前触れなく起こるめまいや動悸、息苦しさ。それらに強い不安を感じ、日常生活に支障が出てしまうパニック障害。[1]
放っておくと、いつパニックが起きるかわからない不安がストレスとなり、うつ病を併発する可能性もあります。
この記事では、原因や症状など、パニック障害の概要を網羅的にまとめています。より詳しい内容については、深掘りした記事を用意しているので興味のある方は見出しから読んでみてください。
この記事がパニック障害への理解を深め、あなたの不安を取り除く助けになれば幸いです。
この記事の内容
パニック障害になる原因
パニック障害になるはっきりとした原因はわかっていません。
一説には、神経伝達物質が関係する脳機能の異常が原因ではないかといわれています。[2]
不安や恐怖を強く感じると、その興奮が神経伝達物質に伝わります。こうした状況が続くと、めまいや動悸、過呼吸などの身体的な症状が表れるのです。
さらに、幼少期に受けた虐待や家族からの批判などの影響をはじめ、遺伝的な要因やストレスも関与する場合があります。
パニック障害の主な3つの症状
パニック障害は身体的な症状を伴い、「死んでしまう」と不安になる方もいるでしょう。
ここでは、よくみられる3つの症状について解説します。
パニック発作
パニック発作は、パニック障害の中心となる症状です。[2]
パニック発作の症状には「前触れなく起こる」「10分以内にピークに達する」「数分以内におさまる」といった特徴があります。
家族や友人は、パニック障害を十分に理解できない可能性があります。パニック発作を繰り返すうちに、身体的な異常がないとわかると心配しなくなるのです。そのため、パニック障害の方は、誰にも相談できず、悩みをひとりで抱え込みます。
パニック発作は、日常生活に影響を与えることもあります。
周りに理解してまらえないのはツライですね💦
予期不安
予期不安は、パニック発作が起こるのではないかと不安や恐怖を感じたり、心配になる症状です。[2]
予期不安では、漠然とした発作への不安が常につきまといます。
強い不安が続くと、パニック発作のリスクを高める可能性があります。
広場恐怖
広場恐怖は、予期不安が強くなり、症状が表れたときにすぐに逃げ出せない場所や助けを求められない状況を恐れる症状です。[2]
特徴的なのは、人混みやエレベーター、飛行機などを避ける点です。とくに、狭く閉ざされた空間で恐怖を感じます。
こうした状況が続くと、外出が難しくなり、社会生活に支障をきたします。
パニック障害のセルフチェックと診断
「私はパニック障害なの?」と気になる方のために、簡単なチェックリストを用意しました。ここでは、診断基準も紹介します。
適切な治療につなげるために、参考にして頂ければ幸いです。
パニック障害のチェックリスト
このチェック項目に当てはまるものが多いと、パニック障害の傾向があるといえます。
✔ 胸がドキドキしますか?
✔ 何もしていないときに汗をかきますか?
✔ ブルブルと震えたりしますか?
パニック障害の症状は、日常生活に影響を与えることがあります。
治療が遅れたり治療方法が合わず慢性化しやすいです。そのため、チェックしておきましょう。
パニック障害を慢性化させないために、下記の「パニック障害 チェックリスト」で確認してみてください。
早めに気づいたら、クリニックに相談してみるといいですね!
診断基準
3つの基準を満たした場合、パニック障害と診断されます。
- パニック発作への不安感や回避する行動が1ヶ月以上続いている。
- 心臓や消化器の病気などを除外できる。
- 下記の13症状のうち、4つ以上の症状が表れる。
1.動悸、心拍数の増加
2.発汗
3.身震い、震え
4.息苦しさ、息切れ
5.窒息感
6.胸痛、胸部の不快感
7.吐き気、腹部の不快感
8.めまい、ふらつきがあり、気が遠くなる感じ
9.熱感、寒気
10.異常な感覚(感覚麻痺、うずき感)
11.現実ではない感じ、自分自身から離脱している
12.抑制力を失う、どうにかなってしまうことへの恐怖
13.死に対する恐怖
出典元:表2 パニック発作の診断基準|厚生労働省をもとに一部改変[3]
パニック障害の症状は、心臓や肺のほかに甲状腺や脳の病気でもよくみられます。そのため、検査でほかの病気がないことを確認します。
気になる症状がある方は、早めに精神科や心療内科で相談しましょう。
もし違っても大丈夫ですよ!
あなたが不安なまま過ごすより「安心するために受診する」と考えてもらえれば幸いです。
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パニック障害になりやすい人の5つの特徴
パニック障害になりやすい方は、もともと不安や恐怖心が強い傾向があるといわれます。ここでは、パニック障害になる方に多い5つの特徴を解説します。
1.完璧主義でまじめな人
パニック障害に悩む方の中には、完璧主義でまじめな方は少なくありません。仕事や勉強を頑張り過ぎて、心身に不調をきたすこともあります。
まじめさゆえに、ストレスになる恐れがあるため注意しましょう。
まじめな方って頑張り屋さん多いですよね💦
2.感受性が豊かな人
感受性が豊かな方は、他人の影響を受けやすく敏感です。
まわりにイライラしている人がいると、自身もストレスを感じます。この状況が続くと、パニック障害を起こしやすくなります。
3.周りを気にする人
周りを気にする方は、ほかの方への配慮ができます。
ただし、自分を後回しにするため、知らぬうちに我慢しがちです。また、周りの方からの評価を気にして、ビクビクした状態となりストレスを感じます。
4.寝不足で疲れている人
寝不足で疲れている方は、パニック障害を起こしやすくなります。疲れている方は、ネガティブな感情を抱きやすいです。
結果、パニック障害を起こしやすくなります。
5.うつ病になったことがある人
うつ病とパニック障害は、関連性があることが知られています。
うつ病になった経験がある方は、パニック障害を起こしやすいため注意しましょう。
パニック障害の治し方
原因ははっきりしていませんが、標準的な治療法は確立されています。パニック障害の治療ガイドラインで推奨されているのは「薬物療法+認知行動療法」の併用です。
ここでは、薬物療法と精神療法にくわえ、催眠療法や音楽療法、食事療法を解説します。
薬物療法
パニック障害の薬物療法で有効とされる薬は主に2種類です。
- 抗うつ薬:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)[4]
薬物療法により神経伝達物質が関係する脳機能の異常を抑えると、症状を軽減できる可能性があります。
しかし、服用を中止すると再発するため継続することが大切です。パニック障害の薬物療法について詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてくださいね。
精神療法
精神療法では、主に認知行動療法をおこないます。[4]
認知行動療法では、まずはパニック障害を知ることが大切です。
医師や臨床心理士と一緒に症状に合わせながらプログラムを進めます。薬物療法と組み合わせると、効果が期待できます。
まずは病気自体を正しく理解して、自分のことに向き合っていきましょうね!
認知行動療法は自分でもできることがあります。下記の記事で詳しく解説していますので、気になる方はご覧くださいね。
催眠療法
パニック障害は、不安や恐怖が強いことが特徴です。
催眠療法の治療を受けると安心できリラックスでき、症状が軽減する可能性があると考えられています。
音楽療法
音楽療法には、大きくわけて2つの方法があります。
- 受動的音楽療法:音楽を聴くことが中心となる療法
- 能動的音楽療法:歌ったり、演奏したりなど音楽を楽しむ療法
音楽には、リラックス効果があると知られています。ストレスを軽減するため、症状の軽減が期待できます。
食事療法
パニック障害の方は、栄養障害を伴う場合が多いです。
一説によると、栄養障害が神経症状の原因であり、鉄分やビタミンB群、タンパク質を摂取すると効果があるとされています。
食事療法で栄養障害を改善し、症状の軽減を目指します。
パニック障害とうつ病・発達障害の関係
パニック障害の症状があらわれたとき「うつ病や発達障害なのでは?」と気になる方もいるでしょう。パニック障害とうつ病、発達障害には似た症状があります。
うつ病
うつ病は、気分の落ち込みといった精神症状とともに、身体的な症状が表れるのが特徴です。[2]
パニック障害は、予期不安から大きなストレスを感じる傾向があるため、うつ病を併発する可能性があります。パニック障害の半数がうつ病を発症するといわれています。
発達障害
発達障害は、脳機能の発達が関係する障害です。
注意欠陥多動性障害や自閉症、学習障害などが知られています。[5]
発達障害の特性による苦しさや生きづらさ、ストレスが原因となりパニック障害を引き起こすのです。
とくに、注意欠陥多動性障害の方はパニック障害を発症しやすいといわれています。
パニック障害に関するよくある質問
最後に、パニック障害に関する5つのよくある質問を紹介します。パニック障害への理解を深めましょう。
Q1.パニック障害は遺伝しますか?
パニック障害は、遺伝する可能性があると考えられています。
一等親の血縁者がパニック障害である場合は、パニック障害になる可能性が高いという説があるためです。
我が国においては、パニック障害は約0.8%〜2%の方に認められており、珍しい病気ではありません。
女性は男性の約2倍発症しやすいのが特徴のひとつです。[6]
Q2.パニック障害になると障害者手帳はもらえますか?
パニック障害になると障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)をもらえる可能性があります。[7]
- 統合失調症
- 気分障害(うつ病、そううつ病など)
- てんかん
- 薬物依存症
- 高次脳機能障害
- 発達障害(注意欠陥多動性障害や自閉症、学習障害など)
- そのほかの精神疾患
出典元:障害者手帳・障害年金|こころの情報サイト[7]
障害者手帳をもらうとさまざまなサービスを受けられます。気になる方は、市区町村の担当窓口に相談してみてください。
地域や手帳の等級によって、受けられるサービスが変わってきます。
例えば~NHKの受信料免除、市営バス半額などなど…
Q3.パニック障害で歯医者に通えますか?
パニック障害の方は、下記の理由から歯医者に通えないと感じます。
- 治療中は身動きがとれないため怖い
- 歯医者さんに怒られるのではないかと不安
パニック障害にも対応できる歯医者はあります。
症状に応じて少しずつ治療を進めるところもあります。一度、歯医者に相談しましょう。パニック障害の方が歯医者に行く方法などを詳しく知りたい方は、下記の記事も参考にしてくださいね。
Q4.パニック障害になったら仕事はどうすればいいですか?
パニック障害になると、仕事を継続するのが難しくなるかもしれません。
治療と仕事の両立が難しい場合は、休職制度を利用できます。仕事から離れると、落ち着いて治療できます。
診断書があると傷病手当金を受給できる可能性があるため、経済的な心配もいらないでしょう。
パニック障害になったときに仕事はどうするべきか詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてくださいね。
まとめ
この記事では、パニック障害の原因や治し方を中心に解説しました。
パニック障害は、前触れなく起こる症状に強い不安を感じる疾患です。放っておくと、日常生活に支障が出ることがあります。
いつパニック発作が起きるかわからない不安がストレスとなり、うつ病を併発する可能性もあります。
パニック障害の症状を軽減するためには、早期に治療を開始することが大切です。気になる症状がある方は、ひとりで抱え込まずに一度、精神科や心療内科に相談しましょう。
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参考文献・リスト
[1]こころもメンテしよう|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html
[2]セルフメンタルヘルス|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000881325.pdf
[3]表2 パニック発作の診断基準|厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic_a.html
[4]パニック発作およびパニック症|MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/
[5]発達障害の理解|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000633453.pdf
[6]1章 難症例への対処 ⑩パニック障害|眼科グラフィック vol.12 no.1 2023 P59
[7]障害者手帳・障害年金|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/support_certificate.php
- この記事の編集者
- 西川正太
看護師、保健師、保育士。 2009年大学を卒業後、大学病院や総合病院で勤務経験あり。現在はフリーライターとして医療を中心に執筆中。