「過去の嫌な思い出を思い出してつらい」
「考えないようにしても思い出す」
フラッシュバックと過去の嫌な出来事を思い出すことは似ているようで、違いがあります。
どちらもつらいことですが、フラッシュバックは当時の感情や思いをリアルに体験したり、悪夢を見てしまったりするなど日常生活に大きな支障をきたすのです。
この記事では、フラッシュバックと思い出すの違い、フラッシュバックするときの対処法や予防策について解説します。
嫌な思い出を突然思い出す病気も紹介しますので、自分の状態を理解するヒントにしてみてくださいね。
フラッシュバックと思い出すの違い
フラッシュバックと思い出すの違いは、思い出し方です。
それぞれについて見ていきましょう。
- フラッシュバック:過去の出来事が突然生々しく、意識的にではなく勝手に蘇る
- 思い出す:自分の意思で過去の出来事を思い浮かべる
フラッシュバックは「きっかけ」によって体験が思い出され、当時の不安や恐怖などを感じる特徴があります。
たとえば、パソコン作業をしようとしたときに、上司に怒られた当時の恐怖心を生々しく思い出すなら、フラッシュバックだと考えられます。早めに受診して医師に相談しましょう。
一方で思い出すとは、意識的に過去の出来事の記憶が蘇ることです。当時の強い感情が一緒に思い出されることはない状態が「思い出す」となります。
フラッシュバックにより起こる症状
フラッシュバックにより起こる症状としては、以下のものがあります。[1]
- 動悸
- 発汗
- 震え
- 心理的動揺
たとえば、仕事中に以前パワハラを受けたことが突如蘇り、動悸や発汗があらわれることがあります。これらの症状は侵入症状と呼ばれ、当時の不安や恐怖などを再び感じ、動悸・発汗・震え・心理的動揺などが生じるのです。
そのほかには次のような症状があります。
- 他者を信頼できない
- 自分に対する無力感や罪悪感
- 持続的な不安やきっかけを避ける など
悪夢として繰り返されるケースもあり、睡眠に影響を及ぼすこともあるのです。

夜眠れなくなっちゃいます💦
つらすぎる💦
フラッシュバックするときの対処法
フラッシュバックするときに実践できる方法を3つ紹介します。
詳しく説明していきます。
環境を変える
フラッシュバックのきっかけとなりやすい場所から離れるようにしましょう。
たとえば、次の場所はフラッシュバックのきっかけになりやすいです。
- 前職の会社がある駅
- 事件や事故の目撃現場
- 性的被害にあった場所や路線
引っ越しをして違う場所に住む、できる限り行かないようにするなど工夫してみましょう。
フラッシュバックは、忘れようとしてもなかなかコントロールできるものではありません。あなたが安心できる場所に身を置くことで、落ち着きを取り戻しましょう。
深呼吸をする
深呼吸をすると、フラッシュバックによって起きる症状をやわらげる効果が期待できます。
深呼吸の手順は以下の通りです。手順を見ながら試してみてくださいね。[2]
- お腹に手を当てる
- 息を吐く
- 鼻からゆっくりと息を4秒かけて吸う
- 息を十分に吸い込んだら、いったん息を止める
- 口からゆっくりと息を8秒かけて吐く
- 3~5までを3~5分繰り返す
深呼吸のコツは、口からゆっくり息を吐き出すときに悪いものを全部出すイメージをすること。[3]
息を止めるときは、押さえ込まずに軽く一瞬止めるだけにしてください。息を吐き出すときは、口から息を吸うときよりもゆっくり丁寧に吐き出しましょう。
無理のない範囲で数回続けてみましょう。3〜5分程度繰り返すことが難しいときは、1日に数回分けても大丈夫です。さらにイメージを高めたいときは、自然のさわやかな空気を想像してみてください。
当時の状況や思いを書き出す
フラッシュバックする状況や感情を書き出して、あなたの中から出してあげましょう。
書き出すことであなたの中にある思いや、当時の不安や恐怖などを再び感じる状況を、頭の外に出してあげられます。
また、書き出すことを繰り返し行えば、少しずつ「過去」と「現在」が違うと認識でき切り離せるようになるのです。
書く行為自体がストレスを解消する効果も期待できるので、フラッシュバックで悩んでいる人におすすめの方法のひとつです。
嫌な思い出を突然思い出す病気
過去の嫌な思い出を突然思い出すときは、PTSDの可能性が考えられます。[4][5]
以下のPTSD診断チェックリストをおこなって、あてはまる症状があるか見てみましょう。
▢ 過去に身の危険を感じたことがある
▢ 突然、当時の記憶が蘇るときがある
▢ 過去の嫌な思い出と当時の感情を思い出す
▢ 嫌な思い出に関する苦痛な夢を何度も見る
▢ 思い出したときに気持ちが落ち着かなくなる
▢ フラッシュバックに伴って、発汗や動悸が起きる
▢ 恐怖や不安のきっかけとなる場所や状況を避ける
▢ 不安や緊張が高まり、つらすぎて現実感がなくなる
▢ 過去に事件や暴力・暴言、虐待などの心的外傷体験がある
▢ 嫌な思い出の影響で日常生活や対人関係に支障をきたしている
診断チェックにあてはまる項目が多い人は、PTSDの可能性が考えられます。早めに医師に相談してください。
フラッシュバックを防ぐ方法
フラッシュバックは突然起きるものですが、なるべく防ぎたいですよね。フラッシュバックを防ぐ方法は、以下の3つがあります。
詳しく解説します。
病院に相談をする
フラッシュバックを防ぐためにも、ひとりでがんばらずに専門家の力を借りましょう。
精神科や心療内科などの医療機関の受診をするのもひとつの選択肢です。
医師に相談すれば、適切な治療やカウンセリングを受けられます。たとえば、薬物療法や認知行動療法は、フラッシュバックやPTSD治療によく用いられる方法です。薬はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬も有効とされています。
自分でできる対処法も実践しながら適切な治療法を活用することは、フラッシュバックの頻度や強さをやわらげることに有効です。
ストレスをこまめに解消する
フラッシュバックが起きやすい原因のひとつに、ストレスが関係しているといわれています。[6]
ストレスをこまめに解消すれば、不安材料やきっかけによって当時の不安や恐怖などを再び感じにくくなるのです。ストレスを解消すると心に余裕が生まれ、過去の嫌な体験に振り回されにくくなるからです。
たとえば、次のようなストレス解消方法があります。
- 音楽を聴く
- 身体を動かす
- 腹式呼吸をする
- 自然と触れ合う
- 信頼できる人と話す
- 趣味の時間を楽しむ
- 今の気持ちを書き出す[7]
フラッシュバックが起きると、動悸や震えなど身体的反応が出る人が多くいます。リラクセーション法で副交感神経を優位させることで、緊張状態を緩和させましょう。[8]

できることからやってみましょう!
フラッシュバックするきっかけを知る
フラッシュバックのきっかけを特定することで、事前に避けたり心の準備ができたりして動悸や発汗などの症状を防ぎます。
たとえば、特定の音や場所、ニオイ、雰囲気などフラッシュバックが起きる特定のきっかけはありませんか。最近起きたフラッシュバック体験を書き出すと、特定のきっかけが見つかることがあります。
もしひとりで考えることがつらいときは、ムリに思い出す必要はありません。医師や心理師など専門家に相談しながらやってみましょう。
まとめ
フラッシュバックと思い出すの違いは、以下の通りです。
- フラッシュバック:突然過去の嫌な思い出が蘇り動悸や発汗などが生じる
- 思い出す:意識的に過去の出来事を思い浮かべる
フラッシュバックは、当時の感情が思い出され自分ではコントロールできずに、精神的にもとてもつらい状態です。つらさや恐怖は消えにくいため、環境を変えたり腹式呼吸をしたりなどできる範囲で対処していく必要があります。
おおかみこころのクリニックでは、医師の診察だけではなく、カウンセリングも提供しています。
不眠や悩みを解決するために専門家がサポートさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]心的外傷後ストレス障害(PTSD)第一部 基本知識|国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/phn/trauma_guideline.pdf
[2]こころの耳 5分研修シリーズ|こころの耳 厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/fivemin
[3]腹式呼吸のやり方 |日本医師会
https://www.med.or.jp/komichi/holiday/sports_02_pop.html
[4]PTSD|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=iGkwv4PNzgWhQ9xI
[5]心的外傷後ストレス障害 (PTSD)|MSDマニュアル家庭版
[6]フラッシュバックの対応と工夫|明神下診療所
https://myoujinshita.jp/archive/asp_heart7_2.pdf
[7]こころと体のセルフケア|ストレスとこころ|こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html
[8]早く気づけるストレスケア|こころの耳 厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/video/files/slide_yamamoto.pdf