非定型うつ病になりやすい人の特徴とセルフケアのポイント







近年、若者の間で「非定型うつ病」が増加しています。[1]

非定型うつ病は一般的なうつ病とは異なり、本人が楽しいことをしているときは元気に見えるため、周囲から誤解されやすい病気です。非定型うつ病には、特徴的な性格や行動パターンがあることが知られています。

この記事では、非定型うつ病になりやすい人の特徴を解説します。

非定型うつ病についての理解を深め、発症を防ぐための方法を学びましょう。

若者に非定型うつ病が増えている背景

非定型うつ病が若者の間で増加しているのには、いくつかの社会的な背景が関係しています。

非定型うつ病の平均発症年齢は24.2歳であり、一般的なうつ病の平均発症年齢である30.1歳よりも若いことが特徴です。[1]この若年層における患者数の増加は、不安定な雇用状況や経済的な不安が影響していると考えられています。

また、SNSの普及により他人と自分を比較しやすくなり、人の目を過度に気にする人が増えたことも、若者のメンタルヘルスに影響を与えているのです。

さらにメンタルヘルスに対して世間の意識が高まり、診断を受ける人が増えたことも、患者数の増加に関係しているといえるでしょう。[2]

こころちゃん
こころちゃん

時代背景が大きく影響していますね

非定型うつ病と一般的なうつ病との違い 

非定型うつ病とは、一般的なうつ病の特徴に当てはまらないうつ病を指します。

最大の特徴は、自分にとって楽しいと感じることがあると気分がよくなる(気分反応性)というものです。

診断基準では、気分反応性に加えて、以下の5つの症状のうち2つ以上当てはまる場合に、非定型うつ病と診断されます。[1]

  • 著しい体重増加、過食
  • いくら寝ても眠い(過眠)
  • 手足が鉛のように重く動かせない、激しい疲労感(鉛様麻痺)
  • 拒否過敏症(批判に対して敏感で傷つきやすい)

では、非定型うつ病と一般的なうつ病は、どのような点で異なるのでしょうか。

あらわれる症状の違いを、以下に示しています。[1]

特徴一般的なうつ病非定型うつ病
性別女性に多いが男性も女性にとくに多い
症状の出方憂うつ感が続く環境によって気分が変わる
食欲減少することが多い増加することが多い
睡眠パターン不眠または早朝覚醒過眠傾向
疲労感常に疲れやすい身体が動かないほどだるい
社交性一般的に低下親しい人との交流で
一時的に改善する

非定型うつ病は、一般的なうつ病とは症状が異なります。ただし、軽症のうつ病とは区別がつきにくく、他の精神疾患を合併していることも多いため診断が難しいのです。実際、定型うつ病と診断された人の約30%が非定型うつ病であるという報告もあります。[1]

非定型うつ病は、一般的なうつ病と異なる部分もありますが、症状は人それぞれで似ている部分もあることを理解しておきましょう。

非定型うつ病になりやすい人の特徴

非定型うつ病になりやすい人は、子どもの頃からの性格や行動パターンに特徴があるといわれています。

発症前の性格
・子どもの頃は「良い子」といわれることが多かった
・少しの失敗で過度に落ち込む
・人に弱みを見せられない
・自分の意見をはっきり言えない
行動パターン
・相手に気に入られようとするあまりに自分の欲求を押し殺す
・他人に対して過度に尽くそうとする
・人前に立つと過剰に緊張する

非定型うつ病になりやすい人は、他人によく思われようとする傾向があります。相手に気に入られようとするあまりに、無理をしてしまうことで強いストレスを感じ、うつ病を発症してしまうのです。

また、虐待やネグレクトなど幼少期に強いストレスを経験した人も、非定型うつ病を発症するリスクが高まるといわれています。[1]

非定型うつ病にならないためのセルフケアのポイント

非定型うつ病を発症しないためには、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。

ここでは、セルフケアのポイントをご紹介します。

こころちゃん
こころちゃん

できそうと思うものからやってみましょう

規則正しい生活を意識する

非定型うつ病を予防するためには、規則正しい生活を送ることが大切です。非定型うつ病では、とくに過眠や過食といった症状があらわれやすく、不規則な生活習慣によってこれらの症状が悪化することがあります。

生活習慣を整えるために意識するポイントは以下の通りです。[1]

  • 勤務時間より1時間前には起床し、23時には就寝する(休みの日も意識する)
  • 起床したらできるだけ日光を浴びる
  • 1日3食を決まった時間に食べる
  • 日中は活動的に過ごす(寝てしまわないようにする)

非定型うつ病にならないためには、生活リズムを一定に保つことを意識しましょう。

無理をしすぎない程度に適度な負荷をかける

非定型うつ病では、適度に生活に負荷をかけることによって回復しやすいといわれています。[1]一般的なうつ病では休養が最優先されますが、非定型うつ病では無理をしすぎない程度に活動を継続することが発症を予防するポイントです。

仕事をしている場合には、完全に休むのではなく、無理のない範囲で仕事を続け生活リズムを保ちましょう。休日もできるだけ平日と同じように活動し、軽い運動や趣味に時間を使うことで、生活にメリハリが生まれます。

ただし、非定型うつ病は疲労を感じやすい特徴があるため、無理のしすぎには注意が必要です。疲労が蓄積するとストレスを感じやすくなったり、過眠傾向が強くなったりすることもあります。ストレスや疲労を感じたら活動を控え、適度に休むことも大切です。

非定型うつ病を予防するためには、無理をしすぎない程度に活動を継続し、メリハリのある生活をこころがけましょう。

こころちゃん
こころちゃん

メリハリのある生活で自信もついてくるでしょう

必要に応じてカウンセリングを受ける

非定型うつ病のような症状が気になっている場合は、専門家のアドバイスを受けるのも一つの選択肢です。

非定型うつ病は、物事の捉え方や考え方のクセが、発症に大きく関わっています。たとえば、非定型うつ病の特徴である拒絶過敏症は、他人からの批判を極端に恐れる思考パターンが発症の背景にあるといわれています。[3]

こうした考え方のクセを変えるためには、認知行動療法(CBT)が有効です。認知行動療法は、ストレスにうまく対応できるこころの状態をつくる精神療法の一つです。[4]

専門家のアドバイスを受けることで、非定型うつ病の発症予防にもつながります。

メンタルヘルスの問題は非常にデリケートであり、自分一人で解決しようとしてもうまくいかないことがあります。専門家のサポートを受けることで、自分自身のこころとしっかり向き合えるようになるでしょう。

おおかみこころのクリニックでは、いつでも相談を受け付けております。

24時間予約受付中

まとめ

非定型うつ病になりやすい人の特徴として、他人によく思われようとする思考や自分の欲求を押し殺してしまう行動パターンが見られます。

若者に多いとされる非定型うつ病を予防するためには、規則正しい生活をこころがけることが必須です。完全に休むのではなく、適度にメリハリのある生活を送ることで、ストレス管理や疲労回復に役立つでしょう。

また、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることで、自分自身をより深く理解し、症状を改善するきっかけとなります。

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参考文献

[1]非メランコリー親和型の気分障害を有する若年者の休業と復職支援の動向に関する研究|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センターhttps://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/shiryou/p8ocur00000011sn-att/shiryou90.pdf

[2]うつ病Q&A|日本うつ病学会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/ippan/qa.html

[3]本邦における拒絶に対する過敏性の特徴の検討|Japanese Society of Psychosomatic Medicine(2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/54/5/54_KJ00009352450/_pdf/-char/ja

[4]認知行動療法とは|国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センターhttps://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php

この記事の執筆者
原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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