「すごく頭いいね」「頭の回転が速いね」と言われることはありませんか?
双極性障害を含め、精神疾患を持った方は「頭がいい」「知能が高い」と言われることがあります。
「これは本当なのかな?」と自分の事でもよく分からない方も多いでしょう。
今回は、双極性障害の人は知能が高いのか、そう思われる理由や頭がいいと思われて困ることについて解説していきます。
この記事を読んで、あなたの疑問が解決されると幸いです。
双極性障害の人は知能が高いのは本当なのか
双極性障害に限らず、精神疾患の方は頭のいい人が多いと言われることがあります。
ところが、双極性障害の人は頭がいいという因果関係は認められていません。
双極性障害と認知機能の研究では、双極性障害のうつ状態と躁状態でともに認知機能の低下がみられると報告されています。[1]
日本の精神疾患と診断された方の数は約419万人です。[2]そのため、頭がいい人もいれば、そうでない人もいます。それでも『精神疾患の人に頭がいい人が多い』と言われる理由について、以下で解説していきますね。
頭がいいと思われることは多いようですね
なぜ双極性障害の人は知能が高いといわれるのか
双極性障害は、躁状態とうつ状態の気分の波をくり返すことが特徴的な疾患です。[3]
双極性障害の人の躁状態、特に軽躁状態では「最近なんだか調子がいいな」と本人も「調子がいいな」と感じる程度に情報処理(頭の回転)が速くなり、いろいろなアイディアが浮ぶことがあります。
仕事をこなすためには、仕事に対するモチベーションがあるかどうかの次に、頭の回転の速さが仕事効率に影響します。[4]
そのため、頭の回転の速さや軽躁状態によるテンションの高さ(モチベーションの高さ)から、本人も周りの人も「頭がいいな」と思うことがあるのではないかと考えられます。
双極性障害の気分の波とうまく付き合っていくためには、下記の記事もご覧ください。
双極性障害の人が頭がいいと思われて困ること
周囲に頭がいいと思われて困ることは、あまりないでしょう。ただ、これは純粋に知能が高い場合です。双極性障害の症状によって頭がいいと思われる場合は困ることが出てきます。
頭がいいと思われているとき、ほとんどの場合は躁状態です。双極性障害は躁状態とうつ状態がくり返される特徴があります。つまり、ずっと躁状態ではないのです。必ずいつかうつ状態になります。
もし、あなたの仕事ぶりが評価され、多くのことを任されたあとの場合。相手があなたが双極性障害を持っていると分かっていれば、少し譲歩してくれるでしょう。一方で、そうでない場合は相手の信頼を失うことになります。
また、自信をもって仕事を受けると、うつ状態になったときに自分自身を追い込んでしまうこともあります。
気分の波があるため、気をつけましょう
双極性障害の方が無理をせずに仕事を続けていくコツを解説しているので、合わせてご覧ください。
双極性障害の人が知能が高いと感じたときの過ごし方
「最近、調子いいね!」
「○○さん頭いいですね!すごいですね!」
といわれることが増えてきたら、どのように過ごすといいのかについて紹介していきます。
躁状態になっているサインだと受け止める
褒められていることは、素直に受けとめて大丈夫です。
ただし、自分の中では「ちょっと躁状態になってきているのかも」と気づくサインだと思うきっかけにしましょう。
そのまま「わたし天才だ!」と自身のテンションを上げていくと、その後のうつ状態に影響する可能性があります。
下記の記事では、双極性障害の躁状態を落ち着かせる方法や対処法を解説しています。合わせてご覧ください。
規則正しい生活を心がける
双極性障害の躁状態のときは、夜間あまり眠らなくても元気に日常を送れることがあります。それでは心より先に身体が悲鳴を上げてしまうでしょう。
そうならないために「できそう」と思っても規則正しい生活を心がけ、無理はせずに身体の健康につとめましょう。
必要以上に「いつもと違うこと」をしない
躁状態になると「あれもしたい」「これもしたい」と何でもできる気分になります。自分では無理していないつもりでも、気分はどんどん上がっていきます。
そのため、周囲から「最近調子いいね」や「頭いいね」などと言われた場合は、自分ですこしブレーキをかけ、いろいろな事を頑張らずに手を抜けるところは手を抜いて、落ち着いて過ごせる時間を作りましょう。[3]
自ら飲み会を企画したりせず、ゆっくりと日常を送りましょう
まとめ
双極性障害の方は症状によって「頭が良さそう」「すごい!頭の回転速いですね」と周囲の人に言われることがあります。
それによって「自分は天才かもしれない」と思えることもあるでしょう。
ただ、双極性障害と知能の高さの間に因果関係は認められないのです。
もし周囲に「頭いいね」と言われるときは、「ちょっと今テンションが上がってきているときなのかもしれない」と落ち着いて自分の状態を客観的に見てみましょう。
自分の気分の波を把握することは、双極性障害の治療を進めていく上で大切なことです。
自分自身のことがよく分からない場合は、わたしたち専門家に気軽に相談してください。
一緒に自分との向き合い方について考えていきましょう。
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参考文献
[1]大うつ病性障害、双極性障害、統合失調症における知能低下|中枢神経系スペクトラム、Cambridge University Press
https://www.cambridge.org/core/journals/cns-spectrums/article/abs/intelligence-decline-across-major-depressive-disorder-bipolar-disorder-and-schizophrenia/48BE38B4F779D35BE2CC3B40DB644F30
[2]精神疾患を有する総患者数の推移|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf
[3]双極性障害(躁うつ病)とつきあうために|日本うつ病学会 双極性障害委員会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/gakkai/shiryo/data/bd_kaisetsu_20180727.pdf
[4]双極性障害における認知機能|ISBD 国際標準書誌記述
https://www.isbd.org/Files/Admin/Cognition%20files/ISBD_Cognition_Booklet_Japanese.pdf
- この記事の執筆者
- 柚木ハル
作業療法士。精神科16年の臨床経験を生かして執筆を担当。現在は訪問リハビリに従事しながら幅広いジャンルにて執筆中。