ストレスがたまって過食してしまうと、罪悪感で苦しくなりますよね。
過食に加えて気分の落ち込みや身体のだるさがあると、うつ病との関係も気になるのではないでしょうか。
そこで今回は、うつ病で過食になる原因や、うつ病と過食が同時に起こる病気について解説します。
うつ病で過食になったときの対処法や治療法についても解説しているため、過食で増え続ける体重にお悩みの方はぜひ参考にしてください。
この記事を通してうつ病と過食について知り、自分に合った方法で食事を楽しめる日を取り戻す一歩を踏み出しましょう。
うつ病で過食になる原因
うつ病の過食には、身体を活動させる「交感神経」と身体を休める「副交感神経」の乱れが関係しています。
うつ病でイライラや不安などの緊張状態が続いているのは、交感神経が活発になっている状態です。
交感神経が高ぶったままだと疲れてしまうため、身体は副交感神経を働かせてバランスをとろうとします。
副交感神経を働かせるにはストレス発散やリラクセーションが必要ですが、うつ病の緊張状態のときは副交感神経をうまく働かせられません。
そこで、たくさん食べて消化することによって無理やり副交感神経を働かせ、バランスを取ろうとするのです。
身体が神経のバランスを保つために食べているんですね
過食しているときは一時的に心が楽になりますが、徐々に「なんで食べてしまったんだろう」という罪悪感や自己嫌悪に襲われ、自己肯定感が低下してしまいます。
「過食する→自己肯定感が低下する→うつ状態が悪化する」という負のスパイラルに入るため、早めの治療が必要です。
うつ病と過食が同時に起こる病気
うつ病と過食が同時に起こる病気として、以下のふたつが考えられます。
それぞれ解説します。
うつ病と過食の関係についてもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてくださいね。
過食性障害
過食性障害は食欲を自分でコントロールできず、大量の食べ物を詰め込むように食べる病気です。
「これ以上食べたら過食」という量の定義はありませんが、短時間で大量のものを食べ、食欲を自分でコントロールできないときに「過食」とされます。
過食性障害では、体重を落とすための行動(食後の嘔吐や下剤の使用、過度な運動など)はないため、肥満になる傾向があります。[1]
また、過食性障害は67%の人が生涯にひとつ以上の精神障害を発症する病気です。
なかでも多いのは、気分障害(47%)や不安障害(41%)です。[2]
あわせもつ病気の治療は過食を改善させるため、気分の落ち込みや意欲の低下などについても主治医に伝えましょう。
非定型うつ
非定型うつは、気分反応性(楽しい出来事には元気に取り組める状態)や、食欲の増加、過眠などの症状がある病気です。[3]
非定型うつの方は、気分の落ち込みや不安を過食で紛らわしていますが、過食後には罪悪感や自己嫌悪を抱きます。
摂食障害のように痩せるための行動(嘔吐や下剤の使用など)をとらないため、体重は増える一方です。
しかし、過食以外のストレス発散方法がわからないためなかなか過食をやめられません。
その結果、ふたたび過食してしまうという負のループにはまりやすくなります。
非定型うつについてより詳しく知りたい方は、こちらを参考にしてください。
うつ病で過食になったときの対処法
うつ病で過食になったときの対処法は以下3つです。
それぞれ解説します。
自分を責めない
過食する自分を責めないようにしましょう。
食べてしまった自分を責めると、ストレスを感じて過食したい気持ちがさらに強くなります。
「食べちゃダメ」とわかっていても食べてしまうのは、うつ病により考える力や意志を保つ力が低下しているためであり、決してあなたのせいではありません。
自分を責めるよりも、食べるものや食べ方のルールを作ると効果的です。
以下の例を参考にしてください。
- 野菜をたくさん食べる
- お皿に乗ったおやつは食べてOKにする
- お菓子ではなくドライフルーツを食べる
あなたが「これならできそう」と思えるポジティブなルールを作りましょう。
ひとりで考えるのが難しいときは、医師や臨床心理士などの専門家に相談できます。お気軽におおかみこころのクリニックにご相談ください。
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家族に協力してもらう
家族に協力してもらい、食べ過ぎない環境を作りましょう。
過食のコントロールは難しいため、ひとりで抱え込まないことが大切です。
家族が協力できることとして、以下のようなことが挙げられます。
- 買い置きはしない
- 目につくところに食べ物を置かない
- 自分が決めたルールを守れるか見てもらう
家族に協力をお願いするのが難しいときは、医師や心理士に協力してもらいましょう。
「ルールを守れたか」「買い置きをしなかったか」などをメモして、次の診察時に振り返るのも効果的です。
ひとりで過食と戦うのではなく、家族や専門家と協力して、症状を改善していきましょう。
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自分の気持ちを書き出す
過食したい気持ちが出たら、自分の気持ちを書き出しましょう。
例として、以下の気持ちについて考えてください。
- 本当にお腹が空いている?
- 何に対してストレスを感じている?
- 今、どんな気持ち?怒っている?傷ついている?
自分の気持ちがはっきりすることで、過食したい気持ちが少し落ち着くはずです。
過食につながりやすいパターンを把握しておくことは、病状の改善にも役立ちます。
過食したくなったときには、立ち止まって自分の気持ちを書き出しましょう。
うつ病と過食の治療法
うつ病と過食の治療法として、以下3つが挙げられます。
それぞれ解説します。
心理教育
心理教育は、病気の正しい知識や情報を身につけ、病気とうまく付き合う力を高めるために行われます。[4]
具体的な内容は以下のとおりです。
- 過食がなぜ起こるのか
- どんなメリットがあって過食するのか
- どんなデメリットがあって止めたいのか
過食について学ぶことで、過食に使う時間やお金を少しずつ減らし、つらさを軽減できるようになります。
うまく付き合うことができると心がラクになりますよ♪
心理療法
心理療法は、臨床心理士と一緒に自分の心に向き合う治療です。
心理療法では学んだ内容を日常生活で実践することが重視されるため、宿題として生活を記録することがあります。
記録内容は、以下のようなことです。
- 食事内容
- 過食しやすい時間
- 過食したくなるときの気分
宿題の内容を振り返りながら、過食の引き金となりやすい出来事や、効果的な対処法について考えていきます。
薬物療法
治療の補助的に行われるのが、薬物療法です。
薬物療法では、過食性障害そのものを治すことはできません。
コントロールできない食欲や自分を責めてしまう気持ちなどを抑え、現在のつらさを軽減するために使用されます。
抗うつ薬や抗不安薬を服用して気持ちを安定させ、治療に取り組みやすい状態を作り、日常生活を送りやすい状況を整えるのです。
Q:食べ過ぎと過食の違いは?
食べ過ぎと過食の違いは「満足感を感じられるかどうか」です。
食べ過ぎでは、満腹になれば満足感を感じられます。
たとえば、ビュッフェで食べ過ぎたときは、満腹感や「いっぱい食べたなぁ」という充実感があるでしょう。
一方で、過食では満腹感があっても食べ物を押し込むように食べてしまいます。
食後に満足感を感じることはなく「またやってしまった」と罪悪感や嫌悪感を感じるのです。
「これ以上食べたら過食」という量の定義はありませんが、本人が食欲をコントロールできず、食べたあとに罪悪感や自己嫌悪がある場合は過食とされます。
まとめ
うつ病の過食は、身体を活動させる「交感神経」と身体を休ませる「副交感神経」のバランスが乱れ、過食することで精神のバランスを取っている状態です。
うつ病と過食が同時に起こる病気としては、過食性障害や非定型うつが挙げられます。
過食しても自分を責めず、家族に協力をお願いしたり自分の気持ちを書き出したりしながら、少しずつ過食の頻度を減らしていきましょう。
うつ病による過食は、心理教育や心理療法、薬物療法によって治療していきます。
コントロールできない食欲をひとりで抱え込まず、おおかみこころのクリニックにお気軽にご相談ください。
24時間予約受付中
【参考文献】
[1]摂食障害情報ポータルサイト(専門職の方)
https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_pro/outline.html
[2]摂食障害情報ポータルサイト(一般の方)
https://edcenter.ncnp.go.jp/edportal_general/index.html
[3]こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1676/
[4]摂食障害患者の家族支援|精神保健研究通巻61号_37-43,摂食障害患者の家族支援
https://www.ncnp.go.jp/mental-health/docs/nimh61_37-43.pdf
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。