自動思考が止まらない理由|止める方法やスキーマとの違いについても解説

嫌なことがあったときに自分を責めてしまったり、反対に相手を非難してしまう方がいるかもしれません。

ある出来事に対して浮かぶ考えは自動思考と言われており、人それぞれで異なります。

自動思考はネガティブな考えだけでなく、ポジティブな考えにも当てはまります。

ネガティブな考えはできるだけ考えないようにしたり、止めたりできたらいいですよね。

そこで今回は自動思考を止める方法はあるのかについて解説していきます。

自動思考が止まらない理由やスキーマとの違いについても紹介していくので、ぜひ参考にしてみてください。

自動思考とは

自動思考とは

自動思考とは出来事に対してとっさに浮かぶ考えやイメージのことです。

たとえばあなたは外出中に知り合いを見かけて挨拶をしましたが、気づかずに行ってしまいました。

その時に「無視されたのでは?」「なにか悪いことをしたかな?」「気づかなかっただけかも」など浮かぶ考えが自動思考です。

ネガティブな考えだけでなく、ポジティブな考えも指しています。

「無視されたのでは?」と思ったら不安を抱え、「気づかなかっただけかも」と思ったら穏やかな感情になるでしょう。

同じ状況でも自動思考によって、感情や行動が変わってくるのです。[1]

自動思考が偏ると認知のゆがみが起きる

自動思考が偏ると認知のゆがみが起きる

自動思考が偏ってしまうと認知のゆがみが起きてしまいます。

認知のゆがみとはものごとを客観的に見れず、マイナスにとらえてしまうことです。

デビッド・D・バーンズは「認知のゆがみ」を10パターンに分析しました。

  • 全か無か思考
  • 過度な一般化
  • マイナス化思考
  • 結論の飛躍
  • レッテル貼り
  • 過大・過小評価
  • 感情的決めつけ
  • すべき思考
  • 個人化
  • 心のフィルター

全か無か思考はものごとを白か黒であると極端に考えてしまいます。

完璧主義の方に多い思考で、白と黒の間にあるグレーの考え方に気づきにくいです。

過度な一般化は、一度起きた失敗や嫌なことがこの先も繰り返して起こると思い込んでしまいます。

一度嫌だと思った相手の全部が嫌いになるのも、過度な一般化によるものです。

自動思考が止まらない理由

自動思考が止まらない理由

自動思考が止まらない理由は、おもに3つ考えられます。

「人間は考える葦(あし)である」という言葉にもあるように、思考する動物なので完全に止めるのは難しいのです。

それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。

人は常に考えごとをする

人は常に考え事をしているので、思考をコントロールするのは難しいです。

実は1日に60,000回も思考していると言われています。

そのうちの約80%がネガティブな考え、約95%は前日に考えたことと同じであると言われています。

自動思考は自動的に浮かんでしまうので、意図して止めることはできません。

止めようとすると止まらない

思考を止めようとすると、逆にそのことについて考えてしまいます

心理学ではシロクマ効果と呼ばれている現象です。

たとえば「シロクマのことだけは絶対に考えないでください」と言われたら、動物のシロクマやアイスの白くまなど頭にちらついてしまいますよね。

人は考えてはいけないと言われると、余計に考えてしまうのです。[2]

ストレスを抱えている

ストレスを抱えているとネガティブな自動思考が出やすいです。

自分のことだけでなく、周囲の人やものごとについてもマイナスに考えてしまいます。

その思考が原因で余計にストレスを抱えるという悪循環を起こす結果になります。

気持ちは考え方に影響されるため、ストレスを減らすことが大切です。

自動思考を止める方法

自動思考を止める方法

自動思考を完全に止めることは難しいでしょう。

しかし次の3つの方法をおこなえば、ネガティブな自動思考をポジティブに変えられます。

トレーニングしてネガティブな自動思考を改善していきましょう。

コラム法

コラム法では出来事に対して自分がどんな感情や考えになったかを書き出して、他の考え方はないかを探します

医師や心理カウンセラーと取り組む場合もありますが、一人でもできるのが特徴です。

コラム法には3つ、5つ、7つの3種類ありますが、初めての方には3つのコラム法がおすすめです。

まず嫌な気持ちになった出来事を具体的に書き出しましょう。

次にどんな気分になったかを思い出して、気分のレベルを0~100で測ります。

最後に、そのときに頭に浮かんだ考えをいくつか書き出して、一番当てはまるものに丸をつけてください。[3]

コラム法は状況や自分の考えを紙に書き出して、客観的に見ることができます。

マインドフルネス

マインドフルネスは過去の経験や先入観にとらわれることなく、”今”の気持ちや身体の状態をありのまま受け入れることです。

GoogleやAppleなどの企業も導入していて、メンタルヘルスケアの方法として注目されています。

呼吸に意識を集中させて、1日10〜15分ほど静かな場所でおこないましょう。

最近ではアプリやYouTubeなどで音声に従いながらマインドフルネスができます。

自分一人でマインドフルネスをするのは難しいかもと思った方は、ぜひ試してみてください。

運動

運動は気分転換やストレス解消につながります。

さらにメンタルヘルスの予防にも有効であるという研究もあります。[4]

運動中は動くことに意識が向いているので、考え事をしている暇はありません。

運動すると頭もすっきりしてくるので、ネガティブ思考になっているときは数分だけでも動くといいでしょう。

自動思考とスキーマ

自動思考とスキーマ

人によって自動思考がそれぞれ変わるのはスキーマの影響があります。スキーマとは今までの経験から形成される知識の枠組みのことです。

たとえば「黄色くて細長いフルーツ」という説明をされたら、バナナを思い浮かべる方が多いでしょう。

少ない情報からでも理解できるのはスキーマが形成されているからです。

スキーマにはいくつか種類があり、人物スキーマは「あの人は怒りっぽい」と他人に関するもので、自己スキーマは「私は積極的な性格」と自分に関するものを示しています。

スキーマは過去の経験によってはネガティブなものになりやすかったり、勝手な思い込みにつながったりしてしまいます。

一人一人が持つスキーマは無限にあって、それぞれのスキーマによって自動思考は影響を受けています。

認知することは自動思考とスキーマによって決まるのです。

まとめ

今回は自動思考を止める方法、自動思考が止まらない理由やスキーマとの違いについて紹介してきました。

自動思考を完全に止めるのは難しいですが、コラム法などを実践すればネガティブな思考からポジティブな思考に改善できます。

ストレスになる出来事があってマイナスにとらえてしまったら、他の考え方はないか見つめ直してみましょう

もし自分だけでは上手くできないと思ったら、医師や心理カウンセラーに相談してみてくださいね。

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参考文献

[1][3]うつ病の認知療法・認知行動療法|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf

[2]「シロクマ」のことだけは絶対に考えないでください! | 社会に生きる心理学 | 神戸学院大学 心理学部/心理学研究科

https://kobegakuin-psy.jp/feature/column17.html

[4]運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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