セロトニンを増やす漢方薬とは?気分が明るくなるための養生法も解説

「毎日ゆううつで不安や不眠に悩まされている」

「セロトニンが不足するとうつになりやすいって本当?」

「気分が明るくなるように、漢方薬でセロトニンを増やしたい」

このようなお悩みや疑問をかかえていないでしょうか?

西洋薬の副作用や依存性が心配で、漢方薬に興味をもった方も多いでしょう。

この記事では、セロトニンを増やす漢方薬の種類や効果セロトニンが増える理由などについて解説します。

セロトニンを増やして気分を明るくするための養生法も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

セロトニンは「幸せホルモン」

セロトニンは「幸せホルモン」

セロトニンとは、脳内に分泌される神経伝達物質のことです。

精神を安定させる作用をもつことから、テレビや書籍などでは「幸せホルモン」として取り上げられることもあります。

セロトニンは睡眠を促すホルモンである「メラトニン」の材料でもあるため、睡眠の質の向上にも関与しています。

そのため、セロトニンの量が不足すると、不安やうつ、不眠、食欲の低下などを引き起こす場合があるのです。

セロトニンを増やす漢方薬は「抑肝散(よくかんさん)」

セロトニンを増やす漢方薬は「抑肝散(よくかんさん)」

セロトニンを増やす代表的な漢方薬としては「抑肝散(よくかんさん)」が挙げられます。

抑肝散とは、主に不安やイライラ、不眠などの症状が見られる方に使われる漢方薬です。

ここでは、抑肝散の効果やセロトニンとの関係について解説します。

抑肝散の効果

抑肝散は高ぶった神経を鎮める漢方薬であり、具体的には次のような症状に対して効果を示します。

<抑肝散の効能効果>

神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(神経過敏)、歯ぎしり、更年期障害など

東洋医学の考えでは「肝」は臓器の「肝臓」ではなく「心や精神」をあらわします。

そのため「抑肝散」は「肝(心や精神)の高ぶりを抑える」という意味から名づけられました。

抑肝散は子どもの神経の高ぶりにも効果を示すので、小児の夜泣きや癇癪(かんしゃく)に対して使用される場合もあります。

抑肝散とセロトニンの関係

抑肝散は、脳内のセロトニン神経や周囲の細胞に作用することで、神経の高ぶりを抑えるとされています。

セロトニン神経とは、脳幹の「縫線核(ほうせんかく)」と呼ばれる部分から脳全体に伸びる重要な神経のことです。

抑肝散の服用によってセロトニンが増える(神経の高ぶりが抑制される)理由には、次のようなものが挙げられます。

①セロトニン神経に直接作用してセロトニンを出しやすくする[1]

②「セロトニン1A受容体」や「セロトニン2A受容体」に作用して神経の興奮を抑える[2]

「受容体」とは、神経伝達物質やホルモンなどと結合することで、体内にシグナルを送るタンパク質のことです。

抑肝散は、神経の安定に関わる「セロトニン1A受容体」を刺激し、神経を高ぶらせてしまう「セロトニン2A受容体」を減らします。

抑肝散はセロトニンの放出量を増やしたり、関連する受容体を調節したりすることによって、神経の高ぶりを鎮める効果を発揮するのです。

抑肝散の副作用

抑肝散の副作用

漢方薬は西洋薬より効き目がゆるやかですが、医薬品である以上、副作用のリスクは少なからず存在します。

抑肝散の服用で起こりうる重篤な副作用としては「間質性肺炎」や「偽アルドステロン症」が挙げられます。[2]

発生頻度が高い副作用ではないものの、からだに異常が出た場合はすぐに服用を中止してかかりつけ医に相談しましょう。

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間質性肺炎

間質性肺炎とは、肺の「間質」と呼ばれる組織に炎症が起こることで空気を取り込みにくくなる病気です。

主な症状としては咳や発熱、呼吸困難、強いだるさなどが挙げられます。

主な原因は生薬によるアレルギーだといわれていますが、詳しいメカニズムはいまだ明らかになっていません。

偽アルドステロン症

偽アルドステロン症とは、血圧を上げるホルモンである「アルドステロン」が実際には増えていないにもかかわらず、高血圧やむくみ、筋肉のけいれんなどの症状が出る病気のことです。

発症の主な原因には「甘草(かんぞう)」と呼ばれる生薬を大量に摂取することが挙げられます。

漢方薬には甘草が含まれることが多いので、複数の漢方薬を飲んで甘草の成分が重なると、上記の症状が出やすくなる場合があります。

高血圧症に使われる利尿薬との併用によっても副作用のリスクが高まる場合があるので、使用の際は服用中の薬について医師や薬剤師に相談しましょう。

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抑肝散を購入できる場所

抑肝散を購入できる場所

漢方薬には病院で処方される医療用のものと、薬局やドラッグストアなどで「第2類医薬品」として販売されているものがあります

医療用の漢方薬と一般用医薬品(市販薬)に含まれる生薬成分の構成は同じですが、安全性を考慮し、基本的に成分量が少なく設計されています。

同じ名前の漢方薬でも成分が少ない分、医療用の漢方薬とまったく同じ効き目だとはいえません。

何かしらのからだの不調でお困りの場合は、医療機関を受診して個人にあった漢方薬を処方してもらうほうがメリットが大きいでしょう。

セロトニンを増やして気分を明るくする養生法【食べ物・運動・生活習慣】

セロトニンを増やして気分を明るくする養生法【食べ物・運動・生活習慣】

薬の服用以外にも、セロトニンは日々の生活の工夫次第で増やすことができます。

ここでは、セロトニンを増やして明るい気分で過ごす方法について、食べ物・運動・生活習慣にわけて紹介します。

セロトニンを増やす食べ物

セロトニンを体内で十分に生成するためには、原材料となる「トリプトファン」の摂取が重要です。

トリプトファンは人間の体内では生成できないアミノ酸(必須アミノ酸)で、次のような食材に多く含まれています。

トリプトファンが豊富な食材
・バナナ
・プロセスチーズ
・豆乳
・アーモンド
・赤身肉
・玄米
・ソバ など

「トリプトファンのサプリメントを摂ればよいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、セロトニンの生成にはトリプトファンに加えてビタミンや鉄分も必要です。

トリプトファンが豊富な食材やサプリメントだけ摂るのではなく、ビタミンや鉄分が豊富な野菜や果物、肉類もしっかり取り入れましょう。

また、セロトニンを増やす食べ物は、うつ病の予防や治療効果を高めるといわれています。どのようにうつに効くのか気になる方は下記の記事をご覧ください。

セロトニンを増やす運動

次のような一定のリズムでおこなう運動には、セロトニンを増やすはたらきがあるといわれています。[3]

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • サイクリング
  • 自転車こぎ
  • ヨガ など

長時間の運動や激しい運動をする必要はないので、天気のよい日に散歩したり普段より多めに歩いたりしてみましょう。

また、食べ物を噛むこと「咀嚼(そしゃく)」もリズム運動なので、食事の際は急いで食べるのではなく、意識して噛むことが大切です。

セロトニンを増やす生活習慣編

セロトニンを増やすには、朝に日光を浴びることや、生活リズムを整えるといった生活習慣の工夫も効果的です。

朝に日光を浴びると、睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌が止まり、セロトニンの分泌が活性化されます。

睡眠ホルモンのメラトニンは、日光を浴びてから14~16時間後に分泌されるため、朝の時間に日光を浴びることで、夜の寝つきもよくなる効果が期待できるでしょう。[4]

朝の時間帯にしっかり日光を浴びるためには、生活リズムを整えることも重要です。

昼夜逆転の生活をしている方や、日中にあまり外出せずに日光を浴びない方は、セロトニンを増やすために少しずつ生活習慣を見直してみましょう。

セロトニンを増やして不安な気持ちを和らげよう

セロトニンを増やして不安な気持ちを和らげよう

セロトニンを増やす漢方薬には、不安やイライラなどに対して用いられる「抑肝散」が挙げられます。

抑肝散は、脳内のセロトニン神経や周囲の細胞に作用することで、神経の高ぶりを抑えて気分を落ち着かせるとされています。

漢方薬は病名や症状だけで選ぶものではなく、個人の体質を考慮して使用するものです。

一般用医薬品の漢方薬はドラッグストアでも購入できますが、自身の不調や体質に最適な漢方薬を選びたい方は、医療機関で医師の診察を受けるといいでしょう。

また、セロトニンは薬だけでなく、日々の食事や運動、生活習慣の工夫によっても増やせます

薬による治療も大切ですが、まずは日々の生活を見直し、セロトニンを増やす養生法を試すこともおすすめです。

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参考文献

[1] 5)単独隔離飼育による睡眠短縮に対する作用|1. 周辺症状の動物モデルと抑肝散の効果|抑肝散の認知症に対する治療効果の

行動薬理学的実証(2012)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/140/2/140_66/_pdf

[2] ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)|添付文書

https://medical.tsumura.co.jp/products/054/pdf/054-tenbun.pdf

[3] セロトニン 運動|踏み台昇降運動ぬよるセロトニン神経系の賦活|北陸大学(2002)

https://www.hokuriku-u.ac.jp/library/libraryDATA/kiyo26/gai1.pdf

[4] 寝起きに日光を浴びる|第32回 幸せホルモンって!?|東北大学病院生理検査センター

http://www.physiology.hosp.tohoku.ac.jp/custom90.html

この記事の編集者
稲嶺 千春
薬剤師。心療内科の門前薬局での勤務経験あり。フリーライターとして医療・健康分野を専門に執筆活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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