「半夏厚朴湯はうつやパニック障害に効果があるの?」
「半夏厚朴湯はどのくらいで効いてくるの?」
このような疑問や不安を抱えていませんか?
日常生活に支障が出るほどの不調で悩んでいる場合、なるべく早く薬の効果を感じたいですよね。
この記事では、半夏厚朴湯の効果や特徴、効き目を感じるまでの期間などについて解説します。半夏厚朴湯が合っている方の特徴についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
半夏厚朴湯の効果が出るまでにどのくらいかかるのか
半夏厚朴湯の効果を感じるまでの期間には個人差がありますが、1ヶ月程度かかるでしょう。
例として、半夏厚朴湯の効果があらわれるまでの期間に関する研究結果を紹介します。[1]
咳や痰、のどの違和感などの呼吸器症状が改善されない19名を、半夏厚朴湯を飲むグループと飲まないグループに分けて経過観察しました。
その結果、1ヶ月後には半夏厚朴湯を飲んだグループにおいて、有意に呼吸器症状の改善がみられました。
漢方薬は基本的に、効果実感までに少なからず時間を要するものが多いといえます。
お悩みの不調に対して即効性を求める場合や、すでに症状が強く出てしまっている場合などは、西洋薬の使用が適している場合もあります。
半夏厚朴湯とは
半夏厚朴湯は、精神的なストレスからくる吐き気や咳、胃の不調などを改善する漢方薬です。
半夏厚朴湯の構成生薬は、半夏(はんげ)、厚朴(こうぼく)、茯苓(ぶくりょう)、蘇葉(そよう)、生姜(しょうきょう)の5種類です。
- 半夏厚朴湯に含まれる生薬のはたらき
- 半夏:精神安定、咳や痰の改善
厚朴:精神安定、胃腸機能のサポート
茯苓:利尿作用
蘇葉:精神安定、胃腸機能のサポート
生姜:胃腸機能のサポート、吐き気の改善
東洋医学の考えでは、疲労やストレスは、からだのエネルギーである「気(き)」の巡りを悪くすると考えられています。
半夏厚朴湯には「気」を巡らせる作用があるため、気分の落ち込みや不安などの症状の改善が期待できるのです。また、胃にたまった水を除くことで、吐き気や胃の不快感などの不調を和らげる作用もあります。
半夏厚朴湯の効果
半夏厚朴湯の添付文書(ツムラ)に記載されている効果効能は次のとおりです。
気分がふさいで、咽喉(のど)や食道部に異物感があり、ときに動悸やめまい、嘔気(吐き気)などを伴う次の諸症:
不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症」[2]
半夏厚朴湯はとくに、顔色がすぐれず、のどの閉塞感や神経症的な傾向がある方に向いているでしょう。
半夏厚朴湯が処方されることのある疾患
半夏厚朴湯にはストレスによる精神症状を落ち着かせる作用があるため、自律神経失調症やうつ、パニック障害などに対して処方される場合があります。
また、半夏厚朴湯には胃腸の不調を改善する効果もあるため、つわりの治療に用いられることもあります。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、ストレスや生活習慣の乱れによって自律神経のバランスが崩れることで生じる、さまざまな不調のことです。[3]
自律神経失調症の自覚症状には、次のようなものがあります。
- 身体的な症状
- ・全身のだるさ
・疲れやすさ
・頭痛
・動悸
・不眠
・ほてり
・吐き気
・食欲不振 など
- 精神的な症状
- ・イライラ
・気分の落ち込み
・不安感
・やる気や集中力の低下 など
半夏厚朴湯はとくに、のどの閉塞感や動悸、吐き気、めまいなどがみられる場合に適しているでしょう。
自律神経失調症に効く漢方薬が気になる方は、下記の記事もご覧ください。
うつ
うつは脳のエネルギーが欠乏した状態であり、ゆううつ感や気力の低下などの精神症状や、不眠や食欲の低下などの身体症状があらわれる疾患です。
半夏厚朴湯には、からだのエネルギーである「気」の巡りをよくすることで、不安や気もちの落ち込みを緩和する作用があります。
とくに、のどに何か詰まっている感じがする場合や、強い不安による不眠がみられる場合などに適しているでしょう。
うつに効く食べ物を知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
パニック障害
パニック障害とは、突然何の前触れもなく、動悸や息苦しさ、めまい、発汗、吐き気などのパニック発作があらわれる疾患のことです。
半夏厚朴湯には精神を安定させる作用があるため、パニック障害の治療に有効な場合があります。
つわり
つわりは、妊娠初期にみられる吐き気や嘔吐、食欲不振などの消化器系の異常です。
半夏厚朴湯は、停滞した「気」(からだのエネルギー)を動かし、のどや胃の緊張をやわらげることによって体内に水を巡らせ、胃腸症状を緩和します。
そのため、半夏厚朴湯はつわりに対して用いられることもあります。
ただし、妊娠中の服用可否に関しては母体や胎児の状態を総合的に判断する必要があるため、服用前に医師や薬剤師に相談しましょう。
半夏厚朴湯の副作用や禁忌
ここでは、半夏厚朴湯の副作用や禁忌について解説します。
半夏厚朴湯の主な副作用は、湿疹、赤み、かゆみなどの過敏症状です。また、肝機能の異常などが起こる場合もあります。肝臓の異常を知るための指標としては「AST」と「ALT」が挙げられます。[2]
半夏厚朴湯を服用した後にこれらの数値の上昇が見られる場合には、服用を中止し医師に相談しましょう。禁忌事項に関しては、半夏厚朴湯の添付文書に記載はありませんでした。
お薬に関する悩みもお気軽にご相談ください。自分が納得して服薬することも治療をする上で大切になります。
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半夏厚朴湯が合っている方の特徴
半夏厚朴湯は、体力があまりなく、緊張や咳、のどのつかえ感などがみられる方に適している漢方薬です。 気分が塞ぎ込み、不眠や動悸、精神不安などに悩む方にも効果を発揮しやすいでしょう。
半夏厚朴湯はデパスの代わりに使える薬なのか
前提として、抗不安薬であるデパスとまったく同じ効果を発揮する漢方薬はありません。
不安や不眠に症状が出ている方に対して半夏厚朴湯が処方されることがあるものの、デパスと同じような即効性や強い効果が得られるわけではないでしょう。
デパスの代わりに使える漢方薬について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
次からはQ&Aになります♪
Q1. 半夏厚朴湯が効かない原因は?
半夏厚朴湯を服用しても効かない原因には、半夏厚朴湯が得意とする体質でないことが考えられます。
たとえば、半夏厚朴湯は虚証(体力がなく、弱々しい状態)の方に使う薬なので、実証(体力や抵抗力が充実している状態)の方が服用しても効果が出ない可能性があるでしょう。
Q2. 半夏厚朴湯を長期服用しても大丈夫?
半夏厚朴湯は、効果があらわれるまで長期間(数ヶ月程度)継続的に服用しても問題ありません。ただし、数ヶ月程度服用しても効果が出ない場合は合っていない可能性があるので、医師や薬剤師に相談しましょう。
Q3. 半夏厚朴湯のやめどきは?
のどのつかえ感や不安などの症状が治まれば、やめどきだと考えられます。ただし、個人に合った服用期間は、症状の程度や体質などによって異なります。治療効果を高めるためにも自己判断で中止せず、処方医の指示に従いましょう。
半夏厚朴湯はじっくり作用する薬|まとめ
半夏厚朴湯の効き目を感じるまでには、服用を1ヶ月程度続ける必要があるでしょう。
半夏厚朴湯は「気」(からだのエネルギー)を巡らせることで、精神的なストレスからくる吐き気や咳、胃の不調などを改善する漢方薬です。精神を安定させる作用があるため、うつやパニック障害の治療に用いられることもあります。
ただし、効果の即効性を期待する場合や、症状の強さによっては西洋薬のほうが適している場合もあります。自身に適した治療で不調を改善したい方は、お気軽におおかみこころのクリニックにご相談ください。
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参考文献
[1] 11. 消化管、肝胆膵の疾患|漢方治療エビデンスレポート|日本東洋医学会 EBM 委員会エビデンスレポートタスクフォース
https://www.jsom.or.jp/medical/ebm/er/pdf/050008.pdf
[2] 半夏厚朴湯の添付文書|ツムラ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200122D1074_1_08
[3] 自律神経失調症|e-ヘルスネット
- この記事の編集者
- 稲嶺 千春
薬剤師。心療内科の門前薬局での勤務経験あり。フリーライターとして医療・健康分野を専門に執筆活動中。