炭酸リチウムは気分の浮き沈みをおさえる「気分安定薬」であり、躁病や躁うつ病の躁状態治療に用いられます。
躁状態では、異常なほどの気分の高揚が続き「自分はすごい」という万能感が強くなり、しばしば周囲とトラブルも起こします。
炭酸リチウムは飲み始めてすぐに効果を実感できないことも多く「本当に効くのだろうか?」と不安に思う人も多いでしょう。
この記事では、炭酸リチウムが効き始めるタイミングと副作用について解説します。
躁に対する炭酸リチウムは効き始めるまで2週間
躁状態の場合、炭酸リチウムが効き始めるタイミングは服用開始から2週間です。飲み始めてすぐに効果を実感できないことも多く、時には副作用だけを感じることもあるでしょう。焦らないで続けることが大切です。
一方、躁うつ病の場合はうつ状態でも抗うつ薬ではなく、気分安定薬を使います。これは短期的に見ると抗うつ薬が有効でも、将来的には気分変動を悪化させるリスクが高いとされているからです。
うつで炭酸リチウムが効き始めるまでは6週間
炭酸リチウムが効き始めるタイミングは、躁とうつのそれぞれのケースで違います。うつ状態の場合、躁状態の場合よりも効果発現のタイミングは6週間と長くかかるようです。効果がなかなか出ないケースも多く、そのような場合はうつ状態の薬を変更します。
躁うつ病の治療期間は5年が目安
躁うつ病は再発しやすい病気です。病気が完全に治ったわけではないけれど、一時的に症状が軽くなり安定している状態。これを「寛解」と呼びます。
寛解しても再発を繰り返せば心理的にも社会的にもダメージがあるため、できるだけ避けたいものです。そのためには「維持療法」が重要です。
維持療法開始の時期は、患者と医師が再発のリスクや治療の負担について話し合った上で決まります。個人の差が大きく基準を決めることは難しいものの、以下のような場合では維持療法の適応となるでしょう。
- 重症の躁状態が1回でもあった
- 2回以上の躁状態があった
- 重症の抑うつ状態を繰り返している
- 家族に躁病や躁うつ病患者がいる
一般的に、躁うつ病が寛解しても、5年間を目安に投薬を継続すべきとされています(今日の治療薬解説と便覧2017 南江堂)。
炭酸リチウムの有効率は70~80%
炭酸リチウムの躁病や躁うつ病の躁状態への有効率は高く、70~80%です。古くからある良い薬のため、WHOが定めた、世界的な政策ツール「WHO必須医薬品モデルリスト」にも掲載されています。「必須医薬品モデルリスト」は専門家委員会により2年ごとに更新され、有効性が高くコストパフォーマンスの良い医薬品を提示しています。
炭酸リチウムの副作用
炭酸リチウムの副作用は減量すると速やかに消失することが多いです。ひどい場合は他の薬へ変更します。ここでは、炭酸リチウムの副作用について、以下の4つを紹介します。
最も注意すべきなのはリチウム中毒
最も注意すべきなのは、リチウム中毒です。炭酸リチウムは有効濃度と中毒濃度が近いことで知られています。
リチウム中毒の初期症状は以下の通りです。
神経や精神の症状 | ・手が震える ・意識がぼんやりする ・眠くなる ・めまいがする ・言葉が出にくくなる |
胃腸の症状 | ・吐き気がする ・下痢をする ・食欲がなくなる ・口が渇く ・お腹が痛くなる |
上記の症状が現れたら、すぐに医師に連絡しましょう。中毒ではなく副作用として手が細かく震えることもありますが、症状が悪化すると死の危険も伴うため注意してください。
とくに利尿薬、ACE阻害剤と呼ばれる降圧薬、NSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛薬を併用している場合、脱水時や腎機能低下時は注意が必要です。このため、炭酸リチウム服用中は定期的にリチウムの血中濃度を測定する必要があります。
服用初期に見られる消化器症状:口渇・嘔吐・下痢・胃部不快感
服用初期には「口渇」「嘔吐」「下痢」「胃部不快感」などがあらわれることが多いものの、慣れると治まってきます。効果より先に副作用を感じる人もいる可能性がありますが、焦らずに服用を継続しましょう。
よくある副作用めまいや眠気、多尿、振戦、脱力倦怠感
比較的よく見られる副作用に「眠気」「多尿」「手指の振戦」「脱力倦怠感」といった症状があります。ここで、多尿の原因は尿濃縮能低下です。
0.5%未満で体重増加や皮疹
また、ごくわずかの人に体重増加や皮疹が現れる場合があります。
Q1. 炭酸リチウムはうつ状態を改善しますか?
躁うつ病のうつ状態は改善します。
躁うつ病のうつ状態に気分安定薬の炭酸リチウムを使うのは、抗うつ薬だと短期的には有効でも将来的な気分変動を悪化させるリスクがあるからです。躁うつ病には、躁とうつがはっきりしているⅠ型と軽度の躁とうつからなるⅡ型があります。うつ状態ばかりが目立つⅡ型に抗うつ薬が長期に渡って投与されると、治らず長引く恐れがあります。
Q2. 炭酸リチウムは躁鬱病に効果がある?
炭酸リチウムは躁鬱病に効果があります。
1900年代半ばに抗躁作用が発見され、日本では1980年に販売開始されました。躁病や躁うつ病の躁状態への有効率は70~80%という高い値で、良い効果が期待できる場合が多くあります。
Q3. 炭酸リチウムはどんな人が飲みますか?
炭酸リチウムは、躁病や躁うつ病の躁状態の人が飲む薬です。
躁うつに限らず、その他の精神症状にも効果を発揮します。たとえば、治療抵抗性のうつ病に他の抗うつ薬と併用して用いられることがあります。これは「リチウムの効果増強療法」と呼ばれています。
まとめ|炭酸リチウムは効き始めるまで2週間以上かかる
この記事では、炭酸リチウムが効き始めるタイミングと副作用について解説してきました。躁状態の場合、効果を実感できるのに2週間以上かかることがあります。飲み始めてすぐに効果を実感できないことも多いでしょうが、焦らないで服用を継続しましょう。躁病や躁うつ病の躁状態への有効率は70~80%と高いのでほとんどの人に効く良い薬です。
躁うつ病は寛解しても、5年間を目安に投薬を継続すべきと言われています。副作用に気をつけながら、服用を継続するコツを身につけましょう。
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参考文献
今日の治療薬解説と便覧2017、南江堂