抗うつ剤を飲まない方がいいの?副作用と薬以外の治療法とは










「抗うつ剤は副作用が怖いから飲まない方がいい?」

「1回飲み始めたら、やめられなくなるんじゃないかと不安だ…」

薬を飲んでもつらい症状がよくなるのかわからず、飲むべきか悩んでしまいますよね。

抗うつ剤の知識が不十分なまま自己判断で服用を避けてしまうと、回復が遅れる可能性があります。

あなたの状態と薬の役割を理解し、納得して治療法を選ぶことが回復につながるのです。

この記事では「抗うつ剤は飲まない方がいい」と言われる理由薬の種類を解説します。

不安をやわらげ、あなたに合う治療を探す助けとなれば幸いです。

「抗うつ剤は飲まない方がいい」と言われる理由

「抗うつ剤は飲まない方がいい」と言われる理由は、おもに2つあります。

  • 副作用が出る可能性がある
  • 服用を中止すると離脱症状が出やすくなる

抗うつ剤はうつ病の症状をやわらげる一方で、副作用が出ることがあるのです。

どのような副作用が出るかは薬の種類や体質によって異なります。

身体の不調が起きるという不安が「飲まない方がいい」という考えにつながるのです。

また、自己判断で服用を中断すると、めまいや吐き気などの「離脱症状」が出やすくなります。[1]

離脱症状とは、服用の急な中止や減量によってあらわれる症状です。離脱症状の心配から、服用をためらう原因になるのです。

ただし、抗うつ剤は気分の落ち込みや意欲の低下などの症状に効果を発揮します。また、医師の管理のもとで服用すれば、副作用や離脱症状は最小限に抑えられるのです

もし処方された際に「抗うつ剤を飲みたくない」と思ったら、不安な気持ちを正直に医師に伝えましょう。医師に相談することで、納得のいく治療を見つけるきっかけにつながります。

抗うつ剤を飲み忘れたときの対処法については下記の記事をご覧ください。

抗うつ剤の種類と副作用

抗うつ剤の種類には次の3つがあり、それぞれ副作用の出やすさが異なります。

  • 三環系抗うつ薬
  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  • ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

それぞれの抗うつ剤について見ていきましょう。

こころちゃん
こころちゃん

どの薬を服用するかは先生と相談してくださいね

三環系抗うつ薬

三環系抗うつ薬は、うつ病治療に用いられてきた薬です。

意欲や活動にかかわる「ノルアドレナリン」の働きを高めます。[2]

効果が期待できる反面、他の新しい薬に比べて副作用が出やすい傾向にあるのが特徴です。

おもな副作用には、次のものがあります。[3]

  • 便秘
  • 眠気
  • めまい
  • 口の渇き
  • 立ちくらみ

とくに、高齢者が三環系抗うつ薬を服用すると、物忘れが出ることがあるため、使用は慎重に判断されます。

ほかの薬で効果がみられなかったときに処方される薬です。

現在では副作用が心配されるため、使われることは少なくなりました。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、脳内にあるセロトニンの濃度を高めることで、うつ症状をやわらげる薬です。

三環系抗うつ薬と比べて副作用が少ないため、現在のうつ病治療において中心的な役割を担います[2]

SSRIのおもな副作用は、下記のとおりです。[4]

  • 不安
  • 下痢
  • 吐き気
  • 消化不良
  • イライラ

医師の指示通りに継続して服用しましょう。

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)は、ノルアドレナリンとセロトニンの神経伝達を強める比較的新しい薬です。

NaSSAの副作用として報告されているのは、眠気と体重増加です。[3]

とくに眠気は強く出ることがあるため、就寝前に服用するように指示されるのが一般的です。

副作用を活かして、不眠の症状が強い患者の治療に用いられるケースもあります。

抗うつ剤が症状に効く仕組み

抗うつ剤は脳内の神経伝達物質「モノアミン」の量を調整することで、うつ病の症状をやわらげます。[2]

モノアミンとは、セロトニンやノルアドレナリンなど神経伝達物質の総称です。

モノアミンが脳内で不足すると、気分の落ち込みや意欲の低下などうつ病の症状があらわれると考えられています。

現在使われている抗うつ剤は、モノアミンの量を調節するために作られています。

抗うつ剤ごとに種類や作用に違いはありますが、最終的にモノアミンを増やすことでうつ病の症状をやわらげるのです。

抗うつ剤を飲んでよかった人の体験談

「抗うつ剤は飲まない方がいい」という意見がある一方で、実際に薬を服用して症状がやわらぎ日常生活を取り戻しつつある人もいます。

ここでは、体験談の一部を紹介します。

私はうつ病治療歴5年です。
学校でのいじめや両親の離婚などにより物心ついた頃から自殺願望があり、初めての自殺未遂は小学校5年生の時でした。社会人として働いても集中力がなく、衝動的に仕事を辞めて転職する日々。ますます自殺願望が強くなって「これではいけない」と思い病院を受診した結果、うつ病と診断されました。
(中略)
薬の効果もあって症状は良くなり、病院の職員さんからも「元気になったね!!」とよく言われます。今は週に2回デイケアにも通って仲間と楽しく過ごしています。自殺未遂やリストカットも気づいたらしなくなりました。まだ眠剤がなくては眠れないし、気分の落ち込みや妄想が少しありますが、この調子で治療をしっかりと続けて社会復帰したいです。

引用: NHKハートネット

もちろん、薬の効果や副作用には個人差があるため、すべての人が同じ経過をたどるわけではありません

ただし、薬を飲むことでつらい症状がやわらぎ、前向きな気持ちで日常生活や社会復帰を目指せるようになるのです。

抗うつ剤に頼らない治療法

うつ病の治療は、抗うつ剤を服用する薬物療法だけが選択肢ではありません。

薬を使わない治療法も、症状や状況に応じておこなわれます。

  • 心理療法
  • 生活習慣の見直し
  • rTMS療法(反復経頭蓋磁気刺激法)

心理療法ではカウンセラーとの対話を通じて、考え方のクセや行動パターンを見直します。

代表的なものに、物事の受け取り方に働きかけて気持ちを楽にする「認知行動療法」があります。[5]

また、バランスの取れた食事や適度な運動、規則正しい睡眠など生活習慣の見直しも、心身の健康を保つために必要です。[6]

ほかにも、rTMS療法は磁気で脳の特定部位を刺激し、症状をやわらげることを目指します。

副作用が少なく、特定の条件がそろえば保険適用にもなる比較的新しい治療法です。[7]

どの治療法が合っているかは人それぞれ違うため、医師とよく相談して決めましょう。

rTMS療法については下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

まとめ

「抗うつ剤は飲まない方がいい」と言われる理由は、副作用や離脱症状への心配があります。

しかし、抗うつ剤は医師のもとで適切に服用すれば、つらい症状をやわらげるのに有効な治療法です。

ほかにも、薬を使わない心理療法やrTMS療法などの治療法もあります。

大切なのは、自己判断で服用を決めたり中断したりしないことです。

抗うつ剤に関する不安や疑問はひとりで抱え込まず、必ず医師に相談しあなたに合う治療法を見つけましょう。

おおかみこころのクリニックでは毎日夜22時まで診察しています。来院予約は24時間受け付けているので、お気軽にお問い合わせください。

おおかみこころのクリニック

【参考文献】
[1]パロキセチンによる離脱症状発現の個人差に関する薬理遺伝学的研究|KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790405

[2]抗うつ剤の種類・特徴とその限界,坂本 将俊
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/53/7/53_663/_pdf

[3]井上猛先生に「抗うつ薬とうつ病の治療法」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=38

[4]Antidepressants|Royal College of Psychiatrists.
https://www.rcpsych.ac.uk/mental-health/treatments-and-wellbeing/antidepressants

[5]認知行動療法(CBT)とは|認知行動療法センター
https://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php

[6]ストレス対処法としての生活習慣 - 食う・寝る・遊ぶの充電法|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/lifestyle

[7]鬼頭伸輔先生に「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=62

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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