「自分のミスが許せず気分が沈む」
「周囲の適当な仕事ぶりにイライラしてしまう」
このように悩んでいるあなたは、もしかしたら完璧主義かもしれません。
完璧主義は周囲から厚い信頼を得られる半面、自分のできない部分が気になり苦しくなってしまいますよね。
行き過ぎた完璧主義は精神の健康度を低下させ、うつのリスクを高めます。
この記事では、 完璧主義とうつの関連や、よい完璧主義と悪い完璧主義の違い、完璧主義の短所を改める4つの方法を紹介します。
これから紹介する方法を参考に、より楽に生きられるあなたへと変化していってくださいね。
また、同じ内容の動画も用意しています。動画の方が分かりやすい方は下記からご覧ください。
完璧主義とうつの関連
完璧主義とうつ状態には、以下の2点の関連があります。[1]
- ミスを過度に気にする
- 自分の行動に漠然とした不安を持つ
ミスを気にしたり常に自分の行動に自信が持てないのは、常に自己否定をしている状態です。
その結果、精神的な健康度が損なわれ、うつ状態に陥りやすくなります。
一方「高い目標を設定すること」と「うつ状態」には直接の関係性は認められませんでした。
高い目標はモチベーションを高め、精神的な健康度を向上させるという報告もあります。
つまり、完璧主義のすべてが「うつ」と関係があるわけではないのです。
完璧主義の持つ一面がうつ病の罹患リスクを高めるきっかけになることを覚えておきましょう。
完璧主義がうつ病のリスクを高める理由
完璧主義がうつ病のリスクを高めるのは、完璧主義者が持つ4つの短所がきっかけになっている可能性があります。
- 自分や他人に厳しい
- 柔軟性に欠ける
- 気軽に物事に取り組めない
- ダメな部分に注目しやすい
中途半端な物や人が許せないため、不満を感じやすいのが特徴です。
また、完璧なもの以外は認められないため、少しでもつまずくと取り組む意欲を失ってしまいます。
自分のミスや不完全な部分に注目してしまい、自己否定的になる傾向もみられます。
これらの短所がうつのリスクを高めるといえます。
完璧主義になる原因
完璧主義になるきっかけとして、以下の3つが代表的です。
ひとつずつ解説していきます。
幼少期の厳しいしつけ
幼少期に厳格な親のもとで育った方は、完璧主義になる可能性が高いとされています。
「しっかりできるのが当たり前」という思考が染みつき、できない自分を許せなくなるからです。
たとえば、間違えた問題を何度も復習させられたり、完璧に理解するまで許されなかったりした経験のある方は、このような思考に陥りやすいでしょう。
厳しい親に監視されるような環境で育った方も完璧主義になりやすいとされています。
相手を落胆させたり叱られたりしないように入念に準備をして自分を守る癖がつき、完璧主義な性格が形成されていくのです。
親の過保護な関わり
親がなんでも先回りするような過保護な関わりも、完璧主義を生み出す一因です。親の過剰な関わりが子どもの失敗への耐性を奪うからです。
例として「子どもが人間関係で困らないように、仲良しの子と同じクラスにしてください」と親が学校に頼むケースが挙げられます。
このような親の干渉は、子どもが失敗や不安への耐性を育むチャンスを奪うことになるでしょう。
その結果、失敗を過度に恐れ「万全な準備ができるまで前に踏み出さない」という完璧主義の性質があらわれるのです。
生まれ持った性格
発達障害やグレーゾーン(診断はつかないが、発達障害の傾向がある状態)の方は、完璧主義になりやすいといえます。
発達障害の特性がある方は「0 or 100 思考」になりやすく、完璧(100%)の状態が理解しやすいためです。
たとえば、周囲が「可もなく不可もない状態でよいから、早く仕事を仕上げてほしい」と望んでいても、発達障害傾向のある方にはその塩梅が理解できないことがあります。
このように、周囲が望まないほどの細部へのこだわりを突き詰め、自分で自分を追いつめてしまうのです。
「よい完璧主義」とうつにつながる「悪い完璧主義」
ここまで、完璧主義の悪い側面に注目して解説しましたが、完璧主義にもよい側面があります。
心の健康を高める「よい完璧主義」もあれば、うつのきっかけになる「悪い完璧主義」もあるのです。
以下で詳しく解説していきます。
よい完璧主義「適応的完璧主義」
精神の健康度を高める完璧主義を「適応的完璧主義」と言い、特徴は以下の通りです。
- 現実的で達成可能な高い目標を持っている
- 他者からの評価に敏感でない
- 目標のために計画的な行動ができる
- 積極性がある
適応的完璧主義は、前向きで現実的な思考を持ち合わせているため、失敗しても次に活かすことができます。
過度な自己否定をせず、こだわりや信念を生産的な活動に活かせるのが適応的完璧主義の特徴です。
悪い完璧主義「不適応的完璧主義」
うつのリスクを高める完璧主義を「不適応的完璧主義」と呼び、以下のような特徴があります。
- 無謀な高い目標を設定する
- 他者からの評価で気分が大きく左右する
- 自己否定をしてしまう
不適応的完璧主義の方は「他者からよい評価を得たい」「失敗して落胆されたくない」など、他者からの評価を行動の軸としています。
そのため、目標設定においても「これならみんなから認めてもらえる」と、自分ではなく他人を基準にして考えてしまうでしょう。
他人の目が気になり常にストレスを感じるため、うつのリスクを高めてしまうのです。
完璧主義をやめたい人のための治し方【4ステップ】
完璧主義はうつのリスクを高めるため、行き過ぎた完璧主義は改善するようにしましょう。
具体的には、以下の4つの方法があります。
詳しく解説するので、取り組みやすそうな方法から試してみてくださいね。
「理想」と「現実」を分ける
まずは理想と現実を分けてみましょう。完璧主義の方は非現実的なほどの完璧な状態を目指している場合があります。
現実的に達成可能なラインを明確にし「できたらいいな」という部分はおまけ程度に考えてみてください。
もし達成できなくても、頑張った過程を正しく評価してください。
最初は抵抗があるかもしれませんが、頑張った自分を褒めてあげてくださいね。
「まあいいか」のマインドを持つ
完璧主義に縛られ、苦しくなったら「まあいいか」とつぶやいてみてください。
本心ではそう思えなくても、できない自分を許す一歩につながります。
「まあいいか」と言うことにどうしても抵抗がある方は、あなたの好きな人やキャラクターが言ってくれていると想像してみましょう。
あなたの心にスッと入る方法で試してみてくださいね。
「できなかったらどうなる」を想像する
もし失敗したらどうなるかを前もって想像しておくのが効果的です。
まずは最悪の状況を考え、何が起こるかを紙に書き出してみてください。
次に、その最悪の状況は現実的にどれくらいの確率で起きそうか考えてみましょう。
頭の中では大変なことが起きる気がしても、紙に書き出すと距離を取ることができます。
客観的に見ることで、そこまでの状況には陥らなさそうだと冷静に考えられるようになりますよ。
完璧主義ではなく「最善主義」を意識する
失敗は成功の副産物だと考える「最善主義」の考え方を意識してみましょう。
完璧主義者は失敗が許せず、できない自分を責める傾向があります。
一方、最善主義者は「失敗は成功に欠かせないものである」と考えます。
たとえば「今回のミスは大きなミスを防ぐために役立てよう」と気持ちを切り替えられるのです。
その結果、失敗を恐れることなく最善のパフォーマンスを発揮できるでしょう。
自分が目指すレベルに到達できなくても「最善を尽くしたからOK」と、頑張った過程を認めてみましょう。
まとめ
今回は、完璧主義とうつの関連について解説しました。
完璧主義者はミスを気にしすぎたり、自分の行動に自信が持てなくなるとうつ状態に陥りやすいといえます。
もし苦しくなったら、現実的に達成可能な目標を設定し直せばいいのです。
そして、最善を尽くしたそれまでのプロセスを褒めるようにしてみましょう。
「まあいいか」とつぶやいてみるのも、できない自分を許すために効果的です。
失敗は成功の副産物であると考え、「適応的完璧主義」や「最善主義」を意識し、肩の力を少し抜いて過ごしてくださいね。
肩に力を入れすぎて1人で悩んでいるならば、クリニックに相談にきてください。
一緒に肩の力の抜き方を練習していきましょう!
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参考文献
羽吹香峰子. 大学生の完全主義的な考え方とうつ傾向の関連について~ストレス対処法の面接調査を通して~. Ⅲ 先行研究 2 完全主義
https://www.soka.ac.jp/files/ja/20170512_155557.pdf