感情がなくなるのはうつのせい?考えられる原因や取り戻すステップも










「感情がなくなる原因はうつ病なのかな?」

「悲しいときに涙が出ず、感情が動かない気がする…」

以前は感じていた感情がなくなったり鈍くなったりすると、うつ病なのではないかと不安になりますよね。

感情がなくなるのは、うつ病の症状としてあらわれることがあります。ただ、原因はうつ病だけとは限らず、薬の副作用や他の病気が関係している可能性も考えられるのです。

感情がなくなった原因を理解しないまま放置すると、症状が長引く恐れがあります。

この記事では、感情がなくなる原因感情を取り戻すステップを解説します。あなたの状態を理解し、対処法を見つけるきっかけとなれば幸いです。

「感情がなくなる」と感じるのはうつ病だけではない

感情がなくなる状態は、専門的に「感情鈍磨(かんじょうどんま)」とよばれる症状です。

感情鈍磨になると、下記のような感覚があらわれやすくなります。

  • 物事への関心や意欲が低下する
  • 他人の気持ちに共感しにくくなる
  • ポジティブやネガティブな感情がわかない

感情鈍磨が起こるのは、うつ病だけが原因とは限りません。[1][2]

感情がなくなるときに考えられる原因を次で詳しく解説します。

何も楽しいことがなかったり全てのことがめんどくさいと感じるときは、下記の記事もあわせご覧ください。

感情がなくなるときに考えられる原因

感情がなくなるときの原因には、おもに次の3つが考えられます。

それぞれについて見ていきましょう。

薬の副作用

薬の副作用によって、感情がなくなるケースがあります。

抗うつ薬は脳内の神経伝達物質に働きかけ、気分の落ち込みや不安をやわらげる働きをします。ただし、抗うつ薬が効きすぎると、感情が動きにくくなる可能性があると指摘されているのです。[1]

結果として、悲しみや不安だけでなく、喜びや楽しさなどのポジティブな感情も感じにくくなってしまいます。

「服用中の薬が原因かもしれない」と考えたときでも、自己判断で服用を中止するのは止めましょう。必ず処方した医師に相談し、薬の調整が必要かを確認してください。

うつ病の症状

うつ病の症状のひとつに、感情がなくなることがあります。[3]

うつ病は脳のエネルギーが足りなくなり、感情や意欲を司る機能が低下する病気です。気分の落ち込みや意欲の低下に加え、以前は楽しめていたはずの趣味などに対しても喜びを感じられなくなるのです。

2021年に行われた研究では、うつ病の急性期にある患者さんの約4分の3が、症状が落ち着いた寛解状態にある患者さんでも約4分の1が、重度の感情鈍磨を報告しました。[4]

うつ病による感情鈍磨はあなたの性格が変わったわけではなく、病気の症状としてあらわれていると考えましょう。

こころちゃん
こころちゃん

「病気の症状だ」と割り切って考えるのも大切です

統合失調症の症状

統合失調症の症状によって、感情鈍磨があらわれることがあります。

感情がなくなるのは統合失調症の陰性症状のひとつで、本来あるはずの意欲や感情の表現などの機能が低下する状態です。[5]

表情が乏しくなったり、声のトーンが単調になったりするのが特徴です。

たとえば、喜ばしいニュースを聞いても笑顔がみられず、悲しい場面でも表情が変わらないなど、他人の感情に対する反応も鈍くなります。うつ病による気分の落ち込みとは異なり、感情の動きや表現が失われる点が特徴といえます。

うつ病と統合失調症では治療法が異なるため、医師による正確な診断が必要です。

感情がなくなるときの注意点

感情がなくなったと感じたときの注意点を3つ紹介します。

感情がなくなるときは、こころのエネルギーが低下しているサインと考えましょう。

焦らずに行動し、あなた自身を追い詰めないようにしてください。

重大な決断は避ける

感情が鈍くなっている状態での重大な決断は、症状が安定するまで先延ばしにしましょう

感情がなくなっているときは、判断力や決断力が低下している可能性があります。また、うつ病では物事を悲観的に捉えやすくなり、ネガティブな判断をしてしまうケースがあるからです。[6]

たとえば、一時的な気分の落ち込みから「もう仕事はムリだ」と退職や転職を決めると、回復した後に「なぜあんな決断をしたのだろう」と後悔するかもしれません。

まずは治療や休養に専念し、心身のエネルギーが回復して客観的な判断ができるようになるのを待ちましょう。

こころちゃん
こころちゃん

あとで後悔するから避けてください~💦

感情がなくなる状態を受け入れる

感情がないことを「わたしのせいだ」と責めず、受け入れましょう

感情がわかないと「楽しい場で笑えないわたしは冷たい人間だな」と、自身を責める考えが浮かびやすくなります。

感情がなくなるのは、うつ病の症状や薬の副作用などが原因と考えられます。そのため、あなた自身を責めてしまうと、ストレスから回復を遅らせるかもしれません。

「今はこころが疲れていて感情が鈍くなっているだけだ」と、まずはあなたの状態を症状として受け入れましょう。

ムリに感情を表現しようとしない

感じていない感情を、ムリに表現する必要はありません

感情がなくなっているときに、周囲に合わせようとムリに笑顔をつくったり共感をしたりすることは、こころに負担となります。

感情がなくなっているのは、こころが休息を求めているサインです。

周囲に「今は感情がない状態だ」と伝えられるのが理想ですが、難しければひとりでいるときは感情の表現を休ませてください。

感情がないときはムリに感情を表現しようとせず、ありのままの状態で過ごしましょう。

感情を取り戻すまでの3ステップ

感情がなくなる状態から回復するためには、次の3ステップを試しましょう。

まずはこころのエネルギーを回復させることから始め、あなたのペースで取り組んでください。

ステップ1:心身を休ませる

感情を取り戻すための最初のステップは、心身を休ませることです。

感情がなくなるのは、こころのエネルギーが底をついているサインです。とくに、うつ病の治療では休養が必要となります。[7]

まずは、仕事や学校、人間関係などあなたにとってストレスとなっている原因から距離を置くようにしましょう。なにもしないと罪悪感を覚えるかもしれませんが「今は休むのが仕事だ」と割り切るのが大切です。

十分な睡眠時間を確保し、栄養バランスのとれた食事を摂るといった身体のコンディションをととのえることに専念してください。

ステップ2:五感を使う経験をする

心身が休まりエネルギーが少しでも回復してきたと感じたら、五感を使った経験を生活に取り入れてみましょう

感情がなくなっているときは、大きな感動や喜びをいきなり求めるのは困難です。まずは「なんとなく心地よい」といった感覚を大切にしましょう。

たとえば、下記のように過ごしてみてください。

  • 聴覚:好きな音楽を聴く
  • 視覚:空や緑をぼんやり眺める
  • 味覚:好きな飲み物をゆっくり味わう
  • 嗅覚:アロマやお香で好きな香りを探す
  • 触覚:肌触りの良いタオルやブランケットを使う

五感を通じた体験の積み重ねが、豊かな感情を取り戻していくためのきっかけとなります

こころちゃん
こころちゃん

気になるのからやってみてください♪

ステップ3:周囲との交流を再開する

感情が少しずつ戻ってきたと感じたら、負担にならない範囲で周囲との交流を再開しましょう。

こころのエネルギーが回復してくると「少し誰かと話したいな」という気持ちが、自然と戻ってくることがあります。ただし、いきなり以前と同じように活発に交流する必要はありません。

たとえば、家族や友人と短い時間だけ会話をしたり、簡単な頼まれ事を引き受けてみましょう

周囲との交流は、感情や意欲をさらに安定させる助けとなります。あなたのペースを優先し、焦らず進めてください。

まとめ

感情がなくなると感じる状態はうつ病や統合失調症の症状、薬の副作用が原因と考えられます。

回復のためには、心身を休ませることが大切です。もし余裕が出てきたら五感を使う経験を増やし、少しずつ周囲との交流を再開してください。

セルフケアを試しても感情がなくなる状態が続くときは、病院に相談しましょう。

おおかみこころのクリニックでは、自宅からでも相談できるオンライン診療を行っています。仕事や家事で忙しいときや外出が難しいときでも利用できるため、まずはあなたのお話を伺うことから始めさせてください。

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【参考文献】
[1]内科医のための抗うつ薬,宮内倫也
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/112/12/112_2226/_pdf

[2]感情鈍磨:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1533

[3]能力、評価ともに高い社員が業務内容の変更、プレッシャーによってうつ病発症に至った事例:事例紹介|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/case/683

[4]Emotional blunting in patients with depression. Part I: clinical characteristics|PMC
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8981644

[5]統合失調症|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=tQtLd1xVUp1wHJMQ

[6]4 うつ病を防ぐ:ご存知ですか?うつ病|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad004

[7]3 うつ病の治療と予後:ご存知ですか?うつ病|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad003

執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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