「季節の変わり目に情緒が不安定になる」
「仕事に影響が出ているので、季節性うつの対策を知りたい」
冬から春になるにつれて、気分の落ち込みや過度な眠気にお悩みの人もいるのではないでしょうか。季節の変わり目に気分の落ち込みや眠気などの症状が出たら、季節性うつ病の可能性があります。
この記事では、季節性うつの症状や原因、季節の変わり目に情緒不安定になる理由について解説します。また、季節性うつのチェックリストもまとめていますので、自分の症状が当てはまるか知りたい人は役立ててください。
この記事が、季節性うつと付き合うお手伝いになれば幸いです。
季節性うつ病とは
季節性うつ病は冬や夏、梅雨など特定の季節にうつ状態になる病気で、おもに女性に発症しやすい傾向にあります。[1]
ここでは、季節性うつの症状や原因について詳しく解説します。
ひとつずつみていきましょう。
症状
季節性うつのおもな症状は以下の通りです。[2]
- 過眠
- 過食
- 倦怠感
- 体重増加
- 意欲低下
- 日中の眠気
- 炭水化物の欲求
秋から冬にかけて症状があらわれる冬季の季節性うつでは、過食や過眠がみられます。過食ではとくに甘いものや炭水化物を食べたくなる傾向にあります。また、布団から出られないほどの眠気を感じ、日常の学校や仕事に支障が出ている人もいるでしょう。
一方、夏季におこるうつ病では食欲がなくなったり気分が落ち込んだりと、一般的なうつ病と似た症状があらわれます。

冬と夏で症状に違いがあります
原因
季節性うつの原因は、はっきりと解明されていません。ですが、冬季うつの原因には冬場の日照時間不足、光に対する感じやすさが関係すると考えられています。[2]
日光を浴びた際、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が分泌されます。セロトニンには、眠気を促すホルモンを抑制したり、食欲を抑えたりする働きがあるのです。
日照時間が短くなる冬はセロトニンが十分に分泌されず、睡眠や食欲をうまくコントロールできなくなります。そのため、過眠や過食などの症状があらわれるのです。
冬季うつの対策については、下記の記事で詳しく解説しています。合わせてをご覧ください。
季節の変わり目に情緒不安定になる理由
季節の変わり目に情緒不安定になる理由には、次の2つが考えられます。
- 寒暖差
- 日照時間の変化
寒暖差は情緒不安定になる原因のひとつです。とくに、春は気温差や気圧の変動が大きいため、自律神経のバランスが乱れ心身に不調が起こりやすくなるのです。[3]
また、日照時間の変化も挙げられます。日照時間が少なくなると、セロトニンの分泌が少なくなります。[4]セロトニンとは脳内にある神経伝達物質で、精神を安定させるのがおもな役割です。[5]セロトニンが少なくなると、喜びや恐怖などの感情を司る神経伝達物質「ドーパミン」や「ノルアドレナリン」をコントロールする力が下がります。
季節の変わり目は気温が激しく日照時間も変化するため、情緒不安定になりやすい人は、気持ちを落ち着かせる方法を知っておくとよいでしょう。

こころも季節の変わり目に体調崩しやすいんです💦
季節性うつ病のチェックリスト
季節性うつ病かどうか診断するためのセルフチェックをおこなってみましょう。次の項目に「はい」か「いいえ」で答えてみてください。
▢ 体重が増加する
▢ 朝起きるのが辛くなる
▢ 集中力や決断力が低下する
▢ 極度の疲労感や倦怠感を感じる
▢ 人付き合いを避けるようになる
▢ 気分の落ち込みや憂うつ感が増す
▢ 睡眠時間が増加し、過眠傾向がある
▢ 日常生活や仕事、学業に支障をきたす
▢ 意欲や興味の低下、物事に対する関心が薄れる
▢ 食欲が増加し、とくに炭水化物や甘いものを欲する
あてはまる項目が多いほど、季節性うつ病の可能性があります。心当たりのある人は、心療内科や精神科の受診を検討してみましょう。
季節性うつ病の治し方
季節性うつ病の治し方には、次の3つがあります。
治療では、ひとつの種類のみでなく複数の治療を組み合わせて行います。どのような治療があるのか把握して、受診の参考にしてみてください。
薬物療法
薬物療法は、季節性うつ病を治すのにある程度の効果が期待できると考えられています。[2]
疲労感や眠気といった作用がある薬は避け、副作用の少ない抗うつ剤であるSSRIを中心に処方されます。SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれ、おもな効果はセロトニンの働きを促すことです。
薬物療法を始める際は、医師の指示に従って服用しましょう。勝手に量を減らしたり服用をやめたりすることは避けてください。
高照度光療法
季節性うつ病の治療では、高照度光療法が有効とされています。[6]
高照度光療法は、日照時間が減少した分の太陽光を補う治療です。治療に使われる「高照度光療法装置」は、通常の照明器具よりも20倍程度多くの光の量を浴びられます。治療では、装置の光を20〜60分間浴びるのが一般的な目安です。
ただし、光の強さや照射時間は個人に合わせて調整する必要があります。治療は医師の判断のもとで、行ってください。
認知行動療法
認知行動療法は、季節性うつ再発の予防や症状に効果が期待されています。[6]
認知行動療法とは、ストレスで固まってしまった物事の受け取り方や考え方に働きかけ気持ちを楽にする心理療法です。具体的な内容は以下の通りです。[7][8]
- 生活リズムをととのえる
- 喜びや達成感を味わえる活動を増やす
- 医師やカウンセラーと1対1で話をする
- 日記やメモなどに悩みや心配事を書き出す
- 同じ問題を抱えるグループとセッションする
とくに、悩みや心配事を書き出して気持ちを落ち着かせる方法は「コラム法」と呼ばれ、自分でも実践できる認知行動療法です。
思考の偏りが解消すると、物事を冷静に判断し前向きに行動できるため、ぜひ試してみましょう。
季節性うつ病の予防法
季節性うつを防ぐ具体的な方法を以下にまとめました。
- 6~8時間の睡眠を取る[9]
- 起きたらカーテンを開ける
- 日中に散歩や買い物などで外出する
- セロトニンの分泌を高める食材を食べる
- 季節の変わり目の、いつ症状が出るかを知る
- ウォーキングやサイクリング、階段の昇降などの有酸素運動をする[10]
季節性うつを予防するためには、セロトニンの分泌を促すことが重要です。
朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びたり、日中に外出したりすると、セロトニンの分泌が促されます。
また、セロトニンの分泌を助ける、必須アミノ酸の「トリプトファン」や「ビタミンB6」を摂取しましょう。[3]トリプトファンやビタミンB6が含まれるおもな食品は以下の通りです。
- 肉
- 鮭
- 牛乳
- 豆腐
- チーズ
- バナナ
さらに、適切な運動や睡眠はメンタルヘルスの向上につながります。運動や睡眠の時間が取れていない人は、習慣を見直してみましょう。

日ごろ食べている物に1つ足すとかでも大丈夫ですよ!
まとめ
季節性うつとは、おもに秋から冬にかけて情緒が不安定になったり、過眠や過食などの症状があらわれたりする病気です。
原因は、日照時間の低下によるセロトニンの分泌不足が考えられます。季節性うつを予防するには、積極的に日光を浴び、食事や睡眠に気を配りましょう。
おおかみこころのクリニックは新宿駅から徒歩1分と通いやすい立地にあり、休日や夜間22時までの診療、オンラインの診療に対応しています。日中のお仕事や家事などで忙しくても受診しやすい環境です。
セルフチェックにて季節性うつかもしれないと気になる人は、当院へお気軽にご相談ください。
24時間予約受付中
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【参考文献】
[1]季節性うつ病|働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1535
[2]業務要因よりも季節性の要因により再燃するうつ病の事例|働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
https://kokoro.mhlw.go.jp/case/649
[3]春は、自律神経の乱れにご注意を!| 首都圏デジタル産業健康保険組合
https://www.sdi-kenpo.or.jp/imfine/2022/02/02/jiritsu/index.html
[4]新潟県ホームページ|「冬は明るく過ごしましょう-冬季うつ病について-」
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/uonuma_kenkou/1356775277579.html
[5]セロトニン | e-ヘルスネット(厚生労働省)
[6]厚生労働省eJIM | 季節性情動障害に対する補完療法について知っておくべき6つのこと[コミュニケーション]
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/c03/48.html
[7]そもそも認知行動療法(CBT)ってなに?|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/rinshoshinri/rinshoshinri_blog20220713.html
[8]Psychotherapies in Japanese|Translations
https://www.rcpsych.ac.uk/mental-health/translations/japanese/psychotherapies
[9]厚生労働省 |健康づくりのための睡眠ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
[10]厚生労働省|健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001194020.pdf