うつ病と子育てを両立するコツ|子どもへの影響や相談できる場所




うつ病でもうまく子育てする方法はありますか?自分のことで精一杯で、子どもを見る余裕がないときがあるんです。

浅田先生
浅田先生

うつ病を持っている親ならではの苦しさがあるよね。うつ病を持ちながらうまく子育てする方法を記事の中で解説するね!

子育て中の親へのアンケートで「子育ての悩みを感じる」と答えた人は68.9%であり、とくに女性は76.4%と高くなっています。[1]

うつ病を持つ親は「育児する余力がない」「うつ病を誰にも相談できず孤独感がある」などの理由で、気持ちを安定させるのが難しくなります。

ただ、うつ病の症状でつらい思いをしていた分、子育てで得られる喜びは大きなものでしょう。

今回は、親のうつ病が子どもに与える影響子育てでつらいと感じやすいことなどについて解説します。

記事の後半では、うつ病を持ちながら子育てを乗り切る方法相談先を紹介しているため、育児の不安を軽くする参考にしてください。

親のうつ病が子どもに与える影響

親のうつ病が子どもに与える影響として、以下が挙げられます。[2]

  • 指しゃぶりが増える
  • 気持ちが不安定になる
  • 他者とのやりとりが苦手になる
  • ネガティブな気持ちを多く表す
  • ポジティブな気持ちを表さなくなる

親がうつ病だと必ずこのような悪影響が出るわけではありません。

悪影響が出るのは、子どもが欲求に応えてもらえない状況が長く続いた場合です。

親がうつ病でも子どもの欲求や気持ちを感じ取り、応えられれば子どもに悪影響は出ません。「うつ病である」という事実を責めないようにしてください。

子どもをサポートするためには、日々の出来事やつらかったことを吐き出して気持ちの余裕をつくることが大切です。

周囲に相談できる人がいないときは、おおかみこころのクリニックにご相談くださいね。

うつ病を持つ親が子育て中につらいと感じること

うつ病を持つ親が子育て中につらいと感じることとして、以下が挙げられます。[3]

それぞれ解説します。

つらさを理解してもらえない

うつ病をもつ親が苦しみやすいのは「つらさを理解してもらえない」ことです。

具体例として以下が挙げられます。

  • 病気のつらさを打ち明けられない
  • うつ病であることを誰にも言えない
  • 相談しても「甘え」と言われてしまう

「うつ病だと言ったら相手が離れていくかも」「甘えだと言われそう」という思いから、周囲に助けを求められずつらさをひとりで抱えやすくなります。

おおかみこころのクリニックでは、子育て中のお悩みもお聞きしております。対面での受診が難しいときはオンライン診療を利用して、気軽な気持ちでご相談くださいね。

精神状態が悪く家事育児ができない

うつ病の状態により、家事育児をこなすのが難しいときがあります。

例として挙げられるのは、以下のような場面です。

  • 身体がだるく寝てしまう
  • 子どもの欲求に応えられない
  • 不安により一時的に育児ができなくなる

調子が悪いときは自分のことに精一杯で、子どもや家族の世話をする余力は残っていません。

「子育てしたい」「自分で子どもを見なければいけない」という思いを抱いているからこそ、自分自身への情けなさや子どもに対するいらだちや罪悪感から育児がつらくなってしまうのです。

こころちゃん
こころちゃん

ひとりで抱え込まずにサポートをお願いしましょう!

子どもとよい関係を作るのが難しい

うつ病の状態が悪いときは、以下のような理由で子どもとよい関係を作るのが難しくなります。

  • 自分の生い立ちを思い出してしまう
  • 子どもの存在を負担に感じてしまう
  • 子どもの問題が起きると自分を責めてしまう

親子関係に悩むと「自分は親にならない方がよかったのかもしれない」「こんな親で子どもに申し訳ない」と自分を責める負のスパイラルに入りやすくなります

親子関係の悩みは人に話しづらいため、家庭内の息苦しさが続き育児がつらくなってしまうのです。

うつ病の親が子育てを乗り切るコツ

うつ病の親が子育てを乗り切るコツとして、以下が挙げられます。

それぞれ解説します。

役割分担を明確にする

家庭内で家事や育児の役割分担をしましょう。

うつ病で心身の元気が回復していない状態では、家族の協力がとくに重要です。

役割分担の例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 休日の前は夫が夜泣き対応をする
  • ごみ捨て、風呂洗い、洗濯は夫が担当する
  • 土曜日の午前中は夫が子どもを見て妻はひとりで外出する

負担になっていることを明確にして、協力してほしい部分をハッキリ伝えるのがポイントです。

こころちゃん
こころちゃん

 察してほしい…は難しいことがあります。ハッキリと伝えましょう!

頼れる先リストを作る

心身がつらくなったときのために、頼れる先リストを作っておきましょう。

身体的・精神的サポートの2つに分けて作成するのがおすすめです。

身体的なサポート
・一時保育
・ベビーシッター
・家事代行サービス
精神的なサポート
・市町村の相談窓口
・精神科や心療内科
・行政による相談サービス(例:親子のための相談LINE

行政によるサービスは、無料のものや少額の負担で利用できるものがあります。

「調子悪いな…つらい…」と思ったときにすぐ利用できるように、気持ちが安定しているときに作っておきましょう。

絶対にムリをしない

うつ病を持つ親の子育てでは、絶対にムリをしないことが大切です。

ムリをするとうつ状態が悪化して家事育児が手につかなくなったり、子どもにイライラしたりしてしまいます。

「家族のために」とつい頑張りすぎてしまいますが、家族を守るためにムリをしないという視点を持ってみましょう。

他者に頼ったり手を抜けるところは抜いたりして、絶対にムリをしないように心がけてください。

うつ病の親が子育てで得られる喜び

うつ病の親が子育てで得られる喜びとして、以下が挙げられます。

それぞれ解説します。[3]

子どもの成長

子育てで感じる喜びとして、子どもの成長が挙げられます。

具体例としては以下のとおりです。

  • 子どもの笑顔や表情
  • 子どもからの優しい声かけ
  • 立つ・歩く・話すなどの発達

子どもの成長を感じると同時に「うつ病を持ちながらここまで育てた」「自分もよく頑張ったな」という達成感も得られます。

子どもとの出会い

子どもとの出会いにも喜びを感じます。

具体例として挙げられるのは、以下のような場面です。

  • 子どもとハグしたとき
  • 自分を信頼して頼ってくれるとき
  • 子どもが「ママ」と呼んでくれたとき

妊娠・出産は大変な思いをすることが多いですが、かけがえのない子どもと出会ったことで母親ならではの喜びを感じる場面は多いものです。

とくにうつ状態が安定しているときは愛おしさを感じやすく、大きな喜びを得られるでしょう。

子育てで得られる喜びは「子どものためにも自分が回復しなければならない」と病気と向き合うモチベーションにもなります。

うつ病を持つ親が子育て相談できる場所

うつ病を持つ親が子育て相談できる場所を以下に分けて解説します。

それぞれ解説します。

子育ての悩み

子育ての悩みの相談先として以下が挙げられます。[4]

■児童相談所

子育てがつらいときに相談できる全国共通ダイヤルです。

最寄りの児童相談所につながり、子育てやしつけ、育児疲れなどの悩み相談ができます。

毎日24時間対応してくれるため、利用したい方は「189」にかけてください。

■日本助産師会相談窓口

日本助産師会が運営している電話相談窓口です。

子育てのほかに婦人科の病気や性の悩み、更年期などのあらゆる悩みごとを相談できます。

詳細はこちらからご確認ください。

■市町村の児童家庭相談窓口

電話やSNS、チャットなどで子育ての悩み相談ができます。

相談内容に応じて子どもや家庭に合うアドバイスをもらえるため「自治体名+子育て相談」などで検索してください。

こころの悩み

こころの悩みの相談先は以下のとおりです。[4]

■精神科・心療内科

精神科や心療内科では、さまざまなストレスや生きづらさに関する相談ができます。

おおかみこころのクリニックでは、子育てによるストレスの相談を受け付けております。来院・オンライン両方に対応しているため、お気軽にご利用ください。

■いのち支える相談窓口[5]

いのち支える相談窓口では、こころの悩みから生活の問題まで幅広い悩みに対応しています。

全国の自治体や厚生労働省が運営している相談窓口をまとめているため、こちらからご確認ください。

■こころの健康相談統一ダイヤル[6]

厚生労働省が運営している悩み相談サービスです。

都道府県や政令指定都市が実施している電話相談サービスなどにつながります。

詳細はこちらからご確認ください。

まとめ|うつ病を持つ親も子育てはできる

親がうつ病の症状のために子どもの欲求に長時間応えられないと、子どもの指しゃぶりが増えたり人付き合いが苦手になったりするなどの悪影響が現れます。

子どもの欲求に気づいて適切に対応できれば悪影響は出ないため、自分がうつ病であることを責めたり心配しすぎたりしないようにしてください。

うつ病を持つ親が子育てを乗り切るためには、以下のポイントを意識することが大切です。

  • 役割分担を明確にする
  • 頼れる先リストを作る
  • 絶対にムリをしない

育児の負担やつらさをひとりで抱え込まず、周囲に相談したり手を抜けるところは抜いたりしながら、みんなで子どもを育てていきましょう。

「家族のために」と頑張りすぎてしまいますが、疲労がたまると精神状態が悪化して子育てや家庭に影響が出てしまいます。

ムリせず休むことも家庭の幸せにつながるという視点を持ち、頑張りすぎないようにしましょう。

相談できる人がいない方や誰かに話を聞いてほしい方は、おおかみこころのクリニックにご相談ください。来院が難しい方はオンライン診療の利用がおすすめです。

【参考文献】
[1]令和2年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究~家庭教育支援の充実に向けた保護者の意識に関する実態把握調査~」
https://www.mext.go.jp/content/20210301-mex_chisui02-000098302_1.pdf

[2]日本産婦人科医会
https://jaog.or.jp/

[3]精神疾患を有する母親の育児における喜びと困難
https://core.ac.uk/download/pdf/229222865.pdf

[4]おやこのミカタ
https://www.savechildren.or.jp/oyakonomikata/anata-no-mikata/soudan/

[5]いのち支える自殺対策推進センター
https://jscp.or.jp/soudan/

[6]厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/window/window_03.html

この記事の執筆者
とだ ゆず
メンタルヘルスの記事を中心に執筆する看護師・保健師ライター。 精神科勤務での患者さんとの関わりや自身のうつ病経験から「人の心についてもっと知りたい」と思い、上級心理カウンセラーの資格を取得。 エビデンスに基づいた読者の心に寄り添う記事を心がけている。
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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