うつ病の人にやってはいけないことと接し方のポイント

うつ病の方に「がんばれ」は禁句、と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。うつ病に苦しむ人にとって周りの人が発するひとことは、気持ちを沈め、ストレスを引き起こす原因となるのです。

この記事では、うつ病の方に対する適切な接し方と、効果的な声かけ方のポイントをご紹介します。

また、うつ病患者を支援する側のメンタルヘルスについても解説します。

うつ病の方への正しい接し方を学び、回復までサポートできるようにしましょう。

うつ病の人への接し方|禁句

うつ病の方にとって身近な人のささいな言葉は、症状を悪化させてしまったり、自殺に追い込んでしまったりすることがあります。

ここでは、うつ病の方には禁句とされている言葉を紹介します。

励ましの言葉

「がんばれ」

「やればできるよ」

うつ病の方にとって励ましの言葉は、ときにプレッシャーになってしまうことがあります。これは、がんばりすぎや、限界まで自分を追い込んでしまったことが原因でうつ病を発症するケースがあるためです。

励ましの言葉は「まだがんばりが足りないのか」と、本人にとってさらなる負担となってしまう可能性があります

ただし、うつ病の症状は人によって異なり、経過や状況によっては励ましの言葉を適切に使うことで、回復に役立つ場合もあります。[1]

大切なのは、主治医と連携しながら、その時期に合った声かけをすることです。

こころちゃん
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家族や周りの人のサポートで悩んでるときも相談にしてもらって大丈夫ですよ♪

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否定的な言葉

「ずっとだらだらしているのはダメなんじゃない?」

「役立たずね」

うつ病の方に対して、行動や感情を否定するような言葉をかけてはいけません。

行動を否定する言葉は、動きたくても思うように動けないうつ病患者を傷つけてしまいます。

うつ病の症状のひとつに、自分自身を価値のない人間だと感じてしまう「無価値感」があります。[2]否定的な言葉をかけられることによって、この症状がさらに悪化してしまう可能性があるのです。

また、うつ病自体を否定したり、軽視するような言葉も避けましょう。

「うつ病はたいした問題じゃない」「気のせいだよ」といった言葉は、うつ病に苦しむ人にとって、自分の苦痛を分かってもらえないと感じます。さらなる症状の悪化にもつながりかねないのです。

責める言葉

「だからあなたはダメなんだ」

「どうしてそんなミスするの?」

うつ病の方への言ってはいけない言葉として、責める言葉があります。うつ病の症状には集中力や注意力の低下があり、仕事や日常生活の中でミスを繰り返す原因となることも少なくありません。[3]

うつ病ではすでに自分を責めていることが多く、他人からの批判はその感情をさらに強くしてしまい、症状が悪化する原因となります。

うつ病の人への接し方|やってしまいがちな間違った行動

よかれと思ってやったことでも、実はうつ病の方にとって大きな負担になってしまうことがあります。

無理に気分転換させる

うつ病の方に「パーっと飲みに行こう!」や「気分転換に旅行に行こう!」といった提案をすることは、実は避けるべき行動のひとつです。一見、楽しく心地よいもののように思えますが、うつ病の方にとっては大きな負担となることがあります。[1]

うつ病の症状として、普段楽しめる活動さえも楽しめなくなることがあります。[3]また、気分転換に伴う社会的な交流や移動が、疲労感やストレスを引き起こすことも少なくありません。さらに、本人がこれらの活動を楽しめないことに対して罪悪感を感じ、ストレスを増大させてしまう可能性もあります。

うつ病の方に対して、無理に気分転換を促すことは避けましょう。自分自身で楽しめると感じる活動や、自分のペースでできることを優先し、楽しめる状態になるまで待つことが、周りができるよいサポートといえるでしょう。

こころちゃん
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まずは、無理せず家の中での活動から始めてみるのもいいですね♪

大きな決断をせまる

うつ病の症状が落ち着くまでは、退職といった人生に関わる大きな決断は避けましょう。

仕事をしている場合、うつ病の症状によって思うように仕事ができず、周囲に迷惑をかけていると感じることがあります。このような状況では、退職を考えることもあるでしょう。

家族としては、愛する人の負担を軽減したいという気持ちから、退職を勧めたいと感じるかもしれません。しかし、うつ病で苦しんでいる状態で大きな決断をすることは、精神状態をさらに悪化させる恐れがあります。

うつ病を発症したときは、まずは休息を優先し、大きな決断は後回しにしましょう。[1]ゆっくり休むことで、本人の精神状態が改善し、冷静に物事を決断できるようになります。また、症状が回復してきたときに、今後の生活により多くの選択肢を残しておくと安心です。

大きな決断をせかすのではなく、本人が自分自身のペースで考え、決断できるように支えることが大切なのです。

うつ病の人にかけてあげたい言葉

うつ病の方に、具体的にどんな言葉をかければよいのか分からない人も多いのではないでしょうか。

ここでは、うつ病の方にかけてあげたい言葉を紹介します。

ねぎらいの言葉

「今まで大変だったね」

「これまでのあなたのがんばりはすごいよ」

うつ病の方にとって心温まるねぎらいの言葉は、大きなこころの支えとなるでしょう。

うつ病の症状のひとつに、自分自身を「ダメな人間だ」と思い込んでしまうことがあります。[3]このような状況で、過去のがんばりを認め、尊重する言葉をかけてもらえると、自分自身を肯定的に見つめ直すきっかけとなるのです。

ねぎらいの言葉は、うつ病の方にとって自分が価値のある存在だと認める手助けになるでしょう。

相手を尊重する言葉

「そのままのあなたでいいよ」

「あなたのペースでいいからね」

うつ病の方にとって、ありのままの姿を受け入れてもらえたと感じる言葉は、安心感を与えてくれるでしょう。

うつ病は症状に波があり、一時的に良くなっても再び悪化することがあります。そのため「いつまで症状が続くのか」と、自分自身に対して過度なプレッシャーを感じてしまうこともあるのです。[1]

本人を尊重する言葉をかけてあげることで、いまの状態を認め、自分自身を大切にできるようになります。自分のペースで安心して治療に専念できる環境を整えることが、うつ病の方に対する適切な接し方なのです。

こころちゃん
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「ありのままの自分」を受け入れられると嬉しいですよね♪

味方であることを伝える言葉

「いつでも話を聞くからね」

「一緒に解決策を考えていこう」

うつ病で苦しむ方にとって、自分の感情や考えを理解し、サポートしてくれる人は心強い存在です。味方であることを伝える言葉は、大きなこころの支えになるでしょう。

うつ病の症状には、自分の感情を言葉にするのが難しかったり、何をどう話していいのかわからなかったりすることがあります。[3]このような状況の中で、安心して、自分が話したいときに話を聞いてくれる人は貴重な存在です。

相手に寄り添う言葉は、うつ病の方に自分が一人ではないという安心感を与えてくれます。自分の感情を表現できる環境を作ることが、周りができるサポートのひとつといえるでしょう。

うつ病の人への接し方のポイント

うつ病の方に対する接し方としておさえておきたいポイントは、以下の3つです。[1]

  • 本人の話をよく聞く(アドバイスはせず不安や悩みを受け止める)
  • 安心できる環境を整える
  • 見守る

話をよく聞いてあげることで、うつ病の方のこころの負担を軽くする効果があります。話を聞きながら共感することで、信頼関係を築けるでしょう。

うつ病を克服するためには、サポートする側とされる側の信頼が欠かせません。

また、身体の病気と同じように、うつ病も安心して休息できる環境が必要です。

サポートする側も焦らず、本人の希望を尊重し、環境を整えて、見守る姿勢を持ちましょう。

食事面でさりげなくサポートするなど、間接的なかかわりが気になる方は下記の記事もご覧ください。

ただし、自殺をほのめかすような言動が見られた場合は、注意が必要です。このような状況では「あなたの存在は大切で、生きてほしい」というメッセージを明確に伝える必要があります。同時に、そのような言動は主治医に報告し、適切な対応を取りましょう。[1]

主治医と連携し、本人に最適なサポートをすることが、うつ病からの回復には欠かせないポイントとなります。

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うつ病の人を支える家族のメンタルヘルス

うつ病の方を支える家族は、心理的、社会的に大きな負担を伴います。実際、うつ病患者を支える家族は、自身もうつ病になりやすいといわれているのです。

治療の長期化や収入の減少、日常生活の変化は、支える家族にもかなりのストレスとなります。また、うつ病患者の生活が怠けているように見えることや、その状況に対する無力感から、家族はみじめな気持ちになったり、問題を一人で抱え込んでしまったりすることがあるのです。

家族がこころの健康を維持できれば、患者の症状回復にもつながるといわれており、支える側のメンタルヘルスも注目されています。

地域の保健センターや病院では、患者の家族に対してうつ病への理解を深め、治療法や利用可能なサービスを学ぶためのプログラムが用意されています。また、うつ病の家族会で経験や悩みを共有することで、こころの負担を軽減することもできるでしょう。[4]

うつ病患者を支える家族も、こころの健康を維持するために、うつ病への理解と負担を軽減する方法を学ぶことが大切なのです。

こころちゃん
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家族会に参加された方は、晴れやかな表情で帰られる方が多いです♪

まとめ

うつ病の方への適切な接し方は、話を丁寧に聞き、本人のペースを尊重することです。言ってはいけない言葉や患者の負担となる行動を避け、共感と理解を示すことが大切です。

支える側も、本人の考えを尊重し、ときには一歩引いて見守る姿勢を持つことが、うつ病の方へのよい接し方といえるでしょう。

また、うつ病患者を支える家族のメンタルヘルスも重要なポイントです。

相手に寄り添った言葉や行動を心がけ、うつ病を一緒に乗り越えていける関係を築きましょう。

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参考文献

[1]ご家族にできること|こころの耳

https://kokoro.mhlw.go.jp/families/

[2]無価値観|e-ヘルスネット

[3]体の不調はうつ病でも現れます。かかりつけ医へ相談してみましょう|e-ヘルスネット

[4]うつ病治療ガイドラインーうつ病看護ガイドラインー|日本うつ病学会

https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/guideline_kango_20220705.pdf

この記事の執筆者
原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。

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