先生、デパケンってすぐに効く薬なの?
個人差はあるけど
早い人では2~3日で効き始める薬だよ!
デパケンはもともとはてんかんの薬ですが、現在では、躁病および躁うつ病の躁状態、片頭痛発作の発症抑制にも使われている薬です。
デパケンを飲み始めると強い眠気に襲われるなどして、「本当に効いているのだろうか」「病気は治るのだろうか」と不安に思う人も多いでしょう。
この記事では、デパケンの効果が出るまでにかかる時間と副作用について解説します。
デパケンの効果が出るのは1週間以内
デパケンの効果が出るまでにかかる時間は1週間以内です。同じように躁病や躁うつ病の躁状態に用いる炭酸リチウムと比較すると、即効性があります。
てんかん薬を飲み始めてから期待する効果が得られるようになるまでの日数(定常状態)は、半減期(血液中の薬の濃度が半分になる時間)の約5倍と言われています。デパケンの半減期は7.92( ±1.78)時間なので、5倍は約2日です。したがって、デパケンは早いと服用開始後2、3日で効き始め、個人差も考えると1週間以内に効き始めると言っていいでしょう。
デパケンの服用は少量から開始し、効果が出るまで少しずつ増量します。そして効いた時点の量を維持して服用しますが、上限まで増量しても効果がないとき、他の薬へ変更するかもしくは他の薬を追加します。
デパケン(バルプロ酸)の血中濃度が低いと何が起きるのかについては、下記の記事も参考にしてください。
デパケンの適応疾患
デパケンは、1974年に抗てんかん薬として使用開始され、2002年に躁病治療薬、2010年に片頭痛発作の抑制薬として承認されました。現在では、日本と海外のメンタル治療に欠かせない薬になっています。
さらに、公的保険適応外ですが、統合失調症の興奮や癌性疼痛にも効果あることも知られています。
デパケンの副作用
ここでは、デパケンの副作用について、5つ紹介します。
最も多いのは傾眠
副作用で最も多いのは傾眠です。傾眠とは意識消失の一種で、かなり強い眠気と表現すると間違いないでしょう。傾眠は飲み始めに多く、しだいに軽減する場合が多いですが、症状が強い場合は早めに医師に相談しましょう。
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0.1~5%未満で胃腸症状や排尿障害など
比較的多い副作用に、胃腸症状、複視、発疹、夜尿(おねしょ)・頻尿、倦怠感、鼻血があります。発疹はそのまま服用を続けると、目や唇などの粘膜が赤く腫れ、高熱が出て、皮膚も水ぶくれになる「スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)」に至る場合もあるので、慎重に対応する必要があります。特にラモトリギンとの併用時には注意が必要です。
0.1%未満で振戦、脱毛
ごくわずかの人に振戦が起こることがあります。振戦とは、手、頭、脚などの身体に起こるふるえのことです。
頻度不明で体重増加、肝障害
人によっては食欲が亢進するので、太りやすくなる可能性もあります。
また、肝障害が起こる場合があるので、定期的に肝機能検査を行う必要があります。特に投与初期6か月間は注意が必要です。
女性は少し気がかり:多嚢胞性卵巣症候群や催奇形性
デパケンは妊娠可能な女性には少し気がかりな薬です。なぜなら、服用していると多嚢胞性卵巣症候群が起きて不妊症となってしまったり、無事妊娠しても脊髄髄膜瘤などの先天奇形が起きてしまったりする場合があるからです。
そのため、妊婦又は妊娠している可能性のある女の人は飲んではいけない「禁忌」となっています。以下でも詳しく説明しますので、読んでください。
デパケンを飲んではいけない人(禁忌・注意)
ここでは、デパケンを飲んではいけない人を紹介します。
重い肝障害のある人
デパケンは副作用で重い肝障害(投与初期6か月以内に多い)があらわれることがあります。もともと重い肝障害のある人は、副作用が強く現れて致死的になる場合があるため、飲んではいけません。
そのため、投与初期6か月間は肝障害があってもなくても定期的に肝機能検査を行うことになっています。
カルバペネム系抗生物質(注射が多い)を投与中の人
デパケンとカルバペネム系抗生物質は相互作用があります。一緒に投与されるとデパケンの血中濃度が低下し、効果が十分発揮されなくなる可能性があります。
カルバペネム系抗生物質のほとんどは注射薬ですが、テビペネム(オラペネム小児用細粒)の1種類のみ飲み薬です。
尿素サイクル異常症の人
重い高アンモニア血症があらわれることがあるので、飲むことができません。
高アンモニア血症とは、体内で生成したアンモニアが血液中に蓄積されてしまう病気です。アンモニアは有害なので高アンモニア血症になると意識障害などを引き起こす可能性があります。
妊婦又は妊娠している可能性のある女の人
胎児に神経管閉鎖不全が起きて脊髄髄膜瘤などの先天性奇形が起きることが分かっています。
神経管は妊娠4週で形成されるので、妊娠の3か月以上前から葉酸の服用、デパケンの徐放製剤への変更や減量の必要があります。妊娠がわかってからでは対処できません。
デパケンを飲んでいて妊娠を希望する場合は、医師に相談しながら妊活を進めましょう。
Q1. デパケンはうつに効く薬ですか?
デパケンは躁うつ病のうつ状態にも使われていますが、臨床現場では、デパケンの抗うつ効果はやや弱めと言われています。
また、日本うつ病学会治療ガイドラインⅠ.双極性障害 2020でも、躁うつ病のうつ状態へのデパケンの効果は有効であるという報告と無効である報告の両方があるとしています。
Q2. デパケンはどんな人が飲みますか?
躁病や躁うつ病の躁状態の人やてんかんの人、片頭痛の発症予防を望む人が飲みます。その他に公的医療保険の適用外(費用は全額自費)ですが、統合失調症で興奮のある人や癌の痛みのある人も飲みます。
Q3.デパケン錠の効果は何ですか?
デパケン錠は、躁病や躁うつ病の躁状態、てんかん、片頭痛発症予防の効果があります。
Q4.デパケンはイライラに効果がありますか?
デパケンはイライラ、焦り、異常に落ち着かないという気持ちにも効果があります。
Q5. デパケンを飲んだらやる気が出ない。これは副作用?
デパケンを飲んだらやる気が出ないのは、デパケンの効果が出ているためだと思われます。副作用ではありません。
デパケンは気分安定薬と呼ばれ、躁病や躁うつ病の躁状態などへ効果を示す薬です。躁状態では異常なほどの気分の高揚が続きます。人は一時気分が良くなったりはしますが、あまり長くは続いたりはしないものです。デパケンを飲む前に比べてやる気がでないと感じても、気分の波が落ち着いてきたのであって、やる気がなくなったわけではないと思います。
デパケンの効果が出てきているので、気分の波が穏やかになり、これからだんだんと過ごしやすくなっていくでしょう。
まとめ|デパケンの効果が出るのは1週間以内
この記事では、デパケンの効果が出るまでにかかる時間と副作用について解説しました。
デパケンの効果が出るまでにかかる時間は1週間以内です。同じように躁病や躁うつ病の躁状態に用いる炭酸リチウムと比較すると、即効性があります。
現在、デパケンは日本と海外のメンタル治療に欠かせない薬になっていますが、炭酸リチウムに比べ抗うつ効果は弱く、催奇形性があるので妊娠希望のある女性への使用には配慮が必要なことが知られています。
デパケンを服用中の方は自分の体調の変化に注意し、妊娠の希望や心配なことがある場合には主治医に相談しましょう。気になることをそのままにしておくと、そのことがストレスになってしまします。あなたが納得して薬を飲むことも大切です。薬に対する不安などもお気軽にご相談くださいね。
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参考文献
今日の治療薬解説と便覧2017、南江堂
- この記事の執筆者
- 藤野紗衣
薬剤師。精神科病院に勤務経験あり。現在は薬剤師ライターとして執筆活動中。