うつ病は頑張ることを諦めると楽になる?治療を見直すサインと回復のヒント










「もう頑張れない」

「諦めたほうが楽かもしれない」

うつ病の治療中にこのように感じて、落ち込んでしまう方も少なくありません。

ただ、諦めたくなるのは意志の弱さではなく、心身が疲れを知らせているサインです。

一度立ち止まって諦めることが、回復への一歩になることもあるでしょう。

この記事では、うつ病で諦めると楽になる理由「逃げる」と「諦める」の違い治療を見直すサインについて解説します。

うつ病の治療を諦めたくなるのは弱さではない

うつ病で「もう頑張れない」「治療を続ける気力がわかない」と感じるのは、決してあなたの意志が弱いからではありません。

うつ病では、脳の神経伝達物質のバランスが崩れ、思考や感情のコントロールが難しくなることが知られています。[1]

その結果、前向きに考えたり努力を続けたりするためのエネルギーが低下するのです。

「諦めたい」と感じるのはあなたが弱いからではなく、こころと身体が限界を知らせているサインととらえましょう。

うつ病で頑張ることを諦めると楽になる理由

うつ病で頑張ることを諦めると、以下のように楽な気持ちを感じられるようになります。

それぞれ解説します。

余白が生まれる

諦めると楽になる理由として、こころに余白が生まれる点が挙げられます。

うつ病は「もっと頑張らなきゃ」「できない自分はダメだ」という考えが繰り返され、こころの中が自己否定でいっぱいになりがちです。

ただ「できないものはできない」と諦めることで、過剰な緊張や完璧主義からこころが離れ余白が生まれるのです。

例として、以下のような場面が挙げられるでしょう。

  • できる範囲でよいと思える
  • もう少し休職を続けてもよいと思える
  • 落ち込むのも自分の一部と認められる

諦めることで、現実を受け入れながら次の選択肢を見つける余裕ができます。

いったん力を抜くことで、あなたの中に回復へ向かうスペースが戻ってくるのです。

こころちゃん
こころちゃん

頑張り過ぎずにいきましょう!

脳の緊張がゆるむ

諦めると脳が休息モードに切り替わるため、楽な気持ちを感じやすくなります。

うつ病では、物事を考えたり判断したりする働きが低下し「こうあるべき」「できない自分が悪い」といった思考が繰り返されやすくなります。[2]

その結果、こころも身体も常に緊張した状態で、休むことが難しくなってしまうのです。

一方で「もうムリかもしれない」と諦めて力を抜くと、過剰に働いていた脳の活動が落ち着き、心身がリラックスしやすくなります。

過剰な緊張がゆるむと休息しやすくなり、回復に必要なエネルギーが少しずつ戻ってくるでしょう。

コントロールを手放せる

うつ病で諦めると楽になるのは、できないことをコントロールする苦しさから解放されるためです。

うつ病の回復過程では、以下のような思考が繰り返されやすくなります。

  • どうして治らないの
  • 前はもっと働けたのに
  • ほかの人は頑張っているのに

このように、変えられない現実を変えようとエネルギーを使い続けるため、こころと身体が疲れ果ててしまうのです。

一方で、諦めるとムリなコントロールを手放せるため、今できることに自然と目が向くようになります。

心理療法の研究でも、不安や落ち込みを受け入れることで、状況に合わせた柔軟な選択がしやすくなると報告されています。[3]

「もう頑張れない」と感じたときは、一度諦めて回復のエネルギーをため直すチャンスでもあるのです。

うつ病で「逃げる」と「諦める」は違う

うつ病で「逃げる」と「諦める」は同じではありません。

「逃げる」とは、今の苦しさから距離を取ることです。

たとえば、仕事や人間関係などこころをすり減らす要因から離れるのは、あなた自身を守るための大切な行動と言えます。

一方で「諦める」とは、現実を受け入れることを意味します。

諦めるの語源である「明らめる」には、物事を明らかに見るという意味があるのです。

うつ病の治療において諦めるとは、投げ出すことではなく「今のわたしには休息が必要なんだ」と気づくこととも言えるでしょう。

うつ病ではまず「逃げる」ことで自分を守り、「諦める」ことで現実を受け入れ少しずつ回復へ向かっていきます。

そのため「諦めた」とあなた自身を責めずに、心身を休ませる選択ができたことを肯定的に受け止めましょう。

こころちゃん
こころちゃん

ゆったりとした気持ちで焦らずにいきましょう

諦めると楽になると感じたときは治療を見直すサイン

諦めを感じる瞬間は、治療を見直すタイミングでもあります。

「もう何をしてもだめ」と感じるときは、今の治療があなたに合っていないサインとも言えるでしょう。

たとえば、薬物療法や心理療法を続けても変化を感じられないときは、rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)という選択肢があります。

rTMSは脳を磁気で刺激し、うつ病の症状を緩和することが期待される治療です。

「諦める=治療を終える」ことではなく、今のやり方を変えようというサインとも言えます。

希望を手放さず、あなたに合った治療を一緒に見つけましょう。

rTMSについて詳しく知りたいときは、下記の記事をご覧ください。

諦めるのはこころを休ませる大切な選択肢

うつ病で「諦めたい」「もう頑張れない」と感じるのは、こころと身体が限界を知らせているサインです。

できない自分を責めず今は休もうと受け入れられたとき、心身の緊張がゆるみ少しずつ回復の力が戻るでしょう。

もう何をしてもダメと感じたときは、治療を見直すサインかもしれません。

うつ病の治療には薬物療法や心理療法だけではなく、rTMSという新しい選択肢もあります。

おおかみこころのクリニックでもrTMSを実施しているため、ご興味のあるときはお気軽にご相談ください。

ご自宅からのご相談は、オンライン診療が便利です。

当日予約・自宅で薬の受け取り可能

【参考資料】
[1]うつ病|厚生労働省 こころもメンテしよう
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html

[2]抗うつ薬治療抵抗性うつ病に対する経頭蓋反復磁気刺激療法のわが国における適正使用をめざして|三國 雅彦
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1170020120.pdf

[3]アクセプタンス&コミットメント・セラピーの職場での活用の可能性|伊井俊貴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjomh/31/3/31_127/_pdf/-char/en

この記事の執筆者
とだ ゆず
精神科看護師としての経験を活かし、メンタルヘルスを中心とした記事を執筆。こころと身体のつながりを大切にしながら、そっと寄り添う文章を心がけています。
保有資格:看護師、保健師、上級心理カウンセラー、漢方養生指導士
執筆者:浅田 愼太郎

監修者:浅田 愼太郎

新宿にあるおおかみこころのクリニックの診療部長です。心の悩みを気軽に相談できる環境を提供し、早期対応を重視しています。また、夜間診療にも力を入れており、患者の日常生活が快適になるようサポートしています。




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