先生、テグレトールってどのくらいで効く薬なの?
人によって違うけど、早い人だと3~5日で効き始める薬だよ!
テグレトールはてんかんの薬ですが、躁病および躁うつ病の躁状態、三叉神経痛などにも使われています。
テグレトールを飲み始めると眠気やふらつきなどが起こり、「本当に効いているのだろうか」「眠気は何とかならないのか」と不安に思う人も多いでしょう。
この記事では、テグレトールの効果が出るまでにかかる時間と副作用について解説します。
この記事の内容
抗てんかん薬テグレトールの効果が出るまでの期間【10日間】
テグレトールの効果発現までの時間は「おそくとも10日以内」だと言えるでしょう。早い人だと3〜5日から効き始める人もいます。躁病や躁うつ病の躁状態に用いる炭酸リチウムよりはやや早め、デパケンよりはやや遅めという位置づけです。
てんかん薬の効果が出るまでの日数は、半減期(薬の血液中濃度が半分になる時間)の約5倍と言われています。デパケンの半減期は単剤で16~24 時間であり、その5倍は3~5日です。つまり、テグレトールは早い人で服用から3~5日で効き始め、10日までに効き始めると考えてよいでしょう。
テグレトールの効果【適応疾患と作用機序】
テグレトールはてんかん、躁病および躁うつ病の躁状態、三叉神経痛に使われている薬です。また、医療保険の適応外(費用は全額自己負担)であるものの、神経因性・癌性などの疼痛や舌咽神経痛の緩和目的にも使われます。
躁状態の改善にはGABA受容体の活性化が関与しており、てんかん発作や三叉神経痛の改善では、神経細胞の電位依存性ナトリウムチャネルを遮断することで神経の興奮を抑制しています(今日の治療薬解説と便覧2017、南江堂)。
テグレトールの効果的な飲み方
テグレトールを飲むときに、副作用のリスクを避けるための最適な方法を紹介します。
始め方・増やし方(用法用量)
最初は1日量200~400㎎を1~2回に分けて開始、至適な効果が得られるまで徐々に増量していきます。通常は1日600㎎まで増量しますが、症状によっては1日1,200㎎まで増量可能です。
治療の初めから必要量全量を投与すると急性の中毒症状が出やすいため、症状へ効果を発揮する最適な量まで少しずつ増量する方法を取ります。
やめ方
テグレトールをやめる場合は、時間をかけて少しずつ減量していく方法を取ります。なぜなら、連用中の急激な減少や投与の中止で症状が悪化する場合があるからです。
テグレトールの長期服用で起こる副作用
テグレトールの長期服用で起こる主な副作用は「眠気」「複視」「運動失調」などの神経症状と「もうろう状態」「自発性の低下」精神症状です。
そのほかにも、皮膚症状や催奇形性、生殖能力障害の可能性などの副作用に注意する必要があります。
ここでは、とくに注意すべき以下の副作用4つについて解説します。
それぞれについて解説します。
精神症状:眠気・めまい・ふらつきなど
約10%の人に眠気、めまい、ふらつきなどの精神症状が現れます。精神症状は飲み始めに多く、次第に軽減する場合が多いですが、症状が強く日常生活に支障がある場合は、医師に相談しましょう。
発疹
テグレトールを飲み始めて、効果が出始める10日頃に発疹があった場合は、特に注意しましょう。そのまま服用を続けると、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群))などに進展する可能性があります。
胎児奇形:催奇形性および乳汁移行のリスク
妊娠中の女性が服用すると、二分脊椎を含む奇形や発育障害のある子どもを出産した例が多いという疫学的調査報告があります。また、新生児に出血傾向が現れたり、自身の葉酸低下が生じたりするという報告もあります。
母乳中へ移行することも報告されているので、授乳は控えましょう。
男性不妊:精子形成異常などの生殖能障害
男性の生殖能力障害と精子形成異常の報告があるので、妊活中の方や妊活を考えている方は医師に相談しましょう。
テグレトールと飲み合わせが禁忌の薬剤は?
テグレトールは肝臓でさまざまな代謝酵素を誘導します。テグレトールが誘導する酵素で代謝される薬剤は作用が減弱する可能性があります。
多くの薬剤との間で相互作用があることが報告されていますが、可能性のあるすべての組み合わせについて検討されているわけではありません。現在分かっている薬以外にも禁忌になる薬剤も存在する可能性があります。そのため、テグレトールを他剤と併用する場合には十分注意しましょう。
現在、他に薬を服用中の方は、お薬手帳を確認してみましょう。ここに挙げている薬剤以外の薬を服用していて不安な場合も主治医や薬剤師に相談してください。
テグレトールと一緒に飲んではいけない「併用禁忌」の薬剤は以下の通りです。
- ブイフェンド:抗真菌薬
- アドシルカ、オプスミット:肺動脈性肺高血圧治療薬
- ブリリンタ:急性冠症候群治療薬
- グラジナ、エレルサ、ジメンシー、スンベプラ、エプクルーサ:抗C型肝炎ウイルス薬
- エジュラント、ジャルカ、ビクタルビ:抗HIV薬
テグレトールの副作用の眠気を抑える方法
テグレトールには鎮静作用があるため、副作用として「眠気」が現れます。眠気が出るのは薬の飲み始めの頃に多く、次第に慣れるようです。
ここでは眠気を抑える方法について解説します。
血中濃度を測定して様子を見る
生活に支障がないのであれば、しばらく様子を見てみましょう。1〜2週間ほどすると少しずつ慣れて、眠気を感じにくくなります。
服用量が多く、眠気がつらい場合は中毒症状の可能性があります。血中濃度を測定して、テグレトールが12μg/mL以上であれば中毒(てんかん診療ガイドライン2018)と認めて良いでしょう。テグレトール中毒の場合は減量を検討することになります。
眠気が生活に支障をきたすのであれば、すぐに主治医に相談してください。他の対策を考えていきましょう。
24時間予約受付中
服用回数を増やす
テグレトールの服薬回数を増やし、一回あたりの量を減らすことを検討してみます。1~2回に分けて服用しているのであれば、2~3回に分割するのです。
薬の副作用は血中濃度のピーク時に最も強く出るので、薬の服用回数を増やすと血中濃度が安定し、副作用は一般的に軽くなります。薬を飲んでしばらくして眠気が強くなる場合は、試してみてもよいでしょう。
ただ、服用回数を増やすと飲み忘れのリスクも高まります。薬を飲み忘れた場合は気づいたときに服用するようにします。
夕食後や就寝前に服用する
服用時刻を夕食後や就寝前に変更することも可能です。しかし、テグレトールの服用時刻には理由がある場合もあります。自分だけで判断せず、主治医に相談しましょう。
減量する
テグレトールの効果が出ている場合は、少し減らしてみることをを検討します。テグレトールを減量しても効果はそのまま、眠気が軽減するのであればその方が良いでしょう。
しかし、個人で減薬を判断するのではなく、必ず主治医に相談してください。薬を減量すべきかどうかは、それまでの経過や症状から判断する必要があります。
他の薬に変更する
眠気が日常生活に支障があるほど強く、ここまでの方法で改善できないのであれば、他の薬へ変更することになるでしょう。
他の薬へ変更する場合は効果も含めて総合的に判断する必要があります。躁うつ病の躁状態で服用中の場合は、抗躁効果のほかに、抗うつ効果や再発予防効果についても考慮します。
どの薬に変更するかは、副作用の眠気だけでなく総合的に判断することが必要です。眠気があってもテグレトールが最適ということもあります。主治医としっかりと相談しながら考えましょう。
テグレトールが効くまでの期間は10日間|まとめ
この記事では、テグレトールの効果が出るまでにかかる時間と副作用について解説しました。
テグレトール(カルバマゼピン)の効果が出るまでにかかる時間は10日以内です。躁病や躁うつ病の躁状態に用いる炭酸リチウムよりはやや早めだけど、デパケンよりはやや遅めというところでしょう。
テグレトールの飲み始めには眠気、めまい、ふらつきなどの精神症状が起きることもありますが、慣れてくると感じないこともあるようです。また、併用禁忌の薬があるので既に服用している薬剤がある場合は、主治医や薬剤師に伝えましょう。さらに、男女とも妊娠を考えている場合は主治医へ相談することをおすすめします。
24時間予約受付中
参考文献
今日の治療薬解説と便覧2017、南江堂
- この記事の執筆者
- 藤野紗衣
薬剤師。精神科病院に勤務経験あり。現在は薬剤師ライターとして執筆活動中。