「薬を飲んでいるのに、なかなかうつ病がよくならない…」
そのような不安を抱えていませんか?
うつ病の治療では、抗うつ薬を服用しても思うような変化を感じられないことがあります。
「わたしは薬が効かないタイプなのでは」と悩む方も少なくありません。
この記事では、薬が効かないと感じる背景や改善につなげるための工夫について解説します。
薬以外の選択肢として注目されている rTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法) についてもご紹介します。
今の治療に納得できず不安を感じているときに、次の一歩を考えるきっかけになれば幸いです。
うつ病の薬が効かないタイプ
うつ病の薬が効かないタイプの特徴として、以下が挙げられます。
それぞれ解説します。
治療を中断してしまう
うつ病の薬が効かないと感じる人は、治療を中断しているケースが少なくありません。
実際に、うつ病の治療を始めた人は以下の割合で治療を中断していると報告されています。[1]
- 1か月で治療を中断:約3割
- 半年で治療を中断:半数以上
服薬中断の理由として挙げられているのは、以下のとおりです。[1]
- 依存性が心配だから
- 薬をやめられなくなるのが怖いから
- 症状がよくなったから(自己判断でやめてしまう)
症状がよくなったと思い自己判断で服薬を中断すると再発につながりやすく、結果的に「やっぱり薬は効かない」と感じる原因になります。
治療を中断することで十分な効果が得られず「薬が効かない」と感じるケースは少なくないのです。
医師から服薬期間や依存性について十分な説明を受け、不安を解消しながら治療を継続しましょう。

薬で気になることがあったら遠慮せずに先生に相談しましょう
ほかの病気が隠れている
「薬が効かない」と感じる背景には、うつ病以外の病気が隠れているケースがあります。
うつ症状にほかの病気がかかわっている場合は、抗うつ薬を飲んでも症状が安定しにくいことがあるのです。
例として、以下の病気が挙げられます。[1]
- 発達障害
- 双極性障害
- パーソナリティ障害
- 不安症(パニック障害、社交不安など)
診断や治療方針を見直すかは医師の判断によりますが、診察のときに「薬が合っていない気がする」と伝えることはとても大切です。
医師が必要に応じて治療方針を見直したり、別の病気の可能性を考えたりするきっかけになるでしょう。
###薬への早期反応が乏しい
うつ病の薬が効かないタイプのひとつとして、薬への早期反応が乏しいことが指摘されています。
服薬から2週間で症状がやわらいだ人は、その後も良好な経過をたどるケースが多いとされています。[1]
一方で、ほとんど変化がないケースは薬が効きにくい可能性があり、治療方針を見直すサインとされているのです。
ただ、抗うつ薬による変化があらわれるまで2週間程度かかるとされているため、変化がなくても自己判断で中断するのはやめましょう。[2]
薬の種類や量、ほかの治療法を主治医に検討してもらうきっかけとして考えてください。
社会的サポートが乏しい
治療が長引くひとつの要因として指摘されているのは、身近な人や医療機関などによる社会的なサポートの乏しさです。
社会的なサポートを受けている人は、受けていない人に比べて寛解率(症状が落ち着く割合)が約1.7倍高いとされています。[1]
実際に、抗うつ薬を投与しても症状が続く人に対して認知行動療法を実施したところ、寛解率が2.3倍高くなったという研究があります。[1]
薬が効かないと感じるときは、家族や友人、医療機関などによる支援を取り入れることで、症状の変化が期待できるのです。

家族や友人に「ちょっと手伝ってほしい」と相談してみましょう
子どものころにトラウマを経験している
小児期にトラウマを経験した人は、抗うつ薬が効きにくいタイプである可能性があります。
子どものころにトラウマを経験した人は、脳の働き方が変化しており、抗うつ薬(SSRI)に反応しにくい傾向があるのです。[3]
薬による変化がみられないのを「自分のせいだ」と責めるのではなく、こころや脳の働きにトラウマが関係している可能性を考えましょう。
過去のトラウマ体験に心当たりがあるときは主治医に相談することで、カウンセリングや心理療法を取り入れるきっかけになります。
「うつ病の薬が効かないタイプかも」と思ったときにできること
「わたしもうつ病の薬が効かないタイプかも」と思ったときは、以下の方法を試してみましょう。
それぞれ解説します。
環境を調整する
薬の効果を高めるためには、安心できる環境に身を置くことも大切です。
例として、以下が挙げられます。
- 実家に戻ってサポートを受ける
- 休職や転職などで強いストレス源から距離をとる
- 訪問看護やカウンセリングなどのサービスを活用する
周りの支援がある人は、支援が少ない人に比べて寛解率が1.76倍高いことが報告されています。[1]
もし「薬による変化がなくてつらい」と感じているときは、療養する環境を見直したり働き方を見直したりするのもよいでしょう。
ムリにひとりでがんばるより、環境を整えることが治療を後押ししてくれます。
心理療法を併用する
薬で十分な改善がみられないときは、心理療法の併用で症状に変化があらわれる可能性があります。
抗うつ薬は脳の働きにアプローチしますが、考え方のクセやストレスへの対処法などには十分な変化が期待できません。
とくに認知行動療法は考え方のクセに直接アプローチできるため、薬では変化しづらい部分への働きが期待できるのです。
薬が効かないと感じるときは、医師に「薬だけではつらいので、心理療法も試してみたい」と伝えましょう。

先生に相談することは、あなたに合った治療法を見つけるきっかけにもなります
症状を記録して医師と共有する
薬による変化を正確に判断するために、日々の症状を記録し医師と共有することが大切です。
日記やアプリで以下のような項目を記録しましょう。
- 食欲
- 睡眠時間
- 身体症状(頭痛/腹痛/吐き気など)
- 気分(穏やか/イライラ/憂うつなど)
- 行動(買い物に出た/1日寝ていたなど)
このような記録は、医師にあなたの状態を正確に伝えるだけではなく「どんなときに調子がよい/悪い」を客観的に把握する力を育てます。
薬での変化を実感できないときこそ、症状の記録が役に立ちます。
日々の状態を記録することは治療をスムーズに進めるだけでなく、あなた自身の安心にもつながるでしょう。
うつ病の薬が効かないとき|rTMSという選択肢
薬による変化が実感できないときの治療法のひとつが、 rTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法) です。
rTMSは、脳に繰り返し磁気をあてることで、うつ病の症状をやわらげることが期待されています。
中等度以上のうつ病に対してrTMSの保険適用が認められていますが、自由診療では軽症でも治療を検討可能です。
おおかみこころのクリニックでもrTMSを導入しており「薬が効かない」「副作用がつらい」と感じる方の治療をサポートしています。
rTMSについてはこちらの記事でも紹介していますので、合わせてご覧ください。
まとめ
うつ病の薬が効かない背景として、以下が考えられます。
- 治療を中断してしまう
- ほかの病気が隠れている
- 薬への早期反応が乏しい
- 社会的サポートが乏しい
- 子どもの頃にトラウマを経験している
「薬が効かない=治らない」ということではなく、あなたの状態や環境に合った治療法を見つけることが大切です。
薬以外の治療法として rTMS(反復経頭蓋磁気刺激療法) という選択肢もあります。
rTMSは副作用が少なく、薬が合わないときや効きにくいときも検討できる治療法です。
今の治療に納得できず不安を感じているときは、ひとりで抱え込まずおおかみこころのクリニックにご相談ください。
24時間予約受付中
おおかみこころのクリニック
【参考資料】
[1]渡邊 衡一郎 難治性うつ病―リスクと予測,診断の再考―
https://journal.jspn.or.jp/Disp?mag=0&number=5&start=384&style=ofull&vol=120&year=2018&
[2]肥田裕丈 精神科外来患者における抗うつ薬および抗不安薬の多剤併用処方状況に関する調査
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/48/9/48_359/_pdf
[3]奈良先端科学技術大学院大学 沖縄科学技術大学院大学 広島大学 大学ジャーナルONLINE
https://univ-journal.jp/23433/?cn-reloaded=1
- この記事の執筆者
- とだ ゆず
精神科看護師としての経験を活かし、メンタルヘルスを中心とした記事を執筆。こころと身体のつながりを大切にしながら、そっと寄り添う文章を心がけています。
保有資格:看護師、保健師、上級心理カウンセラー、漢方養生指導士