「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)って危険な薬なの?」
「柴胡加竜骨牡蛎湯に依存性や離脱症状はないの?」
このような疑問をかかえていないでしょうか?
結論からいうと、柴胡加竜骨牡蛎湯に依存性や離脱症状はなく、医師の指示に従って服用すれば特別危険な薬ではありません。
この記事では、柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスクといわれる理由や、副作用、使用上の注意点などについて紹介します。
即効性の有無や、長期服用の可否についても解説するので、ぜひ最後まで読んでみてください!
この記事の内容
柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスクといわれる理由
柴胡加竜骨牡蛎湯について調べると「危険」「ハイリスク」などといった情報を目にすることがあります。
精神疾患や不眠などの治療によく用いられる柴胡加竜骨牡蛎湯ですが、本当に危険な薬なのでしょうか?
ここでは、柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスクといわれる理由について解説します。
まれに重大な副作用が起こる場合がある
柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスクだといわれる理由には、非常にまれではあるものの「間質性肺炎」や「肝機能障害」などの重大な副作用のリスクが関係しているかもしれません。[1]
間質性肺炎とは、肺の間質と呼ばれる部分に炎症が起こる疾患で、発熱や咳、呼吸困難などを伴うものです。
また、肝機能障害が起こると発熱や黄疸などの症状がみられる場合もあります。
ただし、これらの副作用は柴胡加竜骨牡蛎湯に限って生じるわけではありません。
頻度は非常にまれではあるものの、さまざまな漢方薬において起こる可能性があるものです。
医師の指示に従い、用法用量を守って服用すれば、柴胡加竜骨牡蛎湯の服用に関して過度な心配はいらないでしょう。
服薬に関する不安なことや気になることもお気軽にご相談ください。安心して服薬をすることも治療をする上で大切になります。
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「ハイリスク薬」に分類されるから
柴胡加竜骨牡蛎湯が「ハイリスク薬」に分類されることも、柴胡加竜骨牡蛎湯が危険だとされる理由かもしれません。
ハイリスク薬とは、とくに安全管理の専門家による薬学的管理が必要な医薬品のことです。[2]
ハイリスク薬の具体例としては、抗悪性腫瘍剤(抗がん剤)や抗てんかん剤、不整脈用剤、免疫抑制剤などが挙げられます。[2]
ツムラやコタローの柴胡加竜骨牡蛎湯は、ハイリスク薬の対象である「てんかん」の適応を有しています(クラシエの柴胡加竜骨牡蛎湯には「てんかん」の適応はありません)。[1][3][4]
そのため、柴胡加竜骨牡蛎湯がハイリスク薬として扱われる場合があるのです。
「ハイリスク薬」と聞くと「服用するのが怖い」と感じる方もいるかもしれませんが、前述したとおり、ハイリスク薬はとくに安全管理が徹底される薬です。
医師や薬剤師の指示に従って服用していれば、使用に関する過度な心配は必要ないでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯の依存性や離脱症状
精神疾患や不眠症などに対する一部の西洋薬とは異なり、柴胡加竜骨牡蛎湯に依存性や離脱症状はありません。
そのため、西洋薬の服用による依存性や離脱症状が心配な方は、漢方薬である柴胡加竜骨牡蛎湯を使用する方法もあるでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯の効果
柴胡加竜骨牡蛎湯は、ストレスや不眠の症状を改善するために有用な漢方薬です。
比較的体力があり、イライラやヒステリーなどの神経の高ぶりがみられる方に適しています。
柴胡加竜骨牡蛎湯の添付文書(ツムラ)に記載されている効果効能は、次のとおりです。
比較的体力があり、動悸や不眠、イライラなどの精神症状を伴う次の諸症:
高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症(夜泣き)、陰萎(ED)[1]
東洋医学の考えによると、精神症状や不眠の原因は、からだのエネルギーである「気」の異常です。
柴胡加竜骨牡蛎湯には「気」を巡らせる作用があるため、うつや不眠症などの精神症状の緩和に役立つと考えられます。
柴胡加竜骨牡蛎湯【ツムラ】の副作用や禁忌
柴胡加竜骨牡蛎湯の副作用には、皮膚の湿疹や赤み、かゆみなどが挙げられます。
また、重大な副作用としては前述したとおり、間質性肺炎や肝機能障害などに注意が必要です。
重大な副作用の発生頻度は非常に低いものの、咳や発熱、黄疸などの症状があらわれた場合は、すみやかに中止して医師や薬剤師に相談しましょう。
また、ツムラ以外の柴胡加竜骨牡蛎湯には「大黄(だいおう)」と呼ばれる生薬が配合されているため、腹痛や下痢をきたす可能性もあります。
胃腸が弱く、軟便や下痢を起こしやすい方は、大黄を含まないツムラの製品のほうが適しているでしょう。
禁忌となる事項は、添付文書上には記載されていません。
柴胡加竜骨牡蛎湯の使用上の注意点
妊娠中や授乳中の方は、大黄が配合されている柴胡加竜骨牡蛎湯は使用できません。
妊娠中の場合、大黄の子宮収縮作用や骨盤内臓器の充血作用により、流早産の危険性があるためです。
また授乳中の場合は、大黄に含まれる「アントラキノン誘導体」と呼ばれる成分が母乳中に移行することで、乳児の下痢を引き起こすことがあります。[1]
大黄が配合されていないツムラの柴胡加竜骨牡蛎湯を使用する場合でも、妊婦や授乳婦に対する安全性は確立されていないので、使用に関しては医師に相談しましょう。
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柴胡加竜骨牡蛎湯とセロトニンとの関係
柴胡加竜骨牡蛎湯は、セロトニンの細胞外濃度の低下を抑制するとされています。[5]
セロトニンには精神を安定させる作用があるため、セロトニンの減少を防ぐことで、うつ症状の改善につながると考えられます。
柴胡加竜骨牡蛎湯とセロトニンの関係について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
Q1. 柴胡加竜骨牡蛎湯は即効性がある薬ですか?
漢方薬は基本的に、からだにゆっくり作用する薬なので、柴胡加竜骨牡蛎湯を飲んですぐに精神症状が落ち着くわけではありません。
即効性を求める場合や、すでに症状が強く出てしまっている場合などは西洋薬のほうが向いているでしょう。
Q2. 柴胡加竜骨牡蛎湯は長期服用してもいい薬ですか?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、効果があらわれるまで長期間(数か月程度)服用しても問題ありません。
数か月服用しても効果が出ない場合は、からだに合っていない可能性があるため、医師に相談しましょう。
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Q3. 柴胡加竜骨牡蛎湯を飲んで痩せることはありますか?
柴胡加竜骨牡蛎湯に痩せるような効果はありません。
柴胡加竜骨牡蛎湯は主に、イライラや不眠などの精神症状に対して用いられる漢方薬です。
柴胡加竜骨牡蛎湯は正しく服用すれば危険ではない|まとめ
柴胡加竜骨牡蛎湯について「危険」「ハイリスク」などといった情報を目にすることがありますが、正しく服用すれば過度な心配は必要ないでしょう。
一部の精神疾患に関する西洋薬とは異なり、柴胡加竜骨牡蛎湯には依存性や離脱症状もありません。
イライラや不眠などの症状に関して、漢方薬での治療を考えている方は、柴胡加竜骨牡蛎湯を使用することもひとつの方法です。
ただし、漢方薬は症状だけでなく、個人の体質を考慮して選ぶ必要があります。
精神的な不調でお困りの方はひとりで悩まず、ぜひおおかみこころのクリニックの精神科医にお気軽にご相談ください。
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参考文献
[1] 柴胡加竜骨牡蛎湯の添付文書|ツムラ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200050D1094_1_15
[2] 薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第1版)平成 21 年 11 月 24 日 社団法人 日本薬剤師会
https://www.pmda.go.jp/files/000145299.pdf
[3] 柴胡加竜骨牡蛎湯の添付文書|コタロー
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/270127_5200050C1030_1_17
[4] 柴胡加竜骨牡蛎湯の添付文書|クラシエ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/252468_5200050C1056_2_01
[5] Mizoguchi K, et al. : Saiko-ka-ryukotsu-borei-to, a herbal medicine, ameliorates chronic stress-induced depressive state in rotarod performance. Pharmacol Biochem Behav, 75 : 419-25, 2003.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12873634/
- この記事の編集者
- 稲嶺 千春
薬剤師。心療内科の門前薬局での勤務経験あり。フリーライターとして医療・健康分野を専門に執筆活動中。