うつ病で思考力が戻らないあなたへ|こころがラクになる工夫と治療の選択肢










「判断するのに時間がかかる」
「本を読んでも内容が入ってこない」
「人の話が理解できず落ち込んでしまう」

このように、うつ病になって思考力が戻らないと感じている方は少なくありません。

この記事では、うつ病で思考力が低下する理由感じやすい不安を整理し、こころがラクになるヒントや治療の選択肢について解説します。

この記事で少しでも不安がやわらぎ、前を向くきっかけにつながれば幸いです。

うつ病で思考がぼんやりするのは自然なこと

うつ病で「思考力が戻らない」と感じるのは、決してあなただけではありません。

うつ病では注意力や判断力、集中力といった「考える力」が一時的に低下するとされています。[1]

これは脳の働きや神経伝達のバランスが乱れているためであり、あなたの性格が変わったり能力そのものを失ったりしたわけではありません。

「人の話が頭に入らない」「本を読んでも理解できない」という症状に不安を覚えやすいですが、休養や治療を続けるうちに少しずつ思考力が戻るケースが多くあります。

回復する時間には個人差がありますが、思考力の低下を症状の一部として理解し、焦らず治療を続けることが大切です。

うつ病で思考力が戻らないと感じる理由

うつ病で思考力が戻らないと感じるのは、脳の前方に位置する「前頭前野」という部分の働きが弱まるためとされています。[2]

前頭前野は、頭の中で情報を一時的に整理したり計画を立てて実行したりするときに重要な役割を持つ場所です。

そのため、この働きが低下すると以下のような症状につながりやすくなります。

  • 決断しづらい
  • 考えをまとめにくい
  • 「やらなきゃ」と思っても行動に移せない

こうした症状はうつ病による脳の一時的な変化であるため、休養や治療により少しずつ戻る可能性が十分にあることを知っておきましょう。

こころちゃん
こころちゃん

脳の働きがよくなるのを待ちましょう

うつ病で思考力が戻らないときに抱く不安

うつ病で思考力が戻らないと、以下のような不安を抱きやすくなります。

  • 「自分はダメな人間になった」と思い込む
  • 相手の話を理解できず「迷惑をかけているのでは」と罪悪感を抱く
  • 以前のように考えられず「もう元の自分には戻れないかも」という恐怖を抱く

こうした気持ちは、うつ病によって思考力が弱まっているときに誰もが抱くものです。

脳が疲れていると「できない自分」にばかり目が向きやすくなり、必要以上に自分を責めてしまうかもしれません。

ただ、不安を抱きやすいのは症状のひとつだと理解し、自分を責めずに過ごすことが大切です。

うつ病で思考力が戻らないと感じたときにできる工夫

うつ病で思考力が戻らないと感じたときにできる工夫として、以下が挙げられます。

それぞれ解説します。

考える作業を減らす

うつ病で思考力が低下しているときは、日常の小さな判断や選択も大きな負担になります。

ムリをして考えるのではなく、考える作業を減らす仕組みを作ることがこころをラクにするポイントです。

例として、以下のような工夫が挙げられるでしょう。

  • 記憶する作業はメモやアラームに任せる
  • 服は同じパターンで揃えて選ばないようにする
  • 食事は同じメニューをローテーションで用意する

こうした工夫で考える作業を意識的に減らすと、脳のエネルギーを温存できます。

考える作業を減らすのは怠けることではなく、脳を休ませて回復を助けるための工夫です。

自分を責めず、できるところから取り入れましょう。

考えをメモに書き出す

うつ病で思考がまとまらないときは、考えを紙に書き出すだけでも整理しやすくなります。

脳には情報を一時的に保ちながら思考や判断をする「ワーキングメモリ」という機能があります。

うつ病ではこのワーキングメモリの働きが低下しやすく、頭の中だけで考えようとすると混乱しやすくなります。[3]

そのため、考えを外に書き出して見える化することで、脳の負担を減らしやすくなるのです。

メモするときのポイントとして、以下が挙げられます。

  • 文章化が難しいときは箇条書きで書く
  • 誰にも見せないからグチャグチャでも気にしない
  • 分からないことや考えが止まったこともそのまま書く

考えを書き出して脳の負担をやわらげることが目的であるため、きれいにまとめる必要はありません。

メモに残すだけでも気持ちが整理され、こころが落ち着きやすくなるでしょう。

こころちゃん
こころちゃん

考えを外に出して頭を軽くしてあげましょう

思考力の低下も症状の一部だと理解する

うつ病で一時的に思考力が低下するのはあなたの意思や性格の問題ではなく、脳の働きが一時的に弱まって起こる症状です。

まずは「自分を責めないこと」を大前提にしましょう。

風邪をひいて熱があるときに頭がぼーっとするのと同じように、思考力の低下は自然な反応であり「怠け」ではありません。

これは病気の一部であり、回復に向かう過程で少しずつやわらいでいくものです。

「今はこういう時期なんだ」と理解することが、安心して治療を続けるための助けになるでしょう。

うつ病で思考力が戻らないときは|rTMSという選択肢

薬や休養で思考力が戻らないときは、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)という治療が選択肢となります。

rTMSは脳に磁気刺激を与えることで、うつ病の症状をやわらげることが期待される治療です。

実際に、rTMSによって前頭前野の活動が回復し、思考力の低下や判断力の鈍さなどの症状が落ち着きやすくなる可能性があると報告されています。[2]

これまでの治療で十分に改善が見られなかったときは、rTMSを実施している当院にお気軽にご相談ください。

rTMSについて詳しく知りたいときは、以下の記事を合わせてご覧ください。

うつ病による思考力低下があっても自分を責めないで

うつ病による思考力の低下は、多くの人が経験する症状のひとつです。

「頭が働かない」と感じてもそれはあなた自身の問題ではなく、うつ病による一時的な脳の変化です。

思考力は治療によって少しずつ戻る可能性があるため、日常生活では「考える作業を減らす」「頭の中をメモに出す」といった工夫が脳の負担を軽くするでしょう。

薬や休養で十分に改善しないときは、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)という新しい治療法が選択肢になります。

「戻らないのでは」と感じても焦ったり自分を責めたりせず、一歩ずつ歩んでいきましょう。

rTMSについてご興味のあるときは、お気軽な気持ちでおおかみこころのクリニックにお問い合わせください。

まずは話を聞きたいというときは、ご自宅からオンライン診療をご利用いただけます。

当日予約・自宅で薬の受け取り可能

【参考資料】
[1]Giulia Perini Cognitive impairment in depression: recent advances and novel treatments
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6520478

[2]三國 雅彦 抗うつ薬治療抵抗性うつ病に対する経頭蓋反復磁気刺激療法のわが国における適正使用をめざして
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1170020120.pdf

[3]京都大学 複数の精神疾患における記憶力を共通のモデルで予測することに成功 -疾患に共通する認知機能低下のメカニズム解明に大きく前進-
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/embed/jaresearchresearch_results2018documents190108_501.pdf

この記事の執筆者
とだ ゆず
精神科看護師としての経験を活かし、メンタルヘルスを中心とした記事を執筆。こころと身体のつながりを大切にしながら、そっと寄り添う文章を心がけています。
保有資格:看護師、保健師、上級心理カウンセラー、漢方養生指導士
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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