「のどが締めつけられて、声が出なくなってしまう」「あいさつも雑談も苦手で周りの人に誤解を与えてしまう」
このような悩みはありませんか?
「場面緘黙症」はメジャーな疾患ではないため、ご自身でも病気と気づかず「話せない自分が悪い」と自分を責めてしまう方もいるかもしれません。
そこで今回の記事では「場面緘黙症」という疾患について解説します。
記事の後半では、病院受診や治療の流れについても解説しているので参考にしてくださいね。
場面緘黙症とは
場面緘黙症は、特定の社会的状況(例:学校や職場)において話せなくなってしまう「緘黙(かんもく)症状」があらわれる病気です。
発症は2~5歳が多いとされているものの性格の問題と見過ごされ、大人になっても症状が続いている方もいます。
この場合、病気であると気づかず話せない自分を責め、うつ病などの二次障害につながる恐れがあるため、早めの対策が必要です。
場面緘黙の病名は?
場面緘黙は、医学的な診断基準では「選択性緘黙」と表記されています。
しかし、「選択」という表記が「本人が場面を選択して黙っている」という誤解を与えやすいため、一般的に「場面緘黙症」という名称が使われています。
近年、小学生に対し行われた研究によると、場面緘黙症の有病率は0.21%です。つまり、500人に1人ほどが場面緘黙症を罹患していることになります。
珍しい病気ではないってことだね!
大人の場面緘黙症の原因
場面緘黙症の人に共通するのは、不安や緊張を感じやすい性格です。
話さないのではなく、強い不安やストレス、緊張を処理しきれないため、話せなくなってしまいます。
そのため、社交不安症をはじめとした不安障害や発達障害をあわせ持つ方も多くいるのです。
近年の研究では、場面緘黙症を持つ子どもの63%に発達障害のひとつである「自閉スペクトラム症」があることもわかっています。
大人の場面緘黙症の症状と日常生活での困り感
大人の緘黙症は、すべての場面で話せない「全緘黙」ではなく、部分的に話しづらかったり社交不安が残ったりする形で症状が現れます。
以下は、具体的な症状の一例です。
- 仕事でわからないことがあっても、のどを圧迫される感覚があり声が出ず確認できない
- 「○○ができたら教えて」と言われても周りの目が気になって声をかけられない
- 挨拶や雑談などのコミュニケーションが取れないため、周囲に誤解を与えてしまう
- 体が固まって動けなくなる
場面緘黙症があると、話ができないことから日常生活に支障をきたすという特徴があります。
日常生活の中では、以下のような状況で悩むことが多いでしょう。
- 見た目では場面緘黙症と分からない。
- 説明しても人見知りなどの性格の問題と思われ、理解してもらえない
- 「話せるのが当たり前」という姿勢で接されると、できない自分を責めてしまう
- 「大人しい人」と思われがちだが、本当は恐怖や劣等感を感じている。
- 話せないことで、チャンスを逃している
場面緘黙症の診断
精神疾患の診断基準であるDSM-5によると、場面緘黙症の症状は以下のように記載されています。
自分にあてはまるかチェックしながら読んでみてくださいね。
- 他の状況で話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況(例:学校)において、話すことが一貫してできない
- その障害が、学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている
- その障害の持続期間は、少なくとも 1 ヶ月(学校の最初の 1 ヶ月だけに限定されない)である
- 話すことができないことは、その社会的状況で要求されている話し言葉の知識、または話すことに関する楽しさが不足していることによるものではない
- その障害は、コミュニケーション症(例:小児期発症流暢症)ではうまく説明されず、また自閉スペクトラム症、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではない
あてはまるものがある場合には、以下に紹介する流れで一度検査してみることをおすすめします。
場面緘黙症の受診治療の流れ
ここでは、精神科受診や治療の流れについて解説していきます。
精神科の受診はハードルが高いかもしれませんが、内科などの受診と大きな違いはありません。
以下の流れを整理しておくことで、不安なく受診に望めるでしょう。
- 初診予約
- インテーク
- 診察
- 治療
順番にみていきましょう!
① 初診予約
まずは初診の予約を取りましょう。
電話での予約に苦手意識がある方は、メールやLINEで予約できるクリニックが向いています。
おおかみこころのクリニックでは、LINEによる予約受付をしています。ぜひお気軽にご相談ください。
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インテーク
初診では、現在困っていることやいつ頃から困っているのかなどについて問診があります。
この初回面談は「インテーク」ともいわれ、臨床心理士や看護師が担当します。
話すのが苦手な方は、困っていることをメモにまとめたり、筆談用のペンとノート、スマホなどを用意しておくのもよいでしょう。
ここで、採血や心理検査を実施する施設もあります。
診察
インテーク後に行うのは、精神科医による診察です。
困っていることや症状などについて聞きながら、診断を確定します。
その後、状態に合わせて治療を決定していきます。
治療
場面緘黙症の治療では「系統的脱感作法」や「薬物療法」による治療を行います。
系統的脱感作法とは、認知行動療法のひとつであり、不安を回避せず徐々に慣らしていく方法です。
場面緘黙症においては、緊張せずに話せる人との会話に「苦手な人」が途中加入しても、話を続けるようなイメージを持ち少しずつ苦手意識を克服していきます。
このように、スモールステップで徐々に話ができる範囲を広げていくのです。
薬物療法では、社会不安が強い方に関しては抗うつ薬や漢方薬を使い、不安の症状を軽減しながら治療を補助していきます。
場面緘黙症の日常生活における工夫
場面緘黙症の対策では、「話をする力を鍛える」よりも安心した環境で話せる除隊を目指すのがポイントです。
そのためには、安心した環境や力が発揮できる環境づくりが必要になります。
環境の整え方は人により異なり
「仕事量を減らす」
「聴覚や視覚の刺激を減らす」
「手助けを増やす」
などさまざまです。
どのような環境が自分に合っているのか、どうしたらその環境を作れるのかを考えていく必要があります。
信頼できる職場の上司や産業医、精神科クリニックのスタッフとともに考えていきましょう。
無理をすると、逆に話すことへの不安が強くなったり、自分を責めてしまう可能性があります。
サポートしてくれる人とともに対策を考えていくのが望ましいでしょう。
まとめ
今回は場面緘黙症について解説しました。
場面緘黙症は、不安や発達の問題が関係する精神疾患であるものの、性格の問題として見過ごされてしまうこともあります。
しかし、日常生活に与える影響は大きく、うつ病などの二次障害につながる前段階での対策が必要です。
信頼できる人に相談したり、病院を受診したりして一人で抱え込まないようにしましょう。
おおかみこころのクリニックでは、24時間予約を受け付けています。ぜひお気軽にご相談ください。
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参考サイト
p.57場面緘黙とは 1.障害の概要【発症年齢と有病率】
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018006A-buntan4.pdf
p.58場面緘黙とは 2.緘黙症状の背景にある原因として考えられていること【本人側の要因】
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018006A-buntan4.pdf
P.66/68【当事者の声】〈職場で〉〈その他〉
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018006A-buntan4.pdf
(7)場面緘黙症の治療
https://kokoro-kichijoji.com/psychiatry/disease/kanmoku.html
p.61 4. 安心して力が発揮できる環境を整える
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/202018006A-buntan4.pdf