気力の低下などの精神症状に悩んでいる方は、ぜひおおかみこころのクリニックにご相談ください。

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参考文献

[1] 背景|心と体をつなぐ心身相関の仕組みを解明―ストレス関連疾患の新たな治療戦略へ―|国立研究開発法人 日本医療研究開発機構

https://www.amed.go.jp/news/release_20200306-02.html

[2] はじめに|佐藤加代子|東京女子医科大学循環器内科|(4)循環器疾患における性差|東女医大誌 89(4): 73-82, 2019.8

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtwmu/89/4/89_73/_pdf/-char/ja

[3] 柴胡加竜骨牡蛎湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200050D1094_1_15

[4] 苓桂朮甘湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200145D1059_1_08

[5] 半夏厚朴湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200122D1074_1_08

[6] 桂枝加竜骨牡蛎湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200035D1030_1_10

[7] 当帰芍薬散|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200111D1076_1_11

[8] 救心錠剤|救心製薬株式会社

https://www.kyushin.co.jp/brand/tablet.html

[9] 女性保健薬 命の母A|小林製薬

https://www.kobayashi.co.jp/seihin/ih_a/

この記事の編集者
稲嶺 千春
薬剤師。心療内科の門前薬局での勤務経験あり。フリーライターとして医療・健康分野を専門に執筆活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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