抗うつ剤で感情がなくなるかもと心配なあなたへ|考えられる原因と対処法










「抗うつ剤を飲み始めてから、喜怒哀楽が薄れてしまった」

「このまま感情がない状態が続くのかな…」

抗うつ剤の服用中に感情がなくなると感じるのは、薬の副作用や病気の症状が原因の可能性があります。

感情がなくなる状態をそのままにしておくと、治療が思うように進まなかったり、日々の楽しみを感じにくくなったりするかもしれません。

まずはあなたの状態を理解し、原因に応じて対処法を見つけていきましょう

この記事では、抗うつ剤で感情がなくなると感じる原因対処法を解説します。本来の感情を取り戻し、彩りのある毎日を送る助けになれば幸いです。

抗うつ剤で感情がなくなる状態とは

抗うつ剤の服用中に「感情がなくなる」と感じるのは、具体的に次のような状態です。

  • 好きだった趣味をやっても楽しめない
  • 理不尽なできごとがあっても怒りを感じない
  • 今までは悲しくて泣いていた場面で他人事のように感じる

このように喜びや悲しみなど感情の動きが乏しくなり、感情が湧き起こりにくくなるのです。

この状態を「感情鈍磨(かんじょうどんま)」と呼びます。[1]

ただし、抗うつ剤を使用したからといって、必ずしも感情鈍磨になるわけではありません2017年に行われた調査では、抗うつ剤で治療したうつ病患者さんの約46%に感情鈍磨がみられたと報告されています。[2]

感情鈍磨になると、よい感情も悪い感情もなくなるため、日常生活に張りがなくなり不安になるのです。

もし「抗うつ薬は飲まないほうがよいの?」と悩んだら、下記の記事もご覧ください。

抗うつ剤で感情がなくなるときに考えられる2つの原因

抗うつ剤を服用して感情がなくなったと感じたとき、次の2つの原因が考えられます。

あなたの状態がどちらに近いかを知ることが、本来の感情を取り戻すことにつながります。

まずは、考えられる原因を一緒に見ていきましょう。

副作用

原因のひとつとして、抗うつ剤の副作用によって感情がなくなる可能性があります。

とくに、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、気分の落ち込みや不安をやわらげる効果が期待されます。

ただし、薬の作用が過剰になると感情をつくりだす働きが弱まり、感情鈍磨になる可能性があると指摘されているのです。[2]

つらい感情を穏やかにする一方で、嬉しい・楽しいなどの感情も、同じように小さくしてしまいます。

副作用としての感情鈍磨は薬が効いている証拠とも考えられますが、我慢する必要はありません。

生活に支障をきたすときは、医師に相談しましょう。

こころちゃん
こころちゃん

ひとりで悩まずに気になることは、なんでも相談してくださいね♪

病気の症状

抗うつ剤で感情がなくなると感じたら、うつ病や統合失調症など病気の症状が原因として考えられます。

うつ病は気分が落ち込むだけでなく、意欲の低下や興味・関心の喪失などの症状を伴う病気です。

これらの症状が起きると、感情がなくなったかのように感じさせるのです。

2021年にブラジル・カナダ・スペインで行われた研究では、うつ病の急性期にある患者さんの約4分の3に重度の感情鈍磨がみられたと報告されています。

また、症状が落ち着いた寛解期でも、4分の1の患者さんに同じ状態がみられました。[3]

さらに、統合失調症の症状のひとつに、感情の表現が乏しくなる状態があります。[1]

医師に相談し、今の状態を見極めてもらうことも大切です。

抗うつ剤で感情がなくなるときの対処法3つ

抗うつ剤の服用中に感情がなくなると感じたときには、次の3つの対処法があります。

まずは主治医に相談し、できる範囲で試せる方法を取り入れていきましょう。

医師に症状を伝える

抗うつ剤で感情がなくなるときの対処法のひとつは、医師に現在の状態をありのまま伝えることです。

医師はあなたの話をもとに、感情がなくなると感じた原因を判断します。

副作用の可能性が高いと判断されれば、薬の種類や量を調整します。

症状によるものだと考えられるときは、現在の治療を継続しながら他の治療法を試していくのです。

医師と情報を共有し、相談しながら治療方針を決めることが症状の緩和につながります。

「抗うつ剤のせいで感情がなくなる」と自己判断で服用を中断してしまうと、症状を悪化させる恐れがあるため避けてください

小説や映画に触れる

小説や映画に触れ、感情を動かすきっかけを意識的につくりましょう

小説を読んだり映画を観たりする時間は、感情を取り戻すためのリハビリのようなものです。

物語の世界に集中し登場人物の経験や感情を体験することは、感情の働きを刺激するきっかけとなります。

感動的なヒューマンドラマや主人公が困難を乗り越えて成長する物語など、感情移入しやすい作品から試してください。

もちろん、ムリに感動しようと意気込む必要はありません。

こころに負担がかからない範囲で、興味を持てる作品に触れる時間をつくってみましょう。

こころちゃん
こころちゃん

感動するマンガとかもいいかも!

考えや感情を紙に書き出す

感情がわからなくなっているときは、頭の中にある考えや感情を紙に書き出す習慣をつけましょう。

下記のように自由に書き出してみてください。

  • 1日のできごと
  • 頭に浮かんだ考え
  • できごとについて感じたこと

たとえば「上司に褒められたけれど、嬉しいという実感が湧かなかった」のように、ありのままを書きます。

書き続けるうちに、気付いていなかった感情の動きを客観的に認識できるようになります。

あなたの内面と向き合うことが感情を認識する練習となり、こころの状態を整理するのに役立つのです。

抗うつ剤を使わない治療法

抗うつ剤を使わない治療法には、下記の3つがあります。

ただし、どの治療法を選ぶかは、医師と相談して決めてください。

  • 休養
  • 心理療法
  • rTMS療法

薬を使わない治療法としては、まず休養が基本です。[4]

心身をしっかりと休ませストレスの原因から離れる環境をととのえるだけでも、回復につながります。

次に、心理療法はカウンセラーとの対話を通じて物事の考え方を見直し、ストレスとうまく付き合えるようにする治療法です。

中でも、認知行動療法は薬物療法と併用すると、再発予防の効果が期待できると言われています。[5]

ほかにも、rTMS療法(反復経頭蓋磁気刺激法)とは、磁気の力で脳の特定の部分を刺激し、機能の回復を促す治療法です。[6]

抗うつ剤で十分な効果がみられなかった成人の患者さんに使われます。

rTMS療法については下記の記事をご覧ください。

まとめ

「抗うつ剤で感情がなくなる」という感覚は、病気の症状や薬の副作用が原因と考えられます。

この状態に気付いたら、自己判断で服用をやめず主治医に現状をありのまま伝えることが大切です。

医師に相談すると原因に応じて薬の種類や量を調整したり、今後の治療方針を一緒に考えたりと適切な対応を検討してもらえます

薬を使わない治療法の選択肢もあるため、まずは医師と話すことから始めましょう。

おおかみこころのクリニックでは、お仕事帰りや日中は時間がとりにくい方でも安心して相談できるよう、毎日夜22時まで診察しています。

来院予約は24時間いつでも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

おおかみこころのクリニック

【参考文献】
[1]感情鈍磨:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1533

[2]内科医のための抗うつ薬,宮内 倫也
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/12/112_2226/_pdf

[3]Emotional blunting in patients with depression. Part I: clinical characteristics|PMC
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8981644

[4]3 うつ病の治療と予後:ご存知ですか?うつ病|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad003

[5]認知行動療法(CBT)とは|認知行動療法センター
https://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php

[6]鬼頭伸輔先生に「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=62

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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