「またあの頃のように、何もできなくなるのが怖い」
「せっかくよくなったのに、最近また気分が沈みがち…」
このような不安を抱えながら、毎日を過ごしていませんか。
うつ病は一度回復しても再発しやすい病気といわれており、再発率は決して低くはありません。[1]
ただ、うつ病の再発には前兆やサインがあることが多く、早めに気づき対処することで予防できるでしょう。
最近では薬だけでなく、脳への働きかける治療法(rTMS)という選択肢も広がっています。
この記事では、うつ病が再発しやすい理由やサイン、再発を防ぐためにできることを解説します。
うつ病の再発への不安を抱えているあなたが「ひとりじゃない」「まだできることがある」と思えるきっかけになれば幸いです。
この記事の内容
うつ病は再発しやすい
うつ病は、症状がやわらいでも再発しやすい病気です。
厚生労働省のデータでは「1度うつ病を経験した人のうち 約60% が再発する可能性がある」と示されています。[1]
また、うつ病は再発を繰り返すたびに再発率が以下のように高くなるのです。
- 1度目:約60%
- 2度目:約70%
- 3度目:約90%
アメリカでは、うつ病にかかった方のうち3人に2人は症状が消失すると言われています。
一方で、残りの3人に1人は、症状が軽くなっても完全にはなくならないまま過ごしているのです。
ほかにも、うつ病で入院経験のある方を15年間にわたって追跡したイギリスやオーストラリアの研究では、以下のような報告があります。[1]
- 一度も再発しなかった人:2割
- 症状が長く続いた・自ら命を絶ってしまった人:2割
- 再発を繰り返す人:6割
再発を防ぐために大切なのは、再発を防ぐための工夫やサポートを受け少しずつ「自分らしく過ごせる時間」を増やしていくことです。
ムリをせずに周りの助けを借りながら、あなたのペースで歩んでいくことが、再発予防にもつながります。
うつ病と一生つき合っていかないといけないのかについては下記の記事をご覧ください。
うつ病の再発サイン
うつ病は、再発するときに前兆とされるサインがあらわれることがあります。
以下のようなサインがみられたときは、こころと身体からの「休んで」というSOSかもしれません。[2]
- 身体的サイン
- ・めまいや動悸が続く
・身体がだるく疲れやすい
・眠れなくなる・寝すぎてしまう
・食欲がなくなる・過食ぎみになる
・頭痛・肩こり・胃の不調などの体調不良が続く
- 心理的サイン
- ・一日中気分が落ち込む
・何をしても楽しめない
・イライラしやすくなる・焦ってしまう
・仕事や家事など何をするにもおっくうに感じる
・「自分はダメな人間だ」と責める気持ちが強くなる
このようなサインは「ちょっと疲れてるだけかな」と見過ごしやすいものです。
うつ病の再発は、小さなきっかけの積み重ねで起こることが多くあります。
そのため、ささいな変化でも「いつもと違うな」と気づいたら、こころと身体を休めるサインとして受けとめてください。[1]

ムリをしないことが大切です
うつ病の再発を繰り返さないためにできること
うつ病は治療で症状がやわらいでも、再発を繰り返しやすい病気です。
「また同じようにつらくなるのかな…」と不安になる気持ちがあっても、以下のように日々の過ごし方や治療の工夫をすることで、再発のリスクを下げられるでしょう。
それぞれ詳しく解説します。
自己判断で治療をやめない
症状が落ち着いてくると「もう薬をやめてもいいのでは」「通院はもう必要ないかも」と思うかもしれません。
しかし、再発の多くは、自己判断による治療の中断がきっかけになるといわれています。[3]
症状が安定して「もう大丈夫かな」と思っても、うつ病が回復するには時間がかかります。
自己判断で薬を調整したり治療を中断したりせずに、医師と相談しながら慎重に判断することが大切です。[1]
また、必要に応じてカウンセリングや認知行動療法などの心理的なサポートを受けることで、再発の予防につながるでしょう。
生活習慣をととのえる
不規則な生活や大きすぎるストレスは、気づかないうちにこころに負担をかけてしまいます。
そのため、以下のような生活習慣を意識することで、うつ病の再発リスクをやわらげられるでしょう。[4][5]
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- バランスのよい食事
睡眠は6時間以上を目安にしてください。
また「少し疲れているかも」「最近笑っていないな」と思ったら、意識して休息をとることも大切です。
睡眠・食事・運動などの生活習慣の安定が、再発予防につながります。
ストレスをため込みすぎない
日常生活の中で、仕事や家庭、人間関係などから受けるストレスは避けにくいこともあるでしょう。
ただ「少しずつ溜め込んでしまい、気づいたときには限界が近づいていた」ということも少なくありません。
ストレスをため込みすぎないためには、次のような工夫が役立ちます。[4]
- 家族や信頼できる人に今の気持ちを話してみる
- 頑張りすぎていることに気づいたら少し立ち止まって休む
- 「つらい」「しんどい」と感じたらその気持ちを受け止める
とくに真面目な人ほど「これくらい大丈夫」「みんな頑張ってる」と我慢しがちです。
でも、あなた自身を守るためにも休むことは大切です。
休むことは、甘えではなく予防のひとつと考えてください。
つらくなる前に、ストレスを軽くできる工夫を見つけていきましょう。
こころと向き合う時間を作る
忙しさに追われていると、つい「自分の気持ち」に目を向ける時間が少なくなります。
ただ、うつ病の再発を防ぐには「今どう感じているか」「何をつらいと感じているか」を見つめることが大切です。[4]
こころと向き合う方法は人によって違いますが、以下のような工夫で気づきやすくなるでしょう。
- その日の気持ちやできごとをノートに書き出す
- 朝や寝る前に「今日はどうだったかな?」と考える
- 呼吸に意識を向けるマインドフルネスのような習慣を取り入れる
大切なのは、あなたの感情や体調に気づいてあげることです。
こころの変化に気づけるようになると、再発のサインにも早く対処しやすくなります。

ゆったりとあなた自身と向き合う時間を作ってください
新しい選択肢を見つける|rTMS療法
薬を続けても再発を繰り返したり副作用に悩んだりするときは、新しい治療法として rTMS療法(反復経頭蓋磁気刺激) を検討してみるのもよいでしょう。
rTMS療法とは、脳に磁力で刺激を与えることで、うつ病の症状をやわらげることを目指す治療法です。[6]
薬を使わないため、眠気や体重増加などの副作用が少ないとされており、薬が効きにくいうつ病にも有効性が報告されています。
現在は一定の条件を満たせば保険適用も可能となっており、専門医療機関で相談することができます。
おおかみこころのクリニックでは、rTMS療法のひとつであるiTBSを使用しているため、治療時間が3~6分程度と短く、外来治療でも通いやすいことが特徴です。
「どんな治療なのかな」「安全なのか気になる」と思ったら、まずはご連絡ください。
あなたの不安を一緒に解決しましょう。
rTMSについては下記の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
まとめ|今の自分と向き合いうつ病の再発を防ごう
うつ病は一度回復しても再発しやすい病気です。
ただ、再発のサインやきっかけに早めに気づき、適切に対処することで再発のリスクを下げられます。
治療の継続やストレスをため込まない工夫など、あなたの気持ちに耳を傾けることが大切です。
薬が合わなかったり効きにくかったりするときは、rTMS療法のような新しい選択肢もあります。
再発を恐れすぎず、あなたに合った方法で少しずつ「自分らしく過ごせる時間」を取り戻しましょう。
おおかみこころのクリニックでは、再発予防のご相談やrTMS療法についてもサポートしています。
「また同じことを繰り返したくない」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
24時間予約受付中
おおかみこころのクリニック
【参考文献】
[1]コラム・活動事例・資料編 資料1:うつ病について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5g.html#s1
[2]うつ病|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
[3]3 うつ病の治療と予後|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad003
[4]休養・こころの健康|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b3.html
[5]ストレス対処法としての生活習慣 - 食う・寝る・遊ぶの充電法|こころの耳 厚生労働省
https://kokoro.mhlw.go.jp/lifestyle
[6]日本精神神経学会 反復経頭蓋磁気刺激装置適正使用指針
https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/Guidelines_for_appropriate_use_of_rTMS_202404ver2.pdf
- この記事の執筆者
- 柚木ハル
作業療法士として精神科で17年の臨床経験を積み、現在は訪問リハビリに従事。経験を生かしメンタルヘルスを中心に、やさしく寄り添う文章を心がけて執筆しています。