「うつ病で仕事を辞めたい……」と思っても「本当に辞めてもいいのかな」「退職するって、甘えているのかな」という不安を抱えて、なかなか決断ができないのではないでしょうか?
うつ病をきっかけに退職を決断する人は、少なくありません。
令和4年労働安全衛生調査(実態調査)によれば、メンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所の割合は5.9%となっており、前年度の4.1%と比較しても増加傾向にあります。
結論からすると、退職を決断することは決して甘えではありませんよ。
ただし、退職は大きな決断なのでしっかりと考えることが大切です。
この記事ではうつ病で仕事をやめるときに役立つ、判断のヒントとなる情報をお伝えします。
下記の記事では、うつ病の症状と向き合いながら仕事を続けて行く方法を紹介しています。合せてご覧ください。
仕事を辞める前にやっておくべき5つのこと
一度仕事を辞めてしまうと、元の職場へ戻るのは難しいですよね。
ここでは、後から後悔しないために「仕事をやめる前にやっておくべきこと」を紹介します。
5つの項目について、詳しく見ていきましょう。
後悔しないように、事前チェックをしておきましょう
医師へ相談する
「仕事を辞めたい」と考えたら、まずは医師に相談しましょう。
うつ病の症状として「判断力の低下」や「無価値観(自分には価値がないと思い込むこと)」が挙げられます。
症状が重いと頭がうまく働かず、正常な判断ができないのです。
仕事のストレスが大きければ、退職をすることで重圧から解放されるようにも思います。しかし衝動的な決断であれば、後々後悔する可能性もあるのです。
そのため退職する前には、必ず主治医に「退職を決断してもよい時期か?」相談してくださいね。
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身近な人へ相談する
家族や友人など、身近な人へ相談することも大切です。
誰かに話をすることで、自分自身の考えを整理できます。
話をしているうちに「この仕事を続けられる方法を考えたい」と気持ちが変わるかもしれません。
また、事前に退職への理解が得られると「仕事を辞めてどうするの?」と心配されることも減り、治療や休養に専念しやすくなるでしょう。
家計の状況を確認する
退職前には、
「生活費がいくら必要か」
「退職しても生活が維持できるかどうか」
など経済状況を把握しておきましょう。
もちろん、ゆっくり休養して体調を回復させることが最優先の時期はあります。
ただし、経済面の見通しがついていなければ「早く仕事をしなければ……」と焦ってしまい、退職しても気が休まらないでしょう。仕事を辞めたことが逆にストレスとなり、体調の回復も遅くなるかもしれません。
うつ病の治療中で、十分な生活費を貯めることが難しい場合でも、
「傷病手当など、自分がもらえる手当を探す」
「もう少し療養し、復職の道を探す」
など他の選択肢を考えるきっかけになるはずです。
本当に仕事が原因か考える
うつ病の原因となっているストレスが、本当に仕事にあるかどうかも考えてみてください。
うつ病の原因は一つではなく、複数の要因が重なって発症します。
「仕事を辞めたいほど辛い」と感じていても、
「親しい人の別れ」
「がんや糖尿病などの慢性的な身体疾患」
「経済的不安」
など仕事以外にストレスがあり、そのため仕事に影響が出ている可能性もあるのです。
その場合は、退職しても本当の原因は解消しません。
「仕事に行けないから、仕事に原因があるのだろう」と考えるのではなく、仕事以外にストレスの要因がないか考えてみてくださいね。
また職場環境や業務量にストレスを感じている場合、退職以外に選択肢がないのかを考えてみるのも一つの方法ですよ。
仕事以外のストレスを取り除いても、ツラいときに退職を再び考えるのもアリですよ
退職以外の選択肢を考える
もし「本当はこの仕事を続けたい」という気持ちがあるなら、職場の制度を確かめてみましょう。
厚生労働省は、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を作成しており、長期休業している労働者の復職に向けた支援を会社側が行うことを推奨しています。
- どれくらいの期間、休職できるか
- 復職時に、異動や短時間勤務制度の選択肢があるか
- 傷病手当は支給されるか
など、さまざまな制度が活用できる場合もあるのです。制度は、それぞれの職場や病状によって異なるため、一度調べてみることをおすすめします。
退職以外の選択肢が見えてくるかもしれませんよ。
うつ病で仕事を辞めて後悔したこと
ここでは、うつ病が原因で仕事を辞めて後悔したことを3つご紹介します。
うつ病の診断書が出ているからといって、必ずしも仕事を辞めなければいけないわけではありません。
退職することで感じるデメリットも把握したうえで、あなたに合った選択をしてくださいね。
辞めた後に後悔しても戻れないことが多いので、よく考えましょう
収入が減る
一つめのデメリットは、収入が減ることです。
もちろん退職後も傷病手当や失業保険が支給される場合もあります。
ただし、それらの手当がなければ、収入源はなくなってしまいます。
扶養家族がいたり、当面の生活費が確保できていなければ、金銭面での焦りが出て治療に専念できないかもしれません。
また体調が良くなっても、再度就職活動しなければならず、すぐに働けません。収入を得るまでに時間もかかってしまいます。
下記の記事では、うつ病で生活保護を受けるメリットとデメリットを紹介しています。合せてご覧ください。
再就職へのハードルが上がる
二つめは、再就職へのハードルが上がることです。
うつ病がきっかけの退職後は自己肯定感が低く、なかなか再就職に踏み出せないことがあります。社会復帰自体が、怖くなることもあるでしょう。
また、復職プログラムが受けられないことも考慮しておきましょう。
復職の場合は、職場と話し合いながら就業時間や業務内容を調整できます。
しかし、再就職後は新しい環境で働かなければならず、そのような配慮は得られにくい場合も多いでしょう。
さらに有給休暇を取得できる日数も少なく「体調が優れないときに休みにくい」という不安も考えられます。
復職するよりも、仕事をするハードルは高くなるでしょう。
退職前後の手続きが負担になる
三つめは、退職に向けてやるべきことが多く負担になることです。退職に伴う手続きだけでなく、職場へ備品の返却や私物の整理もあるかもしれません。
退職の意志を固め「職場に足を踏み入れたくない」という場合も、何らかの形で退職の手続きが必要です。
そこがネックとなり、なかなか退職に踏み切れない人もいます。
また、退職後はすぐに健康保険や年金の手続きをしなければいけません。
慣れない手続きで、時間も体力も消耗します。うつ病の症状が重いときには大きな負担となるでしょう。
うつ病で退職して良かったこと3選
しっかり考えた上での退職であれば、後悔することは少なく「退職して良かった」と感じることが多いはずです。
ここでは、具体的な例を3つ見ていきます。
うつ病の原因となる仕事のストレスが解消される
一つめは、うつ病の原因だった仕事のストレスがなくなることです。
もし、退職ではなく休職だったとしたら
「今後の進退(退職や復職)を考えること」
「定期的に職場や人事へ連絡を入れること」
などが気になって精神的な負担になるでしょう。
休職できる期間も職場によって異なります。1年以内に復職しなければ、退職させられるケースもあるでしょう。
復職にかかわるプレッシャーは「休職」しているからこそのストレスです。
退職することでこれらのストレスから解放されるのは、大きなメリットになります。
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治療や休養に専念できる
二つめは、仕事のことを考えずに治療や休養に専念できることです。
うつ病の再発率は約60%もあり、その後再発を繰り返すとさらに再発率が高くなるとされています。
症状が安定しないまま焦って仕事に復帰すれば、再発リスクも高まるのです。
もちろん「経済面や昇進に影響が出るから」と早く復職したい気持ちもあるでしょう。
ただし、無理をしてうつ病が再発すると、再度休職が必要になる恐れもあります。
焦らずに治療や休養に専念できることは、退職したからこそ得られるメリットです。
新たなことに挑戦する機会が得られる
体調が回復すれば、徐々に意欲も湧いてきます。
退職して時間があれば、休養中に見つけたやりたいことに挑戦する時間もあるでしょう。
そして「やりたいことに挑戦できた」と達成感を感じることが、自己肯定感を高めることにもつながります。
そして、これらの挑戦が、新たな仕事のきっかけになったり、今後の人生に彩りをもたらしてくれるかもしれません。
まとめ
うつ病で仕事を辞めることはできますし、必ずしも悪いことばかりではありません。
職場の制度を利用すれば、退職以外の選択肢もあるでしょう。どのような決断をするにせよ、一時の感情に任せて衝動的に答えを出すのは控えてくださいね。
大切なことは周りから「うつ病で辞めるのはずるい」と声が上がっても、自分を最優先に考えることです。
「仕事を辞めたいほど辛いけど、まだ病院を受診していない」という場合は、まずは医療機関に相談してくださいね。
おおかみこころのクリニックは、夜間や休日の診療も行っています。
「日中は仕事があって受診しづらい」という方は、ぜひご相談ください。
24時間予約受付中
【参考文献】
1)令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)
r04-46-50_kekka-gaiyo01.pdf (mhlw.go.jp)
2)心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き |厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html
3)職場復帰支援のガイダンス(働く方へ)|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/return/return-worker/
- この記事の執筆者
- なのか
医療・健康ライター。保健師として11年勤務。安心感を届けられるような記事を執筆します。