不眠症に効く漢方薬7選|中途覚醒や更年期の不眠におすすめの漢方薬も紹介




「疲れているのに、ベッドに入ってもなかなか眠れない」

「睡眠薬を使いたいが、副作用や依存性が心配」

このような不安をかかえていないでしょうか?

すでに不眠に対して薬物治療をしているものの、翌日へ持ち越す眠気や離脱症状に悩み、漢方薬の使用を検討している方もいるでしょう。

この記事では、東洋医学の視点からとらえた「不眠」を解説するとともに、不眠症に効く漢方薬の種類について紹介します。なるべく薬を使わずに治したい方に向けて、睡眠をサポートする生活習慣の工夫についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

不眠症とは

不眠症とは「寝付きが悪い」「眠りが浅くて熟睡できない」「早朝に目が覚めてしまう」などの睡眠障害が続く病気です。[1] 

十分に眠れないことで、日中のだるさや意欲低下、集中力の低下などの不調があらわれる場合があります。

不眠症の原因

不眠症の原因には、次のようにさまざまなものが挙げられます。

  • ストレス
  • 病気
  • 加齢
  • 薬や刺激物
  • 睡眠環境(騒音、明るさ、温度など)
  • 生活リズムの乱れ など[2] 

神経質で真面目な性格の方は、ストレスをより強く感じることで不眠症になりやすいといわれています。

東洋医学で考える不眠症

東洋医学では、不眠はからだのエネルギーである「気(き)」や、からだの栄養である「血(けつ)」の異常によって起こると考えられています。

不眠症に効果を示す漢方薬は、睡眠に必要な「気」や「血」を補うことで、緊張や不安をゆるめて自然な眠りへと導きます。

漢方薬には睡眠薬のような即効性はありませんが、不眠の根本的な原因にアプローチすることで、眠りやすいからだに近づけるでしょう。

不眠症に効く漢方薬7選【ツムラの何番かを記載】

ここでは、不眠症に対して処方されることのある漢方薬を7つ解説します。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)|103番

酸棗仁湯は、心身が疲労している方の不眠に対して用いられる漢方薬です。神経症や自律神経失調症による不眠の治療にも用いられることがあります。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)|12番

柴胡加竜骨牡蛎湯は、ストレスによるイライラから生じる不眠に対して効果が期待できる漢方薬です。柴胡加竜骨牡蛎湯には、からだのエネルギーである「気」を巡らせ、体内にこもった熱を冷ますとともに心を鎮める作用があります。

加味帰脾湯(かみきひとう)|137番

加味帰脾湯は「疲れているのに眠れない」という方によく処方される漢方薬です。からだが弱くて疲れやすく、気力がない方にも向いています。

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)|15番

黄連解毒湯は、イライラして眠れないタイプの不眠に使われることのある漢方薬です。黄連解毒湯の配合生薬である「黄連(おうれん)」には、からだの熱を鎮める作用があるため、興奮を抑えて睡眠をサポートします。

抑肝散 (よくかんさん)|54番

抑肝散は、神経の高ぶりからくる不眠に対して処方されることのある漢方薬です。神経症や小児夜泣きの治療などに用いられることもあります。

柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)|11番

柴胡桂枝乾姜湯は、不眠症のほか、更年期障害や神経症などの治療にも用いられる漢方薬です。体力があまりなく、冷え症や貧血、動悸、息切れなどがみられる方に向いています。

加味逍遙散(かみしょうようさん)|24番

加味逍遙散は「婦人科の三大漢方薬」のひとつで、更年期障害やPMSなどによる精神症状でお悩みの方によく処方される漢方薬です。ストレスによる不眠でお悩みの方に適しています。

不眠以外にも、気力の低下や不安などのうつ様症状でお悩みの方は、加味逍遙散に関するこちらの記事をご覧ください。

不眠対策のための生活習慣の工夫3選

不眠が軽度の場合は、薬に頼る前に普段の生活習慣を整えることも大切です。質のよい睡眠をとって日中元気に活動できるように、できることから取り入れてみましょう。

規則正しい生活

寝る時間や起きる時間がバラバラだったり、昼夜逆転の生活を送っていたりすると、体内時計が乱れて睡眠のリズムが崩れてしまいます。

寝る時間や起きる時間はなるべく一定にし、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びるようにしましょう。朝に日光を浴びると体内時計がリセットされ、夜に自然と眠くなるように睡眠のリズムが整うとされています。

日中に適度な運動をする

適度な運動による肉体的な疲労は、良質な睡眠を促します。激しい運動は交感神経を興奮させて眠りをさまたげてしまうため、ウォーキングや軽いランニングなどの負担が少なくて継続しやすい運動を取り入れてみましょう。

寝る前にスマホを見ない

スマートフォンやパソコンの光(ブルーライト)は脳を刺激するため、寝る直前まで見ていると眠りにくくなってしまいます。

実際に、ブルーライトが睡眠の質に及ぼす影響を調査した研究では、就寝時刻の1時間前にブルーライトを浴びると、深い眠りの割合が低下することが判明しました。[10] 

寝る1時間前からは、なるべくスマートフォンやパソコンの画面を見ずに過ごすようにしましょう。

Q1. 中途覚醒におすすめの漢方薬はなんですか?

夜中や早朝に目覚めてしまう「中途覚醒」におすすめの漢方薬には、次のようなものが挙げられます。

  • 酸棗仁湯(さんそうにんとう)
  • 加味帰脾湯(かみきひとう)
  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)
  • 釣藤散(ちょうとうさん)[11] 

東洋医学の考えでは「心身の疲れ(虚労)は中途覚醒につながりやすい」とされており、そのような状態の方には上記の漢方薬が役立つでしょう。

ただし、どの漢方薬が適しているかは不眠のタイプだけでなく、不眠以外でお悩みの症状や個人の体質にもよります。漢方薬を試してみたい方は、医師の診察を受けて自身に適した漢方薬で治療をはじめましょう。

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Q2. 更年期の不眠におすすめの漢方薬はなんですか?

更年期の不眠には、次のような漢方薬がおすすめです。

  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 加味帰脾湯(かみきひとう)
  • 抑肝散(よくかんさん)

更年期の女性が不眠になる原因は、女性ホルモンの減少に加えて、仕事に対するプレッシャーや体力の衰えなどが挙げられます。

「加味逍遙散」には女性ホルモンのバランスを整えるはたらきがあるため、更年期による不眠の解消に効果が期待できます。また、疲れているのに眠れないときは「加味帰脾湯」イライラして眠れないときには「抑肝散」が適しているでしょう。

Q3. 不眠症に効く市販の漢方薬はありますか?

不眠症に効く漢方薬は、医療用の漢方薬と同じ名前で、ツムラやクラシエなどから市販されています。

ただし、市販品の漢方薬は医療用の漢方薬に比べて成分量が少なく設定されています。不眠に関してすでに深刻なお悩みがある方は、医師の診察を受けて自身に最適な漢方薬を選んでもらったほうがメリットが大きいでしょう。

不眠症の治療には漢方薬も効果的|まとめ

この記事では、不眠症に効く漢方薬の種類や、不眠の改善に役立つ生活習慣の工夫などについて解説しました。

睡眠薬の使用に対して不安をかかえている方や、睡眠薬の服用による持ち越し効果(翌日へ持ち越す眠気)にお悩みの方などは、漢方薬の使用を検討する方法もあります。

つらい不眠に悩んでいる方はひとりでかかえこまず、ぜひおおかみこころのクリニックへご相談ください。

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参考文献

[1] 不眠症|e-ヘルスネット

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/keywords/insomnia

[2] 不眠症の原因|e-ヘルスネット

[3] 酸棗仁湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200056D1032_1_09

[4] 柴胡加竜骨牡蛎湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200050D1094_1_15

[5] 加味帰脾湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200016D1054_1_12

[6] 黄連解毒湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200011D1078_1_19

[7] 抑肝散|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200139D1037_1_17

[8] 柴胡桂枝乾姜湯|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200052D1034_1_14

[9] 加味逍遙散|添付文書(ツムラ)

https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/460026_5200017D1083_1_12

[10] Ishizawa et al. Effects of pre-bedtime blue-light exposure on ratio of deep sleep in healthy young men. Sleep Med. 2021;84:303-307.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34217920/

[11] 表 睡眠障害への治療方剤|考 察|ひろ内科医院 院長 八重樫 弘信|不眠症に対する黄連解毒湯の有用性 13P

https://www.philkampo.com/pdf/phil34/phil34-06.pdf

この記事の編集者
稲嶺 千春
薬剤師。心療内科の門前薬局での勤務経験あり。フリーライターとして医療・健康分野を専門に執筆活動中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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