人前では明るくふるまっていても、実はうつ病という人もいるの?
そういう人もいるんだ。周りからは分かりにくいけれど、人知れず苦悩を抱えている人もいるんだよ。
外から見ると明るく社交的でも、一人になると深く落ち込み、うつ病の症状があらわれる人がいます。このような人は「微笑みうつ病」かもしれません。
微笑みうつ病は、周りからは元気で活発に見えることから見過ごされがちな病気です。
この記事では、微笑みうつ病の特徴と、なりやすい人の傾向について詳しく解説します。
微笑みうつ病への理解を深め、症状に気づいたら早めに対処できるようにしましょう。
この記事の内容
人前では明るい「微笑みうつ病」とは
微笑みうつ病は「他人と一緒にいるときは元気で明るくふるまい、一人になるとまるでスイッチが切れたかのように落ち込む」このような二面性が特徴です。
微笑みうつ病の人は、人前でうつ病の症状が全く出ないわけではありません。しかし、人前では苦痛や悩みを隠しているため、周りに症状が認識されにくいのです。また、無意識に明るくふるまっていることがあり、自分自身でも気付かないことがあります。
微笑みうつ病は正式な病名ではありませんが、うつ病のひとつとされています。とくに、若い女性に多いといわれている病気です。[1]
本人も気づかないこともあるんですね!
微笑みうつ病の症状と一般的なうつ病との違い
微笑みうつ病と一般的なうつ病の主な違いは、症状が表にあらわれるかどうかです。
微笑みうつ病では、外見上は明るく健康に見えますが、一人のときには一般的なうつ病と同じような症状があらわれます。
うつ病の具体的な症状は、以下の通りです。[2]
- 気分が落ち込む
- 今まで楽しいと思えていたことが楽しめなくなる
- 悪いほうにばかり考えてしまう
- 疲れやすくなる
- 眠れなくなる
- 食欲がなくなる
一人のときや家にいるときにこのような症状がある場合は、うつ病の傾向があります。
とくに、他人といるときにこのような症状がないときには、微笑みうつ病の可能性があることを知っておきましょう。
知っていると気にかけることができますね!
微笑みうつ病になりやすい人
微笑みうつ病は、他人と関わっているときには症状が出にくいといわれています。
ここでは、微笑みうつ病になりやすい人について紹介します。[3]
相手に気をつかいすぎる人
「相手に良く思われたい」
「自分のことよりも相手のことを優先して自分の意見を言えない」
そのような人は、微笑みうつ病になりやすいといわれています。
他人に気をつかいすぎるあまりに、自分の感情を押さえ過ぎてしまうのです。また、人に不快な気分を押し付けたくないと考えるため、人前では辛くても笑顔でいようとしてしまいます。
自分らしく生きることも大切ですね。
人に弱点を見せたくない人
「人に弱みを見せたくない」という思いが強い人ほど、自分のネガティブな感情を悟られないよう、辛くても明るくいようとしてしまう傾向があります。また、明るくふるまうことで、バリアを張ってしまうこともあります。その結果、自分ひとりで問題を抱え込んでしまうのです。
抱えるストレスが大きくなりすぎると、うつ病を引き起こす原因となるのです。
一人でがんばりすぎてしまう人
「自分でやったほうが早いから」「人に迷惑をかけたくない」と、一人でがんばりすぎてしまう人は、微笑みうつ病になりやすいといえるでしょう。
このような人は、人に頼ることが難しいため、悩みや苦労を抱え込んでしまう傾向があります。誰かに任せるよりも、一人でやったほうが楽なこともあります。しかし、限度を超えてしまうと、こころと身体に大きな負担となってしまうのです。
一人ひとり抱えられる量は違っていいんですよ♪
真面目で責任感が強い人
真面目で責任感が強い人は「自分で何とかしなければ」と考えてしまいがちです。
その結果、一人で問題を抱え込んでしまい、大きな負担となってしまうことも少なくありません。
また、真面目な人は適度に手を抜いたり、息抜きをしたりすることが苦手な人も多いといわれています。さらに「人前ではちゃんとしなければ」と思い込み、感情を表に出すことが難しいこともあります。
そのため、辛くても人前では明るく元気にふるまってしまうのです。
微笑みうつ病のセルフチェック
自分でも気付かないうちに、こころの病気になっていることがあります。
微笑みうつ病のセルフチェックリストを以下に作成しましたので、当てはまるものがないかチェックしてみてください。[4][5]
✔ 人と会い家に帰ってくると、どっと疲れている
✔ 家に帰ると疲れ果てて何もできなくなる
✔ 他人とのコミュニケーションは普通にできる
✔ 楽しいと思えていたことが楽しいと思えなくなった
✔ 物事への興味関心がなくなった
✔ 一人でいるときにひどく落ち込む
✔ 集中力が低下してミスが増えた
✔ 食欲や性欲が低下した
✔ 寝つきが悪い
✔ 死にたいと思うことが増えた
これらのチェックリストに当てはまるものがあれば、微笑みうつ病やうつ病の傾向があります。
まずは、誰かに相談する勇気を持ち、早めに医療機関を受診しましょう。
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微笑みうつ病を予防する3つのポイント
微笑みうつ病の予防や症状を悪化させないために、以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
ストレスを軽減する
微笑みうつ病になりやすい人は、問題を一人で抱え込み、ストレスを溜め込んでしまうことがあります。
誰しも少なからずストレスを受けていますが、うまく発散することができればうつ病の発症を予防できる可能性があるのです。[6]
自分の趣味や運動など、自分なりのストレス発散方法をみつけるとよいでしょう。
とくに運動は、ストレスを軽減する効果があるといわれています。[7]
激しい運動でなくても良いので、適度に身体を動かす習慣を身につけましょう。
また、仕事量が多いことがストレスになっている場合は、誰かに仕事を振ったり、思い切って断る勇気を持ったりすることも大切です。
自分の抱える負担を少しでも減らせるようにしましょう。
生活習慣を整える
生活リズムを整えることは、うつ病の症状を悪化させないために大切です。
とくに睡眠はうつ病と深く関係しています。不眠症はうつ病の症状のひとつであり、発症にも関係しているのです。[8]
不眠症を改善するためには、就寝・起床の時刻を一定にして体内時計を整えることが重要だといわれています。[9]
規則正しい生活を心がけ、生活習慣を整えることがうつ病の予防や症状の悪化を防ぐカギといえるでしょう。
早寝・早起き・朝ごはん!ですね♪
早めに医療機関を受診する
微笑みうつ病の傾向がある人は、早めに医療機関を受診しましょう。
微笑みうつ病では、症状を自覚しないまま、気付けば重症化していることも少なくありません。また、微笑みうつ病になりやすい人は、性格的に誰かに悩みを相談することが苦手で、医師にさえも相談することをためらう人もいます。
うつ病は治療に長い時間がかかるといわれていますが、早めに治療を開始できれば治りも早いとされています。
気になる症状があれば、ためらわず、早めに医療機関を受診してください。[6]
おおかみこころのクリニックでは、いつでも相談を受け付けています。
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まとめ
人前では明るく元気に見えても、こころのなかでは孤独感や気分の落ち込みを感じている状態を、微笑みうつ病と呼ぶことがあります。微笑みうつ病は、周りからも気付かれにくく、自分でも無意識に行動していることがあるため、気づかないうちに病気が進行していることがあるのです。真面目な人や一人でがんばりすぎてしまう人などに多いとされています。
症状は一般的なうつ病と似ていますが、症状が表立って出てこないのが微笑みうつ病の特徴です。
微笑みうつ病は、周りや自分さえも症状に気づきにくいため、少しのサインも見逃さず、受診につなげることが大切です。
自分ががんばりすぎていたり、こころや身体がどっと疲れていると感じたときは、相談する勇気を持ち、医療機関を受診しましょう。
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参考文献
[1]心理臨床場面における笑いの取り扱い:その効用と実際, 展望について|九州大学学術情報リポジトリ
https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/3580/KJ00004255701.pdf
[2]うつ病|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
[3]うつ病になりやすい人がいると聞いたのですが。|千葉県
https://www.pref.chiba.lg.jp/kenshidou/faq/376.html
[4]15 Things Only People With ‘Smiling Depression’ Understand|Enrichment centre for mental health
[5]うつ病のメカニズム|バイオメカニズム学会誌,Vol. 35, No. 1(2011)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/35/1/35_3/_pdf/-char/ja
[6]うつ病を防ぐ|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad004/
[7]体を動かす|こころもメンテしよう
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_01.html
[8]睡眠と心身の健康|日大医誌 79(6):333-336(2020)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/79/6/79_333/_pdf/-char/ja
[9]不眠症|e-ヘルスネット
- この記事の執筆者
- 原田瑞季
臨床検査技師。保健学修士。在宅で医療検査の業務に関わりながら、フリーライターとして医療を中心に幅広いジャンルで執筆中。