「薬を飲み始めてから気分が落ち込むようになった」
「このまま薬を飲み続けても、本当によくなるのだろうか?」
回復を信じて薬を飲んでいるのに症状がよくならないと、不安を感じてしまうでしょう。
うつ病の薬を飲んでも症状が悪化すると感じるのは、薬が身体に合っていなかったり、うつ病以外の病気が隠れていたりすると考えられます。
悪化する原因を知らないまま放置してしまうと、回復が長引いたり悪化したりするかもしれません。
この記事では、うつ病の薬を飲んでいても悪化する原因や対処法を解説します。不安をやわらげ、薬が効かない原因を見つけるための助けとなれば幸いです。
うつ病で薬飲んでるのに悪化する原因
うつ病で薬を飲んでいるのに悪化する原因には、次の3つがあります。
なぜ症状が悪化するように感じるのか、原因をひとつずつ見ていきましょう。
薬の種類が合っていない
うつ病の治療で薬を飲んでいても症状が悪化するとき、処方されている薬の種類が合っていない可能性があります。
抗うつ薬にはさまざまな種類があり、どの薬がどのくらい効くかは人によって異なります。
ある人には効果的でも、別の人にはあまり効果がみられないケースがあるのです。
もし、薬を飲み始めてから気分がさらに落ち込んだり、身体の不調が出たりしたときは薬が合っていないサインかもしれません。ただし、副作用の可能性もあるため、自己判断で薬をやめないようにしてください。
処方された薬を飲んで違和感や不安を感じたら、まずは主治医に相談しましょう。

薬の不安は遠慮せずに医師に相談しましょう
用法・用量を守れていない
薬の用法・用量を守っていないと、うつ病の症状が悪化する原因となります。
薬は決められた量を飲み続けることで、安定した効果を発揮します。[1]
そのため、飲み忘れたり自己判断で量を減らしたりすると、かえって症状が悪化することがあるのです。
しかし、実際には約半数の人が指示通りに薬を服用できていないというデータもあります。[2]
たとえば、飲み忘れが続いたり、副作用がつらいために自己判断で量を減らしたりするケースです。
厚生労働省の調査でも、服薬を中断した理由として副作用や効果の少なさが関係していました。[3]
もし服用が難しいと感じたら正直に主治医に伝え、今後の治療方針について相談しましょう。
うつ病以外の病気が隠れている
「うつ病で薬を飲んでるのに悪化する」と感じる背景には、うつ病とは異なる病気が隠れている可能性があります.
具体的には、次の2つが考えられます。
- 双極性障害
- 治療抵抗性うつ病
双極性障害は、気分が落ち込む「うつ状態」と気分が高揚して活動的になる「躁状態」を繰り返す病気です。
うつ状態のときの症状がうつ病と似ているため、間違われやすいのです。[4]
また、薬物治療をしても症状が緩和しない「治療抵抗性うつ病」の可能性もあります。
うつ病の患者さんのうち、約3割が治療抵抗性うつ病にあてはまるとも考えられています。[5]
症状が緩和しないときは主治医に相談し、改めて診断を見直してもらうことも検討しましょう。
うつ病の薬飲んでるのに悪化したときの対処法
うつ病の薬を飲んでいるのに悪化した時の対処法には、次の3つがあります。
大切なのはあきらめずに、あなたに合う方法を探し続けることです。ひとつずつ見ていきましょう。
薬の用法・用量を守る
うつ病の症状が悪化したときは、薬の用法・用量を守れているかを確認しましょう。
抗うつ薬は、効果を実感できるまでに数週間から1か月ほどかかるのが一般的です。
効果がすぐに出ないからといって自己判断で用量を変えたり、飲むのをやめたりするのは避けてください。[6]
とくに、急に服薬を中断すると「離脱症状」と呼ばれるめまいや吐き気などの不調が起きる可能性があります。[7]
症状が悪化したと感じるときは、用法・用量を守っていても不安になるものです。そのようなときこそ、自己判断で薬を調整するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談してください。
主治医に現状を伝える
薬を正しく飲んでいるのに症状が悪化するときは、できるだけ早く主治医に現状を伝えてください。
ただ「悪化した」と伝えるだけでなく、いつからどのような症状で困っているのかを、下記のように説明しましょう。
- 1週間前から朝起きるのがつらい
- 些細なことで涙が出るようになった
- 日中にひどい眠気や吐き気が続いている
医師はあなたからの情報をもとに、薬が合っていないのか、量が適切でないのかを判断し、薬の変更や量の調整などを検討します。
治療をよりよい方向に進めるためには、主治医とのコミュニケーションは大切です。

なにげない悩みも相談して大丈夫ですよ♪
セカンドオピニオンを受ける
現在の主治医に相談しても状況が変わらないときや、治療方針に疑問を感じるときは、セカンドオピニオンを検討してみましょう。
セカンドオピニオンとは、主治医以外の医師に意見を求めることです。
たとえば「本当にうつ病の診断で合っているのか」「ほかに治療の選択肢はないのか」などの疑問を解消するきっかけになるのです。
セカンドオピニオンを受ける際は、主治医からの紹介状や検査データを用意するとスムーズに話を進められます。
主治医に伝えにくいと感じるかもしれませんが「よりよい治療法を探したい」と伝えれば、医師は理解してくれるでしょう。
薬を使わないうつ病の治療法
うつ病の治療法には、薬物療法以外にもあります。薬物治療と並行できる治療法を3つ紹介します。
薬物治療で思うような効果が得られないときや、症状が悪化してしまったときには、ほかの治療法を組み合わせることが回復へのポイントです。
休養
うつ病治療の基本は休養です。心身をしっかりと休ませることが、治療の土台になります。[8]
十分な休養がとれていないと、薬を飲んでも効果が発揮されにくい可能性があるためです。
症状がつらいときは思い切って休職し、治療に専念する期間を設けるのも有効です。
また、自宅で過ごしていても、家事や家族のことで気持ちが休まらないかもしれません。そのときは一時的に入院して、療養環境をととのえることを検討してみてください。
焦りや罪悪感から「休んではいられない」と感じるかもしれませんが、回復のためにはエネルギーを充電する時間が必要です。
心理療法
心理療法は、うつ病の回復を助ける有効な手段です。カウンセラーとの対話を通じてストレスへの対処法を身につけたり、考え方のクセを修正したりします。
具体的には次のものがあります。[6][9]
- 森田療法
- 認知行動療法
- 支持的精神療法
森田療法では不安をムリになくそうとするのではなく、あるがままの自身を受け入れることを目指します。
認知行動療法とは、悲観的になりがちな考え方のバランスをとり、ストレスにうまく対応できるように練習する治療法です。
支持的精神療法では、カウンセラーが患者の話に耳を傾け、共感的に支えることで適応力を向上させます。
心理療法を通じて、うつ病になりやすい考え方や行動のパターンを見直し、再発しにくい状態を目指せます。
rTMS治療
薬物治療で十分な効果を感じられないときには、rTMS治療(反復経頭蓋磁気刺激療法)があります。
rTMS治療は磁気の力で脳の特定の部分を刺激し、低下した脳の機能の回復をめざす治療法です。[10]
治療は椅子に座ってヘルメットのような装置をかぶり、1回あたり数分から数十分程度の磁気刺激をおこないます。
おおかみこころのクリニックでは、rTMSの一種であるiTBSを取り入れており、rTMSより治療時間が短いため入院の必要はなく、外来で治療できるのです。
抗うつ薬による治療で効果が不十分な成人の患者さんが対象となり、一定の条件を満たせば保険適用で受けられます。
下記の記事ではrTMS療法を受けられる人について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
まとめ
うつ病の薬を飲んでるのに悪化すると感じたとき、薬が合っていなかったり、用法・用量を守れていなかったりすることが考えられます。
まずは医師の指示を守って服薬を続けることが大切です。
そのうえで、現在の症状を主治医に詳しく伝え、今後の治療方針を相談しましょう。心理療法やrTMS治療など薬以外の選択肢を検討するのも有効です。
諦めずに主治医とよく相談し、あなたに合う治療法を見つけていきましょう。
おおかみこころのクリニックでは、毎日夜22時まで診察しています。来院予約は24時間受け付けているので、お気軽にお問い合わせください。
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【参考文献】
[1]くすりの効果は、どのくらい続きますか。|日本製薬工業協会
https://www.jpma.or.jp/about_medicine/guide/med_qa/q14.html
[2]薬物治療のアドヒアランス(指示の遵守)|MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/02-薬について/薬に対する反応に影響する因子/薬物治療のアドヒアランス-指示の遵守
[3]アドヒアランス、コンプライアンスとは何ですか? また薬を飲むのをやめてしまうとどうなりますか|厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2007/074011/200732044A/200732044A0003.pdf
[4]双極性障害(躁うつ病)|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=RM3UirqngPV6bFW0
[5]治療抵抗性うつ病に対するニューロモデュレーションの可能性|精神神経学雑誌オンラインジャーナル
https://journal.jspn.or.jp/Disp?style=ofull&vol=122&year=2020&mag=0&number=6&start=456
[6]うつ病|こころの情報サイト
https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=9D2BdBaF8nGgVLbL
[7]パロキセチンによる離脱症状発現の個人差に関する薬理遺伝学的研究|KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20790405
[8]3 うつ病の治療と予後:ご存知ですか?うつ病|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad003
[9]認知行動療法(CBT)とは|認知行動療法センター
https://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php
[10]鬼頭伸輔先生に「反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=62