抗不安薬の副作用はおもに「眠気」とされていますが、薬によっては怒りやすくなったりもします。また、自分では副作用だと思う症状が、実はそうではない場合もあるので注意が必要です。
この記事では、抗不安薬の副作用や使用上の注意点、不安障害への抗不安薬以外の対策について解説します。
抗不安薬の副作用はこの4つに注意!
抗不安薬の副作用は、薬の種類によっておこる頻度に違いがあるものの、代表的なものは以下の4つです。
健忘とは、きっかけとなった出来事の数秒前、数日前、さらに前、またはその後に起こった体験や出来事を思い出す能力が部分的または完全に失われる障害です。
健忘 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版
構音障害とは、言葉を正常にはっきり発音する能力が失われる障害です。
構音障害 – 09. 脳、脊髄、末梢神経の病気 – MSDマニュアル家庭版
薬によっては、イライラ、不眠などが起きることもあります。
最近お腹がすごく減るんだよね~
う~ん……
(それは副作用じゃないなあ……)
自分では「副作用かな?」と思っても、そうではないこともあります。ふだんと違う症状がある場合は、医師に相談してくださいね。
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薬に慣れると、副作用が気にならないようになるケースもあります。しかし、薬による副作用症状がひどく日常生活に支障がある場合は「服用時間を変更する」「減量する」「他の薬に変更する」などの対処が必要です。
眠気
抗不安薬には、脳が興奮している状態をしずめ、不安や緊張をやわらげるはたらきがあります。飲む人によっては眠気が副作用として出ることがあるでしょう。
また、注意力、集中力、運動反射能力などが低下するおそれもあるので、抗不安薬を使う方は自動車の運転など危険をともなう機械の操作をしてはいけないとされています。
ふらつき
抗不安薬には「筋弛緩作用」という筋肉をゆるめる作用があるので、ふらつきや脱⼒の副作⽤があらわれることがあります。
とくに高齢者では、運動失調などの副作用も発現しやすいため、さらにふらつきがおこりやすいといえます。最悪の場合、転倒→骨折といった危険性もあるので注意が必要です。
健忘
抗不安薬服⽤後のできごとを覚えていないといった「健忘」という副作用がおこる場合もあります。これは、一種の記憶障害です。
たとえば、夜中に起きた記憶はないのに「朝起きると食べた記憶のないごみがある」「いつもと違う場所にものがある」というのが健忘のエピソードです。その間の記憶がないだけなので、行動はいつも通りできています。
一度「健忘」を体験すると、とても驚かれる方が多いものの、実は抗不安薬を含む精神科で使う薬の副作用としては珍しいことではありません。ただ、患者本人や家族に危険が及ぶ可能性もあるので、必ず医師へ報告しましょう。
構音障害
話すときにろれつがまわらないという「構音障害」がみられることもあります。
しゃべるときには、くちびる、舌、のどの筋肉がお互いに調整し合って音を発しているのです。抗不安薬の使用により、これらの筋肉がうまく作用できなくなるため、舌足らずな話し方になってしまいます。
抗不安薬をはじめ精神科で扱う薬では、構音障害が出るのは珍しいことではありません。この症状が出た場合も、すぐに医師へ報告しましょう。
抗不安薬の注意点【依存性や離脱症状への対策】
長期間連用することで依存を生じることがあるので、服用の際は必ず医師の指示を守ります。
依存とは、薬を摂取したいという強い思いをコントロールができないことです。基本的に、抗不安薬は一生飲み続ける薬ではありません。症状が改善したら、医師と相談の上で薬を減らしていくプランを検討していきます。
減薬・休薬を実施する場合は、再発リスクを低減することも考えるので、人によっては安全性に注意しながら、ある程度⻑期間服⽤する場合もあります。
減薬・休薬は医師の指示に従い、慎重に行います。自分の判断で服用をやめたり、量を減らしたりするのはやめましょう。幻覚、不安、妄想などの離脱症状が起きる場合があります。
不安障害への抗不安薬以外の対策
不安障害の抗不安薬以外の対処法には以下のようなものが挙げられます。
- 生活習慣の改善:規則正しい生活をする(お酒やカフェインを摂り過ぎない)
- 認知行動療法:思い込みや偏りを正して、行動を変えるように促す
- 応用リラクゼーション法:不安になる状況でリラックスするための方法を指導する
不安障害への抗不安薬以外の対策は医師の指導のもとで行われるのが基本です。自己流で行うと症状を悪化させる場合もあるので控えましょう。
抗不安薬へのよくある質問
抗不安薬を普通の人が飲んでも、何ら普段と変わりなく、日常生活を送ることができます。
なぜなら、抗不安薬は正常な意識や行動に影響を与えないで、効果を発揮することが研究結果で報告されているからです。
ただし、不安障害のある人が抗不安薬を飲んだ場合と同じくらいの頻度で副作用が起きる可能性はあります。
医師は症状、年齢や持病などの患者背景に合った抗不安薬を処方します。
「普通の人が飲んでも大丈夫」だからと言って、家族や友人から抗不安薬を譲り受けて飲むのはやめましょう。思いもしない副作用が現れる場合があります。
抗不安薬を飲みながらでも、通常通り仕事はできます。しかし、副作用の眠気などが起きる可能性があります。
医師は患者の症状に合わせて薬を処方しています。
「眠気がひどくて仕事に支障があった」などの状態を報告すれば、服用時刻を変更する、減量する、薬を変更するなどの対処法を指示してくれます。まずは医師に相談しましょう。
抗不安薬を飲んでも効かない原因としては、以下の可能性が考えられます。
① 効いているが効果をうまく把握できていない
② 効く抗不安薬を飲んでいない
③ 本当に効かない
抗不安薬の効果は目に見えないので、毎日の生活で効果を知ることが難しいことも多いでしょう。
自分で生活や気持ちの変化を日記やメモを記すと変化がわかりやすくなります。
抗不安薬にはたくさんの種類があるので、まだ自分に合った抗不安薬に出会っていない可能性も考えられます。
医師に自分の状態をきちんと伝えることで、最適な薬を処方してもらいやすくなるでしょう。薬を飲んで変わったことを記録して、医師に伝えるようにしましょう。
まとめ|抗不安薬の副作用は医師に相談しよう!
抗不安薬には、眠気・ふらつき・健忘・構音障害などの副作用があります。
自分では副作用を疑っていたとしても、そうでないことももあります。場合によっては、何らかの対処が必要になる場合もあるので、上記の副作用をはじめ、いつもとは違う症状に気づいたらすぐに医師に相談しましょう。
また、長期連用することにより、依存症のリスクが高まることも知られています。基本的に一生飲み続ける薬ではないので、症状が治まれば減薬・休薬します。薬の減らし方を間違うと再発リスクもあるので、減薬・休薬の際には医師の指示をあおぎましょう。
参考文献
睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン ー出⼝を⾒据えた不眠医療マニュアルー
英国王立精神科医学会 日本語版こころの健康ガイド|不安障害と全般性不安障害(GAD)
- この記事の執筆者
- 藤野紗衣
薬剤師。精神科病院に勤務経験あり。現在は薬剤師ライターとして執筆活動中。