「薬以外でうつ病を治す方法はあるのかな…」
「うつ病と診断されたけれど、できれば薬は飲みたくない…」
うつ病の治療には薬を飲むことが一般的ですが「副作用が怖い」「薬に頼りたくない」と思うこともあるでしょう。
あなたに合った治療法を見つけるために、まずは薬以外の治療方法を知ることから始めてみませんか。
この記事では、薬以外の治療法と日常生活で実践できる具体的なセルフケアを紹介します。
薬を使わない選択肢を知り、あなたがこころから安心できる治療方法を主治医と相談しながら見つけていきましょう。
薬なしでうつ病は治せるのか
軽いうつ症状では、薬を使わなくても回復することがあります。
ただし、症状が中程度以上になると、医師から薬による治療を勧められるケースが一般的です。
うつ病の治療は「うつ病を理解する」「医師と話し合う」という2点が基本です。[1]
うつ病についての理解を深め、医師と相談しながら生活をととのえることで軽症は治る可能性があります。
軽症のうつ病とは「仕事には行けるが、不安や緊張で集中できない」「大事な用があれば外出できるがあまり人に会いたくない」など普段の生活は送れている状態です。
ただし、軽症であっても必要に応じて薬が必要なため自己判断せず医師と相談しましょう。
中等度以上では、うつ病に対する理解を深めた上で、薬物療法と精神療法を併用することが推奨されています。[1]
症状が強い急性期は薬物療法、ある程度症状が落ち着いてきたころから精神療法を実施するのが一般的です。[2]
自己判断せず、主治医と相談しながら治療を検討しましょう。
うつ病の重症度分類については下記の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
薬なしでうつ病を治したいときの治療法
薬以外の治療法は以下のものがあります。
それぞれ解説します。
精神療法・カウンセリング
精神療法やカウンセリングは、対話を通してこころの状態をととのえていく治療法です。
医師や臨床心理士などの専門家と話すことで、あなたの行動や思考パターンを見直してストレスの原因や対処法を理解します。[3]
あなたの抱えている問題や今の気持ちを話すと、自身を客観視できるようになり、今後同じような状況に直面した際にどのようにすればよいのかを学んでいくのです。[4]
精神療法には「認知行動療法」「森田療法」「内観療法」などさまざまな種類があります。主治医と相談しながら、あなたに合ったものを見つけましょう。
精神療法やカウンセリングは、あなたのペースでムリなく続けられ、薬に抵抗があったり薬と併用して効果を高めたかったりするときに適した治療法です。

ムリのないあなたのペースが大切です!
電気けいれん療法(ECT)
電気けいれん療法(ECT)とは、頭部を電気刺激し、脳の機能を回復させる治療法です。[5]
薬や精神療法で効果がみられない重度のうつ病の方が対象です。
電気けいれん療法は全身麻酔をかけ、呼吸や心拍を管理しながら頭部に器具をつけて通電します。
個人差はありますが、通常の治療回数は週に2~3回、全部で6~12回程度が必要です。[5]
電気けいれん療法はどの病院でも受けられるわけではありません。
「どのような治療なのかな」と気になるときは、主治医に相談しましょう。
rTMS療法(反復経頭蓋磁気刺激療法)
rTMS療法は、磁気の力で脳を刺激し、こころの不調をやわらげる治療法です。
うつ病の薬を一定期間飲んでも効果が出ない中等症以上のうつ病の方が対象です。[6]
rTMS療法は専用の椅子に座り、磁気を帯びたコイルを左前頭部に当てて治療します。
個人差はあるものの治療時間や実施頻度は以下のとおりです。
- 治療時間:rTMSは40分、iITBSは3~6分
- 実施頻度:週に5回程度を4〜6週間
おおかみこころのクリニックでは、rTMSのひとつであるiTBSを行っています。
実施時間が3~6分と短いため、外来でも治療可能です。
「わたしも受けられるのかな…」と感じたら、主治医に相談してみましょう。
rTMS療法については、こちらの記事をご覧ください。
薬なしでうつ病を治したいときのセルフケア
薬に頼らずにうつ病を治すためには、日常生活をととのえることも必要です。
以下のような5つのセルフケアを試してみましょう。
それぞれ詳しく解説します。
焦らず休養する
薬物療法や精神療法、カウンセリングと共に治療の柱となるのが「休養」です。[3]
疲れているこころや身体を休め、エネルギーを回復させましょう。
休養は以下のようにさまざまあります。
- 仕事の量や時間を減らす
- 仕事を休んで自宅療養する
- 仕事や家事をせず一時的に入院する
たとえば、残業時間を減らしたり、休職したりして仕事の負担を少なくします。
家事代行サービスを利用して、自宅での時間を休養に充てるのもひとつの手段です。
症状や環境を考え、主治医と相談してゆっくり休んでください。
睡眠の質を高める
薬なしでうつ病の症状をやわらげるには、睡眠の質を高め、こころと身体を回復させましょう。
厚生労働省は、1日6時間以上の睡眠を推奨しています。
睡眠時間が極端に短い状態が続くと、うつ病のリスクを高めるといわれています。[7]
睡眠の長さだけでなく「ゆっくり休めてスッキリした」という感覚も大切です。
睡眠の質を高めるためには、就寝前にスマートフォンの使用を控えたり、寝室の温度や湿度を快適に保ったり、睡眠環境をととのえることも効果的です。
また、決まった時間に起きて活動し、生活リズムをととのえることでより質の高い睡眠へとつながります。
ストレス解消法を知る
あなたなりのストレス解消法を知りリフレッシュしましょう。
短い時間でも100%あなたのために使える時間をつくることが大切です。[2]
たとえば、以下のようなストレス解消法があります。
- 外食する
- 気の合う友人と話す
- 音楽を楽しむ(歌う・聴く・踊る)
- 趣味を楽しむ(映画・演劇・旅行・読書)
- 自然に触れる(ガーデニング・森林散策)
あなたが「心地よい」と感じることなら何でもかまいません。
ストレスを感じたら、できるだけ早めに解消しましょう。

ストレス解消法を知っておくと今後の生活にも役立ちます
バランスよく食事をとる
規則正しく朝昼晩と3回食べ、栄養バランスの取れた食事を意識しましょう。
サバ・アジ・イワシなどの青魚に豊富に含まれるオメガ3系脂肪酸は、うつ病に効果的という報告もあります。[8]
さまざまな栄養素をバランスよく取り入れながら、青魚も意識して食べてください。
また、アルコールは気分を一時的に高揚させるため、うつ病のつらさから逃れるために飲みたくなることもあるでしょう。
ただし、飲酒は薬の作用を妨げてしまったりアルコールに依存してしまったりする恐れがあるため、治療中は避けてください。
適度な運動をこころがける
薬以外でうつ病を治す方法として、ウォーキングやサイクリング、ストレッチなど適度な運動で体力をつけるのもよい手段です。
四季折々の風景を楽しみながら運動すると、気持ちも明るくなります。
近所を散歩したり、景色のよい場所をサイクリングしたりしてリフレッシュしましょう。
運動量は1日20分を目安に、身体がぽかぽかと温まり、汗ばむくらいにしてください。
がんばりすぎると疲れてしまうので「スッキリした」と思える程度で、ムリなく続けましょう。[9]
まとめ
うつ病の治療は薬以外にも精神療法やカウンセリング・電気けいれん療法・rTMS療法などがあります。
「薬に頼らず治したい」というあなたの気持ちを大切にしながら、この記事で紹介したセルフケアや精神療法、そしてrTMS療法のような新しい治療の選択肢を検討してください。
ひとりで悩まずに「薬に頼らない方法を探したい」と素直に主治医に相談してみましょう。
あなた自身のこころと身体が心地よいと感じるペースで、ムリせず治療や回復に取り組んでいってください。
おおかみこころのクリニックでは、rTMS療法を実施しています。
オンライン診療も可能ですので、気になることや治療方法について相談したいことがあればいつでもご相談ください。
24時間予約受付中
おおかみこころのクリニック
【参考文献】
[1]治療法を一緒に選ぶための手引き|日本うつ病学会
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/iinkai/katsudou/data/psychoeducation_20240924.pdf
[2]患者のための最新医学 うつ病 改訂版
[3]ご存じですか?うつ病|こころの耳 厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad003
[4]カウンセリング効果の実態は?|こころの耳 厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-pro-qa/mh-pro-qa005
[5]電気けいれん療法説明書|日本精神神経学会
2-1.setumeisho_example.pdf
[6]反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針|日本精神神経学会
Guidelines_for_appropriate_use_of_rTMS_202308.pdf
[7]健康づくりのための睡眠ガイド2023|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
[8]科学的根拠に基づく食によるメンタルヘルスへの アプローチ|松岡豊
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbm/25/2/25_113/_pdf
[9]体を動かす|こころもメンテしよう 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_01.html
- この記事の執筆者
- すみこ
作業療法士歴13年の経験を活かし、医療記事を中心に活動するWebライター。 読者の皆様のこころと身体の健康をサポートし、前向きな気持ちになれる文章を心がけています。