先生、抗てんかん薬リボトリールってやばい、麻薬や大麻のような多幸感のある薬なの?
ちがうよ。副作用が現れているだけで、多幸感もないし、怖い薬じゃないよ!
リボトリールは、脳の興奮を抑えてリラックスをさせる働きのベンゾジアゼピン系抗てんかん薬です。てんかん治療のほかに、小型(運動)発作や自律神経発作にも使われる薬剤です。
服用するとラリったり、痩せたり、依存したりするので、まるで薬物中毒になったようで怖い薬と思われがちです。しかし、副作用が起きているだけで「悪魔の薬」ではありません。
この記事では、リボトールがやばい薬ではないことや効果、副作用について、解説します。
リボトリールはやばい薬ではなく、多幸感もない!
抗てんかん薬の選択は発作型に基づいて行いますが、日本てんかん学会ではリボトリールを全般発作では第一選択薬とはしていません。しかし、ミオクロニー発作には有効です。
リボトールでラリるのは副作用の「構音障害」が起きているため、痩せるのは副作用の「食欲不振」のためです。また、リボトールはベンゾジアゼピン受容体を介して作用するので、抗不安薬と同じように依存もしやすい薬剤です。
ラリる、痩せる、依存するというと、まるで「薬物中毒」のようですが、「効いている」ということなので心配はいりません。
リボトリールの効果【適応疾患と作用機序】
リボトールはベンゾジアゼピン受容体に選択的に結合してGABAニューロンの作用を増強することで効果を発揮します。リボトールの効果が出るまでの時間には個人差があり、早い人で2〜3日、遅い人では2週間かかることもあります。
適応症
リボトールは精神運動発作や自律神経発作のとき、また以下のような小型(運動)発作のときに使われます。
- ミオクロニー発作
- 失立(無動)発作
- 点頭てんかん(幼児けい縮発作、BNSけいれんなど))
とくに顔の筋肉や手足がぴくつく「ミオクロニー発作」に効果が高く、他の抗てんかん薬が十分効かないときに切り替えたり、併用したりします。
適応外使用
公的医療保険の適応外(全額自己負担)ですが、以下の疾患および症状緩和に用いられることもあります。
- REM睡眠行動異常症
- 躁うつ病
- ミオクローヌス症状
- しびれ
- むずむず脚症候群
- 本態性振戦
- 癌性疼痛
躁病や躁うつ病の躁状態の興奮や不穏に対して、一時的に補助的な薬剤として使う場合もあります。しかし、「衝動性や攻撃性のある躁病患者」や「アルコール依存症を合併した躁病患者」では効果が見られない場合もあるので注意が必要です。
リボトリールの長期服用で起こる副作用
リボトリールの承認時までの臨床試験および承認後の使用成績調査で起きた副作用は、以下のとおりです。
- 中枢・末梢神経系障害 11.7%・・・めまい、運動失調、緊張低下など
- 精神障害 16.8%・・・傾眠、神経過敏(不機嫌、興奮など)、感情鈍麻、感情不安定など
- 呼吸器障害 3.1%・・・喘鳴など
- 胃腸系障害 3.2%・・・唾液増加(流涎など)、食欲不振、悪心・嘔吐など
- 一般的全身障害 1.6%・・・脱力感、倦怠感など
リボトリールはベンゾジアゼピン受容体を介して作用します。そのため、飲まないとけいれん発作やせん妄などの離脱症状が現れたり(依存)、同量では以前と同じ効果が得られず、増量が必要になったりする(耐性)ことがあります。
眠気やふらつきなどの精神症状は投与初期に多く、たいていの場合は服用を継続しているうちに慣れるようです。
妊娠中にベンゾジアゼピン系薬剤を服用した場合、新生児に口唇裂、口蓋裂などが多いという報告があります。また薬剤が乳汁へ移行して、新生児に無呼吸や黄疸、嗜眠(異常な眠気)、体重減少などが起きると言われています。そのため、妊婦への投与するのは、治療上の有益性(母体のてんかん発作頻発を防ぎ、胎児を低酸素状態から守る)が危険性を上回る場合のみです。また授乳中は服用を控えるようにしましょう。
リボトリールの効果的な飲み方
リボトリールを飲むときに、副作用のリスクを避けるための正しい飲み方を紹介します。
始め方・増やし方
最初は1日0.5~1mgを1~3回に分けて開始し、至適な効果が得られるまで少しずつ、通常は1日2~6mgまで増量します。
止め方
投与を中止する場合には、医師の指示に従い、少しずつ減量します。なぜなら、急に減らしたり中止したりするとさまざまな離脱症状が現れるからです。離脱症状とは、けいれん発作やせん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想などです。
Q1. リボトリールは不安に効く薬ですか?
A1. リボトリールには、抗不安作用があります。なぜなら、抗不安薬と同じように、ベンゾジアゼピン受容体に結合することで効果を発揮するからです。そのため、不安障害のリスクを持つてんかん患者で使用を検討する場合があります。
精神症状のリスクを持つてんかん患者では、それぞれに使用を避けるべき抗てんかん薬や使用を考慮して良い抗てんかん薬があります。不安障害を持つてんかん患者では、リボトールの他にガバペンチンの使用を検討し、ラモトリギンやレベチラセタムは使わないようにします。
Q2. リボトリールの販売中止の理由は何ですか?
A2.リボトールは、2011年の東日本大震災の際に、製薬会社の工場も被災したために、一時販売中止という事態が発生しました。
被災後、必要分は輸入を行うことで乗り切っていました。現在は、通常通り製造販売ができる状態です。
リボトリールはやばい薬ではなく多幸感もない!|まとめ
リボトリールはベンゾジアゼピン系抗てんかん薬で、てんかん治療のほかに、小型(運動)発作や自律神経発作にも使われる薬剤です。
服用するとラリったり、痩せたり、依存したりするので、まるで薬物中毒になったようで怖い薬と思われがちですが、副作用が起きているだけで「悪魔の薬」ではなく、多幸感はありません。
リボトールの効果が出るまでの時間は、早い人で2~3日、遅いと2週間くらいです。眠気、ふらつきなどの精神症状が投与初期に多く現れますが、たいていの場合は次第に慣れるようです。
医師の指示に従い、正しく服用するようにしましょう。
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参考文献
今日の治療薬解説と便覧2017(南江堂)
- この記事の執筆者
- 藤野紗衣
薬剤師。精神科病院に勤務経験あり。現在は薬剤師ライターとして執筆活動中。