日本では、うつ病を含むメンタルヘルス不調によって休職する人が年々増えています。[1]いざ休職を決断しても、復帰するまでのイメージが湧かず、休職期間がどれくらい必要なのかと不安な日々を過ごしている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、うつ病で休職するときのポイントや、休職期間の目安、復帰に向けての準備について解説します。
休職中の方の不安が少しでも和らぎ、復職に向けた見通しを持てれば幸いです。
この記事の内容
うつ病での休職期間の平均
うつ病で仕事を離れる期間には個人差があるため、期間を明確に提示することはできません。
ただし、メンタルヘルス不調での休職期間の平均は約3.5カ月、再発し2回目の休職となった場合は約5カ月と、さらに長くなる傾向があります。
「入社年齢が高い」「1回目の病休日数が長い」ことが、2回目の休職期間が長引く要因と考えられています。[2]
しかし、これらはあくまで平均であり、病状や回復速度によって休む期間は異なります。
自分と他人を比べて焦らず、主治医や産業医と相談しながら、自分に合ったペースで職場復帰を目指しましょう。
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うつ病での休職期間の長さによって変わるメリットデメリット
うつ病で仕事を休む期間は、症状の回復具合によってさまざまです。
休職期間の長さによって仕事や生活にどのような影響があるのか、見ていきましょう。
休職期間が短い場合
休職期間が短い場合、復職後の仕事に適応しやすかったり、同僚とのコミュニケーションもとりやすかったりというメリットがあります。
これは仕事を離れていた期間が短いため、復職しても職場にもなじみやすいのだと考えられます。
また、給料が減る期間も短くなるため、経済的な負担も軽減されるでしょう。
しかし、心身が回復しないまま復帰してしまうリスクも高くなります。休職中に治療やセルフケアに時間を割けなかったり、復職後に再度ストレスにさらされたりすると、症状が再発する可能性もあるのです。その結果、再休職や長期休職に陥るケースも少なくありません。
休職期間が短いと職場復帰しやすい一方で、うつ病を再発しやすいため注意が必要です。
休職期間が長い場合
休職期間が長い場合、心身の回復に時間をかけられるメリットがあります。
自分の気持ちや価値観を見直す機会にもなり、復職以外の新しい選択肢を考える時間も得られるでしょう。
一方、長く仕事から離れていると、いざ復職を考えたときに職場に対する不安が増し、「職場恐怖」という状態に陥ることもあります。また、休職中は人と関わることが少なくなることで孤立しやすく、症状が悪化する可能性もあります。[3]
収入も減るため、経済的な負担も考慮しなければなりません。
休職期間が長くなると、回復までの心のゆとりができるメリットもありますが、その分復帰が難しくなってしまうというデメリットもあるのです。
うつ病での休職期間を決めるときに考えること
うつ病で休職する場合、いつ復帰するかを自分だけで判断するのは難しいのではないでしょうか。
ここでは、休職期間を決めるときに考えておくことについて解説します。
専門家に相談する
休職期間を決める前に、まず医師やカウンセラーに相談してみましょう。心身の状態を客観的に評価して、自分の症状や回復状況に応じて復帰時期を決めることができます。
また、職場復帰に向けた具体的な計画やアドバイスをもらえたり、職場に対しても自分の状況を説明しやすくなるのでおすすめです。
復帰条件を職場と確認しておく
休職期間を決めた後も、上司や同僚とコミュニケーションを取りながら、復帰条件や勤務形態を調整することも大切です。[4]
たとえば、復帰後は時短勤務やテレワークなどの柔軟な働き方に変えることで、仕事上のストレスを減らせる可能性があります。
ただし、こうした提案をするなら職場との信頼関係や協力体制が欠かせません。
休職中には職場と定期的に連絡を取り、良好な関係を築いておくことをおすすめします。
このように、休職期間を決める際には、専門家と連携しながら職場とも話し合い、無理のない働き方ができるように調整することが大切です。
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うつ病での休職期間の過ごし方のポイント
うつ病で仕事を休んでいる間、何をしたらいいのか分からない人も多いのではないでしょうか。
ここでは、休職期間の過ごし方のポイントについて紹介します。
心身の回復に努める
うつ病で休職するからには、まずは症状の回復に努めることが大切です。
休職期間中は定期的に病院へ通い、必要な治療を受けることが最優先されます。医師の指示に従って、薬物療法や心理療法などの適切な治療を受けましょう。
また、セルフケアとして、十分な睡眠や適度な運動などの生活習慣の改善も大切です。生活習慣の乱れは、うつ病を悪化させることがあります。
とくに、睡眠・覚醒リズムの改善は重要です。睡眠不足や過剰な睡眠はうつ病の症状を悪化させるといわれています。[5]
自分の体調に合わせて、必要な治療を受け規則正しい生活を送ることが、うつ病からの回復への第一歩です。
適度に周囲とコミュニケーションをとる
うつ病で休職している間は、適度に周囲とコミュニケーションをとることも大切です。
長く休むと職場復帰が難しくなる場合もあります。[3]職場の上司や同僚と定期的に連絡をとっておけば、仕事に復帰するハードルも低くなるでしょう。
また、人との関わりは孤立感や孤独感を軽減できる可能性があります。孤独感が症状の悪化につながることもあるのです。
ただし、コミュニケーションをとることがストレスになるときには、無理をしないでください。
心地よい距離感を保ちながら、周囲の人とよい関係を築いておきましょう。
職場復帰に向けた準備をする【リワークプログラムについて】
休職中に症状が回復してきたら職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を受けることでスムーズに仕事に復帰できる可能性があります。
リワークとは、メンタルヘルスの問題で休職した人が復職に向けて、必要なスキルや知識を身につけるためのプログラムのことです。
うつ病では、抑うつ症状が改善していても一定の認知機能障害が残るといわれています。[6]そのまま仕事に復帰すると、うっかりミスや忘れやすさなどの仕事上の問題につながる可能性があるのです。また、急に仕事を再開することで、ストレスを強く感じて症状が再発してしまうこともあります。
このように復職後に問題を抱えないためにも、リワークを活用することをおすすめします。
リワークの期間は一般的に約3~7ヶ月といわれています。リワークを受けることで、職場復帰率や復職後の生産性が向上するという研究結果もあり、効果が実証されている支援なのです。[7]
復職を考え始めたら、主治医にリワークについて相談してみましょう。[8]
うつ病での休職期間に退職の選択肢も
休職期間中は、これまでの働き方を見直し、退職や転職を考える人もいるでしょう。実際、メンタルヘルスの問題で休職した人のなかで約半数はそのまま復帰せず退職しています。
ここでは、「休職期間中に退職するメリット・デメリット」「退職を決断したときに確認すること」について解説します。
休職期間に退職するメリットとデメリット
うつ病で休職中に退職することにはメリットもあればデメリットもあります。
メリットとしては、仕事から解放されてストレスが減ることです。元の職場に復帰する必要もないため、復職へのプレッシャーもなくなり、気持ちも楽になるでしょう。
また、転職するなら環境を変えられるチャンスにもなります。
一方で、退職すると経済的にもキャリア的にも不安が増す可能性があります。[9]
経済面では、傷病手当の支給が止まるだけでなく、失業保険や年金などの受給条件も変わります。また、仕事は自分の存在意義や自己肯定感に影響することがあり、仕事を辞めることで社会的な役割や自分自身のアイデンティティを失う可能性もあるのです。
このことから、休職中に退職を考えている場合は、メリットとデメリットをよく理解したうえで決断することが大切です。
退職する前にやるべきこと
仕事をやめることで、自分の将来に大きな影響を与える可能性があります。実際に退職する前には慎重に決断するのが得策です。
退職を決断する前にやるべきことを、以下にまとめました。
- 就業規則を確認する
- 心身の健康状態を見極める
- 主治医や家族とよく話し合う
まず、退職する前に手続きや制度について確認しておきましょう。
会社の就業規則や労働契約書などを確認し、退職届の期限や方法、退職金や社会保険の手続きなどを把握しておくとスムーズです。会社からの指示や要求に応じて、引き継ぎや残務処理をおこなう必要があることも理解しておきましょう。
自分の心身の健康状態も考慮しておかなければなりません。抑うつ症状があると正常な判断ができないこともあります。自分の気分や感情に左右されて、退職を決断してしまう可能性もあるのです。
退職は一時的な解決策ではないため、本当に自分のためになるかどうかを冷静に考える必要があります。
最後に、退職する前に主治医や家族とよく話し合い決断してください。自分自身の考えを話すことで、自分の気持ちや考えを整理したり、客観的な意見やアドバイスをもらえることもあります。
以上のことから、退職する前には手続きについてはもちろん、周囲の人と話し合いながら、最善の選択をしてください。
まとめ
うつ病での休職期間には個人差がありますが、平均は約3.5カ月といわれています。ただし、仕事を休む期間はどれくらいがよいという基準はなく、症状の回復度に応じて医師と相談して決めましょう。
休職期間中は心身の健康の回復に努め、適度に周囲とコミュニケーションをとることが大切です。また、職場復帰を考え始めたら、リワークなど必要な支援を受けることも考えておきましょう。
ひとつの選択肢として、休職中に退職を考えるかもしれませんが、うつ病により正常な判断ができないこともあります。この場合、主治医や家族とよく話し合い、最善の方法を探ることが大切です。
治療を続けながら必要な支援を受け、仕事復帰に向けて準備していきましょう。
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参考文献
1)令和4年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf
2)主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究|厚生労働省P13,研究8. https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/rousai/hojokin/dl/28_14010101-02.pdf
3)うつ病ガイドライン|日本うつ病学会|P23、7)勤労者のうつ病における休職の可否について、メリット、デメリット
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/20190724-02.pdf
4)こころの健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省.
https://www.mhlw.go.jp/content/000561013.pdf
5)軽症のうつ病 症状とチェック法、基本的な治療、効果的なセルフケア|NHK.
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_307.html
6)うつ病ガイドライン|日本うつ病学会|P22、リハビリテーション
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/20190724-02.pdf
7)メンタルヘルス不調者の出社継続率を91.6%に改善した復職支援プログラムの効果https://www.jstage.jst.go.jp/article/sangyoeisei/54/6/54_E12001/_html/-char/ja/
8)リワークプログラムとは?|日本うつ病リワーク協会
https://utsu-rework.org/rework/
9)第10回 メンタル不調で休職中の社員が退職する場合雇用保険はもらえるの?|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-qa/mh-qa010/
- この記事の執筆者
- 原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。