抗うつ薬の種類一覧!【効果・特徴・副作用を解説】




抗うつ薬は脳内の神経伝達物質の量を増やすことで、下向きになってしまった気持ちを元に戻してくれる薬です。

この記事では、抗うつ薬の種類や使い分けについて、網羅的に解説します。

抗うつ薬の作用機序とは?

抗うつ薬の作用機序とは?

抗うつ薬は、脳内にもともとあるノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンという神経伝達物質の量を増やして効果を発揮できるように働いていると考えられています。

神経伝達物質はモノアミンと総称され、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンは以下のようなうつ病の症状と関係しています。

  • セロトニン:落ち込み
  • ノルアドレナリン:意欲やエネルギーの低下
  • ドーパミン:興味や楽しみの減退

参考:今日の治療薬解説と便覧2017(南江堂)|神経伝達物質と関連する症状

現在承認されている抗うつ薬は、うつ病発症メカニズムであるモノアミン仮説を基に開発されました。モノアミン仮説とは「脳内のセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのモノアミンの活性が低下しているために、うつ状態になる」というものです。ですが、モノアミン仮説では十分に説明できないことも多く、うつ病発症メカニズムは依然として研究途上の段階と言って良いでしょう。

抗うつ薬の種類と特徴

抗うつ薬の種類と特徴

抗うつ薬は作用するモノアミンやどのようにモノアミンに関与するかで、以下の5つの種類に分けられます。

抗うつ薬の種類別の特徴、効果、副作用、代表的な薬剤名を挙げた表を下に示しました。

【抗うつ薬の種類別の特徴一覧】

特徴効果副作用代表的な薬剤名
TCA・効果は強いが、副作用も多い
・過量服薬で致死的
強力な抗うつ効果口渇、便秘、尿閉、起立性低血圧、催眠・鎮静作用、体重増加、QT延長(心臓)アナフラニール、ノリトレン、トリプタノール、トフラニールなど
四環系
抗うつ薬
・TCAをいくらかマイルドにしたイメージ
・抗うつ効果が少し不足
・マイルドな抗うつ効果
・一部の薬は催眠効果にすぐれている
眠気(TCAよりマイルド)テトラミド、ルジオミール、テシプールなど
SSRI・選択的にセロトニンに働く
・副作用の原因になる作用が弱い
・意欲にあまり効かない
・他の薬との相互作用に注意
・若年層には慎重投与
・マイルドな抗うつ効果
・強迫、衝動、過食などにも効果
・非鎮静性
嘔気、下痢、性機能障害パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ、ルボックスなど
SNRI・セロトニンとノルアドレナリンに働く
・副作用の原因になる作用が弱い
・循環器疾患には慎重投与
・マイルドな抗うつ効果
・SSRIよりも意欲に効果
・非鎮静性
血圧上昇、頻脈、頭痛、尿閉、嘔気サインバルタ、トレドミン、イフェクサーSR
NaSSA・胃腸症状少なく性機能障害にも効果あり
・効果と副作用のバランスが良い
・強力な抗うつ効果
・鎮静性
眠気、体重増加リフレックス、レメロン
抗うつ薬の種類別の特徴一覧

参考:今日の治療薬解説と便覧2017(南江堂)|各抗うつ薬の特徴

三環系抗うつ薬(Tricyclic antidepressants:TCA)

セロトニンとノルアドレナリンに働きかけ、神経細胞間の量を増やします。その他にもヒスタミン、アドレナリンなどのモノアミンやアセチルコリンに対しても働きかけるので、効果も強いけれども副作用も多いのが特徴です。

一般的にTCAは強迫症状や過食、依存、不安にも作用します。

アナフラニールは強迫症状や不安、焦燥に良く、点滴静注も可能です。意欲低下が目立つタイプでは、意欲に関係するノルアドレナリンに作用するノリトレンが使われます。

四環系抗うつ薬(Tetracyclic antidepressant)

TCAの副作用を減らそうと開発されたのが、四環系抗うつ薬です。副作用は減りましたが、その分効果も弱くなりました。

副作用の少なさで、心血管系が弱くなりがちな初老期以降のうつ病治療で選択肢のひとつになり得ます。またテトラミドは不眠、ときにせん妄にも使われています。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(Selective serotonin reuptake inhibiter:SSRI)

治療域が広いので、第一選択薬として用いられることが多いけれど、効果はTCAを上回らず、重症例には適しません。自殺目的で過量服薬しても比較的安全です。

薬物代謝酵素阻害作用があるため、他の薬物との併用には注意が必要です。パキシルはうつ病のみでなく、パニック障害にも効果がありますが、中断症状が起きやすい薬です。レクサプロは初期用量から効果発現するため、使いやすいですが、QT延長があるので、心疾患患者への投与は控えます。

強迫神経症、社交不安症、パニック障害、過食症などにも効果的なので、不安障害にも使われます。さらに、月経前不快気分障害(PMDD)の治療に用いられるのも、抗うつ薬の中ではSSRIです。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(Serotonin noradrenaline reuptake inhibiter:SNRI)

セロトニンとノルアドレナリン双方に作用するので、SSRIの効果に意欲向上が加わり、より広く治療できます。また、糖尿病性神経障害、繊維筋痛症、腰痛などの慢性疼痛にも用いられます

サインバルタやフェクサーSRは強い効果が期待できますが、投与早期の胃腸症状や肝障害、頻脈には注意が必要です。薬物代謝酵素阻害作用がないので、他剤との併用も可能です。

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(Noradrenergic and specific serotonergic antidepressant:NaSSA)

セロトニンとノルアドレナリンの放出を促進することで効果を発揮します。性機能障害、胃腸障害は出現しにくいですが、眠気や体重増加に気をつけなければなりません。

抗うつ薬の副作用と対処法

抗うつ薬の副作用と対処法

抗うつ薬は種類によって副作用にも特徴があります。以下に、抗うつ薬の種類別に主な副作用と対処法を表にまとめました。

【抗うつ薬の主な副作用と対処法一覧】

種類主な副作用対処法
TCA口渇うがい、白虎加人参湯やチスタニン追加投与、SSRIやSNRIへの変薬
便秘運動、水分摂取、緩下剤の追加投与、SSRIへの変薬
尿閉ウブレチド追加投与、SSRIやNaSSAへの変薬
起立性低血圧減量、メトリジン追加投与、SSRI・SNRI ・NaSSAへの変薬
催眠・鎮静減量、1日1回投与、SSRIやSNRIへの変薬
体重増加SSRIへの変薬
QT延長(心臓)減量、SSRIやNaSSAへの変薬
四環系抗うつ薬眠気
SSRI悪心・嘔吐ガスモチン追加投与、NaSSAへの変換
性機能障害NaSSAやテトラミドへの変薬
下痢セレキノン追加投与
SNRI尿閉フリバス・ハルナール・ウブレチドなど追加投与
頭痛ベンゾジアゼピン系抗不安薬追加投与、SSRIへの変薬
頻脈、血圧上昇SSRIへの変薬
NaSSA催眠作用減量、SSRIやSNRIへの変薬
体重増加SSRIやSNRIへの変薬

参考:今日の治療薬解説と便覧2017(南江堂)|抗うつ薬の副作用とその対策

:副作用に対処する薬

TCAは口渇、便秘、尿閉、起立性低血圧などが問題になります。四環系抗うつ薬はTCAに比べ比較的少ないです。SSRIやSNRIは悪心・嘔吐、下痢などの消化器系副作用が多く、副作用対策の薬を頓服で使う場合もあります。

SSRIのパキシルやジェイゾロフトは性機能障害が生じやすく、患者のQOLに影響します。支障をきたした患者が希望する場合に変更を検討する対象になるのは、NaSSAのリフレックスです。

高齢者では有害事象に対してより感受性が高い場合があるので、注意が必要です。TCAは認知機能低下、せん妄、排尿障害、SSRIでは消化管出血が起きる可能性があります。

抗うつ薬を使うときの注意点

抗うつ薬を使うときの注意点

ここでは、抗うつ薬を使うときの注意点を説明します。

効果発現までに2週間

抗うつ薬は効果が現れるまでに2週間かかります。そのため、不安や焦燥感があれば抗不安薬を、不眠があれば睡眠薬を併用します。焦燥が強く、自殺念慮がある場合に併用するのは、少量の抗精神病薬です。

抗うつ薬は少量から少しずつ増やし、副作用に注意しながら原則として症状が改善するまで増量します。

副作用が多いのは最初の1~2週間

抗うつ薬の副作用が多いのは最初の1~2週間で、それ以後は治る場合がほとんどです。抗うつ薬の効果が発現するのに時間がかかる(約2週間)ので、最初のうちは副作用だけを感じるかもしれません。

通常6~8週間後に症状は軽減

通常6~8週間後に症状は軽減します。イライラや不安感がまず消え、次に憂うつな気分が改善、最後まで残るのは、意欲、思考の抑制症状です。

十分に増量して効果のないときは他薬への変更を検討します。前薬を急に中断すると、めまい・頭痛・だるさ・イライラなどの離脱症状が出る可能性があるので少しずつ減らします。

通常12週くらいで寛解、維持療法・漸減を経て服用期間は1年以上

通常12週くらいで、症状が治まっておだやかになります。症状消失後、すぐに抗うつ薬を中止した場合に心配なのが再燃(再発)です。再燃を避けるため、最低数か月服用し続け、中止する場合も少しずつ減らし、服用期間は1年以上になることもあります。

治療上の心配・疑問・不安は医師に相談

「薬をのんだら、余計に具合が悪くなった」と言って自分の判断で治療を中断せず、まず医師に相談してみましょう。また薬に関することであれば、薬剤師に相談する方法もあります。

薬以外でも、うつ病治療上の心配・疑問・不安は、医師に相談すると、良いアドバイスがもらえるでしょう。

まとめ|種類ごとに特徴ある抗うつ薬は医師の指示をしっかり守って!

この記事では、抗うつ薬の作用機序、抗うつ薬の種類と特徴、抗うつ薬の副作用と対処法、抗うつ薬を使うときの注意点について解説してきました。

三環系抗うつ薬が最も強い効果を持ちますが、副作用も多い薬です。抗うつ薬は種類によって特徴的な副作用がありますが、最初の1~2週間に多く、治る場合がほとんどです。

治療上の心配・疑問・不安は医師に相談しましょう。自己判断で抗うつ薬を中断すると、めまい・頭痛・だるさ・イライラなどの離脱症状が起こったり、症状がとれていても再燃してしまったりする可能性があります。

治療期間は1年以上に及ぶ場合もありますが、医師のアドバイスを守りながら継続しましょう。

参考文献

うつ病のメカニズム

今日の治療薬解説と便覧2017(南江堂)

日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害 2016

PMS、PMDDの診断と治療ー他科疾患との鑑別ー

この記事の執筆者
藤野紗衣
薬剤師。精神科病院に勤務経験あり。現在は薬剤師ライターとして執筆活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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