「セロトニンを増やすことで、気分の落ち込みや気力のなさを改善したい」
「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)には副作用や離脱症状はないの?」
このようなお悩みや疑問をかかえていないでしょうか?
セロトニンは脳内の神経伝達物質であり、精神を安定させる作用をもつことから、テレビや雑誌などでは「幸せホルモン」とも呼ばれています。
この記事では、柴胡加竜骨牡蛎湯とセロトニンとの関係や、柴胡加竜骨牡蛎湯が効果を示す疾患などについて紹介します。
即効性の有無や、服用するうえでのリスクについても解説するので、ぜひ最後まで読んでみてください!
この記事の内容
柴胡加竜骨牡蛎湯とセロトニンの関係
柴胡加竜骨牡蛎湯は、セロトニンの細胞外濃度の低下を抑制するといわれています。[1]
うつを引き起こす原因のひとつは、神経細胞の外に存在するセロトニン量の減少です。[2]
柴胡加竜骨牡蛎湯は細胞外のセロトニンの減少を防ぐため、気分の落ち込みや不安などの抑うつ症状の緩和に役立つのだと考えられます。
実際にラットを使用した実験では、柴胡加竜骨牡蛎湯により、慢性的なストレスによるうつを改善する可能性が示唆されています。[1]
柴胡加竜骨牡蛎湯とは
柴胡加竜骨牡蛎湯は、イライラや不安、不眠などでお悩みの方におすすめの漢方薬です。[3]
柴胡加竜骨牡蛎湯の配合生薬である「竜骨(りゅうこつ)」や「牡蛎(ぼれい)」は「安神薬(あんしんやく)」と呼ばれており、不安を取り除いて精神を安定させるはたらきをもっています。
東洋医学の考えによると、不安やイライラなどの原因は、からだのエネルギーである「気」の異常です。
柴胡加竜骨牡蛎湯には「気」を巡らせる作用があるため、精神症状の緩和に役立つのです。
柴胡加竜骨牡蛎湯の効果
柴胡加竜骨牡蛎湯の添付文書(ツムラ)に記載されている効果効能は、次のとおりです。
- 比較的体力があり、動悸や不眠、イライラなどの精神症状を伴う次の諸症:
高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病、神経衰弱症、神経性心悸亢進症、てんかん、ヒステリー、小児夜啼症(夜泣き)、陰萎(ED)[3]
柴胡加竜骨牡蛎湯が処方されることのある疾患
柴胡加竜骨牡蛎湯には不安を鎮める効果があるため、自律神経失調症やうつ、パニック障害などの治療に使用される場合があります。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、自律神経のバランスが崩れることで、さまざまな症状がみられる状態のことをいいます。
からだのエネルギーである「気」の巡りが悪くなると、自律神経が乱れることで、次のような不調が生じます。
- 自律神経失調症の症状
- ・頭痛
・めまい
・だるさ
・動悸
・食欲不振
・吐き気
・肩こり など
柴胡加竜骨牡蛎湯には「気」の巡りを整える作用があるので、自律神経失調症の治療に効果が期待できるのです。
うつ
うつは、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」が減ってしまう病気だと考えられています。[4]
これらの神経伝達物質には、精神を安定させたり、やる気を出させたりする作用があるため、減少すると無気力な状態になってしまうのです。
柴胡加竜骨牡蛎湯には精神症状に関わる「気」の異常を改善したり、セロトニンの減少を抑えたりする作用があるため、うつ症状の緩和に役立つのでしょう。
パニック障害
パニック障害とは、動悸や息苦しさ、めまい、発汗、吐き気などのパニック発作が突然生じる疾患のことです。
柴胡加竜骨牡蛎湯には、精神不安や動悸などを鎮める作用があるため、パニック障害の治療に対して有用だと考えられています。
柴胡加竜骨牡蛎湯の副作用
発生頻度はまれであるものの、柴胡加竜骨牡蛎湯の重大な副作用としては、間質性肺炎や肝機能障害などが挙げられます。
発熱や咳、黄疸などの症状があらわれた場合は、すみやかに服用を中止して医療機関を受診しましょう。
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柴胡加竜骨牡蛎湯に離脱症状はない
柴胡加竜骨牡蛎湯に依存性をもつ成分は含まれないので、離脱症状はないと考えられます。
症状の強さや経過などにもよりますが、西洋薬の抗うつ剤や睡眠薬などによる離脱症状に不安を感じている方は、漢方薬の使用も視野に入れるといいでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯以外にセロトニンを増やす漢方薬
セロトニンを増やす代表的な漢方薬としては、柴胡加竜骨牡蛎湯のほかにも「抑肝散(よくかんさん)」が挙げられます。
抑肝散は高ぶった神経を鎮める漢方薬で、主に不安やイライラ、不眠などの症状がみられる場合に使われます。
抑肝散とセロトニンの関係について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
セロトニンを増やすためにできる生活習慣の工夫
セロトニンを増やすには、薬の服用だけでなく、日光浴や運動などの生活習慣の工夫も有効です。
朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びたり、ウォーキングやストレッチなどの簡単な運動を習慣にしたりするといいでしょう。
また、セロトニンの材料となるアミノ酸である「トリプトファン」が豊富な食材の摂取もおすすめです。
具体的には、大豆製品や乳製品、肉、バナナなどの食材を積極的に摂るようにしましょう。
トリプトファンについて詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
Q1. 柴胡加竜骨牡蛎湯は寝つきをよくする薬ですか?
柴胡加竜骨牡蛎湯は不眠を解消する漢方薬なので、寝つきの悪さに対する効果も期待できるでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯は「気」(からだのエネルギー)を巡らせ、体内にこもった熱を冷ますとともに、心を落ち着かせます。
そのため、脳の興奮からくる不眠を解消できると考えられているのです。
Q2. 柴胡桂枝乾姜湯と柴胡加竜骨牡蛎湯の違いは?
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)と柴胡加竜骨牡蛎湯は、ともに神経過敏や不眠などの精神症状の改善に用いられる漢方薬ですが、主に向いている方の特徴が異なります。
柴胡桂枝乾姜湯は体力があまりなくて疲れやすい方に向いており、柴胡加竜骨牡蛎湯は比較的体力がある方に適しています。
Q3. 柴胡加竜骨牡蛎湯は即効性がある薬ですか?
柴胡加竜骨牡蛎湯は、精神症状に対して即効性はありません。
漢方薬は基本的にゆっくりと作用するものが多いため、即効性を求める場合は西洋薬のほうが向いているでしょう。
Q4. 柴胡加竜骨牡蛎湯は危険(ハイリスク)な薬ですか?
一部のメンタル系疾患に対する西洋薬とは異なり、柴胡加竜骨牡蛎湯には依存性や離脱症状はありません。
そのため、用法用量を守って使用していれば、とくに危険な薬ではないといえます。
柴胡加竜骨牡蛎湯が「ハイリスク」といわれる理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
Q5. 桂枝加竜骨牡蛎湯はセロトニンを増やす薬ですか?
「桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)がセロトニンを増やす」といった情報はみつかりませんでした。
桂枝加竜骨牡蛎湯は、神経の高ぶりを鎮めて精神を安定させる漢方薬です。
セロトニンを増やす漢方薬には、柴胡加竜骨牡蛎湯のほかにも抑肝散が挙げられます。
抑肝散とセロトニンとの関係について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
柴胡加竜骨牡蛎湯はセロトニンの減少を防ぐ漢方薬|まとめ
柴胡加竜骨牡蛎湯には、神経細胞外のセロトニン量の減少を防ぐはたらきがあります。
セロトニンには精神を安定させる作用があるため、柴胡加竜骨牡蛎湯の服用によって気分の落ち込みや不安などの精神症状の緩和が期待できるでしょう。
セロトニンを増やすには、薬の服用以外にも、食事や運動などの生活習慣を整えることも効果的です。
精神的な不調でお困りの方は、ぜひおおかみこころのクリニックにお気軽にご相談ください。
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参考文献
[1] Mizoguchi K, et al. : Saiko-ka-ryukotsu-borei-to, a herbal medicine, ameliorates chronic stress-induced depressive state in rotarod performance. Pharmacol Biochem Behav, 75 : 419-25, 2003.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12873634/
[2] 6)セロトニントランスポーター|強迫性障害患者の脳内ではセロトニンを神経細胞内に取り込むタンパク質が減少する|国立研究開発法人 量子化学技術研究開発機構
https://www.qst.go.jp/site/qms/1675.html
[3] 柴胡加竜骨牡蛎湯の添付文書|ツムラ
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200050D1094_1_15
[4] うつ病|こころもメンテしよう|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
- この記事の編集者
- 稲嶺 千春
薬剤師。心療内科の門前薬局での勤務経験あり。フリーライターとして医療・健康分野を専門に執筆活動中。